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真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ二十七


 お待たせしました!

 前回、遂に決起した曹操の軍勢により

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2013-01-27 07:50:51 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:6328   閲覧ユーザー数:4776

 

 ~洛陽にて~

 

「すまない…こんな体たらくで」

 

 そう言って肩を落としているのは…白蓮であった。

 

 そしてその白蓮の姿はボロボロであった。

 

 何故、白蓮がその様な姿になっているのかというと、曹操軍が冀州に攻め寄

 

 せて来た時に、たまたま所用で冀州を訪れていた彼女が兵の指揮を執ってい

 

 たからだ。何故、月の領土である冀州で彼女が指揮を執っていたのかという

 

 と、月より冀州の守備を任されていた華雄が定期報告の為に洛陽を訪れてい

 

 た際に攻められたからだった。

 

 そしてその知らせを聞いた葵さんや雪蓮達も洛陽に集まっていた。

 

「くそっ、私がおれば曹操軍などの好きにはさせなかったものを…」

 

 白蓮の横で華雄はそう言って悔しがっていた。

 

「終わった事を言っていても仕方ありません。それよりも大事なのはこれから

 

 どう対処していくかです。陛下は報告を聞いた途端に落胆された様子で後宮

 

 に入ってしまわれたので、御心を安んじ奉る為にも我々がきっちりと決めな

 

 ければなりません」

 

 月がそう言って話を進める。

 

「まずは次に攻められるであろう并州にいる恋と青州にいる盧植将軍には警戒

 

 を強めるようにと幽閉している曹操の家臣達の監視を強めるよう伝令を出し

 

 たわ。後は何時攻め入るかね」

 

 まずは詠がそう述べる。

 

「攻め入る前に幽閉している他の曹操の家臣達の首を全部刎ねてしまうという

 

 のはどうかしら?」

 

 そういう物騒な意見を出すのは雪蓮であった。

 

「それはおそらく逆効果になりかねん。出来れば家臣達を翻意させて、こちら

 

 の先陣とすれば相手の戦意を挫く事が出来るのではないか?」

 

 葵さんはそう言って雪蓮の意見に反対する。

 

 

 

「議論している場合ではありません!今すぐにでも冀州へ攻め寄せましょうぞ!

 

 そして私に先陣を!!」

 

 華雄がそう懇願するが、

 

「ダメよ、ただ攻め込むだけでは相手にしてやられるだけだわ。それにおそらく

 

 相手の軍師は華雄の性格を把握していると見るべきね。今回の事だって、華雄

 

 がどの時期に洛陽に行くのかを知った上で攻撃をしかけているようだしね」

 

 詠がそれを止める。

 

「ぐぬぬ…ならばこのまま手をこまねいて見ていろとでも言うのか!?」

 

「とりあえずはそれも一つの手だな。何せ向こうは将の数が不足している。今は

 

 これ以上動けないはずだ。こちらの方が態勢を整えやすくはあるだろう」

 

 華雄の呻きに冥琳が答える。

 

「でも、もし幽閉されてる奴らが合流する事になったら面倒よ。そうならない内

 

 にさっさと殺しとくべきじゃない?どうせ説得したって聞きそうにないし」

 

 雪蓮は相変わらず物騒な自論を展開する。

 

「はあ、まったくお前はそういう所は母親そっくりだな…文台の奴には昔どれだ

 

 け苦労させられた事か」

 

 葵さんが呆れた感じで呟く。

 

「ちょっ、今はそんな昔話をしている時じゃないでしょう!?それに私の何処が

 

 母様に似ているっていうのよ!?」

 

「そういう物事を短絡的に考える所とか力技に頼ろうとする所とかだな」

 

 葵さんがそう言うと雪蓮は二の句が告げなくなってしまい、隣で冥琳が完全に

 

 笑っていた。

 

「皆さん、そのお話は私も興味はありますが、今は曹操軍への対処を議論する場

 

 です、話を元に戻しましょう。他に何か意見のある人はいますか?」

 

 脱線しそうになった話を月が戻す。

 

「まずは幽閉されている曹操の家臣達への一層の監視の強化だろう。特に揚州に

 

 いる夏侯姉妹に合流されては大事になるしね」

 

 

 

 俺がそう言うと、雪蓮はその立派な胸をさらに張って答える。

 

「大丈夫、蓮華がちゃんとやってるから」

 

「いや、雪蓮にもやって欲しいのだけど」

 

「ぶう、だって蓮華は『姉様に任せては自分が楽しむ為にわざと二人を解放させ

 

 てしまいかねないので、私が監視を行います』って言うんだもん」

 

 雪蓮のその言葉に全員が苦笑する。さすがは妹、姉の性格を良く把握していら

 

 っしゃるようだ。

 

「それでは曹操の家臣達を預かっている皆様にはより一層の警戒をお願いします。

 

 そして皆さんには軍を洛陽に集結させていただくようお願いします。陛下から

 

 おそらく早晩曹操軍への追討の勅を発せられる事となるはずですので。無論、

 

 五胡の動きには気を付けた上でですが」

 

 月のその言葉で皆、軍をまとめる為に一旦解散する。

 

「朱里、俺はこのまま洛陽に残る。軍の編成は一任するのでよろしく頼む」

 

「分かりました、すぐに戻ってまいりますので。風ちゃんと流琉ちゃんはご主人

 

 様と一緒にここに残っていてください」

 

「はいー」

 

「分かりました!」

 

 そして朱里は一旦荊州へ戻っていった。さて、これからどうなる事やら…。

 

 

 

 その頃、劉弁は後宮の中庭の一角にある石碑のような物の前にいた。実を言う

 

 と、それは亡き劉協の墓であった。本来なら皇帝の墓は大きな墳丘を造るのが

 

 普通なのだが、劉協の『皇帝の墓だからといって、人が生活している場所を立

 

 ち退かせてまで大きな物を造る必要はありません。先祖の墓を今更取り壊す事

 

 は出来ませんが、私の墓は小さい物にするように』との遺言により、このよう

 

 な小さな墓となっていたのである。

 

「なぁ夢よ、妾は少々甘かったのかのぉ?お主がその才覚を見込んで罪を許した

 

 程の者じゃったから妾も命を助けて再考を促せば漢の為に力になってくれると

 

 思ったのじゃがな…そういえば、昔からお主には『姉上は人に甘い所がありま

 

 す。皇帝となられるのであれば、時には厳しい決断をしなければならない時が

 

 あるのですよ』と言われておったの。そういう夢とて結構甘かったとは思った

 

 がのぉ」

 

 劉弁はそう一人ごちると淋しそうな笑みを浮かべていた。

 

「陛下、北郷様が陛下に拝謁を願っておりますが?」

 

 そこへ侍女が来て、そう声をかける。

 

「一刀が?分かった、すぐに参る故、妾の部屋に通すよう伝えよ」

 

 劉弁はそう侍女に伝えると何かしらを語りかけるように劉協の墓の前に佇んだ

 

 後に自室へと向かっていった。

 

 

 

「待たせたの、一体どうしたのじゃ?今までお主がここに来る事など無かったの

 

 にの」

 

 陛下は部屋に入るなり俺にそう声をかける…というか何か毒づいているように

 

 感じるのは気のせいか?

 

「いえ、ええっと…あの、その…」

 

「何じゃ、まさか用も無いのに後宮まで押しかけてきたのか!?」

 

 俺がちょっと言いよどむと陛下は少々不機嫌そうに言う。

 

「い、いえ…今回の事で陛下がお心を痛めていらっしゃるのではと…」

 

 俺がそこまで言ってふと陛下の顔を見ると不機嫌度がますます増しているよう

 

 な顔になっていた。

 

「ど、どうされました、へいk『命じゃ』…はい?」

 

「言ったであろう、二人きりの時は真名で呼べと…まさか忘れたわけではあるま

 

 いの?」

 

 そう言った陛下の背中から何やら黒い気が洩れ出していた…って何故皆こうな

 

 るんだ!?

 

「い、いえ、決して忘れていたわけでは…申し訳ありません、み、命様」

 

「…『様』モ無しでと言ったはずジャガ!?ソシテ敬語も無しと言ったハズじゃ

 

 ゾ?忘レたのカ?」

 

 うわっ、黒さが増してる…これを収めるには…。

 

「分かった、ごめん『命』」

 

「うむ、分かれば良いのじゃ」

 

 ふう、とりあえずは助かった。

 

「で、妾に何の用なのじゃ?」

 

「用って程の物では無いけど…命が何だか落ち込んでいるような気がしたから…」

 

「ほう、もしや一刀が洛陽に残ったのは妾の為か?」

 

 命はそう言って迫って来る…何だか大分近いんだけど!?」

 

「い、いや…別に命の為とかそういうのではなk…うぷっ!?」

 

 俺が言葉を続けようとしたその瞬間、命は自分の唇で俺の唇を塞いでいた。

 

 

 

「「う、うむ…くちゅっ、ちゅぱ………ぷはぁっ、むっ、ちゅぷっ…」」

 

 何時の間にか命の両手は俺の頭をがっちり抱きかかえており、そのままの状態で

 

 しばらくの間、俺は命とキスをし続けていた。段々と頭が真っ白になり俺の頭の

 

 中は命の唇の感触を味わう事で精一杯となっていた。

 

「ぷはっ…ふふ、これが接吻という物か。なかなか気持ちの良い物じゃの。これは

 

 癖になりそうじゃな」

 

 命は唇を離すと、うっとりしたような顔でそう呟く。

 

「み、命…一体、これは…」

 

「む、一刀は妾の接吻では満足せぬのか?」

 

「い、いや、満足とか不満とかじゃなくて…何故こんな事をって…」

 

 そう質問すると命の顔は再び不機嫌に彩られる。

 

「ほほう、この期に及んで一刀はそのような事を言うのじゃな…これは実力行使と

 

 行くしかないようじゃな」

 

「じ、実力行使って…うぷっ!?」

 

 俺が言い終わる前に命は再び自分の唇で俺の唇を塞いでしまう。しかも今度はそ

 

 の舌が俺の口内に侵入して来た。そして俺の手をその豊満な胸に持って来る。

 

 その柔らかな感触と舌の温かさとで俺の頭の中は完全に蕩けていた。

 

「一刀…女の妾がここまでしたのじゃぞ?まさかこのまま逃げるなどとは絶対に言

 

 わせぬからな?」

 

 命は潤んだ瞳で俺を見つめながら再び迫って来る…朱里、すまない!!

 

 俺はそのまま命に覆いかぶさっていった。

 

 

 

「一刀はなかなか獣じゃの。体の中が壊れてしまうかと思ってしまったわ」

 

 事が終わった後、命はうっとりした顔でそう話しかけてきた。

 

「え、ええっと…すまない、あまり優しくは出来なかった」

 

「ふふ、良いのじゃ。でもこれは本当に癖になりそうじゃの…本気で朱里から奪っ

 

 てみせようかの?」

 

「ちょっ、それは勘弁『冗談じゃ、本当にお主にとって朱里は一番なのじゃな』…

 

 はい、でもこのような状況で言っても説得力は無いでしょうけどね」

 

 しかし考えれば考えるほど気が重くなってくる…朱里にどう言えばいいんだ…そ

 

 れとも隠し通せばいいのだろうか…いや、絶対ばれそうな気がする。

 

「こりゃ、このような時に他の女子の事ばかり考えるでない」

 

 命はそう言って俺の頬をつねる。

 

「も、申し訳『二人きりの時は敬語は禁止じゃ!』…すまん」

 

「ふふ、しかし何だかこうして一刀とおるといろいろ悩んでいたのがすっきりした

 

 感じじゃの。ありがとう、一刀」

 

 命はそう言って微笑む。こういう顔が見れたのなら良かったという事なのかな?

 

 と思いきや、

 

「これからもちょくちょくお願いするからの」

 

 とてつもない事を言い出した…さすがにそこまでは…ガクッ。

 

「さあ、皆をを招集して曹操軍に対しての方針を伝えねばならんな。一刀、頼める

 

 じゃろうか?」

 

 命は皇帝の顔に戻ってそう告げる。遂に決心したという事か…これがお互い全裸

 

 でなかったらもう少し格好がついたんだろうけど。

 

 俺はそそくさと身支度を整えると招集をかけるべく王允殿の所へ向かった。

 

 

 

 その頃、冀州・南皮にて。

 

 曹操は再び自分の支配下に置いたこの地で態勢を整えていた。というのも、ここ

 

 までは順調にはいったものの、これ以上の作戦行動を取るにも将兵の数が足りず

 

 まずはその確保が必要だったからである。しかし曹操や郭嘉の努力の甲斐もあっ

 

 て兵の方は集まって来たのだが、将の方ははかばかしくいかなかったのであった。

 

「稟、どうかしら?その後の手ごたえは?」

 

「やはり将が務まる程の人材というとなかなか…精々小隊長程度が務まる者位です。

 

 人材の多くは既に漢やそれに従う諸侯に仕官してますし、やはりここは幽閉され

 

 ている華琳様の家臣の方々を呼び集める方が…」

 

「それは何度も考えたし、密かに手紙も出してはみたけれど…ここまで何も手ごた

 

 えが無い所を見ると、予想通り彼女達に対する警戒は強まっているようね」

 

 曹操はそう言ってため息をつく。

 

「まだ処刑されていないだけマシと思わなければなりません…そうか」

 

 郭嘉は何かを思いついたような声をあげる。

 

「何か名案でも思いついたのかしら?」

 

「はい、これならうまくいけば全員取り戻す事も可能ではないかと」

 

 郭嘉は曹操に耳打ちする。

 

「まさか…それは危険よ。取り戻すどころか全員失いかねないわよ!?」

 

「その位の手で行かなければ到底成功などおぼつきません」

 

 曹操は懸念を示すが、郭嘉はそれでも尚その策を推す。

 

「稟、確かにあなたの才は素晴らしい物よ。冀州を攻める際も守将であった華雄が

 

 何時どのように洛陽に行くのかを調べ上げた上でいなくなった頃合を見て攻め取

 

 ったその手際も最上の物だったわ。でも、今度の策は危険すぎるわ。それを実行

 

 しろとは言えないわね。他の策を考えなさい」

 

「はっ…」

 

 曹操にそう言われ、郭嘉は引き下がった。だがその表情はまだ諦めきれないよう

 

 にも見えたのであった。

 

 

 

 同じ頃、南皮の城門の辺りで、公孫淵は兵達の指揮にあたっていた。しかし彼女

 

 の頭の中は冀州攻めの際に出くわした白蓮からの言葉で一杯であった。

 

 ・・・・・・

 

 ~冀州攻めの際の事~

 

「ま、まさか……お前、銀蓮(いんれん・公孫淵の真名)なのか!?何故、お前が

 

 そっちにいるんだ!公孫一族は代々、漢の恩恵を受けて来たんだぞ!それを当主

 

 たるお前が破るというのか!?」

 

「だ、黙れ!!白蓮だって袁紹の世迷言を疑いもせずに反董卓連合に加わっただろ

 

 うが!ちょっとうまく出世出来たからって大きな顔をされるいわれは無い!!」

 

 曹操に服従を誓わされ、冀州攻めの先鋒として戦場に立った彼女が見たのは華雄

 

 の代わりに冀州の董卓軍の指揮を執る白蓮の姿であった。白蓮も公孫淵の姿を見

 

 るや、驚きを隠せない状況であった。

 

「そ、それとこれとは別だろうが!今回の事は陛下に対する完全なる反逆行為にな

 

 るんだぞ!!幽州で何があったかは知らないが、今ならまだ私がとりなすから戻

 

 って来い!!」

 

「うるさい、黙れ!少なくともお前の施しは受けん!!そっちこそ刃向かうなら私

 

 の手で葬ってやる!!」

 

 その後、両軍入り乱れた中で二人は離れ離れとなり、曹操軍が冀州を占拠した頃

 

 には白蓮は敗残兵と共に洛陽方面へと落ち延びていったのであった。

 

 ・・・・・・

 

「そうよ、私こそが公孫一族の長…幾ら秀才の誉れが高くて少しばかり出世したか

 

 らといってあんな傍流の奴に従ういわれなんてないのよ…私はもう曹操様に仕え

 

 る将なのだから、あんな奴の事なんか気にする必要は無いのよ」

 

 公孫淵はそう自分に言い聞かせるかの如く呟いていたが、その顔は晴れないまま

 

 であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、洛陽にて諸将が集結したその前に立った陛下が高らかに宣言した。

 

「皆、集まったな。妾は漢を守る為、反逆者曹操追討の勅を今ここに発する!盧植、

 

 そなたを総大将に任ずる。速やかに反逆者どもを追討せよ!!」

 

「ははっ、この盧植、命に代えてもその命を果たしてご覧にいれます!!」

 

「これこれ、お主に死なれては妾が困る故、必ず生きて帰ってくるのじゃ、良いな」

 

 そのやり取りに場は笑いに包まれる。

 

 結局は曹操とは戦わなくてはならないのか…しかし大陸に平穏を取り戻す為には

 

 避けては通れぬ道のようだ。ならば俺も気を引き締めていかねばならないな。

 

「では全軍速やかに移動せよ!曹操が小細工を仕掛けて来る前に全軍を以て攻め込む!」

 

 盧植将軍は強い声でそう号令をかけていた。

 

 

 

              

 

                                            続く!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 ええ~っと…またヤッちまった!!予定と話を変えてしまった上に

 

 ヤッちまった(いろいろな意味で)!!

 

 ご不快に思われた方々ばかりとは思いますが、何卒ご了承の程を。

 

 一応次回は戦いに入る前に各地にいる曹操の家臣達の動向的なお話

 

 の予定です…ちゃんと出来ればいいけど。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ二十八でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 追伸 一刀と命さんがヤッちゃった事は朱里はまだ知りません。

 

    まあ、時間の問題でしょうが。ちなみに風と流琉は怪しい

 

    と感じているようですが…はてさて。

 

 

 

 


 
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