No.526965

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ二十一


 新年明けましておめでとうございます。

 2013年最初の投稿でございます。

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2013-01-03 00:06:33 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:6145   閲覧ユーザー数:4827

 

 ~洛陽にて~

 

「うむ、確かに受け取ったぞ。ご苦労じゃったな」

 

 劉弁は水鏡より受け取った包みの中を嬉しそうに見ながら声をかける。

 

「いえ、これも主命でございますれば」

 

 劉弁が一刀へ依頼していた品を所用にて洛陽を訪れた水鏡が代理で渡していた

 

 のであった。

 

「確か、お主はこちらにも知己が多かったな。こちらにいる間に旧交を温める

 

 と良いぞ」

 

「はい、では私はこれにて」

 

 水鏡はそう言って、御前から下がった。

 

 ・・・・・・

 

 そして、一刀の役宅にて。

 

「水鏡殿も無事に役目を終え、何よりじゃな」

 

「ええ、私達も護衛として安堵しましたわ」

 

 水鏡の護衛として共に来ていた紫苑と桔梗がそう声をかける。

 

「お二人にもご心配をおかけしました」

 

「はっはっは!儂らのした事など、ただ兵を率いてここに来ただけの事。水鏡の

 

 役目に比べれば大した事もないわ!!」

 

 桔梗がそう笑い飛ばすと、紫苑もそれに頷く。

 

 そして、まだ昼下がりだというのに三人は酒盛りを始めてしまった。

 

 しかしそれに熱中するあまり、一人置き去りになってしまった者があるのをすっ

 

 かり忘れてしまっていたのであった。

 

 

 

「わ~っ、洛陽って人で一杯だな~」

 

 紫苑の娘の璃々は一人で街中にいた。璃々は母親と一緒に洛陽に来ていた(一刀

 

 の許可の上である)のだが、母親が璃々を放って酒盛りを始めてしまったので、

 

 退屈のあまり一人で出てきてしまったのである。しかし勝手の知らない街の事、

 

 道に迷ってしまうのにさほどの時間もかからなかったのである。

 

「此処は何処なの…お母さん…ぐすっ」

 

 最初の内こそ気丈にしていたが、まったく帰る手がかりも見出せない状況に、すっ

 

 かり泣き顔になっていたのである。

 

「そこの娘、このような時刻にここで一人でどうしたのだ?道に迷ったか?親は何処

 

 にいるのだ?」

 

 そこへ声をかけてきたのは、たまたまそこに通りがかった華雄であった。

 

「うん…お母さん達がお酒を飲んでて、璃々に構ってくれないから一人で出てきちゃ

 

 ったら帰る道が分からなくなっちゃって…」

 

「家は何処なのだ?」

 

「分からない…今日初めて来た所だから…ご主人様の家だって聞いてるけど…」

 

 璃々のその答えに華雄は困った顔になる。

 

「それではどうしようもないな…仕方ない、私も一緒に探してやるから、な」

 

 華雄はそう言って手を差し伸べる。

 

「ありがとう…私は璃々」

 

「璃々か、私は華雄だ」

 

 こうして少々ちぐはぐな二人の珍道中が始まったのであった。

 

 

 

「どうだ、璃々?ここの辺りに記憶は無いか?」

 

「うう~~~ん、分からないよぉ~…」

 

 此処まで何度も同じような会話が繰り返されてきたが、結局同じ事の繰り返しで

 

 全くといっていいほど進展が無かったのであった。

 

 正直、華雄もこの状況少々辟易していたのであるが、まさか幼子を放って帰るわけ

 

 にもいかず、途方にくれていた。

 

「ふ~む、これでは埒が開かないなぁ。もうすぐ日も暮れるし、このままではなぁ…」

 

「ごめんなさい…璃々が知らない街に勝手に一人で出て来たから…お母さんにも、華雄

 

 お姉ちゃんにも迷惑かけちゃってる…ぐすっ」

 

「泣くな、璃々。別に私は迷惑だなんて思っていないぞ。それにな、本当に自分の行動

 

 に後悔するのなら、今後は慎めば良い事だ。私も前に敵に勝手に突撃した事があって

 

 な、危うく殺されそうになった時に援軍に助けてもらったのだ。それからは、勝手な

 

 突撃はやめようと心に誓ったものだ」

 

 泣きそうになる璃々を華雄は懸命に慰めようとするが、華雄自身があまりそういう事

 

 に慣れていない為、何だか勇ましい話になってしまっていた。

 

「ふ~ん、華雄お姉ちゃんって強い人なんだ?」

 

「え?…ああ、強いぞ。そこらの兵士の二十人や三十人など一瞬で粉砕出来るぞ」

 

「でも、璃々のお母さんも強いよ?」

 

「ほう、お主の母も武官なのか?」

 

「うん、お母さんの弓はすごく遠くの物でも当てるんだよ」

 

 璃々のその話を華雄は感心したように聞いていた。

 

 

 

 その時、近くの店から大きな音が聞こえた。

 

「む、何だ今の音は?」

 

「あっちの方だよ!」

 

 二人は当初の目的も忘れて音のする方へと向かっていった。

 

 二人がそこへ行くと、店の主人が数人のゴロツキに因縁をつけられている所であった。

 

 既に店の棚は壊されていた。先程の音はこれが壊された音だったようだ。

 

「ひ、ひぃ!やめてください!!私が一体何をしたと…」

 

「うるせぇ!何時まで経っても上納金を納めねぇから、こうやってわざわざ貰いに来て

 

 やったんじゃねぇか!」

 

「そ、そんな物、払う必要なんか無いじゃないですか…」

 

「ほう、俺達はな、恐れ多くも陛下から命ぜられているんだよ!俺達に逆らうって事は

 

 陛下に逆らうって事だって分かってるのか、おい!!」

 

 ゴロツキはそう言って凄んでいた。

 

「ねぇ、華雄おねえちゃん。あの人達が言っているのは本当なの?」

 

「まさか陛下がそのような事を命じるはずは無い!あやつらが嘘を申しておるのだ。私が

 

 懲らしめてくるから璃々はここに…って、璃々?あっ!!」

 

 華雄が気付いた時、既に璃々はゴロツキに近付いていたのであった。

 

「ねぇ、おじちゃん達。嘘はダメだよ!陛下はそんな事言ってないよ!!」

 

 

 

 璃々のその声にゴロツキは一斉に璃々の方を向く。

 

「何だ、このガキ…つまらねぇ事を言うなら、ガキでも容赦しねぇぞ!!」

 

「嘘じゃないなら、証拠を見せなきゃダメなんだよ!」

 

 ゴロツキは璃々に怒鳴りつけるが、璃々は臆する事無くじっとゴロツキを見つめる。

 

 その子供に似合わぬ眼力の強さに、ゴロツキは少し怯む。

 

「ねぇ、どうなの?嘘なの、本当なの!?」

 

「ぐっ…この、クソガキが!!もう我慢ならねぇ、これでも喰らって大人しくなりやがれ!」

 

 ゴロツキは璃々を殴ろうとするが、

 

「貴様ら…子供を殴るか!!恥を知れ!!」

 

 間に入った華雄に逆に殴り飛ばされていた。

 

「何だ、このアマ…俺達を何だと思っていやがる!恐れ多くも…」

 

「我が名は董相国閣下が筆頭武官、華雄である!陛下の名を騙る不届き者めらが…成敗して

 

 くれるわ!!」

 

 当然、数人のゴロツキ如きが華雄に敵うはずも無く、全員のされたのは言うまでもない事

 

 であった。

 

 ・・・・・・・

 

「ありがとうございます、華雄様。おかげで助かりました」

 

 ゴロツキに襲われていた店主が華雄に頭を下げる。

 

「何、私は当然の事をしたまでだ。礼を言うなら私よりこの子に言ってくれ。年にも似合わ

 

 ぬ勇ましさを持ったこの子にな」

 

「はは、そうですね。ありがとう、お嬢ちゃん。助かったよ」

 

 璃々はそれに満面の笑みで応えていた。

 

 

 

「良いか、璃々。あのような輩に立ち向かうにはな、力が必要なんだぞ。お前のような子供

 

 が不用意に近付いたら、どんな目に遭わされるかわからないからな」

 

 再び璃々の家探しに戻った華雄はそう諭していた。

 

「うん、大きくなったらお母さんや華雄お姉ちゃんみたいな強い人になるよ」

 

「ああ、その意気だ…そうだ、璃々の母御の名は何と言うのだ?」

 

「お母さんの名前は…黄忠!」

 

 その名を聞いた華雄は思い当たる所があったらしく、璃々を連れて歩いていった。

 

 ・・・・・・・

 

「璃々!!」

 

「お母さ~~~ん!!」

 

 二人が一刀の役宅に近付いたその時、門前の辺りにいた紫苑が璃々の姿を確認するや一目散

 

 に駆け寄ってきて璃々を抱きしめた。

 

「お母さん…ごめんなさい、ごめんなさい」

 

「こっちこそごめんね、璃々。放っておいて…」

 

 二人はしばらく抱き合った後、その場に佇んでいた華雄に気付き、慌てて礼を取る。

 

「華雄将軍ですね。娘を連れてきていただき、ありがとうございます」

 

「いや、私はたまたま通りがかっただけ。璃々よりそなたの名を聞いて、もしやここではない

 

 かと思ったまででな。良かったな璃々、母者に会えて」

 

 華雄はそれだけ言うとそのままその場を去っていった。

 

 

 

「随分と活躍じゃったようだの、華雄」

 

「まさか陛下のお耳にまで入っているとは…お恥ずかしい限りで」

 

「今回のゴロツキ共は妾の名を騙っておったからの。それを成敗したのは重畳じゃ。奴らの

 

 背後におった者達もまとめて処刑してやったし、丁度良い掃除になったわ」

 

 数日後、劉弁は華雄にそう話をしていた。

 

「しかし、その黄忠の娘…なかなかの胆力じゃな。行く先が楽しみじゃ」

 

「はい、もう少し大きくなったら鍛えてやると約束しました」

 

「そうか、じゃが猪にしてはいかんぞ」

 

「ぐっ…私とて何時までも猪ではありませぬ!」

 

「ははははは!」

 

 華雄の言葉に劉弁は笑い声をあげていた。

 

 ・・・・・・・

 

「ほう、洛陽でそんな事が」

 

 俺は洛陽に行っていた三人から事の顛末と璃々の武勇伝を聞いていた。

 

「申し訳ありません。幼子を放っておいて酒盛りに興じてしまうなど…汗顔の至りです」

 

 水鏡先生はそう言って顔を赤くしていた。紫苑と桔梗もまた同じであった。

 

「たまにはそういうのも悪くはないよ。それに華雄が璃々に言ったんだろ『本当に自分の

 

 行動に後悔するのなら、今後は慎めば良い』ってね。なあ、璃々?」

 

「うん!」

 

 璃々は力強い眼で満面の笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

                                    続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 さて、2013年初の投稿は北郷軍のお姉様方と璃々ちゃんのお話でした。

 

 といっても、お姉様方はすぐに酒盛りに入ってしまい、ほとんど璃々

 

 ちゃん(&華雄)の話でしたが…。

 

 さて、次回は…まだ未定です。いろいろと考えてはいるのですが…。

 

 

 一応、次回外史動乱編ノ二十二でお会いいたしましょうということで。

 

 

 

 

 追伸 命さんが一刀に頼んだ物の中身は秘密だと勅が下っておりますので

 

    詮索せぬように。

 

 

 

 

 

 


 
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