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真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ二十六


 お待たせしました!

 それでは今回より本編に戻ります。一応、河北

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2013-01-20 09:09:05 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:6167   閲覧ユーザー数:4710

 ~幽州・北平にて~

 

「以上が荊州・益州にて行われた戦闘の顛末です」

 

 そう玉座に座る者に報告していた女性は…何とこの幽州の州牧であるはず

 

 の公孫淵であった。ならば一体誰が玉座に座っているのかというと…。

 

「そう、私が逼塞している間に南方は治まったという事ね。さすがは北郷と

 

 諸葛亮という所かしらね」

 

 そこにいたのは楽浪郡に流されていたはずの曹操であった。

 

 曹操は公孫淵が下がった後、横にいる人物に眼を向けて意見を求める。

 

「そういう事になっているけれど、まだ私達に勝算はあるのかしら?」

 

「はっ、そういう状況だからこそ逆に我々に付け入る隙があるのです」

 

 そう答えたのは…風の友人で戯志才と名乗っていた少女であった。

 

 彼女は今は本名である『郭嘉』を名乗って曹操の軍師となっていた。

 

「ふふ、あなたのそういう自信にあふれた所が気に入ったのよ、稟」

 

 曹操はそう言うと、郭嘉を引き寄せる。

 

「お、お戯れを…華琳様」

 

 既に真名は預け済のようである。

 

「わ、私は、あくまでもあなたを勝利に導く軍師としてお側にお仕えしている

 

 のです。そういう事は誰か別の者に…」

 

「でも、ここにいるのはあなただけよ…さあ、怖がらずに私に全てを任せなさい」

 

 曹操はそう言うと郭嘉の服に手をかけ、その胸元に手を滑り込ませようとする。

 

「だ、ダメです…そんな、そのような…」

 

 郭嘉も抵抗はしていたが、形だけの物となっていた。しかし…。

 

「あ、そこは…ああ、華り…ぶーーーーーーーっ!!」

 

 曹操が服の中へ手を入れようとした瞬間、郭嘉は派手に鼻血を噴き出し、その

 

 場に倒れこむ。

 

「はぁ…結局こうなるのね。衛生兵!郭嘉を救護室に!!」

 

 曹操がそう声をかけると、素早く兵士が出てきて郭嘉を手際良く運ぶ。その手

 

 馴れた感じから、こういう事は日常茶飯事でなっているようである。

 

「稟もあれさえなければねぇ…第一ここに来るまであの鼻血をどうやって止めて

 

 たのかしら?」

 

 曹操はそう言って首をかしげていた。実はまだ郭嘉より昔の話は聞いていない

 

 ので、鼻血を止めていた相方がいた事をまだ知らなかったのであった。

 

 

 

 

 ところで、何故流罪になっていた曹操が幽州の州都である北平の玉座にいるの

 

 かというと、話はしばらく前に遡る。

 

 ~しばらく前、楽浪郡にて~

 

 曹操は読んでいた書物から眼を上げる。しかしそこにはいつもと変わらぬ情景

 

 が映し出されているだけであった。

 

 曹操が一人この地に流されてから既に二ヶ月近くが経っていた(一緒に連れて

 

 来られた兵達は何処かへ連れて行かれたきりで音沙汰は無い)が、彼女は公孫

 

 淵より宛がわれた家の敷地より一歩も出る事は許されず、公孫淵の厚意によっ

 

 て貰えた数冊の本を読む位しかする事は無かったのであった。とはいっても、

 

 彼女にとって数冊の本を読む位の事にそんなに時間がかかるわけでもなく、今

 

 となっては何度も同じ本を読み続けるだけの事になっていたのであった。

 

「はぁ…暇ねぇ。流人だからとはいえ、こうもする事が無いと、このまま頭がど

 

 うにかなってしまいそうだわ」

 

 そしてそう呟く。実を言えばその呟きもまた同じように繰り返され続けてきた

 

 物であった。

 

 その時、門が開き人が入って来る。どうやら食事の時間のようだ。実はその食

 

 事の時間もまた、彼女の悩みの種なのだった。何故かと言うと、ここに運ばれ

 

 て来る食事はお世辞にも美味しいとはいえず、自他共に認める食通である彼女

 

 にとって到底耐えられるような物では無かったからだ。とはいえ、他に食べる

 

 物も無い以上我慢してそれを食べる他に無く、それが彼女のストレスを増加さ

 

 せる一因となっていたのであった。さらに、曹操が気晴らしにと食事を持って

 

 来た者に話しかけても無視されてしまい(どうやら公孫淵より曹操とはあまり

 

 話をしないよう通達が出されているようだ)自分で食事を作りたいと願っても

 

 『刃物と火を持たせる事は出来ない』と拒絶されており、ますます彼女のスト

 

 レスは溜まっていく一方となっていたのである。

 

 

 

 そしてこの日もまた同じ事の繰り返しになると思っていたのだが…。

 

「あら?あなた初めて見る顔ね。しかも女の子がここに来るなんてね」

 

 曹操は食事を運んで来た役人とおぼしき女性に眼を奪われる。そもそも、ここ

 

 に女性が来る事も今まで無かったのもあるが、その女性は整った顔立ちと、知

 

 性を感じさせる眼の光を宿していたからであった。

 

「私は数日前にここに配属になった者です。これよりしばらくは私が曹操殿の食

 

 事をお運びします。よろしくお願いします」

 

 曹操はその言葉にも驚く。何故かというと、今まで食事を運んで来た者達は彼

 

 女に対して挨拶すら碌にしなかったからである。

 

「あら?私と会話する事は禁じられていたのではないのかしら?」

 

「さあ?そうかもしれませんが何分私はここへ来たばかり。しかもここの上司は

 

 碌に仕事もせずにただ漫然と書類に印を押すだけの人間です。私が仕事終わり

 

 にただ一言『異常はありませんでした』と言ったらそれ以上何も言いませんの

 

 で、私があなたと会話した事を黙っていたらそれでおしまいです」

 

 その当意即妙な受け答えに曹操はますます彼女への興味を深める。

 

「ふふ、どうやらしばらくは退屈せずにすみそうね」

 

「しばらくどころではないですよ。あなたがここより出る日もそうは遠くありま

 

 せんしね」

 

「…どういう事?まさか陛下よりのお達しを破るとでも言うのかしら?」

 

「如何に陛下や相国閣下が優秀な方であっても、まだまだ末端の役人共は腐った

 

 ままだという事ですよ」

 

 彼女の言葉に曹操は眉をひそめる。

 

「それは一体…?」

 

「もう少ししたら分かります。その時までもうしばらくここで骨休めでもしてい

 

 てください。では…『待ちなさい』何でしょう?」

 

「あなたの名は?私の名だけ一方的に知られているのも何だか癪だわ」

 

「そうでした。私の名は『郭嘉』です。少々兵法をかじっている者です。以後お

 

 見知りおきを」

 

 郭嘉はそう言って去っていった。それを見送る曹操の眼には再び強い光が宿っ

 

 ていたのであった。そして何故かいつもと同じ献立と味であったはずの食事は

 

 とても美味しい物となっていたのである。

 

 

 

 それから数日、食事を運んで来る郭嘉と少しの時間ではあるが話をするのが日

 

 課となっていた。郭嘉はここに来るまで大陸の各地を旅していたらしく、今ま

 

 で曹操が知らなかった土地の話や人の話を聞く事が出来、そしてその旅によっ

 

 て培った彼女の考えなどを聞くのが曹操にとって何よりの楽しみとなっていた

 

 のである。さらに郭嘉は簡単な料理なら作れるだけの設備と材料を密かに運び

 

 こんで来た為、自分で作った料理を食べる事も出来るようになり気付けば曹操

 

 のストレスは綺麗に無くなっていたのであった。

 

 そして数日後、この日も曹操は郭嘉が来るのを待っていた。

 

「もうすぐ昼時ね…今日は久々に孫子について話し合ってみようかしら?」

 

 何故ここで孫子なのかというと、曹操は幽閉での徒然に孫子の兵法書の注釈書

 

 を書こうとしており、その監修と書く為に必要な道具と資料の確保を郭嘉に依

 

 頼していたのであった。そして一応大まかな形にはなってきていたので、一度

 

 彼女に見てもらい、その内容について大いに話し合おうと思っていたのであっ

 

 たからだ。しかし…。

 

「曹操様、ご無事でしたか!」

 

 やってきた郭嘉は息を切らしていた。かなり急いできたようだ。

 

「無事って…何かあったの?」

 

「近隣に五胡の軍勢が攻めて来ております。奴らに見つかる前にお早くお逃げく

 

 ださい!」

 

 その言葉に曹操は眉をひそめる。

 

「逃げるって…守備兵がいるのではないの!?」

 

「守備兵達は守るべき民達を置いて真っ先に逃げ出していきました!残った一部

 

 の兵と義勇兵とで何とか食い止めようと試みてはおりますが…おそらく曹操様

 

 の所まで気が回ってはいません。その証拠に、既にここには見張りの兵は一人

 

 もおりません。ですからお早く『郭嘉、その兵達の下へ私を案内しなさい』…

 

 はっ!?」

 

「聞こえなかったの?その五胡と戦おうとしている者達の所へ私を連れていきな

 

 さいと言っているの。私も共に戦うわ。幾ら流人の身とはいえ、五胡如きに蹂

 

 躙されようとするのを黙って見てはいられないわ。例え、それによって処刑さ

 

 れる事になろうともね」

 

 

 

 それを聞いた郭嘉は驚きのあまり二の句がつげない。

 

「さあ、事は急を要するわ。早く!」

 

 ようやく真意を理解した郭嘉は拱手して曹操の前にかしずく。

 

「さすがは曹操様です。それでこそ私が見込んだお方です」

 

「それって、どういう…まさか、あなたその為にここへ来たというの?」

 

 曹操の言葉に郭嘉はにっこり微笑み、改めて礼を取って言葉を続ける。

 

「この郭嘉、曹操様の為に我が知略を捧げる覚悟です。どうぞ存分にお使いくだ

 

 さいますよう」

 

「わかったわ、ならば真名である華琳と呼ぶ事を許しましょう。そしてあなたの

 

 真名を私に捧げなさい」

 

「はっ、私の事は『稟』とお呼びくださいませ」

 

 こうして二人は主従の契りを結び、曹操は郭嘉の用意した武具を身に纏い、兵

 

 達の集合している地点へと向かったのであった。

 

 ・・・・・・

 

 二人が兵達の集結地点に着いた時、そこにいた二百余りの兵が一斉に二人の方

 

 を向いた。しかし曹操はそれに臆する事無く集団の中心辺りにまで進む。

 

 それに付き従う郭嘉の姿に気付いた一人の兵が声をかける。

 

「郭嘉殿、そちらの方は一体…?」

 

「ここにおわすのは曹操様です」

 

 郭嘉のその言葉に兵達が一斉に息を飲む。

 

「曹操様?…まさか流人としてこの地に来ていた?」

 

「ええ、そうね。私は確かに流人に違いないわ。でも五胡なんかに好きにされる

 

 のは性に合わないの。だから他に誰もいないのなら私が指揮を執るわ。もし不

 

 満のある者は即刻ここから立ち去りなさい」

 

 曹操はそう告げたが、誰一人として立ち去ろうとはしなかった。

 

「ならば私に従うという事でいいのね?」

 

 兵達はそれに従うが如くに、一斉に礼を取る。

 

「ありがとう。…ならば、稟。五胡の軍勢を破る方策を示しなさい」

 

 

 

「はっ、まずここに攻め寄せようとしている五胡の兵力はおよそ千五百。それに

 

 対し我々はここにいる二百余りのみ。まず正面からの攻撃では勝ち目は薄いも

 

 のと推察します。よって我々の取るべき戦法は…」

 

「奇襲あるのみ、という事ね」

 

「はい、しかしこれには二つの問題があります。一つは奇襲をかける場所、そして

 

 もう一つは将がいない事です」

 

 郭嘉のその言葉に誰も反論する事が出来ない。実際ここにいる者達の中で兵を率

 

 いて戦った経験のある者は曹操一人だけであったからだ。しかし曹操は大将でも

 

 あるので軽々しく動く事が出来ない。もう一人誰か将がいれば…それが皆の頭を

 

 よぎったその時、その場に駆け込んで来た者がいた。その姿を見て曹操は驚く。

 

「季衣!?何であなたがここに…?」

 

 それは青州にいるはずの許楮だったからだ。

 

「はい、華琳様に会いたくてここまで泳いで来ました!!」

 

「泳いで…って青州から幽州まで?」

 

「はい!ボク泳ぎも得意なんです!!」

 

 許楮のその言葉にその場にいる全員開いた口が塞がらなかった。

 

「幾ら泳ぎが得意だからといっても…その距離を泳ぐなんて」

 

 さすがの郭嘉もそれ以上何も言う事が出来ない。

 

「だって…誰もボク達に船を出してくれませんし、それならいっその事泳いじゃっ

 

 た方が早いかなぁって…ダメでしたか?」

 

「ふふ、そんな事は無いわ。むしろありがたいわ。あなたが来てくれたおかげで私

 

 達も戦う事が出来るわ」

 

 曹操はそう言って許楮の頭を撫でる。

 

「郭嘉、後は場所だけよ。何処かあるかしら?」

 

「ならば…場所はここかと」

 

 郭嘉は地図のある一点を指差す。

 

「へぇ…なるほど。ここなら…では、これより作戦を開始する!」

 

 

 

「皆、此処が踏ん張り所よ!」

 

 曹操が兵達を叱咤する声が響く。

 

 曹操は軍をまとめると郭嘉の示した場所に陣取り、迫り来る五胡の軍勢を迎え

 

 討つ態勢を整える。そして、現れた五胡の軍勢は曹操達が小勢と見るや力任せ

 

 になだれ込んで来たが曹操の指揮の下、一丸となって進攻を食い止めていたの

 

 であった。

 

「必ず三人一組の形を崩さぬようにしてください!指示があるまで突出しないよ

 

 うに!」

 

 郭嘉も声を嗄らすが如くに声をあげる。

 

「稟、季衣からの合図は?」

 

「まだです。計算ではもうすぐあの地点に着くはずですが…」

 

「皆の者、もう少しよ!!」

 

 曹操が再び兵達を叱咤したその時、向こう側の山上より旗が振られる。

 

「華琳様、あれを!」

 

「季衣からの合図ね。ならばこっちも!!」

 

 曹操の言葉を受けて兵が銅鑼を鳴らす。それと同時に兵達は一斉に退き始める。

 

 五胡の連中はそれを見て遂に相手が怖気付いたと一気に攻めに転じようとした

 

 その時、背後より許楮が率いる部隊が攻撃をかける。

 

「てぇぇぇりゃあぁぁぁぁ!!」

 

 許楮が大鉞を振り回すと五胡の兵が一瞬にして十数人程吹っ飛ぶ。ちなみに大鉞

 

 は郭嘉が用意していた武器の中から許楮が選んだ物である(当然、何時もの武器

 

 である岩打武反魔は流罪の時に没収されたままなので)。

 

「ふふ、季衣の腕もまだまだ鈍っていないようね…さあ、こっちも反撃よ!!」

 

 許楮の攻撃で五胡が怯んだ瞬間に曹操も部隊を突出させる。

 

「この地に攻め入ろうとする愚か者どもよ!我が剣にてこの世より消え失せよ!!」

 

 曹操も長剣を振るい敵兵を狩っていく。その勢いに押され、五胡の軍勢は算を乱し

 

 て逃げ去っていったのであった。

 

 

 

「やった、俺達の勝利だ!!」

 

 曹操に従っていた兵達は喜びに沸いた。

 

「さすがは曹操様だ!郭嘉殿の言う通りだ!!」

 

 その兵士の言葉に曹操は眉をひそめる。

 

「稟…今のはどういう事?」

 

「申し訳ありません!実は…」

 

 実を言うと郭嘉は五胡がこの地を伺っている事を予測し、それを利用して曹操に役立

 

 てようという思惑から役人として潜り込み、兵や役人達に鼻薬を嗅がせて曹操の事を

 

 それとなく吹き込んでいたのであった。

 

「なるほど…やけにあっさりと私に従うとは思ったらそういう事だったのね」

 

 そう言って曹操はため息をつくが、納得のいったような顔はしていた。

 

「申し訳ありません、責任は如何様にも」

 

「ふふ、別に咎めているわけではないわ。でも一つだけ聞かせてもらっていいかしら?」

 

「…何でしょう?」

 

「何故そこまで私の為に働こうと?貴女ほどの才能があれば、仕官の道なんて幾らでも

 

 あるでしょう?わざわざ流人である私の所に来る必要は無いはずよ?」

 

 曹操のその問いに、郭嘉は少し考えてから答える。

 

「そうですね…一言で言えば、華琳様の下の方が我が才を揮えると思ったから…という

 

 事になります」

 

「それはどういう事?」

 

「私はずっと大陸を旅して来て、この大陸が隅々まで如何に腐敗しているかを見てきま

 

 した。これを変えるには強き者が全てを塗り替える必要があると思ってました。そし

 

 て華琳様こそがそれだと思ったのです。そして私は華琳様の下で軍師として働こうと

 

 思い定めた次第なのです」

 

「でも私以外にも強き者はいるわね…例えば、北郷とか」

 

 

 

 曹操が「北郷」の名を出した瞬間、郭嘉の様子が変わる。

 

「北郷…ですか。確かにあの者は強いのでしょうね…それにあの諸葛亮が帷幄にいます

 

 しね…だからこそですよ」

 

「…何が?」

 

「私は、今までこの大陸に自分より優れた軍略家はいないという自信を持っていました。

 

 他の軍師は私に近い才能はあれども、私が本気で相対すれば必ず上回れるものと常に

 

 そう思っていました。そして私も曹操様が劉備を担ぎ上げて覇者となるという計画と

 

 同様の事を考え、必ずそれは成功を収めるものと確信していました。しかし、諸葛亮

 

 はそれを全て覆した…それは私にとって初の敗北と言っていいほどの事でした。でも

 

 私は諸葛亮に軍略の才能で負けているなどとは思っていません!そしてそれを証明す

 

 るには諸葛亮と雌雄を決し、そして勝利を収めねば気が治まらないのです!!それを

 

 叶える為には、敵対する事の出来る陣営…華琳様に仕えるしかないと!!…はっ!?

 

 い、いえ…あの、その…決して華琳様を利用しようというわけではなく…」

 

 一気呵成に喋り、ふと我に返って自分がとんでもない事を言ったのを自覚した郭嘉は

 

 しどろもどろになる。

 

「へぇ…つまり稟は諸葛亮に勝つという自分の欲望を叶える為に私を利用しようとする

 

 わけね?」

 

 曹操は意地悪そうな笑みを浮かべながら言う。

 

「も、も、申し訳ありません!ですが決して華琳様を踏み台にしようとかいうわけでは

 

 ありませんので!!」

 

 郭嘉は平身低頭で謝罪する。

 

「咎め立てをしようというわけではないわ。むしろそういうのは嫌いじゃないわよ」

 

 曹操はそう言うと指で郭嘉の顎を一撫でする。

 

「ひゃっ!華琳様、何を…」

 

「ふふ、可愛い反応ね。その自信に満ち溢れた内側にどのような情熱が潜んでいるのか

 

 とても興味があるわ…」

 

 曹操は周りにいる兵達が凝視しているのにもかかわらず、郭嘉に迫ろうとする。

 

「か、華琳様…皆が見ている前でこのような辱めなど…」

 

 郭嘉は抵抗しようとするが、明らかに力が入っていなかった。

 

「へぇ…言葉ではどう言おうとも、身体はもうそのつもりのようね」

 

 曹操はさらにサディスティックな笑みを浮かべると、その指先を胸元の方へ向ける。

 

「お、お待ちください…ああ、華琳様が遂に………ぶーーーーーーーっ!!」

 

 その瞬間、郭嘉は盛大に鼻血を噴き出して倒れる。

 

「えっ!?稟、稟、大丈夫!?しっかりしなさい!!」

 

 その後、駆けつけた衛生兵の治療で鼻血は止まったものの、これより曹操が郭嘉に

 

 手を出そうとする度に同じ事が続くのであった。

 

 

 

 こうして五胡の軍勢を退けた曹操の次なる行動は素早く、すぐさま楽浪郡を制圧し

 

 て数千の兵を擁するに至ったのであった。その報告を聞いた公孫淵は洛陽に通報せ

 

 ずに自力で討伐しようと軍を進めたのだが、郭嘉の作戦と許楮の武勇によりあっさ

 

 りと返り討ちに遭い、捕らえられて服従を誓わされたのであった。とは言っても、

 

 表向きはあくまでも公孫淵の治める地のままである。郭嘉は公孫淵が洛陽に通報し

 

 ていない事を逆手に取り、曹操が幽州を掌握した事を隠してさらなる力を溜める事

 

 を提案し、曹操もそれを了承したからであった。

 

「そうよ…最初から漢なんて国に頼るから成功しないのよ!そう…私は乱世の奸雄な

 

 のだから、その通りにすればいいのよ!!見てなさい、今度こそこの私が大陸の覇

 

 者となる時よ!!」

 

 曹操は玉座に座り、そう一人ごちていたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 場所は変わり、洛陽である。

 

 一刀達はこれまでの一連の争乱の報告書を纏め上げて劉弁へ提出に来ていた。

 

 しかしあいにく劉弁は所用で出られなかったので、王允が代わりにそれを受け取っ

 

 ていた。

 

「うむ、確かに受け取ったぞ。これは責任を持って陛下にお届けしよう」

 

「はっ、よしなにお願いします」

 

「ところでな、一つだけ気がかりな事があってな。お主達で何か分かる事があればと

 

 思って聞くのだが…」

 

「何でしょう?何か事件でもありましたか?」

 

「事件と申すのか…実は青州で蟄居していた許楮が突然姿を消したのじゃ。州の境は

 

 全て封鎖したし船は全て管理下においてあるから外に出ている事はないとは思うの

 

 だがな…」

 

 しかしそれを聞いた朱里は即座に答える。

 

「王允様、すぐにでも幽州へ軍を派遣してください!!」

 

「朱里!?いきなりどうしたんだ?」

 

 その言葉に一刀も驚きを隠せない。

 

「許楮はおそらく曹操さんの下へ向かったはずです!すぐさま討伐と捕縛の軍を!!」

 

 朱里のその言葉に一刀と王允が戸惑いを見せていたその時、凶報がもたらされる。

 

「申し上げます!曹操の軍によって冀州が制圧されました!!」

 

 

 

 

                                           続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は覇王様の復活のお話でした。

 

 正直、少々強引な感じになってしまいましたが…。

 

 他の曹操の家臣達の動向は次回以降にお送りします。

 

 果たしてどうなるのかお楽しみにという事で。

 

 一応次回は曹操がどのように冀州を制圧したかを中心に

 

 お送りします。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ二十七でお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 次回、遂に白蓮さんが登場…の予定。

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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