No.548381

天魔戦争 第九話

夜の魔王さん

艦長さんは色々凄いね

2013-02-25 00:57:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:741   閲覧ユーザー数:713

 アースラとは次元世界を旅する戦艦だそうだ。よく分からないので宇宙船みたいなものと解釈した。イメージとしてはエ○タープラ○ズだろうか?

 そのとても乗り物の中とは思えない通路をユーノと並びながら歩く。なお、普段なら騒いでいるだろう二人はクロノくんに軽くやられたためか静かにしていた。

「「……す…………す…………す」」

 訂正します。何かブツブツ呟いていてとても気味が悪いです。

「ああ君たち、ジャケットは解除していいよ」

「あ、はい」

 なのはちゃんが言う通りにすると、さっきからブツブツ言っていた二人がいつも通りの調子に戻った。ついでに服装も元に戻った。

「君も、そっちが本来の姿じゃないんだろ?」

 本来の姿?

(僕は最初からバリアジャケットを着てなかったし……つまりさっきの言葉をかけられたのはユーノくん?)

 そう思ってなのはちゃんと一緒にユーノを覗き込むと、ユーノくんのふさふさフェレットボディは彼の魔力光である緑色に光り、見る見る僕たちと同じくらいの年の男の子に変わった。

「なのはにこの姿を見せるのは久しぶりだっけ?」

 そのなのはちゃんはというと、目を点にしてユーノくんに指を向けてプルプルと小刻みに震えていた。ユーノくんはその手を取って立ち上がる手助けをする。

「ユーノくんって……普通の男の子だったんだ!?」

「えっ!? 僕は最初はこの姿じゃなかったっけ?」

 なのはちゃんは割と本気で首を振って否定する。僕も初耳だった。ここで今まで話に加わっていなかった二人が口を開きかけた。

「取り敢えず、こちらを優先して貰っていいか?」

「「あ、はい」」

 クロノくんに出鼻をくじかれて何も言えないまま終わったが。

 

 

 クロノくんに案内されて入った部屋は何故か和風だった。

(水が流れ、鹿威しがあり、桜の木まである……なんだこの日本庭園風の内装は……!)

 内心動揺を隠せなかった。まさか室内どころか艦内にこんなものがあるとは誰も想像できまい。しかもそこにいるのは緑色の髪の女性だからミスマッチ度が高い。

 

「なるほど……あのロストロギア――ジュエルシードはあなたが発掘したんですね」

 今はユーノくんがここまでの経緯を説明した所だ。

「あの……ロストロギアって?」

「遺失世界の遺産……って言っても分からないわよね」

 なのはちゃんの質問にこのアースラの艦長さん――リンディ・ハラオウンさんは言葉を選びながら答える。

 

「この次元世界にはいくつもの世界がある――というのは知ってるわよね?」

(いえ知りません、初耳です)

 とは口が裂けても言えない。今知った事で納得しよう。

「その中では良くない形で進化しすぎた世界があって、その世界の技術は時に自分たちの世界を滅ぼしてしまうことがあるの。その後に残った危険な遺産」

「それらを総称して、『ロストロギア』と言う」

 ……不発地雷みたいなものだろうか?

「私たち管理局や保護組織が正しく管理しなければならない危険な品物。あなたたちが探しているジュエルシードもその一つ」

 ジュエルシードは全部で21個あるらしいけどね。

「あれは次元干渉型のエネルギー結晶体。流し込まれた魔力を媒体として、次元震を引き起こすこともある危険物」

(次元干渉型とか次元震とか、使いどころが限定されている単語をさも当然のように使うのは勘弁して欲しい。訳が分からないよ)

「白い服の子とあの子がぶつかった時に発生した振動と爆発――あれが次元震だよ」

 そんな僕の胸の内を読んだのか、クロノくんが補足説明してくれた。

「たった一つのジュエルシードでもあれだけの威力があるんだ。複数個集まった時の影響は計り知れない」

「大規模次元震やその上の災害――次元断層が起これば、世界の一つや二つ簡単に消滅してしまうわ」

(つまり次元震は自身の空間版ってことでいいのかな。スケールが違いすぎるけど。そしてジュエルシードはそれを発生させる危険性があると)

 それよりも今ミルクを入れたような……さっきは角砂糖を入れてたし……お茶だからいいのかな?

 

「これよりジュエルシードの回収は、私たちが担当します」

「君たちは今回の事は忘れて、それぞれの世界に戻るといい」

「でも……」

 なのはちゃんはそう言ったが、僕としてはその提案は願ってもない事で、ジュエルシードだけだったら僕としてはお任せしたい。

(だけど、当事者であるユーノくんと、フェイトちゃんの事が気になってるなのはちゃんはそうもいかないみたいだ。あの二人はよく分からないけど何かを待ち望んでいる感じだ)

 そんなのは分かりたくもないが全身にそのことが書いてあるし、うずうずしている。

「まあ、急に言われても心の整理もつかないでしょう。今夜一晩話し合って、それから改めてお話をしましょ?」

 その僕たち――特にユーノくんとなのはちゃんを思いやってであろうその発言に、今まで黙っていた二人が何故か食いついた。

「はっ! アンタの考えは見え見えなんだよ!」

「大方、魔力保有量の高い僕らを協力させようという魂胆だろう?」

(ば、ばかなっ! この二人がそんな発想できるはずがない!)

[落ち着いてください、マスター。大方彼らはこの世界の基となった物を知っており、それの二次創作か何かにこれと同じ展開が書いてあったのでしょう]

 ディナの念話に平静を取り戻した。

(そうだよね、あの二人がそんな発想に自力でたどり着けるはずがないもんね)

 それを言われたリンディさんはというと……。

「くすん。ただお姉さんはこのまま蚊帳(かや)の外は可愛そうだなって思っただけなのに……」

(泣いたー!)

 いや違う、手に目薬を隠し持っている! あれって次元世界共通の技術なんだ。

「決して『このまま帰してもこの子たち絶対に関わってきそう』って思ってどうせなら協力の申し出をしやすいようにしようだなんて考えてはいないのに……」

(本音がダダ漏れしてるー!?)

「そこまで言うなら仕方ないわね、ごめんなさい。ジュエルシードは私たちが責任を持って回収しますので、皆さんはお帰りください」

(そして体良く締め出したー! 流石は提督――どれ位偉いのか分からないけど、腹芸もお手の物ですね!)

 じゃない、このままだと協力の申し出がし辛い。

「この二人は僕たちとは関係ないんで、僕たちは是非一晩考えさせてください」

「オイコラ、テメエ!」

「何勝手なことを言ってるんだい?」

 知らない人が何か言ってるなー。

「それでは、今日は一先ず帰っていいですか?」

「ええ。今日はありがとうございました」

「「勝手にまとめるな!!」」


 
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