No.545305

真恋姫無双幻夢伝 小ネタ3『その頃 徐州の場合』

小ネタ第三弾。一応次の本編に繋がった内容です。

2013-02-17 06:10:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3712   閲覧ユーザー数:3268

  真恋姫無双 幻夢伝 小ネタ 3 『その頃 徐州の場合』

 

 

 新領主に代わってから徐州は平和になった。

 以前までは青洲などからあふれ出た黄巾族が暴れていたが、黄巾族鎮圧に大貢献した劉備が太守になってから、その名声を恐れてか息をひそめるようになった。何も無い日常に徐州の民はつかの間の平穏を取り戻していた。

 勿論彼女一人のおかげではない。一騎当千の関羽・張飛姉妹。すでに名高い名軍師の孔明。そして天の御使いと噂されている北郷一刀。この全員の力・権威を恐れてのことだろう。

 しかし安穏無事な徐州に一通の書状が届く。歴史は彼らを放ってはおかなかった。なぜなら彼らはすでにこの時代の主役たちであったから……。

 

「皇帝の密書?」

「はい。今日の未明に届きました」

 

 朱里の小さい両手に収まっている手紙を、一刀は片手で何気なしに受け取った。“皇帝の手紙”に何の権威も感じていない。やはり天の国から来たんだなあ、と朱里や傍にいた桃香は驚きを交えてそう思った。愛紗に至っては尊敬すら抱く出来事だった。…何もリアクションしない鈴々は特殊例だ。

 

「………」

「ご、ご主人さま?」

「読めない」

 

 ガクッと拍子抜けする桃香たち。達筆すぎる筆跡はまだこの時代に来て間もない彼には厳しかった。すでに簡単な字が読めるだけでもすごいと褒めるべきだろう。

 代わりに受け取った桃香がその手紙を読む。

 

「桃香様、どういう内容ですか?」

「ん~とね。董卓っていう人が都で悪さしていうから、追い払ってほしいって」

 

 あまりに軽い説明に愛紗は「はあ」と曖昧に返事しかできなかった。しかたなく朱里を見た。彼女は頷いた。どうやら本当にそういう内容らしい。

 

「それで…どうしようか?」

「どうしようかって?」

「ご主人様。桃香さまがおっしゃりたいのは、董卓討伐の兵を挙げるかどうかということでしょう」

 

 愛紗のセリフに乗っかるように、桃香は大きく頷いた。“董卓”このワードを聞いた瞬間、一刀の考えはもう決まっていた。

 

「倒そう!董卓を!」

「ま、待ってください、ご主人様!?」

 

 「はわわ」と慌てる軍師が制止した。勿論この先の歴史を知っている一刀には“董卓討伐軍”の文字が頭に浮かんでいる。劉備軍がもっと拡大するチャンス。彼はそう捉えていた。

 しかし“この時代の”軍師はある疑問を持っていた。

 

「董卓さんが悪い人だって言うことが、その、あまり信じられなくって…」

 

 朱里の言葉に愛紗は反論する。

 

「しかし都で権力を笠に悪事を働いているとは、最近もっぱらの噂だぞ?」

「鈴々もすっごい悪い奴だって聞いたことがあるのだ!」

 

 鈴々は机に乗り出すように意見を述べる。正義感から湧いてくる怒りと共に。しかし朱里はあくまで冷静だった。

 

「でも……そういう噂が出てきたのは本当に最近なんですよ。誰かが広めたかもしれません」

「それに徐州は平和になったばっかりだよ?兵を挙げたらみんなに迷惑なんじゃないかな」

「でも!いま兵を挙げないと!」

 

 朱里や桃香の消極的意見に一刀は声を荒げる。だが、いきなり議論は打ち切られた。どこかから鳴る「グゥ」という音に皆の緊張の糸が切れる。

 

「お兄ちゃん、それよりも鈴々はお腹が減ったのだ」

 

 そういえば、朝起きてすぐ集められたから朝食はまだだった。愛紗はため息をつき、朱里や桃香は笑い声を漏らした。一刀も思わず笑ってしまう。

 

「鈴々!重要なこ「まあまあ、確かにお腹減ったね」桃香さま!?」

「続きは朝食を食べてからでいいかな」

「はい」

 

 三人の言葉に、愛紗はさっきよりももっと大きなため息をついた。仕方なく席を立って四人について行く。鈴々を先頭にして一行は会議場を出た。

 朝日が注ぎ込む廊下を五人が歩いていると、「あっ」と朱里が声を上げた。

 

「はわわ、ごめんなさい!今日、朝から使用人部屋が工事でした!それで、今日は料理人さん、いないです…」

「えー!お腹、ペコペコなのだ!」

「仕方ない。じゃあ朝飯は外で食べようか」

「そうですね、ご主人様」

「あの」

 

 全員が愛紗の方を向いた。

 

「もし良かったら作りましょうか?」

「誰が?」

「私が」

「何を?」

「朝食を」

 

 一刀の顔を見ながら顔を赤らめる愛紗を後目に、この時、全員の気持ちが一致した。

 

(それは嫌だ)

(それはちょっと…)

(あう…嫌です)

「それは嫌なのだ」

「「「口に出したら駄目だろ(だよ/ですよ)!!」」」

 

 バッと三人が振り向いた。そこには穏やかな朝の光とは全く似合わない、表情が消えた愛紗がいた。三人の顔が思わず引きつった。

 

「…ほう」

「だって愛紗の料理はマズイの「バ、バカ!」

 

 鈴々の口を慌ててふさいだ一刀は、その時、ブチッと何かが切れる音が聞いたような気がした。一刀が見た先には……

 

 一刀はこの後のことを“惨劇”と表現したとだけ言っておこう。これはあまりにも悲惨な事件であった。それを表現するには、申し訳ないが作者の技量はその域に達していない。本当に残念だ。後は読者の想像にお任せしよう。

 

 余談になるが、愛紗がこの後作った朝飯も、その惨劇の中に含まれるそうだ。

 


 
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