episode100 里帰り
そうしてIS学園が冬休みに入って数日が経った。
隼人と颯、リインフォースは今では珍しいローカル線に乗っていた。
目的は隼人の叔父の所に里帰りと言う名の墓参りである。同時に颯とリインフォースの紹介もするが、本当であればシャルロットも紹介する予定だったが、シャルロットと予定が合わなかったために別の日に紹介するようにした。
『しかし、私も一緒に行って良かったのでしょうか?』
「いいんだよ。俺にとっても颯にとってもお前は家族みたいなもんだ」
『それはそうかもしれませんが・・・』
と、少し不安な気持ちがあった。
リインフォースの服装は学園内でも着ている黒いスーツ姿であった。実際のところこれしかまともな服装が無い。
「まぁ良いじゃないか。颯だって楽しみにしているんだ」
と、横に座っている颯は窓から見える景色を眺めて楽しんでいた。
『・・・そうですね』
「・・・・」
『そういえば、なぜ電車を乗り継いでこんな古い路線で向かっているのですか?距離的に飛行機を使えば早く着くはず』
「まぁそうだが、最近は飛行機に乗るだけでも身分証明書が必要になる。颯は生徒手帳があるが、リインフォースには無いだろ」
『・・・・』
「だから、わざわざ時間を掛けても身分証明書が必要ない電車で行くんだよ」
『・・・わざわざ申し訳ございません。私のために』
「別に構わんさ。それに、飛行機で行くより、こういう景色を見ながらゆっくりと行くのが好きなんだよ、俺は」
『そうですか』
そうして電車を下りて30分近く歩いて隼人達は叔父の住んでいる村に到着する。
「うわぁ・・・こんなに自然のある場所ってまだあるんだ」
颯は今まで見た事がないくらいド田舎に驚いていた。
「日本じゃここ以外田舎の場所は無いだろうな」
『そうなんですか』
「まるで昔の世界にタイムスリップしたみたい」
「そうだな。じゃぁ、行こうか」
隼人は舗装されてない地面の道を歩いて叔父の家に向かう。
「おーい!じいちゃん」
と、隼人が家の前について叔父を呼んだ。
「おや、隼人か。久しいのう」
家の裏側から隼人の叔父が出てきた。
「久しぶり」
「いつも通りじゃのう。ところで、後ろの二人は誰じゃ?」
と、叔父は後ろにいる颯とリインフォースに気付く。
「紹介するよ。左が妹の颯で、右がパートナーのリインフォースだ」
「初めまして。神風颯と言います」
『リインフォースと申します』
「ふむ?お前さんに妹なんか居ったかのう?」
「後で説明するよ。とりあえず家に入ろうよ」
「うむ」
と、四人は家の中に入る。
「――――と、言うわけ」
「なるほどなぁ」
隼人は叔父に説明した。
颯とリインフォースは別の部屋に行ってもらっている。
「しかし、あの子がお前さんのクローンとはな」
「正直驚いているよ」
「通りでお前さんと瓜二つだったわけか」
「・・・・」
「それに加えて、サイボーグとな」
「あぁ」
「驚いた物じゃ。あんなに可愛い子が機械とは」
「簡単に信じるんだな。てっきり信じないと思ったけど」
「まぁ、お前さんも似たようなものじゃがな」
「やっぱり知っていたんだ。父さんから俺の正体を」
「しまった・・・」
「まぁ、そうだろうとは思っていたけどね」
「・・・・」
「別に驚いたりしてないよ。もう知っているから」
「そうか。で、リインフォースはお前さんの人生のパートナーかのう?」
「なわけ無いだろ」
「冗談じゃ冗談」
「・・・・」
「お前さんには心から決めておる相手があるのじゃろ?」
「・・・・」
「図星かのう」
「うっ」
「いいことじゃ」
「・・・・」
「お前さんもそういう時期と言うことじゃ」
「そうかね」
「そういえば、この間お前さんに似た子が来ておったのう」
「え?こんなド田舎の村に?」
「結構多人数で来ておったよ」
「そうなんだ」
「結構まじめな子達じゃったよ。うちに泊まって畑仕事を手伝ってくれたからのう」
「へぇ。でも、俺に似ているって言う子って?」
「女の子じゃったよ」
「そうなんだ」
「まぁ、ある意味後で会うかもしれんな」
「?」
「気にするでない。独り言じゃ」
「・・・・」
「しかし、今日は墓参りしたらもう帰るのか?」
「まぁね。帰ったら色々とやることがあるから」
「そうか」
「まぁ時間があったらもう一人の義妹を紹介するよ」
「まだおったのか」
「颯と違って色々とあってね」
「お前さんは本当に色々と問題を抱えるものじゃのう」
「違いない」
「花ならもう墓に供えた置いた。お参りだけでもしてくるがいい」
「ありがとう」
「でも、他の二人はいいのか?」
「一人の方がいいから」
「そうか」
(リインフォース。墓参りに行って来るから、その間じいちゃんと話していてくれ)
(分かりました)
(お前なら大丈夫だろが、颯には言っておいてくれ)
(はい)
そうして隼人は立ち上がって外に出る。
「相変わらず多いな」
隼人は墓に到着すると、周囲を見る。
人は殆どいなかったが、墓の数が異常なほど多い。
「・・・・」
そして神風家と刻まれた墓の前に着いた。
(父さん・・・母さん)
隼人は片膝をついて両手を合わして目を瞑る。
「・・・・」
そうして立ち上がると――――
「ん?」
隼人は墓の向こう側である者を見た。
それは見覚えのある背中で、水色の髪をしており、墓の前で両手を合わして頭を下げていた。
「・・・・」
隼人はとある人物が脳裏に浮かんで、迂回して近付いてみた。
「不思議なものですね。まさかこんな所であなたと会うなんて・・・」
「っ!」
その人はビクッと身体を震わせる。
「楯無さん」
「・・・そうね。本当に・・・不思議なものよね」
と、楯無は少し苦笑いして立ち上がる。
「そういえば、あの時俺が渡した新しいIS・・・どうでしたか?」
「『ゴールドフレーム天』?あの後試してみたけど、いい出来ね」
「そうですか」
「高度の光学迷彩による奇襲攻撃。エネルギー系や実体系攻撃の両方を持ち、相手のエネルギーを奪う機構の搭載。更にピンポイントに狙える武装と特殊兵装の搭載。どれも最高レベルね」
「・・・・」
「まぁ唯一気に入らないのは色かな」
「やっぱり」
「黒と金なんて、あの女の色みたいになっているわ」
「あの女?」
「独り言よ。まぁ色以外は最高よ。さすが隼人君ね」
「お褒めいただいて光栄ですよ、生徒会長」
「口も達者になったわね」
「どうでしょうね」
「・・・・」
「ところで、どうしてここに?」
「それはこっちの台詞よ。隼人君こそどうしてここに?」
「それは墓参りですよ。両親の」
「・・・・」
「楯無さんも・・・なぜ墓参りに?しかもここの・・・」
「・・・・」
すると楯無の表情が暗くなる。
「・・・こういうのも何ですが・・・」
「・・・・」
「想い人の・・・ですか」
「・・・・っ」
楯無はぴくりと反応する。
「すみません。自分が無神経でした」
「・・・何で知っているの?」
楯無は少し声を震わせて聞く。
「書類の整理の時に、机から床に落ちた封筒に入っていたんですよ。楯無さんが追いかけている人の情報が」
「・・・・」
「勝手に見たことは謝ります」
「・・・私も甘くなったわね。大事な物を見られるように置いて置くなんて」
「・・・・」
「確かにそうよ。ここに私が唯一想いを寄せた人が眠っているの」
「・・・・」
「・・・その人を・・・あの男が殺した」
「・・・ドクターアルベルト、ですね」
「えぇ」
その声には殺意が含まれていた。
(こんな楯無さん今まで見た事が無い)
隼人は少し息を呑んだ。
「・・・その顔、聞きたそうな顔ね」
「え?い、いや、俺は別に・・・」
「視線が泳いでいるわよ」
「・・・・」
「できるなら話したくは無いけど・・・一応聞いておいて、助手としてね」
「・・・えぇ」
「・・・もう・・・三年前のことね――――」
後書き
黒獅子と駆ける者を書き続けてついに100話目です!意外と長かった。これからもよろしくお願いします。
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!