No.540804

僕は友達が少ないNEXT 死スターウォーズ

ケイト先生登場を記念してのお話。

コラボ作品
http://www.tinami.com/view/515430   
俺達の彼女がこんなに中二病なわけがない 邪王真眼vs堕天聖黒猫

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2013-02-06 20:33:41 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2690   閲覧ユーザー数:2568

僕は友達が少ないNEXT 死スターウォーズ

 

 

「なあ、誰がお兄ちゃんの本当の妹なのか。そろそろ雌雄を決する時がきたんじゃね。ゲッ」

 隣人部部室がある礼拝堂側のベンチにだらしなく座る美少女シスターは盛大にゲップをかましながら理解不能なことを尋ねてきた。

「ケイト先生。春はまだ半年も先ですよ」

 夏休みが終わり段々と秋へと近づくこの季節。春特有のアレなことを言い出すのにはとても時期外れだった。

「お兄ちゃんよ。私は真面目に提案しているんだよ」

「尻を掻きながら真面目って言われてもな……」

 15歳のグラマラスな美少女シスターは色々な意味で斬新過ぎるが、この学園の先生でもあった。マリアもそうだけど年下だけど先生、しかもお兄ちゃんと呼んでくる先生とどう対応したものかよく分からない。

「いや、だからね、ゲッ」

「コーラ飲み終えてから喋ったらどうだ?」

「こんな話をシラフでできるかっての、ゲッ」

「アルコールじゃないんだからコーラ飲んだって酔っ払うわけがないでしょ」

 こんな風にとにかく扱いに困る。信じられないだろうが、ケイト先生は生徒たちに人の道、倫理を説いている。

そんな意味不明の彼女はよく分からないことを重ねて述べてくれたのだった。

「いやさ、お兄ちゃんに3人も妹がいるのは倫理的にどうかなって思うのさ。世間体を考えるとマズいんじゃないの?」

「マズいのはケイト先生の頭の方だろ」

「だって、妹と言ったらお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ったり、お兄ちゃんの前でパンツも脱いで見せつけながら着替え始めたりしちゃう存在だろ?」

「いや、それはどうかと……」

 何気なくケイトから視線を逸らす。確かに小鳩とはそういう生活を送ってはいる。でもそれは兄妹の一般的な姿ではないことぐらいは俺も知っている。だから肯定はできない。

「で、お兄ちゃんとしては段々大人になっていく妹にイケナイと思いつつ欲情して、遂には一線を越えちゃうでしょ」

「越えねえよ。越えてたまるか!」

 俺と小鳩がそんな関係になるなんてことあってたまるものか。

「それで、お兄ちゃんは責任を取って妹と結婚するっていうのが一般的なセオリーじゃん。ゲップ」

「そんなセオリー世界のどこにも存在しないっての」

「でも、昨今結婚率が低下しているのって、兄と妹が事実婚状態になって、法律上では籍を入れられないからってインターネットで読んだんだけど」

「そんなサイトは今すぐ閉鎖させろ」

「天才マッドサイエンティスト・Σ(シグマ)サイエンスって人のサイトなんだけど、ホモの急増と妹婚(シスコン)の増加で結婚率低下は全部説明できるって」

「Σサイエンス……あいつかぁ~~っ!!」

 部活動の後輩の天才マッドサイエンティスト少女の顔が脳裏に思い浮かぶ。

 MMR並のトンでも説明かましてくれてえらい迷惑だ。大体アイツは根っからの理系で文系は普通の生徒並みの理解力しかないのになんて恐ろしい真似をしてくれるんだ。

「そんなわけで、小鳩ちゃんだっけ? お兄ちゃんの実の妹と、マリアと私。3人も妹がいるのはどうかと思うんだよねえ。お兄ちゃんだって3人の妹を一生養うのは大変でしょ」

「俺的にはケイト先生の話のどこにツッコミを入れればいいのか。それを探す方が大変なんだが」

 ケイト先生は本当に妹を何だと思ってるんだ?

「そんな訳でお兄ちゃんは妹を1人に絞るべきだと私は思うわけよ」

「絞るもなにも俺の妹は小鳩1人なんだが?」

 マリアもケイトも俺をお兄ちゃんと呼んでいるだけだ。妹的存在かも知れないが、妹ではない。

「で、私をお兄ちゃんの妹にするのが人の道として一番正しいと思うんだわ」

「正しくねえよ」

「ほらっ、私ってスタイルは結構いいじゃん。小鳩ちゃんやマリアを妹にすると犯罪っぽいけど私ならお兄ちゃんと丁度釣り合いが取れると思うんだわ。ゲッ」

 ケイトは15歳にしては凄く立派な胸を触ってみせながら熱っぽく語っている。ゲップは忘れないので色っぽくはならないが。

「小鳩やマリアが妹だと犯罪っぽいという点について見解に相違があるんだが」

「それにほらっ、私はお兄ちゃんと血が繋がっていない義理の妹じゃん。正式に結婚もできるから将来子供がパパとママはどうして籍入れてないのって聞かれることもない。だから私を妹にするのが一番だって」

「うん。話し合いの余地がないことだけはよく分かったさ」

 ケイトはコーラで酔っ払っている。もうそういうことで答えとしておこう。

 

 

「じゃあ、私をお兄ちゃんの正式な妹に……」

「あんちゃんの妹はウチだけなんじゃ~~っ!」

 突如ケイトの話を遮断する大声が周囲に木霊する。振り返ると中学の制服姿の小鳩が涙目でご立腹していた。

「あんちゃんの妹は天上天下唯我独尊ウチだけなんじゃ。アホぉ~~~~っ!!」

 小鳩はケイトに怒りの視線を送っている。でも涙目だから子供の駄々っ子のようにも見えてしまいちょっと微笑ましい。

「出たね、小鳩ちゃん」

 ケイトは小鳩を見ながらニヤッと笑みを浮かべている。

「ウチが世界で唯一のあんちゃんの妹なんじゃあっ!」

「フッ。ただ血が繋がっているというだけで妹を気取るのはちょっとどうかと思うんだけどなあ」

「いや、血が繋がっていれば妹だろう」

 ケイトの中で妹の定義がどうなっているのか気になる。

「あんちゃんの妹はウチなんじゃっ! ずっとずっと一緒に過ごしてきたのはウチだけなんじゃ!」

「小鳩ちゃんのそれは兄独占禁止法に抵触する行為なんじゃないかなあ? みんなのお兄ちゃんを独り占めするなんて。ゲッ」

「さっきケイト先生は妹は1人に絞るべきだと力説していなかったか?」

 この酔っ払いはもう論理的思考ができなくなっている。

「まあそんなわけでお兄ちゃんの妹を私に譲って欲しいってわけよ。ゲッ。お兄ちゃんの赤ちゃんを、産むのが妹の役目なんだし」

「あんちゃんの赤ちゃんを産むのはウチなんじゃあっ!」

「小鳩も酔っ払いに付き合って変なことを言わないの」

 ケイト先生の変な菌が妹にまで感染してしまった。

 

「ぎゃっはっはっはっはなのだ」

 甲高い子供の笑い声が周囲に響き渡る。

「うんこババアがお兄ちゃんの妹を名乗るとは1億万年時期を逸した神をも恐れぬナンセンスな所業なのだ」

 ケイトの実の妹、高山マリアは両手を腰に当ててふんぞり返りながらケイト先生を見て笑った。

「いいか、うんこババア。妹ってのは、お兄ちゃんよりも年下じゃないとなれないのだ」

「私はお兄ちゃんよりも年下だぞ。まだ15歳だし」

「へっ?」

 マリアの顔が呆けた。

「だって、うんこババアはババアなんだからお兄ちゃんより何倍も生きてるんじゃ?」

「私をババア呼ばわりしているのはマリアだけだ。私はピッチピッチの15歳。学校通っていれば高校1年生のヤングウーメンだ」

 中身は中年親父だけどなと心の中で付け足す。

「そんな訳で私はお兄ちゃんの妹候補の1人であることは間違いない」

「そんな候補は募集してねえよ」

「私がお兄ちゃんの妹になれば、マリアもお兄ちゃんの義妹になれるぞ」

「訳が分かねえよ」

「おぉおおおおおおぉっ」

「マリアもそんな意味不明な話に付き合うんじゃない」

「だが断るのだ!」

 ビシッとマリアはケイトに言って返してみせた。

「何故だ妹よ? 私がお兄ちゃんの妹になればマリアも一生お兄ちゃんの義妹になれるんだぞ。ゲップップ」

「うんこババアはババアだから一番肝心な所が分かっていないのだ!」

 おおっ! 今日は何だかマリアが頼もしく見える。まるで先生みたいだ。

「妹とは自然になるものではないのだ。自らの力で勝ち取ってなるものなのだぁ~~っ!」

 バーンとケイトに指を突き刺すマリア。

 頼もしいと思ったのは俺の勘違いだった。

「生まれた時から妹になれるなんて大きな思い上がりなのだ!」

「ウチは生まれた時からあんちゃんの妹なんじゃあ」

 小声で少し自信なさげに訴える小鳩。この場合、小鳩の言うことの方が正しい。小鳩は生まれた瞬間から俺の妹だった。いや、順番的にそうなるだろ。

「だからわたしは全力を尽くしてお兄ちゃんの妹になってみせるのだあっ!」

 マリアは小鳩を指差しながら堂々と宣言する。続いて俺の方へと視線を向け直す。

「わたし、お兄ちゃんのこと大好~~~~きっ♪」

 そして俺にジャンプしながら抱きついてきた。

「お兄ちゃん好きって言うなぁ~~~~っ! あんちゃんはうちのもんなんじゃ~っ!」

 小鳩はコアラのように引っ付いているマリアを力尽くで引き剥がしに掛かる。

「どうだ、お兄ちゃん? 3人の妹がお兄ちゃんの妹の座を巡って争っているんだぜ。ここは男らしく妹を1人に、ゲッ、決めるべき時なんじゃねえか?」

「だから俺の妹は小鳩だって何度言ったら……」

「よしっ! 誰がお兄ちゃんの真の妹か決めるシスター・ウォーズを開催するぞっ!」

 俺の抗議を無視してケイト先生はとてもはた迷惑な提案を行ってくれた。

「望む所なのだっ! お兄ちゃんの妹はうんこババアでもうんこ吸血鬼でもなくこのわたしなのだっ!」

「神の使いどもはあんちゃんに近付くんじゃなか~~っ!」

 こうして小鳩という妹がいるのにも関わらず、真の妹を決める戦いが繰り広げられることになった。

 本当、どうすりゃいいんだ、俺は?

 

 

 

「というわけで決戦の地であるお兄ちゃんの家に、ゲップ、やってきたぞ」

 うちのリビングで尻を掻きながらケイト先生がここが決戦の地であることを告げてくれた。はた迷惑な話だった。

 荒らされなければいいなあ。まあ、この家に住んでいるのは俺と小鳩だけなので汚くなろうとも文句は言われないのだけど。

「神の使いどもはさっさと帰れっ! お前らがいると家が汚れるんじゃっ!」

「きゃっはっはっはっは。うんこ吸血鬼が馬鹿なことを言っているのだ。神の使いがくれば家は浄化されて住み良くなるのが道理なのだあ」

「うっさいっ! 馬鹿っ! ウチは吸血鬼じゃけん。浄化された空間に住めるわけがないんよ。それぐらい分かれ!」

 ギャーギャーとうるさい年少組。こっちはいつもの光景。

「お前なんかこの間みたいにギッタンギッタンにしてやるじゃけん!」

「おっ! 前のゲームで再戦するつもりなのだな。受けて立ってやるのだ!」

 2人はゲーム機を持ち出して格闘ゲームを始めてしまった。

 

「なあ、何かゲーム大会が始まったんだが、あれはいいのか?」

 大股でソファーに座って他人の家とは思えないくつろぎぶりを披露しているケイト先生に尋ねる。

「いいんじゃねえの。小鳩ちゃんと、ゲップ、マリアが楽しんでるならさ」

 鼻くそまでほじり始めやがった。それでいいのか、15歳シスターよ。

「まっ、私はしばらく高みの見物させてもらうよ。お兄ちゃんも座ってれば?」

「そうだな」

 俺もケイトの隣に座って2人のゲーム対決を眺める。

「なっ、なんかこの間よりこのうんこ吸血鬼、強くなっているのだあ」

「クックック。我が闇の力を発動させればこの程度の実力を発揮するなど造作もないこと」

 2人はギャーギャー騒ぎながら楽しそうに戦っている。

「実はさ、私ってマリアが楽しそうに遊んでいる所をほとんど見たことないんだよねえ」

 口うるさいけれど、実は重度のシスコンであるケイト先生は2人を眺めながら感慨深く眺めた。

「遊んでもらってるじゃなくて、同レベルで一緒になって遊んでいるっていう場面では初めてかも」

「そっか」

 俺の前にいる時、マリアはいつも笑顔だ。

 だからケイト先生の語るマリア像は俺の実感とは合わない。

 でも、ケイト先生はマリアの教育方針のことでずっと悩んでいた。

 だからこの光景を見せてあげられたのは意味があるのかも知れない。

「こりゃあ、お兄ちゃんだけじゃなく小鳩ちゃんにも感謝しないとねえ」

 ニヤッと笑ってみせるケイト。

「どうだい? 私を妹に選んでくれるのなら羽瀬川兄妹に一生懸命ご奉仕するメイド妹になってあげるぞぉ~」

「その話、まだ続いてるんだな」

 ちょっといい話になったからもう流れた話かと思った。

「そりゃあ、ゲップ、続いているさ。お兄ちゃんの妹になって、お兄ちゃんが高校を出たら妹兼お嫁さんになるんだから」

「……まあ、なんだ。仮にケイト先生が俺のお嫁さんの座を狙っているのだとして、妹になるという過程は必要なのか?」

 顔が赤くなるのを感じながら問う。

 冗談だと分かっていてもこんな美少女にお嫁さんになりたいと言われると緊張せずにはいられない。

「だってお兄ちゃん、理事長の娘さんと婚約してんでしょ?」

「あっ」

 そう言えば星奈のお父さんである理事長とケイト先生は個人的に繋がっているんだった。

「いや、別に俺と星奈は……」

 理事長の単なる勘違いなのだが、乗り気になられてしまって俺としては対処に困っている。

「婚約者のいる男を奪うには妹婚しかないってΣサイエンスは熱く訴えていたからなるほどって思ってねえ」

「理科ぁああああああああああぁっ!!」

 はた迷惑な嘘話をまき散らす後輩の存在に涙する。

「まっ、そんな訳で私としてはお兄ちゃんの妹になることは必要不可欠な条件なのだよ」

「俺と星奈はそんなんじゃないよ……多分」

「煮え切らない所が、如何にもお兄ちゃんらしいなあ」

 ケイトは俺に寄り添って首を肩に預けてきた。

 彼女の体温と柔らかい肌の感触、そして髪の毛のいい匂いが俺へと伝わってくる。

「ほっとけっての」

 ケイト先生から顔を背ける。

 右肩に掛かる彼女の体重を感じながら小鳩とマリアの対戦を眺めていた。

 肩の重みが温もりが心地良く思えた。

 

 

 ケイト先生と2人で準備した夕食が終わった。

 ガサツなイメージの強いケイト先生だが、料理はかなり繊細な腕前を持っていた。ちょっとライバル意識を燃やしてしまったぐらいだ。

「ほらっ、マリア。ちゃんと野菜を食べなさいっての」

「うっせぇ、うんこババアっ! お肉さまがあるんだから肉を食べるのが当たり前なのだ!」

「なら、力業で食べさせるまでっ!」

「ぎゃぁああああああぁっ!?」

 マリアが嫌いな野菜を食べさせる為に加工にこだわった結果のようだった。一口サイズに裁断された野菜が次々にマリアの口に入れられていく。

 シスコンケイト先生にとってマリアの為に料理の腕を磨くのは当然のことだったのかもしれない。かくいう俺も小鳩に好き嫌いさせないように野菜の調理法には随分とこだわっているからな。

 そんなこんなで夕食は賑やかな雰囲気の中で終わった。

 食後、マリアはすぐに居眠りモードに入ったので今回もまた泊まっていくことになった。

 ただ、前回とは大きく違う所がある。

「フッフッフ。妹婚の絶好の機会到来だねえ。ゲッ」

 今回はケイト先生も一緒にお泊まりだという点だ。

 まるで小鳩誕生日イベントを先取りしたかのような展開だった。

 

「さあ、お兄ちゃん。マリアも眠ったことだし、一緒にお風呂に入ろう。兄と妹なら一緒にお風呂は当然のことでしょ?」

 後はお風呂に入って寝ようという流れになった所でケイト先生はすごいことをのたまってくれた。

「当然という単語の使い方が激しく間違っているっての」

「あんちゃんと一緒にお風呂に入っていいのは本妹のウチだけなんじゃっ!」

「小鳩ももう中学2年生なんだし、そろそろもっと恥ずかしがった方がいいのかなあ?」

「フッ。小鳩ちゃん。先ほども言ったけど、血が繋がっているというだけで妹を名乗れると思うのは大きな間違いなんだよ」

「ウチが一番あんちゃんの妹を上手に操れるんじゃ~~っ!」

「なら、お風呂で勝負だね」

「望む所じゃ!」

 こんな感じに売り言葉に買い言葉で会話が続いて……。

 

「これ、なんてエロゲな展開なんだよ?」

 目の前に広がる羽瀬川家の浴室。

「お兄ちゃんの妹たる者、おっぱいが大きくないとねえ。ゲップ」

「あんちゃんは小さい方が好きなんじゃ~~っ!」

 俺の横に立つバスタオル姿のケイトと小鳩。

 俺は2人の妹と入浴することになっていた。

「お風呂でお兄ちゃんにご奉仕してより高い評価を得た方が真の妹ってことで、ルールの確認は良いよね?」

「ウチがあんちゃんの喜ぶことは一番よく知ってるんじゃ~~っ!」

 ケイト先生はニタニタ笑いながら、小鳩は犬歯を剥き出しにして怒りを露わにしている。

「なあ、ケイト先生」

「何だい?」

「シスターとして、先生としてこの展開はどうかと思うんだが?」

 この状況、学園を揺るがすスキャンダルなんじゃないだろうか?

 女性教師が男子生徒と一緒にお風呂ってのは。

「流されるままにお風呂場までついて来ちゃったお兄ちゃんに何か言う資格はないと思うよ~」

「俺の入浴の順番にお前らが突然乱入してきたんじゃないか」

 体を洗おうとしたらバスタオル姿の2人が突然浴室の中に入り込んできたのだ。

 決して、俺が望んでこの状況になっているのではない。

「まあ、細かいことはどうでもいいじゃん」

「いや、俺の尊厳の為に良くない」

 ただでさえ不良のレッテル貼られてるってのに、この上シスター先生を妹扱いしてお風呂まで一緒に入っているなんて噂を立てられたら……確実に俺の社会的生命は死ぬ。

「まあ、とにかくご奉仕勝負を始めるよ」

「ウチは負けん!」

「俺の抗議は結局無視ですか。そうですか……」

 ちょっと悲しい気分になる。

「じゃあ、私の攻撃から行くよ」

 言うが早いか……ケイト先生は体に巻いていたバスタオルを取った。

「へっ?」

 俺の目の前に晒されているケイト先生の一糸纏わぬ姿。

 星奈ほどじゃないけどすごく大きくて形の良い胸。

 夜空よりも更に白い肌はまるで雪のよう。その雪の最中に2つのピンクが……って!?

「なっ、なっ、なっ、何をしてんだよ、アンタはっ!?」

 怒鳴りながら慌ててケイト先生から目を背ける。

 先生を見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ。見続けると、大変なことになってしまう。

 どこが、とは言えないが。

「いや、妹がお兄ちゃんを落とすには裸を見せて欲情させるのが一番だってΣサイエンスが書いていたからさあ」

「理科ぁあああああああああぁっ!!」

 目を瞑りながら後輩の悪魔の所業に涙する。

 グッジョブ!

 じゃなくて、何て反社会的な解説を垂れ流してやがるんだ。

「あっ、あんちゃんっ!」

 小鳩が俺の手を引っ張った。逃がしてくれるのかと思い、そっと目を開ける。

 するとそこにはケイト先生と同様にスッポンポンになった小鳩の姿があった。

「フッ」

 マリアと比べても凹凸が少ないその体のラインは見ていると俺をホッとさせてくれる。

 小鳩は本当に小学生体型だなあ♪

「あんちゃんのその安心しきった顔。何か悔しいんじゃ」

 ムスッとした表情を見せる小鳩。

「おっ、お兄ちゃんのその聖母様のような澄み切った表情。やっぱりお兄ちゃんは本物のシスコンでロリコンなのかっ!?」

 俺の背中で声を震わせながら驚くケイト。凄い誤解が進行している気がしてならない。

 俺は単に小鳩のような体型なら性的なものを感じずに済むと安堵しているだけなのに。

「お兄ちゃんは私の手で正しい道に戻さなきゃならないねえ。こうなったらΣサイエンスが唱えていた禁断の奥義、私の体でお兄ちゃんの体を洗ってあげる作戦を発動するしかない。ゲッップ」

 ケイトの声がして背中にとても柔らかいものを感じた。

 プニョンとしたそれが何の感触なのか、怖くて確かめることはできない。

 いや、確かめなくても予想がついてしまっていたから。

「ウチも同じことをして対抗するんじゃあ~~っ!」

 小鳩が正面から抱きついてきた。

 ペッタンコな胸が俺の腹に押し付けられる。

 小鳩がケイト先生の真似をしているということはやっぱり……。

「うん? 何か固い感触が? 普段と違うんじゃ」

「この勝負……引き分け~~~~っ!」

 俺は大声でこの勝負の結末を叫んだ。

 もう、限界だった。

「ユニバ~~~~~~スっ!!」

 泣きながら全力疾走で浴室を出ていく。

 夏休み中に星奈が泣きながら全裸で全力疾走して去った気持ちが俺にもようやく分かった。

 自室に戻った俺は鍵を掛けて泣きに泣いた。

 羽瀬川小鷹17歳。

 見た目に反してとても純情で小心者なんです。

 それをもっと世間に理解してもらいたいです。

 

 

「いやぁ~昨日はグッスリ眠れて気持ち良かったのだあ」

 翌朝、たっぷりと睡眠を取ったマリアはツヤツヤした顔を見せていた。

「お兄ちゃんは元気なさそうだけど、大丈夫なのか?」

 マリアは俺の顔色が優れないことに気が付いて声を掛けてくる。

「泣き疲れただけだから心配しないでくれ」

「どうして泣いたのだ?」

「お兄ちゃんは……色々大変なんだよ」

 それ以上の詳細は10歳児には語れるわけがなかった。

「いやあ、お兄ちゃん。昨日はごめんごめん」

 一方でケイトはまったく悪びれもせずに形だけ手を合わせている。

「ああいうのは、もう勘弁してくれよ」

 ケイトの顔を見ると昨夜の風呂場での出来事を思い出してしまう。

「お兄ちゃん、思ったよりもヘタレだったからねえ。色仕掛けは効き目が強すぎることは分かったよ」

「ヘタレは余計だ……」 

 やっぱり俺は見た目ヤンキーなだけで、その内実はヘタレなのだろうか?

「今日からはちょっとだけ純情系の妹路線で攻めることにするさ」

「妹設定をまだ続けるのかよ?」

「お兄ちゃんがお兄ちゃんである以上、止めるわけにはいかないでしょ」

 ケイトは白い歯を見せながら笑ってみせた。

「そんなに妹にこだわらなくても良いだろうが」

「チッチッチ。分かってないなあ、お兄ちゃんは。妹道は1日にしてならずなんだよ」

「お前は姉だろうが」

 ケイト自身、妹のマリアが気になって仕方がない完璧な姉属性の持ち主だと言うのに妹にこだわらないで欲しい。

「姉としては毎日生きているからねえ。これからは新しい生き方も模索してみたいんだよ」

「なら、真面目にシスターやっていたらいいんじゃないのか?」

「馬っ鹿だねえ。お兄ちゃんの妹だから人生に張りが出るんだよ」

 豪快に笑い始めるケイト。

「う~~っ! あんちゃんの妹はウチだって昨日から何度も言っているのに何で聞かんのよ!」

 ケイトに対抗心を燃やす小鳩。

「にゃっはっはっは。うんこババアがお兄ちゃんの妹なんてやっぱり片腹痛いのだ。お兄ちゃんの妹は、お兄ちゃんのことが一番大好きなわたしに決まっているのだ。お兄ちゃん好き~~♪」

 マリアが抱きついてきた。

「あ~~っ! またあんちゃんに抱きついて~~っ! それに、あんちゃんのことが一番好きなのはウチなんじゃ~~っ!!」

 小鳩も抱きついてきた。

「やれやれ。これはお兄ちゃんの真の妹として私も負けてられないね~。お兄ちゃん、愛してるぜ~~っ」

 ケイトまで抱きついてきた。

「俺にどうしろと……?」

 3人の”妹”に抱きつかれて立ち往生する俺。

 だけど3人の妹たちに好かれて悪い気分は全然しないわけで。

「まあ、妹に好かれるお兄ちゃんでいないとダメだよな」

 3人の好意を裏切るような人間にはならないように心がけよう。

 そう心に誓った。

「やっぱりお兄ちゃんは……最高のお兄ちゃんだな」

 ケイトは俺の顔を見ながら楽しそうに微笑んだ。

 

 

 了

 

 

 

 


 
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