No.535336

〜なんとなく 壊れている自分 the origin 2008〜

夢で見た事や思いついた文字を羅列している詩集…と言うより散文集です。以前ブログにて掲載していたものをこちらに転写しました。
下に行く程古く、上に行く程新しいものです。
無駄に量があるので時間が余りまくってる方、どうぞ(笑)

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続きを表示

2013-01-23 21:35:03 投稿 / 全22ページ    総閲覧数:701   閲覧ユーザー数:701

2008.12.26

「さよならヒーロー」

 

あの戦いから何十年が過ぎたのか…

私も随分と歳を取り 老いぼれたものだ

あの頃のスーツは未だに残ってはいるが

あの日受けた傷

ボロボロになった左腕はそのままだ

気が向いて

再びスーツに腕を通した時

あまりの似合わなさに苦笑した

 

どのくらい昔の話だったか…

覚えてはいない

私は この街を守る為に戦ってきた

何と戦い 何を救おうとしていたのか…

それも覚えてはいない

 

ただ 遠い昔に私は戦っていた

周囲を見返す事もなく ただ必死に戦ってきた

 

動かなくなった左腕だけが 確かに戦いがあった事を指し示しているだけだ

 

雑居ビルの2階

やけに古びた喫茶店の窓際に座り

眼下に広がる商店街を見遣る

妖しい露天商が店を広げ

『混沌(カオス)』を擬人化したような

そんな群れが流れている

 

どうだい?

私がいなくなって

時間は 人々は

こんなにも普通に流れている

 

動かなくなった左腕を抱え

コーヒーをすすりながら物思いにふける

 

私の戦いは何だったのだろうか?と…

 

 

2008.12.23

「神様は来なかった」

 

今日はお参りの日だ

薄暗い山の奥

神社の長い階段の前には人だかりが出来

夜店やら何やらが妖しい品物を売りつけていて

物陰に浮かぶ 輪郭がぼやけた人達も 何やら迷惑そうな顔をしている

 

人の群れに酔いそうになった僕は

薄暗いその場を後にし

少し遠回りになるけれど 向こうの畑から

お参りに行く事にした

 

青空の下

どこまでも続く麦畑

そこに伸びる道はどこまでもどこまでも

山頂にある神社へと伸びている

 

急な坂道を

僕は息を切らしながら上ってく

畑には等間隔に並んだ様々な鳥達が

僕が通るのを無視するかのように

山頂だけを眺め続けている

 

そうしてやっと

今まで上ってきた坂道よりも

まだ長いのではないかと思われる程

巨大な黄金の扉が現れた

けれど僕は その巨大な扉を開ける術は無く

立ち尽くしていると

左側から 神主さんらしき 頭を丸めた男が現れた

 

おいでおいで 神様はこっちだよと

その巨大な扉の影に隠れていた小さな小屋に通される

そこのあったのは 肩から上の部分の巨大な石像だった

顔の大きさだけでも 僕の身長の2倍はありそうだ

 

神主さんは言う

ご覧の通りさ

うちの神様は 今はこんな状態だ

下界に降りたくても下りられず ここでジッとしているより他に無い

昔は身体もあり 足もあり 自らの意思で動き

時々下界に下りていたらしいんだ

私はその事を知らない 知る由も無い

私が生まれてきた時に 既に神はこの状態だったのだから

 

割と重要そうな話を 神主さんはサラリと言いのけて肩を竦め

その脇にいた観光人らしき人が その石像に向かってシャッターをしきりに切る

そこに 本来神が持つ轟々しさを

僕は感じる事が出来なかった

 

酷く落胆し 疲れた足を引きずりながら

僕は今来た道を引き返していた

先程までジッとしていた鳥達は 何も無かったかのように自由に飛び回っている

 

そうして戻ってきた

神社の前の長い階段

相変わらず人々は群れ 神がそこに来るのを待っている

 

いくら待ってても 神は現れない…

僕はその事を知っている

だが 僕がそう言った所で この人達は信用するだろうか?

 

僕は遠い目をしながら その観衆から離れるのが精一杯だった

 

 

2008.12.17

「でくのぼう」

 

真っ白い壁

その壁に連なる 謎の絵画 造形物

意味を成すかどうかも分からないその物体の中に

その男 でくのぼうと呼ばれた男がいた

 

顔は土煙で覆われて見て取れず

ただゆっくりと

その造形物の周りを歩くばかり

 

その上にある室内駐車場

まばらな車 薄暗く荒廃した雰囲気

そこに走ってきたのは一台の赤い車

適当な所に車を停め 女は下の部屋に駆け込む

 

女はでくのぼうと呼ばれる男の腕を掴む

早く行かなければと

急がせる女を無視するかのように

でくのぼうと呼ばれた男は 意味不明の木の彫刻の前から動こうとしない

 

フと 背後で大きな音がなった

そこに連なったトレーディングカード

コインのイラストがバチンと音を立てて破裂し

「勝負は付いたよご苦労さん」

そんな事を言いたげに

モンスターのカードが宙を舞っていた

 

でくのぼうと呼ばれた男は 全く動じずに木の彫刻を眺めつづけ

女は見開いた目で 破裂したコインのカードの残骸を見つめていた

 

そして

でくのぼうと呼ばれた男は それから動く事は無かった

女は見開いた目で ただゆっくりと 造形物の周りを歩き始めた

 

 

2008.12.12

「降り積もるのは偽りの雪」

 

全てが雪で閉ざされた この村に

教会の鐘の音が響き渡る

全てが雪で覆われ

建物も

人間も

家畜すらも無い筈の この村に

教会の鐘の音が響き渡る

 

これは鎮魂歌

この純白の白に覆われた この大地に この山脈に この空に

この場にある全てのものに

与えられた鎮魂歌

 

白く染まった天空から降り注ぐのは

真っ白な雪と 真っ赤な血

赤い血は大地を赤黒く染め抜き

真っ白な雪は それを覆うように降り積もる

 

教会の鐘の音が鳴り響く

純白であっても

純粋ではない

その降り積もる雪に対して

 

 

2008.12.8

「海の教室」

 

夕日が沈む

水平線の向こうに 夕日が沈む

 

赤く染まった 広大な空と

波一つ無い 広大な海

その上に等間隔に並んでいる 机 と 椅子

 

その様子から私は

ああ ここは教室なんだな

そう理解し

広大な海の上を歩いて 一つの机に寄り掛かる

 

目をつぶって

聞こえてくるのは波の音ではなく

校庭で遊んでいる生徒達の声

 

目を開く

どこまでも続く海

水平線の向こうまで並ぶ 机 と 椅子

整然と等間隔で並んでいるそれを見ていると

この学校のどこに 校庭があるのだろうと思う

 

それでも目を閉じて

聞こえてくるのは

さざ波では無く

校庭で遊んでいる生徒達の声ばかり

 

それが何故か

私に 寂しい と言う感情を抱かせる

 

 

2008.11.9

「GROTESQUE」

 

気持ち悪いよね

 

あの底抜けに明るい空

気持ち悪いよね

何も無く空っぽで その癖 僕を吸い込みそうで

 

あの森だって

気持ち悪いよね

全てを癒す顔をしながら

全てを覆い尽くし飲み込んでしまう

偽善者だ

 

人間って

気持ち悪いよね

その艶めかしい舌も ギロギロと動く瞳も

中に詰め込まれた血管も 内臓も

 

人間ってグロテクスだよね

 

歳をとっていくと

細胞は劣化し どんどん衰えてくる

ボロボロになっていくのが 目に見える

 

そのくせ 赤ん坊も可愛いと思えないんだ

成長するにつれて この子はどんどん汚れていき 劣化して行く

分かっているんだ

そのうち 嘘と 憎しみと 恐れを この子は覚えて行く

 

人間って気持ち悪いよね

僕も気持ち悪いよね

自分の事が 自分で何だか分からない

自分探し?

ここにいる自分は 自分じゃないって事?

気持ち悪いよね 自分がどこにいるか分からないなんて

 

そんな目で見ないでくれ

気持ち悪いから

その手で僕に触れないでくれ

気持ち悪いから

 

この世の全ては グロテスク

大気も大地も ビルも家も人も草木も

星空も月も 夜風も

何もかも

 

この地球と言う惑星そのものが

僕にとって 気持ち悪いものなんだ…

 

 

2008.11.2

「彷徨いドライブ」

 

何も無い 大海原の真ん中を

車に乗ってドライブする

 

何も無い大海原と晴天の下に

ポツンと1つのドアが立っている

 

ドアを開けて中に入ると

そこはどこかの水族館

薄暗い室内で

イルカが輪くぐりのジャンプを披露している

お客さんは …誰もいない

あるのは客席の代わりに大海原

そしてイルカがいるプール

 

そのプールの脇を通って

再び現れたドアをくぐると

更に薄暗い廊下が延び

左手には水槽が広がっている

 

進めば進む程

通路はどんどん暗くなり

水槽の魚達は姿を消し

全てが息絶える

 

気が付けば 闇の中に水泡が浮かぶのみ

プカプカと 生命体のように波打ちながら 上へ上へと流れて行く水泡のみ

私はそれに手を伸ばす

だが その水泡はどうやっても私の手では掴めない

 

…何をしているんだろう…

私 何をするつもりだったんだっけ?

そうよね ドライブしに来たんだったわ

そうしてずっとずっとずっとずっと走ってきた

 

私はどこに向かっていたのかしら?

私はどうしてこうなってしまったのかしら?

私は何なのかしら? どこに行くつもりなのかしら?

魚達は知っていた?

私の行く末 運命というものを

 

あのイルカ達も あの大海原も

全て無くなってしまったのかしら?

 

 

2008.10.16

「人生の立ち往生」

 

足を動かさず

僕は視線を右にずらす

そこには晴天の下に大海原がかすんで見える

 

正面に視線を戻す

そこには豪邸の一角だろうか

威厳を伴う廊下と その先に扉が見える

 

そうして視線を左にする

暗闇の中 柳の木がポツンと宙に浮いている様を見る

 

今度は視線を正面に戻す

そこには地獄の業火に焼かれた 沢山の人が見える

 

更に視線を右に動かす

今度はビル群の立ち並ぶ裏通り

細い道から 大通りを見ている

沢山の人が目まぐるしく動いているのが見える

 

……分かっている

…分かっている

 

きょろきょろしてても変わらない

足を動かさないと どこにも行けない事は分かっている

 

だけれど 一体どこに向かい 何をすればいい?

 

そもそも今の僕は

もし歩み始めたとしても

 

その程度で“前進”出来るのだろうか?

 

今の僕は 歩む事すらも出来ないんじゃないか?

 

恐れおののいた僕は 真後ろに視線をやる

そこには大きな肉食恐竜が 口を開けて僕を睨んでいた

その中にあるのは 紛れも無く 光すら殺すブラックホール

 

僕は 進む事も 戻る事も出来ずにいた

 

そうして正面に視線を返すと

樹海の真ん中に真っ白な鳥の姿を見た

 

 

2008.10.13

「廃虚の楽園」

 

男はがく然とした

 

扉の向こうに広がる 絶望としか言いようのない景色を

大地は砕けて空洞と化し 空の星は全て落ち

何も無い 闇の世界

 

私が全てを投げ捨て 追い求めていた景色はこれなのか…?

膝から落ち 頭を抱え 男は泣き叫ぶより仕方がなかった

 

全てを求め 全てを手に入れたにも関わらず

男には その幸福を実感出来なかった

 

そのうち“全ての人を幸せにする楽園”の噂を耳にし

全てを投げ捨て 楽園へと旅立ったのだ

 

金も名声も妻も子供も家も友も 何もかもを捨て

全ての思考 全ての肉体を捧げて 楽園を目指した

 

そうして目指した楽園の姿がこれだった

扉の向こうには うっすらと空虚な闇が広がるだけ

 

こんなものの為に 私は全てを捨てたのか…?

絶望にくれるそんな中 どこからか少女の声がする

 

“イキマショウ イッショ二 スクイヲ モトメテイルノナラ”

 

男が顔をあげると 見知らぬ少女が闇に浮いていた

にっこりとほほ笑みながら差し出された手を 男は何も迷いもなく握りしめる

もう 何もかもがどうでも良かった

 

そして そこから先の男の記憶は この空虚の闇と同じ程度しか無い

 

“貴方の罪を全て許し

この「監獄」と言う名の「大地」から

貴方を救ってあげる

今はよく眠りなさい

今はよく ネムリナサイ……”

 

 

2008.10.7

「溺れる青年」

 

青年は とあるホテルに向かっていた

そのホテルで 彼がデザインした内装を施してあると言うのだ

 

半信半疑で山道を上り

赤茶けた岩の上に立つ 高層ホテルに足を踏み入れるが

どの部屋に行っても

彼がデザインしたものなど どこにもない

 

青年は躍起になり

階段と言う階段を駆け上がり

ホテルの部屋と言う部屋全てを訪れてみたが

それでも尚

彼がデザインしたものなど どこにもない

 

そのうち

床のじゅうたんが青色になり

波のような模様がすっすらと浮き上がってきた

そのうち

部屋の備品全てが水に濡れ

テレビですら 噴水のオブジェのようになっていた

 

窓に目をやると

あれほどの階段を上ったにも関わらず

外に映る景色は 一面 水 だらけ

これは海なのだと 青年が理解するのにかなりの時間を要した

 

そうして

時間が経つにつれ

階段を駆け上がるにつれ

外の景色は 段々暗く険しくなり

部屋は何十年もの時間を経過したかのように 劣化し みすぼらしくなっていく

 

青年はもっと早く気付くべきだった

 

このホテルに 従業員の姿が無い事を

このホテルに 客が一人もいない事を

 

空恐ろしさを感じた青年は

やっと階段を下りる決意をする

上の階に自分のデザインがあるかも知れないと後ろ髪を引かれつつ

上の階に目をやりながら 身体だけ 足下だけを 階段の下に向ける

 

そうして瞳も やっとの思いで正面を向いた その瞬間

 

眼下に階段など無かった

眼下に客室など

ホテルなど 無かったのだ

 

目の前に広がるのは

嵐に荒れる大海原と

真っ二つに折れ もはや沈む事しか出来ない甲板

階段を駆け上がろうにも その階段ももはや無く

残されたのは 残骸と化した船長室と 甲板に転がる白骨だけ

 

風雨の中 白骨に足をすくわれ

青年は大声で泣き叫ぶ

しかし全てにおいて 気付く事が あまりにも遅過ぎた

 

もう 戻らない

時はどうやっても戻せない

青年の断末魔を残したまま

その船は ゆっくり海底へと舵を進めて行った

 

 

2008.9.23

「透明な人物達」

 

気が付けば

摩天楼のビル群立ち並ぶ道路

一人ポツンと佇むボクの姿

 

闇に覆われ

全て薄暗く陰気で

何も見えない…

闇の向こうに感じるのは 無数の窓をぎらつかせた

摩天楼のビル群

 

ボクしかいない

周囲にはボクしかいない

見渡しても 姿があるのは自分だけ

の 筈なのに

 

“何か”がそこにいる

ボクの周囲を取り囲む

 

目には見えない“何か”に包囲され

 

ボクは咄嗟に それを「敵」だと思った

何故かは分からないけれど

その見えざる存在を「敵」だとボクは認識した

 

やらなければ やられてしまう

だからボクは全ての力を出し

見えない連中を殴ろうと駆け出した

 

しかし 耳に入る轟音の後

吹き飛ばされたのは自分の方

 

見えない相手に一撃を食らい

ボクは地面に叩き付けられ

酷い息を吐きながら ふらふらと立ち上がる

 

ボクは前を見据える

両脇に並ぶ灰色のビルディング

相変わらず闇に覆われた世界がそこにあり

姿が見えない“敵”がいる

 

姿は見えなくても わかる

こいつらは

敵なんだ

敵なんだ

敵なんだ

敵なんだ

 

敵だから

敵だから

敵だから

敵だから

ボクは戦わなければいけない

 

ボクの周囲にいるのは まぎれも無く「敵」だけだから

 

 

2008.8.1

「壊れた世界」

 

目を閉じていても

目を開いていても

視界に入るのは ノイズの走る青く暗い画面だけ

 

目を開けても

目を閉じても

目の前に広がるのは 無機質なノイズの走る画面だけ

 

目の前に広がるのは ノイズの入る画面だけ

耳に入ってくるのは 無機質なノイズ音だけ

 

壊れたのは私?

それとも 世界?

 

分からない

分からないけれど

 

私の目の前に広がるのは

無機質なノイズの入る 青く暗い画面だけ

 

耳から脳髄にかけて広がるのは

チリチリ響く 無機質なノイズ音だけ

 

 

2008.7.8

「コワレタセカイ」

 

砕け散ったのは あの日の青い空

砕け散った青い空は 裂けて黒い膿を吐く

きっとこの世界には 青空すらも

きっとどこにも 存在しない

 

空にあるのは 黒い膿

大地にあるのも 黒い膿

手に取るものは全て焼け爛れ

何をどうする事も どうしようもない現実

 

砕け落ちた肢体を さも他人事のように見つめる私

ああ この膿に身を投げ出せば

私の望み「キエテシマイタイ」が叶うのかしら?

 

何度身を切り刻んでも 悲しい事に

まだ存在している私という“物体”

シニタイのではなく ただキエテシマイタイダケ

ウマレテキタと言う事実すらも無くし

ただキエテシマイタイ

 

砕け散った青い空は 裂けて黒い膿を吐く

きっとこの世界には 青空すらも

きっとどこにも 存在しない

 

ワタシノセカイはどこにも無くて

ただコワレテシマッタと言う事実だけがあって

 

ただイキテイクノガクツウと言う現実だけがあって

 

この黒い膿のように クツウダケガ ココロノソコニタマッテイル

 

空も壊れて 大地も壊れ

そうしてワタシのココロもコワレテシマッタ

なのに何故かソンザイシテイル ワタシトイウブッタイ

 

きっとこの世界には ワタシすらも

きっとどこにも 存在しない

そう言える日が来る事を こんなにもノゾンデイルノニ

 

 

2008.6.15

「さ よ な ら」

 

静かすぎる空 青い空

雲一つ無く 太陽すら無く

果てしなく広がる青い空

天国すら そこには無く

 

静かにピアノが鳴り響く

安らかな眠りにつけと

名も無き鎮魂歌(レクイエム)をかき鳴らす

 

君はどこに行ったの?

あの日以来

君の姿はどこにも無くて

 

果てしなく広がる青い空

天国すら そこには無く

果てしなく広がる緑の大地

冥府すら そこには無く

 

君は ねぇ どこに 行ったの?

 

僕は泣き叫ぶ 命の限り

ピアノの旋律も踏みにじり

君の名を呼び 走り続ける

 

海も山も川までも

大地も都会も大空も

 

僕は泣き叫ぶ 君の名を呼び続け

誰もいない大地を駆け

からっぽのビルの谷間を行く

 

ねぇ 君はどこに行ったの?

あの日以来 君の姿はどこにも無い

 

ねぇ みんなどこに行ったの?

あの日以来 みんなの姿も消え果てて

 

僕は泣き叫ぶ 君の名を呼び続け

からっぽの空を仰ぎ

からっぽの大地を駆ける

 

青白い空には 雲も 太陽も無く

広々とした大地には 風も吹かず 静かなまま

都会のビルは全てが空虚

海にあるのは後悔だけ

 

僕は泣き叫ぶ 君の名を呼び続け

 

あの日以来 君の姿はどこにも無い

 

ねえ

消えたのは 君の方なの?

 

それとも僕の方なのかな…

 

どっちがどっちに さよならを言ったのかな……

 

泣き叫ぶ気力すら無くし

茫然と立ち尽くす僕の周りを

静かにピアノが鳴り響く

 

安らかな眠りにつけと

名も無き鎮魂歌(レクイエム)を捧げ続ける

 

 

2008.4.5

「待ち合わせ場所」

 

目立つ銅像があるその場所は

メッカ待ち合わせ場所として有名な所

今日もあちらこちらで

来るか分からない誰かを待っている 人達がいる

 

当然の事ながら その人達は

待ち合わせている相手以外は完全にスルー

通行人はいてもいなくても一緒

ねぇ そうでしょう?

 

冷たい視線を当てて

お前等に用は無いんだよと

通行人に いらない人オーラを出している

ねぇ そうでしょう?

 

そうして実際 いらない 用の無い人達だから

ねぇ そうでしょう?

 

私は探しているの そこで待ち合わせている人を

もう何十年も何十年も探し続けているの

私を必要としている 私に用がある いて欲しいと思ってくれる人を

 

でも見つからないの

何十年も何十年も探したけれど

見つからないの

 

私はやっぱり いらない人なの?

ねぇ そうなの? ねぇ

 

 

2008.4.4

「奇跡の扉」

 

黒い空の下に広がる 荒涼とした大地

その灰と砂は 全ての生きる者を飲み込む

足下にあるのは大地では無く きっと誰かの御霊の骸

つかみ所の無いそれは お前の体もゆっくりと飲み干していく

 

開けなければならない

進む為にその扉を

それを開いて進まなければ

君もまた その灰と砂に飲み込まれ

酷くゆっくりと消えていく

 

すっかり疲弊し 立つ事も出来なくなった 奇跡の扉

血反吐を吐き 砂に埋もれかけている 奇跡の扉

取っ手は赤茶けて錆て朽ち 手で触れると崩れていく 奇跡の扉

 

それでも 尚

その扉を開けねばならない

奇跡を奮い起こし 立ち上げなければ

この世は全て無に返る

 

手をかける場所も無い 奇跡の扉

開ける為の手段も無く

ただひたすらドアを殴り 開けてくれと泣き叫ぶ

 

…ねぇ こんな世界なら

無くなった方がいいと思わないかい?

 

そう呟いた扉は 血を流し

心も固く閉ざしたまま

砂煙の中に立っていた 

 

 

2008.2.26

「侵食する本棚」

 

あるデパートの片隅の本屋が

周りのお店をゆっくりと吸収するように

大きくなっていく

 

雑貨屋だった場所が

みるみるうちに本棚に吸収され

 

洋服売り場だった場所が

みるみるうちに本棚に吸収される

 

一方的に増えた本に目をやると

いつ発行されたのかも分からない

古ぼけたマンガの本ばかり

 

誰にも必要とされていない筈なのに

そしてそのデパートには誰もお客さんなんかいないと言うのに

本棚は周囲を次々と吸収して行き

仲間達を増やしていく

 

片隅にいた黒い猫と

真っ白なアヒルが

退屈そうにハムなんかを噛りながら

その光景をぼんやりと見つめていた

 

そうして 天井も壁も 見る場所全てが本で埋め尽くされ

店主すらも飲み込んで

行き場を失った本棚は 苦しそうにガタガタと震え出す

 

黒猫はそれでもつまらなそうに にゃあと一声鳴き

アヒルはそれでもつまらなそうに ぐわっと一声鳴く

 

つまらないね

つまらないね

まるでそう言いたげのように

 

 

2008.2.15

「非現実的感覚」

 

真っ白な壁 真っ白な床

生活感が全く無い部屋の中

ポツンと右腕が落ちている

肩の根元からもぎ取られたようなそれを ボクは手に取ろうとして気付く

それは他成らぬ 自分の腕である事を

 

まるでぬいぐるみのような

精気を感じられないその右腕

ボク自身 それを目にするまで 自らの腕が無くなっている事すら気付かなかった

 

一滴の血も流れていない

一瞬の痛みすら無い

何故ボクの右腕がもぎ取られたのか

全くもって分からない

そんな大層な事ですら ボクはどこか他人事のように感じ取っていた

 

正直 どうでも良かったんだ

ボクの右腕が生えていようがいまいが

ボクが 生きていようがいまいが

全てが どうでも良かったんだ

 

真っ白な壁 真っ白な床

生活感が全く無い部屋の中

ボクの心もどこか真っ白で

生きていると言う感じが 何も沸かないんだ

痛みも驚きも絶叫も 絶句すらも

全ては白い壁の向こう側

 

 

2008.1.28

「想い」

 

薄暗い空の下 これが本当に空と言えるか分からない

寧ろ岩の天井だと見た方が適切だとおぼしき 黒い雲に覆われた空

 

その雲の 先に 本当に太陽があるのだろうか?

そう教えられてきたから そんな知識を持っているから

その暗い雲の先に 太陽があると思っているだけ?

 

本当に 本当に その先に太陽はあるの?

本当に 本当に 黒い雲の先は明るい世界が広がっているの?

 

引きちぎられた右の腕

不思議と痛みは無いわ だってもう必要が無いものだから

 

足下に広がる白いもの

これが雪でも氷でもなく 細かく砕けた骨だと言う事を

私は誰に教えられるともなく悟っている

 

得体の知れぬ 誰かの亡骸を踏み締め

私はどこに行くともなく彷徨っている

骨の砕かれる音を聞きながら ちぎれた右腕を抱きしめ

空ろな視線の先には 真っ黒な雲と 宙を舞う白と黄色の不思議な光

 

本当に 大人たちが言うように この雲の先には 太陽があるの?

私には到底信じる事が出来ない

そうよ きっと

その黒い雲の先には

空ろな闇が 広がっているだけだわ

 

 

2008.1.9

「散文」

 

黒でもなく 白でもなく

 

寧ろ灰色でも無い

 

俺は敢えて 無色透明 を選ぶ

 

 

2008.1.6

「理解不能の関係」

 

そうね

あなたとわたしは

住む世界が違うのね

 

分かってもらえなくていい

放っておいてもらえればいい

 

同じ時間 同じ場所 同じ空間で

全く違う世界が 流れている事

 

それだけを 分かってもらえれば幸い

 

 

2008.1.1

「仮想な現実」

 

沢山のペット達がいる裏路地を抜けた先

小さい白い建物が お目当ての施設

見た感じは 裏路地にぴったりの 小さな小屋

けれども中身は 超豪華商業施設

エレベーターで何十階もあるような 大きな建物

中に陳列されている品も それはもう沢山あるの

 

でも その全てがミニチュアサイズ

これが家具です これが壁紙です

これがチェストです これが全身鏡です

そう言われても 全てが手のひらサイズのボールみたい

実感が湧かない と言うより 無いの

 

でも店員は言うんだ

この世界は仮想空間だからね

この紙の上に そのボールを設置すれば 全ては完了なのさ と

渡された紙には トレーのように沢山の穴が開き

その穴には各種ボールが すっぽり収まるようになっているの

 

これで このカラーボックスは貴女のものになりました

これで このテレビは貴方のものになりました

そう言われるんだけれど 本当に実感が無いの

これが仮想と呼ばれるゆえんかしら?

 

そして3階にいた時の事

世界が大きく ぐらりと傾いた

高層で頑丈だった筈の建物が 飴のようにぐにゃりと曲がり

全ての景色が 一瞬 ゆがんだ

 

でも 私は慌てなかった

だって これは仮想の世界でしょ?

現実じゃない世界でしょ?

私が持っている 全ての家具も

私がいる このフロアも

そして私自身も

 

全て始めから無かったものなんでしょ?


 
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