No.547444

魏√after 久遠の月日の中で20

ふぉんさん

お久しぶりです。
とりあえずは作品をどうぞ。

2013-02-22 18:32:08 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:19829   閲覧ユーザー数:13883

迫るであろう斬撃に自然と身が震える。が、一向にそれが来ない。

恐る恐る眼を開き武器を向ける相手を見上げる。

暗闇に慣れてきた眼が、相手の顔をうっすらとだが認識することができた。

そして、息をのむ。

 

「……たい、ちょう?」

 

「凪……?凪なのか……?」

 

懐かしい声。

聞き違うはずがない、五年間想い続けた隊長のものだ。

 

「おぉおおおおおおおおおおお!!!!」

 

背後から響く咆哮。

振り向いた瞬間人影がすれ違い金切り音が響いた。

 

「ッッ!」

 

隊長?は突然の強襲に何とか防御姿勢をとったが、勢いに押され後方に吹き飛ばされた。

 

「まだまだぁああああ!!」

 

体制を崩した相手に新しく現れた人影がすぐさま追撃をかける。

発せられる怒声や獲物からすぐに霞様だとわかった。

私の危機に憤慨してくださったのだろうか。だが相手はもしかしたら……

 

「霞様!相手は……」

「霞も知っている。暫くはやらせてやってくれ」

 

聞き覚えのある声に遮られる。

再び振り向くと、松明を持った華雄さんが戦う二人を見て苦笑いを浮かべていた。

 

「はぁああああ!!」

 

迫る凶刃を全力で受け止める。

速さも重さも尋常じゃない。ただ、攻撃自体は読みやすいので何とか捌けている。

受け止めた武器を弾き靴裏を叩き込むが、相手は武器の柄でそれを防ぐ。

ようやくお互いに距離がとれた。

辺りが少し明るくなっている事を不思議に思い、視線を奥へ向けると華雄が松明を持っていた。

どうやら合流した様だ……何故か『彼女』を連れて。

さっきの相手、そして今襲いかかってきた相手。

 

「霞か……それと、凪も」

 

さっきの相手、戦いの最中まさかとは思ったけどやっぱり凪だったのか。

手加減抜きの一撃を入れてしまったが大丈夫だろうか。

再会の前に自分で怪我をさせてしまった事に罪悪感を覚えてしまう。

 

「久しぶりやな一刀ぉ。『五年』ぶりとちゃうんか?」

 

怒りに瞳を滾らせ、歯噛みする霞。

あの村での出来事はもうばれているとみていいだろう。

言い逃れしようもない。俺は彼女から見れば裏切りともとれる行為をしてしまった。

自分の不甲斐なさにほとほと嫌気がさす。

 

「ごめん、霞……俺は……くッ!」

 

言葉を斬撃で遮られる。

後退し避けるが、霞は更に踏み込み偃月刀を振るう。

 

「っと、あんたは(かず)やったか。一刀がそない戦えるわけないもんなぁ」

 

「それは……」

 

動揺し反応が遅れるが、何とか刃を避ける。

が、霞はすぐさま半身になり柄で突いてきた。

 

「がッ」

 

腹に入り、痛みと共に強烈な吐き気が襲う。

力が抜け膝をついてしまう。追撃を恐れ意識を霞へ戻すが、霞は静かに俺を見下ろしていた。

その瞳からは、何も読み取ることができない。

息を整え、立ち上がる。それを見た霞は再び偃月刀を構えた。

神速と名高い一撃を、辛うじて受け止める。

 

「何で……何で言ってくれなかったんや!」

 

武器を振るいながら、霞は表情を歪める。

 

「この五年間、うちがどれだけ一刀のことを……」

 

瞳が潤み、一撃一撃に力が無くなってきた。

 

「約束も守らんで……今度は身を隠してとんずらかいな……」

 

約束。

忘れるはずもない。彼女と約束した羅馬への旅。

俺はその約束を守れず、帰ってしまった。

霞は瞳は涙で溢れ、震えた手は武器を落としてしまった。

 

「一刀はうちに……うちに会いたくなかったんか……?」

 

涙を零しながら不安に満ちた表情で俺に問いかける霞。

瞬間、俺は一心を放り投げ霞に駆け寄り抱きしめた。

 

懐かしい霞の匂い。

耐え切れず抱きしめながら唇を奪う。

 

「ちょ……かず…んむッ!」

 

すぐさま舌を滑り込ませ霞の口内に侵入する。

淫靡な水音が響くが、構わず堪能し唇を離した。

 

「かずとぉ……なんなんや、もぉ……」

 

頬を赤く染め、蕩けた瞳で俺を見る霞。

 

「ごめん……俺が不甲斐無いから、霞を勘違いさせた」

 

俯きながら思い返す。

もし自分が逆の立場なら……そのショックは計り知れない。

そんな残酷な事を、俺は彼女にしてしまったのだ。

 

「本当に……本当にごめ…っ」

 

再び謝ろうとするが、柔らかい感触に唇が塞がれた。

霞の顔がとても近い。少しして、唇が離れ吐息が漏れる。

 

「……もうええよ。勘違いなら、もうええ」

 

視線をそらしはにかむ霞。

と、思い出した様に視線を戻し笑顔を浮かべ言った。

 

「おかえり、一刀」

 

「……あぁ、ただいま」

 

「いいのか、行かなくて」

 

「……もう少し、我慢します」

 

華雄さんの問いにそう答える。

怪我の手当てを華雄さんにしてもらいながら、二人のやりとりを聞いていた。

霞様……本当に良かった。

やはり、隊長にはきついお仕置きが必要だ。

でもその前に……

 

「私も……」

 

霞様が落ち着いた後、私もこの五年間の埋め合わせを少しでもしてもらおう。

あとがき

 

お久しぶりです。

覚えている方も殆どいないと思いますが、久遠20となります。

完結させるさせる詐欺とはこの事ですね、本当にすいません。

 

凪の華雄の呼び方は呼び捨てだった気がするけど五年たって華雄も一応魏軍って事なのでさん付けにしました。

 

本当に久しぶりの執筆なので、矛盾や文に問題がありそうで怖いです。

元から問題だらけなんですがね。

 

続きがいつになるかはわかりませんが、なるべく早く書けたらいいなと思ってます。

ではまた。


 
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