No.527308 真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ二十二2013-01-03 21:36:33 投稿 / 全8ページ 総閲覧数:6148 閲覧ユーザー数:4779 |
「それではこの投書の事案について賛成の者は挙手を」
水鏡がそう述べると、五人全員が手を挙げる。
「ならば、これは実行に向けた骨子の作成に入るという事に決定しました。
それでは次の…」
現在行われているのは、軍師と水鏡先生を含めた六人で領内各所に設けら
れた投書箱に寄せられた投書の内容についての審議であった。投書箱とは
おそらく日本人の殆どが知っているであろう「目安箱」を基に考案された
物である(内容はほぼ目安箱であるが)。
それに入っていた投書の内容を審議し、役立つ物を採用していくのが六人
の仕事の一つであった。
本来であれば筆頭軍師兼筆頭政務官である朱里が司会進行も行うべき所で
はあるのだが、一刀が「議論が紛糾した場合、冷静になって調停出来る者
が必要だ」との一言で政務担当であり、北郷軍の中では最も最年長の水鏡
が司会進行兼調停役という形で場を取り仕切っていたのである。
(最年長といっても二十代である事は改めて付け加えておくものである)
とはいっても、大体の物事は多数決で決まり、それを担当するのも賛成し
た者の中から決めるので場が紛糾する事は少なく、通常は司会のみで終わ
る事が多く、今回もここまでは順調に進んでいたのであった。
しかし、今回最後に読み上げられた一つの投書がこの場に嵐を巻き起こす
事となったのであった。
「それでは最後の投書で…えっ?」
突然、水鏡が変な声を上げたので皆が訝しげな眼を向ける。
「どうされましたか?何かそれに変な事でも書かれていたのですか?」
「いえ、変というか、何と言えばいいのか…」
朱里の問いかけに水鏡は一層言いよどむ。
「これは怪しいですねー。では風が代わりに」
何時の間にか水鏡の脇に来ていた風がその投書を取り上げ、読み始める。
「ええーっと…『初めまして。私、一目で北郷様に惚れちゃった☆ それでお嫁
さんになりたいんだけど~どうすればいいか教えて♪』…何ですか、これは?」
「はわわわわわわ…ダメでしゅ!却下でしゅ!すぐに焼き捨てるのでしゅ!!」
風が読み上げた内容を聞いた途端に朱里が全力で否定し投書を捨てようとする
が、それを輝里が先に取り上げ高く掲げてしまった。朱里は取ろうと一生懸命
に飛び上がるが、身長差は如何ともしがたく、取る事は出来なかったのである。
「確かにそれは重要な事よね。一刀さんのお嫁さんになるにはどうすればいいか、
私も気になるわ。皆はどう?」
輝里のその質問に水鏡を除く皆の目の色が変わる。
「あわわ、私も知りたいでしゅ!」
「…そうね、一刀様の妻になれる条件というのは気になるわね」
「風も知りたいですねー」
「ダメでしゅ、そんなのダメでしゅ!!」
朱里は一生懸命取り消そうとするが、一度燃え上がった乙女心を鎮める事など
出来るはずも無く、皆で一刀に聞きに行く事になった。
(ちなみに朱里は嫌がってはいたが、半ば強引に連れてこられていた)
「というわけで、この投書の内容に答えてくださいますか?」
突然やってきた軍師達に一枚の投書を突きつけられた俺は、事態が飲み込められ
ないまま、投書に目を通した。
「何だ、これ…これを俺にどうしろと?」
「どうもこうもないです。そのままです。さあ、お答えを!」
輝里がそう言って迫ってくる。
「答えって…俺は朱里以外と結婚するつもりはないけど?」
俺は至極まっとうな答えを言ったつもりだったのだが…朱里を除く全員がそれに
納得する表情を見せなかった。
「そういう答えを聞いているのではありません!一刀様がどのような女性を妻に迎え
たいかを聞いているのです!」
燐里がそう詰め寄ってくる。
「ど、どのような…って?」
「つまりはお兄さんの女性の好みという事ですねー」
風が俺の疑問にそう答える。
「好み?」
「そう、例えば『胸が大きい』とか『家庭的な』とかですねー」
「あわわ、ご主人様は胸が大きい人がいいんでしゅか!?」
「待て、雛里!何時そんな事を言った!?そんな事は絶対無いから!」
うう、危ない危ない…胸関係の事は速攻で否定しておかないと後で朱里が怖いしね。
「それではお答えください。ズバリ!一刀さんの女性の好みは?」
ううっ…答えなきゃダメなのか?俺はチラッと朱里を見るが、完全に涙目で俺を見て
いる…その目は完全に何かを訴えているかのように。仕方ない、ならば…。
「俺の女性の好みは…」
俺がそこまで言いかけると皆が唾を飲み込む音が聞こえる。一体、何をそこまで期待
してるんだ?だが答えは一つ!
「ズバリ、朱里だ!」
俺がそう言い切ると朱里の顔は喜びに溢れていたが、
「「「「そんな答えが聞きたいんじゃないです」」」」
雛里・輝里・風・燐里の声が完全にそうハモッていた。
「好みが朱里とはどういう意味ですか?皆が納得いく答えをお願いします」
燐里がそう詰め寄ってくる。ここで変な事言ったらいつものまくし立てが来るであろう
事は分かっているし…。
「正直、皆が納得する答えをここで言う事は出来ない。でも、俺はこれからずっと朱里と
生きていくと決めているんだ。だから俺には朱里以外の答えは無い」
俺がそう言うと、一瞬それで納得するような気配を見せたが、風の一言で再び場の空気
が変わる。
「それでは蓮華さんとの事はどういう事なんですかー!?」
「えっ…何故それを…!?」
「皆、既に知ってますよー。ねぇ」
「「「はい、」」」
何故だ…俺は誰にも言ってないし、朱里もその事については何も言ってないのに!?
「お兄さん、まさか本気でバレてないなんて思っているわけではないですよね?」
そう言う風の声には少し怒気が混じっていた。
「北郷さん、男の嘘なんて女性はあっさり見破る物なんですよ。隠し通せるなんて思って
いる時点で大間違いです」
水鏡先生がため息まじりにそう言った。
「そうなのか…?でも、あれはいろいろと止むに止まれぬ事情があって…」
「へぇ~っ、一刀は女性との関係を『事情』の一言で片付けるんだ?」
突然入って来たその声の方を向くとそこには…。
「れ、蓮華!?何故、ここに…」
「あら?数日前に連絡したはずだけど?ねぇ、朱里?」
「ひゃ、ひゃい!」
「本当はいろいろとややこしくなっていた境目の問題についての話し合いで来たんだけど、
先に片付けなきゃならない問題が…アルヨウネ、フフフ」
ひぃ!蓮華からも黒い気が洩れ出してる!!ここは逃げの一手で…。
「待て、北郷…まさかお前逃げるつもりか?」
逃げようとした方向には既に思春がいてさらに俺の首筋には剣があてられていた。
「いや、待て…朱里、何とかして…」
俺は助けを求めて朱里の方を向いたが、
「ゴ主人様…確カニ蓮華サントノ事ハ私カラ言イ出シタ事デスケド…ソレガ原因デ他ノ人
トモトイウノナラ…イッソ私ノ手デ…」
何故か朱里も黒くなっていた…意味分かんないですけど!!
「ゴ主人様…」
「一刀…」
「一刀サン…」
「一刀様…」
「オ兄サン…」
「あわわ、ご主人様…」
「北郷…観念してここで死ね」
一見すると、七人の美少女に囲まれているように見えるが…羨ましく思う奴!本気でそう
思うなら今すぐ代わってくれ!お願い!!
「い、嫌だーーーーーー!!」
俺は一瞬の隙を衝いて逃げ出す。
それから何処をどういう風に逃げたかまったくといっていいほど記憶が無かった。
気が付けば俺は城外の山中の池の中に首から下が沈んだ状態でいたのであった。うう…この
ままじゃ風邪をひきそうだけど城に戻った時の事を考えると…。
「はっくしょん!!」
このまま風邪で倒れる方がマシだ!!
そしてそのまま俺は一晩そこで過ごし、次の日、しっかり風邪をひいてしまったのであった。
「あらあら、北郷さんも私に助けを求めてくださればあの娘達を落ち着かせましたのに…まあ、
これはこれで好々ですかしらね」
水鏡は一人そう言って何事も無かったかのように政務に戻っていったのであった。
続く(はっくしょん!!)
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
昨日はまだ未定とか言っておきながら、二日連続で投稿です。
ちなみにこの話は三時間で書きました。
本当はもう少し違う形にするつもりだったのですが…何故こうなった?
いろいろとよく分からない展開となりましたが、ご勘弁の程を。
後、二~三話程度、拠点の話をお送りしてから、本編へ入りたいと考えて
います。
それでは次回、外史動乱編ノ二十三でお会いいたしませう。
追伸 ちなみに字が書けない人が投書する場合、書ける人に代筆してもらうという
システムになっております。
そして、一刀が風邪をひいた後、誰が看病するかでまた揉めたというオチが
あったりしますので。
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お待たせしました!新年早々二日連続投稿です。
今回は拠点話の第三弾です。
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