No.546860

武装神姫 Original Rondo 第3話 焔の華よ、天壌焦がして咲き誇れ

武装神姫 OriginalRondo
巡る想い、変わらぬ願い〜欠けては満ちる月模様〜

月待 紡(つきまち つむぐ)と彼の武装神姫達の始まりの物語。

2013-02-20 23:20:05 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:420   閲覧ユーザー数:399

第3話 焔の華よ、天壌焦がして咲き誇れ

 

日々暮らす中で、必ず行うルーティーンワークというものがある。やらねばならない事、習慣化しているもの、望んで繰り返し行う事。特に目的意識を持って行っている事は、当人にとっての重みも、結果身に付く速さや深さに大きな影響をもたらす。何を思い彼女が"それ"を日々欠かさず重ねるのか。その先に求めるものはなんなのか。彼女の心を焦がす焔の源は、彼女の原動力はなんなのか。その一端を垣間見る。

 

武装神姫 Original Rondo 巡る想い、変わらぬ願い~欠けては満ちる月模様~

 

第三話 炎の華よ、天壌焦がして咲き誇れ

 

始まります。

 

 

第3話 炎の華よ、天壌焦がして咲き誇れ

 

彼女の朝はかなり早い。

「日々鍛練。そして、一日の遅れを取り戻すのに三日掛かる。まぁ積み重ねと言う事だな。」

朝が早い理由の説明になっていないが、要するに鍛練の為に朝が早いのだ。

 

彼女が鍛練から戻ると、彼女の主の布団はもぬけの殻だった。

「華倶夜、主殿は?」

「朝食よ。にしてもアンタも随分熱心ね?バトルロンドのクィーンにでもなりたい訳?」

「本気で聞いているのか?主殿も私も、最も興味ない話題だぞ、それは。」

「だから判らないんじゃない、何でアンタがそんなに鍛錬好きか。」

「別に好きという訳では・・・そうだな、強さとは金の様なもの。無ければ無いで何とかなるが、無いと手に入らない物が多い。」

「なにそれ?」

「なんの台詞だったかな?ひどく共感を覚えてね。」

そう言ってPCデスクの脇に架けられたはしご - 彼女らの主、万年睡眠不足お手製"自分でクレイドルまで戻れちゃうよはしご"、大層不評なネーミングだ - に向かって歩いて行く。華倶夜も追い掛けながら話を続ける。

「バトルロンドのトレーニングでもなく、無ければ無いで困らない、ならなんでアンタ鍛錬なんてしてる訳?」

「もし、主殿がバトルロンド以外の強さを欲したら?それ以外の強さでしか得られぬ物を、護れぬ物を求めたら?その強さが無い為に後悔する事になったら?」

「仮定の話しでしょ?」

「そう、仮定だ。実際はそんな事態が - 私の強さが必要とされる事は無いかもしれない。ならそれはそれで構わない。」

「アンタにとっては無駄骨じゃない?」

「だが後悔は無いし、主殿にもさせない、どっちに転んでもね。なにより私は自負と充足感を得る。」

「自己満足って事?」

「身も蓋も無いな。だが覚悟とも言える、いつでも主殿の剣になれるという。そして、剣になる為に - 主殿の為に一瞬一瞬を、全身全霊を賭けていると私は胸を張って言える。」

「フゥン。」

「つまるところ。」

言葉を一端区切り、はしごに手をかけ上り始める。

「お前が口癖の様に掲げる"いいオンナ"とやらとそう変わらんのだよ。」

「・・・どこが?」

「簡単な事さ、お前の言う"いいオンナ"とは、"誰"にとっての"いいオンナ"だ?」

「・・・・・・決まってるじゃない天上天下全てにおいてよ。」

「それはまた随分大仰で大雑把だな、最大公約数に成り下がる積もりか?結局、捧げた努力や期待する見返りの形は違えど"誰"の特別になりたいかは同じだろ?」

「・・・どう、かしらね。」

「素直じゃないな。」

はしごを上りきりデスクに立つ。

「"誰"にとって特別な"いいオンナ"になりたいか、"誰"にとって特別な"剣"になりたいか。その為にただ努力している、それだけの事さ。」

「報われないかもしれないわよ?」

「ならお前の想いも届かないかもしれないぞ?」

「ジョーダン、意識せずにはいられない位"いいオンナ"になって見せるわ。」

「私とて、抜かずとも傍に置いておきたいと思えるような"剣"になるさ。」

「フン。成る程確かに同類だわ。」

二姫がクレイドルに戻ると、彼女らのマスターも朝食を終え戻ってきた。

 

平日という事もあり、朝食を終え布団を畳んだ万年睡眠不足はバックパックの中身を確認している。彼は相棒に目を向けながら。

「さてと、今日は誰だっけ?」

「アタシよ。」

今日一緒に学校へ行く神姫は誰かという話のようだ。

「だけ?」

「だけよ。眠り姫は相も変わらずお休みだし」

「私は鍛錬がありますので。」

「熱心ね?」

「もう少しで馴染むんだよ、この間インストールしてもらった動作プログラムが。」

「何を入れてもらったの?」

「居合だよ、夢想神伝流。」

「・・・有名なの?」

華倶夜の疑問で返すのも当然か、マイナーなジャンルの話だろう。

「有名というか、流派としては一番人口が多いんじゃないか?苦労したよ、動作モデルを構築してプログラム化するの。行くぞ華倶夜。」

「はいはい。じゃぁ鍛錬頑張ってね。」

「気をつけて二人とも。」

出掛ける一人と一姫を見送りながら自分も支度をする。

 

 

 

「ふぅ」

鍛錬が一段落付いたところのようだ。

「なかなか難しいものだな。」

プログラムなら何百回やろうと同じ動作をできると考えがちだが、それはプログラム通りに動いているだけで習得したとは言わない。

「望んだ時、望んだだけの力で、速さで、角度で・・・か。我ながら随分高いハードルだな。」

言う割りに随分と楽しそうに笑う。

「この世で唯一最高のパートナー・・・己の体を100%支配して、制御する!!」

風切り音と共に仮想敵を両断する。

「力を、速さを、己の全てを。」

仮に力と速さを100段階ずつ制御でき組み合わせる事が出来れば、1万通りの手が打てる。実際そうは行かないだろうが、同スペック同士の戦いならこれは大きな差になるだろう。無論、バトルロンドには反映されない能力ではあるが。

「燃やせCSC(魂)を・・・私の想いを糧に・・・熱く、熱く、熱く。」

 

「華倶夜には嘘を言ったかもしれないな。・・・私とて向けて欲しい眼差しの意味はお前と同じさ。」

 

私を惑わすこの想い

心を焦がすこの想い

力をくれるこの想い

 

この想いの熱にうなされて

この想いの熱を力に変えて

この想いの熱で我が剣鍛え

 

天壌焦がして燃え上がれ

 

私の想いよ

 

焔と咲き誇れ

 

ただ

 

主殿の為に

 

私は・・・

 

伽倶土焔乃華は在る


 
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