No.534546

真・金姫†無双 #11

一郎太さん

という訳で、『戦う商売人』編改め、『頑張る一刀くん』編をお送りします。

ひと段落つくまで、また1日1話を目標に頑張っていくぜ。

どぞ。

2013-01-21 17:26:22 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:10322   閲覧ユーザー数:7604

 

 

 

#11

 

 

さて、やって来ました練兵場。店は2日前に閉めたし、食材も酒も使い切った。俺はそんなに酒を飲まないから、雪蓮と祭さんにご馳走してやったよ。勝負代金がその前払いと考えれば、プラマイゼロ……とまでは言わないが、まぁ、よしとしよう。

荷物も城に宛がわれた部屋に運び込んだし、戸締りもちゃんと……したよな?ちょいと心配になってきたな。

 

「あの、一刀さん……?」

「あ、あぁ……そうだったな」

 

第一声の通り、俺はいま練兵場に来ているのだ。隣には亞莎。俺達の前には、兵たち。これも仕事だし、こっちに集中するとしなければ。

 

「さて、この度、新しく将軍となった北郷だ。見て見りゃ何度も店に来ていた奴らもいるし、俺も呂蒙も自己紹介は必要ないだろう」

 

ニッと笑えば、兵たちの間にも笑いが零れる。甘い。甘すぎて糖尿になっちまうぜ、ボーイ達。

 

「だが、ここでは忘れろ」

「っ!?」

「「「「「――――っ!」」」」」

 

表情を一転。睨みを利かせる。亞莎・隊兵共にビクリと背筋を伸ばした。爺ちゃんの真似だが、効果はありまくりらしい。

 

「俺を気のいい酒屋の店主と思ってたら……お前ら死ぬぞ」

「「「「「…………」」」」」

 

黙っちまった。そんなに怖いか?だからお前達は甘ちゃんなんだよ。

 

「返事はどぉしたぁ!あ!?聞こえねぇぞ!」

「「「「「……お、応っ!!」」」」」

「声が小せぇ!反応が遅ぇ!てめぇら死にてぇのか、あ!?」

「「「「「応!」」」」」

「……それでいい」

 

掴みはバッチリだ。さて、何から始めようかね。

 

「……あぅぁぅ」

「亞莎まで泣きそうにならないでくれ……」

 

とりあえず、亞莎は無表情を通そうな。

 

 

 

 

 

 

「うぅ…緊張しました……」

「亞莎も武官になるんだったら、あれくらいは必要だぞ?」

 

調練を終えて部隊を解散し、俺は亞莎と共に城に戻る。

 

「おう、お疲れ一刀!亞莎もな。見ておったぞ」

「さ、祭様ぁ!」

「どうした、いきなり泣きついて」

「一刀さんが怖かったですぅ!」

「あー…確かに儂も怖かった……」

「おい」

 

いい感じに鬼軍曹やってたと思うんだけどなー。

 

「言っとくが、亞莎の指揮力も鍛えるから」

「ひいぃっ!?」

 

それはいいとして。

 

「さて、冥琳のとこに行くぞー」

「冥琳様、ですか?」

 

なんでまだビビッてんだよ。

 

「あぁ。雛里んの様子でも見に行こう。ま、心配しちゃいないがな」

「あ、はいっ!」

「おう、行ってこい。儂は自部隊の調練に行くぞ」

 

そう言って、祭ねーさんは俺達がやって来た方向へと向かう。逆に俺達は、祭ねーさんが来た廊下の奥に向かう。さて、もう1人の妹は元気にやってるかね。

 

 

 

 

 

 

「入るぞー」

「あぅ…失礼、します……」

 

そしてやって来たのは冥琳の執務室。初日という事もあり、今日はここで、雛里が色々と冥琳や穏に教えて貰う事になっている。俺の就任挨拶と調練も終わったし、こちらも終わっているだろうと訪れてみれば、俺達の視界には項垂れる冥琳と穏。真っ白になってるぞ。ジョーかコラ。

 

「どうした、雛里?」

「あ、お兄ちゃぁん……」

 

唯一表情の見える雛里はオロオロと冥琳・穏の間で視線を泳がせ、俺が声を掛ければ、泣きそうな声で駆け寄ってくる。

 

「2人はどうしたんだ?なんかすっげー落ち込んでるんだけど」

「あの、その…コレです……」

「ん?」

「雛里ちゃん、コレ何?」

 

雛里の視線を追って机に目を向ければ、正方形の木盤と、その上にはいくつかの彫刻。

 

「えと、象棋です…」

「将棋?」

「?」

「はい。この盤と駒を疑似戦場に見立てて、互いに駒を使って本陣を落とすんです。戦略の競い合いですね」

 

へぇ。俺の知ってる将棋とは違っていそうだ。

 

「冥琳様と穏様がこんな風になっちゃったのって、コレと関係があるの?」

「あの、実力を見させてもらう、って言われて…えっと……」

 

あぁ、そういう事か。

 

「実力を見るとかカッコつけておいて、雛里にボッコボコにやられた訳だな」

「あわわっ!?」

「ぐふっ!」

「はぁぅぅ…」

 

冥琳が吐血し、穏が情けない声を出す。

 

「こんな奴らは放っておいて、中庭に行くぞ、雛里」

「あわっ、いいんですか、お兄ちゃん?」

「雪蓮に誘われてな。1日目から忙しくても疲れるだろう、って。一服して休もう」

「でも、冥琳様たちは……」

「放置。こういう時はそっとしとくのが1番なのさ」

「あわわっ!?」

 

雛里を抱き上げ、扉に向かえば、服の裾を引かれた。

 

「どうした、亞莎?」

「あの、えっと……」

「あっ…」

 

口籠る亞莎の表情に、雛里は何か感づいたようだ。

 

「あの、お兄ちゃん。たぶん亞莎さんも……」

「ひ、雛里ちゃんっ」

「抱っこして欲しいんじゃ……」

「言っちゃダメ…って、言ってるし……」

 

なんだ、そんな事か。

 

「あうぅ…恥ずかしぃです……」

「ほら、亞莎」

 

俺は亞莎に背を向けたまま膝を曲げる。早く乗れ。俺達の主が待ってるぞ。

 

「えっと、いいんですか……?」

「抱っこじゃないが、許してくれ。でも兄貴は力持ちだからな。妹2人くらい訳ないさ」

「じゃぁ、お邪魔して……」

「よいっしょ、と」

 

左腕に雛里、背中に亞莎を引っ提げて、俺は部屋を出る。

 

「…穏」

「はぁぃ…」

「私達も…まだまだだな……」

「はいぃ…」

 

力無い声を聞きながら。

 

 

 

 

 

 

――――中庭・四阿。

 

「お待たせー」

「そんなに待ってないわ。それにしても、凄いカッコね」

「暖かいんだぜ?」

「はややっ!?」

「あわわわ…」

 

亞莎を右に、雛里を左の椅子に座らせる。

 

「ウチの妹たちもそれくらい素直だったらいいんだけれど」

「孫権さんと尚香さんだっけ?」

「そっ。下の妹はまだ幼いしいいんだけど、上の娘がまた堅物でね」

「ウチとは大違いだな」

 

そんな話をしていると、侍女が茶と菓子を持ってきてくれた。雪蓮に断りを入れて亞莎と雛里は菓子に手を伸ばし、顔を綻ばせる。可愛いなぁ、もう。

 

「そうそう、遅くなったけど、その服装も似合ってるじゃない」

「ん?」

「貴方たちが今着てるものよ。作らせた甲斐があったわ」

「デザインを決めたのは俺だがな」

「私のは露出が多すぎだと思うんですが……」

 

俺のは端的にいえば功夫服だ。動きやすさ重視。上が白、下が黒。シューズもなんとか作る事が出来た。材料は高かったが、そこは城持ちだ。対して、ぷちぷちと文句を言う亞莎は、キョンシーが着ているような服装だ。ただし、暗器を得意とする為、袖はかなり大きめの物となっている。

 

「いいじゃないか。雪蓮なんてハミ乳だし」

「ハミっ!?」

「あわわ…」

「ちょっとー、主に向かってそんな言い方ないでしょー」

 

というか、この城の重鎮はみんな露出が多いんだよ。兵たちの苦労がしのばれるぜ。

 

「でもでも、やっぱり丈が短過ぎです!」

「俺の好みだ」

「はやっ!?」

 

こう、亞莎のシミひとつない滑らかで細い、それでいて女らしい生足が、な?

 

「『な?』じゃないですよぉ!」

 

涙目でポカポカと叩いてくる亞莎はいいとして、雛里はなに服をいじってんだ?

 

「いえ、その…私も露出を増やした方がいいのかな、と……」

「雛里んは貴重な()()枠だから、そのままでいてくれ」

「幼女…」

「悪かったわね、年増でー」

「そうは言ってないだろ」

 

あっちを立てればこっちが立たない。ちゃんと立つのは俺の息子だけだ。いや、下ネタはいいとして。

 

「雛里のは、確か水鏡女学院の制服だっけ?」

「あ、はい」

「これはこれで可愛らしいわよね。……暑そうだけど」

「いえ、それほどでもないですよ?」

「雪蓮が暑がりなだけだよ。無下着(ノーパン)でもまだ足りないのか?」

「ちょっと!ちゃんと履いてるわよ!」

「はややっ!?」

「あわわっ!?」

 

うむ、ナイスなツッコミだ。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

という訳で、#11でした。

 

 

商売人要素が皆無なんだが、どうやって戻していくか画策中。

 

 

てか、次回からギャグ要素すらもなくなっていきますが、ご容赦をば。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 


 
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