「想定外」

プラネテューヌ付近・山地

目の前の標的を見て、とりあえず分析する。

間合いは圧倒的に不利、腕や足だけでもこちらのリーチよりも長い。

だったら懐に飛び込んで行くしかない。

【モードチェンジ・強モード】

意識を戦う事に集中する。それによって僕は戦う事に思考をシフトさせる。

このモードというのは単なる気持ちの切り替えで、あまり能力は変わらない。

変わったと思うも、「そんな気がする」だけである。

タタタタタタタタタ・・・・・

距離を詰める為、僕は全速力で走った。それを迎えうとうとドラゴンは右腕を振りおろす。

後ろに退けば追い打ちを喰らうかもしれないので、死角である斜め左下スライディングした。

ブォゥンッ！

振り下ろした時に生じた風が当たって正直ビビった。けど余裕をもってかわして懐に飛び込んだ。

そのチャンスを逃すわけにはいかない。僕は次の攻撃が来るまでに出来る限り斬りまくった。

ザッ！ザッ！ザッ！ザッ！ザッ！・・・

エンシェントドラゴン

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオッ！！」

そろそろ反撃が来そうなので、標的の股をくぐって後ろに回った。その後背後を斬りまくった。

確か、後ろを攻撃した方がダメージが大きくなるってゲームにもありがちだし、その理論は合ってるかもしれない。

背後は隙が出来やすいから。

たとえ気配が読めるとしても、見えない事もあってどうしても疑ってしまう。

ザッ！ザッ！ザッ！ザッ！ザッ！・・・・・

そして振り向かない内に魔力で強度、リーチを強化した投剣で尻尾を・・・・・

ザシュッ！！

エンシェントドラゴン

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオッ！！！」

思い切り切断した。やった方の僕が思うのも何だが、「これは痛そうだな」と思った。

標的が左足から後ろに向かせた始めた所を見て、左回りに振り向くと予測し、右足を狙って切り裂く！

ザシュッ！　グラッ・・・・・・

エンシェントドラゴン

「グオオオッ！？」

片方動かしてるならもう片方は支える為に立ってないといけない。

飛んだら終わりだけど、せっかく獲物が近くにいるのにわざわざ距離をとる事は、あのドラゴンの本能的にありえ無い！

ズズゥゥンッ・・・・・

慌てて崩れそうなバランスを、標的は動かしてる途中だった左足で立て直した。巨体だけに、足音が地面に響く。

立て直す隙に僕は両手の剣に魔力を込めて・・・・・

ズバァッ！

思い切り標的の翼を切り裂いた。これでもう飛べない。

エンシェントドラゴン

「ギャオオオオオオオオッ！！！！」

二回目の悲鳴に近い声。いや、悲鳴そのものなのかもしれない。

無理もない、自身の身体を切断されたんだ。

剣豪や侍とかだったら冷たい感触だけ残して痛みも感じさせずに首をはねただろうなー・・・・

けど僕は侍じゃないし、剣豪でも無い。義理の父が凄腕暗殺者で、それに憧れてるただの９歳の子供だ。

恨むなら、僕か僕と出会う運命のどちらかを恨んで下さい。（何故に敬語）原因はそのどれかだから。

さて、そのまま首を刎ね・・・・・

エンシェントドラゴン

「グルルルルルルルルルルルル・・・・・・・」

ん？何だ？何かを見ているような目だ。釣られて標的が向いてる方向を向くと・・・・・

兵士

「はっ！」

そこまで離れてない岩の後ろに人が見えた。あの服装・・・・・プラネテューヌの兵隊さん！？

何で国の兵隊さんがここに！？ってマズイ！！このドラゴン、もしかして獲物を変更したのか！

エンシェントドラゴン

「グアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！！」

ゴォォォォォオオオオオオオオッ・・・・・

まさかブレスを吐きだそうと！？ココから逃げたとしてもこの距離と放射速度からして間に合わない！！

ダッ！

兵士

「なっ！」

僕は兵隊さんの前に立って今ある杭で出来る術の中で、最高の防御術を行使した。

ズォォォォッ！！

【SPスキル・設置系・術式設置・ネイチャーウォール】

これは目の前に自然物で出来た壁を作る術！山地だから土や岩で構成されている！防げるか！？

ボァァァアァアアアアアアアアアッ！！！

【エネミースキル・攻撃系・ドラゴンブレス】

ドォォォオオオオオオオォォオオオオオオッ！！！

ユウザ

「グゥゥゥゥッ・・・・・」

想定外だ。まさかこんな所で人に出くわすとは・・・・・・

シュゥゥゥゥゥ・・・・・・・

作った壁は、ブレスが止んだ後、ボロボロと崩れ去った。杭は残り０となった。

方陣に使った物は、術の発動と同時に爆ぜて消滅してしまう。

その為、跡を残すものでもない限り証拠も残らないから、暗殺向きではある。

崩れ落ちた壁の先では、さらに想定外な事が起こっていた。

エンシェントドラゴン

「グルルルルルルルルルルルル・・・・・・・・・」

何と、ドラゴンは汚染化されていて、傷は全快していた。・・・・今日は厄日かな・・・・

エンシェントドラゴン

「グルルォォォオオオオオオオオオオオオ！！！」

それよりも、早く兵隊さんを逃がさないと・・・・・

ユウザ

「兵隊さん！早く逃げ・・・・」

後ろを振り向いたら、もうそこに兵隊さんはいなかった。驚いて逃げたのだろう。・・・と思ったら・・・・

兵士

「・・・・・・・（ブクブク・・・・）」

岩の陰で気絶していた。安全な所に逃がす隙もなさそうだし・・・・これ、庇わないといけないのかな・・・・・

こっちはハンデを、向こうは恩恵を、それぞれ別々の物を与えられ、第二ラウンドが始まった。