No.545292

武装神姫 OriginalRondo 第1話 そのマスター変わり者につき

武装神姫 OriginalRondo
巡る想い、変わらぬ願い~欠けては満ちる月模様~

月待 紡(つきまち つむぐ)と彼の武装神姫達の始まりの物語。

2013-02-17 03:58:29 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:446   閲覧ユーザー数:443

 

第1話 そのマスター変わり者につき

 

2036年の発売直後から、爆発的に普及したサポートガジェット"武装神姫"。

"彼女"らは毎日の目覚ましから、メールや電話の着信、果ては子供の位置自動記録通知や高齢者の生活サポート、フィジカルデータ収集管理まで、様々な分野で人間の生活をサポートし、最早無くてはならないガジェットと化していた。

人々は思い思いに彼女らを着飾らせ、或いは武装させそれぞれのスタイルで神姫の居る生活を送っていた。

 

発売から2年と少し、彼もまた自分の神姫との生活を送る一人だった。

 

武装神姫 Original Story

 

巡る想い、変わらぬ願い~欠けては満ちる月模様~

 

第一話

 

そのマスター変わり者につき

 

始まります。

 

 

第1話 そのマスター変わり者につき

 

「だぁっちっくしょーっあっちーっ!!。」

「この時期、暑くない方が問題でしょ?。」

「心頭滅却・・・なんて気休めにもならんか。」

「冷夏だったら農家の人達も困っちゃうし、秋に美味しいご飯食べられなくなっちゃうよ?。」

炎天下シティサイクルを立ち漕ぎする青年が"一人"。別に彼は暑さに頭をヤラレて、自転車を漕ぎながら一人四役をやっている訳ではない。

時は2038年7月半ば。ここ2年半で国内普及率が携帯電話に匹敵するまでに伸びたガジェットがある。"彼女ら"はオプションパーツを装備する事で外観、機能をカスタマイズできる。子供に自動位置記録通知機能をつけて持たせたり、高齢者向けには血圧等フィジカルデータの収集解析機能を持たせ健康管理ツールとしたりと、拡張性の高さとその愛玩性の高い外見で老若男女を問わず人気を博している。そんな彼女らは武装神姫と呼ばれている。

彼は相棒の三姫をバックパックに乗せ、ある場所へ向かって自転車を漕いでいたのである。ある場所とは"武装神姫セントラルアミューズメントタワーAkiba"、通称"神姫タワー"と呼ばれ、地下2階、地上8階の神姫系総合アミューズメント施設である。地下1、2階が駐輪場と駐車場、1階が神姫関連パーツ・グッズ、書籍の総合ショップ、3~7階がバトルアリーナ、8階は神姫系コスプレグッズのショップ、撮影スタジオで構成されている。2階と3階、4階と5階、6階と7階がそれぞれが吹き抜けで繋がっており、2階、4階、6階はシュミレーションバトル、オフィシャルバトル、ミッションバトル用の筐体が設置されたバトルエリア、 3階、5階、7階が直下の階と直結した喫茶ラウンジとなっている。

 

「よいっしょっと。」

神姫タワー地下1階の駐輪場に自転車を停めオーナーズカード - 神姫オーナーの情報を記録したICカード - を駐輪スペースに設けられたカードリーダーに翳す。駐輪手続きを終えてエレベータに乗り込む。

「とりあえず・・・3階だな。」

「とりあえずもなにもオフィシャルバトルに興味ないじゃない、アンタ。」

「ほっとけ、オフィシャルはちぐはぐな装備の奴らばっかりでおもしろくなんいだよ・・・やるんならやっぱ楽しまないと。」

「アタシも身だしなみのなってない神姫と戦うなんてゴメンだけどね。」

 

エレベーターが3階シュミレーションバトルラウンジに着く。

「いらっしゃいませ。」

「ちわーっす。」

「って何だお前か。愛想振り撒いて損した。」

「げっ不良店員・・・いやがったのか。つか客だぞ嫌でも愛想振り撒けよ。」

「ウッサイ、いつもの席開いてるよ。飲み物は桃?。」

「サンキュー、ピーチソーダでヨロ。」

神姫タワーに出入りする様になった当初から、誰にとも無く挨拶しながらエレベータから降りてくれば自ずと顔見知りもできよう。店員の態度に問題はあるが、いつものやりとりを交わしてラウンジの奥、テーブルを挟んで一人がけの椅子が向い合う席に向かう。背負っていたバックパックを下ろして相棒三姫とモバイル PCを取り出し、テーブルに用意されたインターフェースと接続して起動させる。ネットワークに繋がると自動でブラウザに認証画面が表示される。

「認証、認証。」

ここでもオーナーズカードをPCのカードリーダーに翳して認証に利用する。認証が通ると神姫タワーユーザーポータルが表示される。その中から、対戦待ち神姫リストを表示させる。

「面白い娘いるかしら?。」

「はい、ピーチソーダ。それからお前さん好みの神姫なら・・・そうそれ。」

ブラウザに表示された対戦待ち神姫リストの中から一姫を指差す。

「おぉっ、またトンガッタ装備だねぇ~。コンセプトはなんだ?。」

「実際に聞けばいいじゃない?誰が出る?アタシ?。」

「いってらっしゃい。」

「武運を。」

「決まりだな。」

相槌を打ちながら対戦申し込みをすませ、ピーチソーダに口を付ける。支払いも当然オーナーズカードで管理される。

「美味いwサンキュ不良店員さん。」

「あいよ・・・ところで何時までそのランクに居座る気だ?。」

「面白い装備の神姫が存在しなくなるまで。」

「あっそ。上に行かんとアチーブ取れんぞ?。」

「知った事か。俺の美学を引っ込めて取りに行く程、魅力を感じないね。」

店員は肩を竦めながら立ち去っていく。

「おし、返事もきた事だし、行くぜ相棒っ。」

「フン、任せなさい。」

 

バトルエリアに降りて対戦を行う筐体に着く。

「装備はどれで・・・って聞くまでも無いわね。」

「おうよ、似合ってるぜ相棒。」

「フン、とーぜんよ。アタシを誰だと思ってるの。いくわよっ!!。」

 

READY FIGHT

 

「せぇぇぇぇやぁぁぁぁっ!!。」

 

「・・・まぁ負けた訳なんだけどアタシを慰めもせず、向こうのマスターに装備のコンセプトや、ポイントを根掘り葉掘り聞いてるってのはマスターとしてどうなの?。」

「成る程~こういう装備のさせ方があったかぁ。目から鱗だね。」

「寧ろこれが無ければ偽者だろ。」

「・・・ははは、まぁまぁ落ち着いて。」

満足したのか彼が戻ってくる。

「個性全開のいい神姫とマスターさんだったな。」

「・・・グレていいかしら?。とはいえ、いい相手だったのは事実ね。美学を感じる装備だったわ。」

 

ラウンジに戻ってからも暫くは対戦待ちリストやスクリーンショット掲示板を眺めていた。

「さてっと、そろそろ帰ってジオスタでもやりますかね。」

「本来の戦場に戻るわけか。」

「1階のショップは寄る?。」

「いいんじゃない?少し見て行きましょう。」

 

エレベータで1階に降り、フロアをしばらく物色し気に入った商品でもあったのかレジへ向かう。

「以上、2点で1,050円になります。オーナーズカードを確認させていただきます。」

「ほいほい。」

紹介が遅れたが、彼は「お気楽極楽お手軽がモットー」、「それぞれの神姫に似合う装備こそ正義」、「勝利なんて二の次、三の次」、「スクリーンショットには詩を添えて」等と一風変わったスタイルで活動している変わり者の神姫ユーザ、登録オーナー名を・・・。

「確認いたしました。オーナー名、万年睡眠不足様ですね。ご利用ありがとうございました。」

万年睡眠不足と言う。

 

 
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