第百七十七技 成りし策
キリトSide
ははは、中々効くもんだな、ケイタのパンチも…。
「キリト、お前!」
「くっ!?」
今度はテツが掴みかかってきた。そう思われても仕方の無いことはしたがな。
「なんで、アスナがいるってのに!」
テツに言われてアスナの方を見ると今にも泣きそうな表情だ。俺だって、分かっているさ。
「待ってテツ!」
「止めるなよ、ヤマト!」
「止めるに決まってる! キリトはサチにキスしてないんだよ!」
「「「………え?」」」
「ヤマト、気付いていたのか?」
テツを止めようとするヤマト、彼が言った一言にテツ、ロック、アスナは驚いている。
俺がサチにキスをしたフリをしていたのに気付いたのか、やるな…。
「ど、どういうことだよ!?」
「キリトはサチに顔を近づけて話しかけただけだよ。何を言ったのかは分からないけど…」
「ホ、ホントなの、キリトくん!?」
「ああ、けどなんで分かったんだ?」
ロックはヤマトに訊ね、彼はそのまま答えた。アスナも真相を俺に聞いてくる。
俺は全員の視覚に入らないように行動したんだがな。
「完全に偶然だったんだけど、実は窓に映っていたんだよ」
そう答えたヤマト。なるほど、そういうことか。それは盲点だったな。
「ケイタとサチの為っていうのは分かるけど、それでキリトとアスナが傷ついてしまったら意味がないよ」
「……すまない…」
確かにヤマトの言う通りだ。
俺は嫌われるのには慣れているが、アスナの心に傷をつけてしまった。
アスナの側に行き、彼女の頭を優しく撫でる。
「ごめんな、アスナ。いやだった、だろ…」
アスナは無言のまま俺に抱きついてきた。当然ながら優しく抱き締めて、頭も撫でておく。
「わりぃ、キリト。俺、知らなかったからって…」
「いや、俺が勝手に仕出かしたのが原因だ。気にしないでくれ…」
それでもテツとロックはバツが悪そうな顔をしている。アスナも一向に離れようとしない。
これは本当に悪いことをしてしまった…。
「じゃあ僕達はケイタ達の方に向かうよ。キリトとアスナは自宅に帰ってゆっくりした方がいいよ」
「俺が招いたことだ……せめてケイタには謝っておきたい…」
ヤマトがそう言ったが俺はついていくことを決めた。
「それなら行こうぜ。キリトもそっちの方がスッキリするだろうし」
「そうだね。じゃあ行こう」
ロックが構わないだろうと言いヤマトも納得したようだ。
俺達はケイタとサチの許へと向かう。アスナは俺の腕に抱きついたまま歩いている。
キリトSide Out
ケイタSide
「………そういうわけで、わたしはキリトに、離れたらここに行くように言われただけなの…」
「そうだったんだ…」
サチから事情を聴き、キリトの行動の意味が分かった。
彼は俺達の為に、俺が抱いている気持ちを気付かせる為にやってくれたんだ。
感謝の想いが溢れてきた……が、同時に後悔の念と大量の冷や汗が流れる感覚に襲われた。
「ど、どうしよう、俺…」
「どうしたの、ケイタ?」
「俺……キリトのこと殴っちゃった…」
「………」
サチは言葉が出ないようで、考え込んで一度深呼吸をしてからこう言った。
「ケイタ……死ぬ時は一緒だよ…」
うん、まったくもってそういうことになりそうですよね、はい…。その時、
「はぁ、お前らは俺のことをなんだと思っているんだ…」
「「キリト、みんな!?」」
キリトが溜め息を吐きながら皆とやってきた。
ケイタSide Out
キリトSide
二人の会話が聞こえたので、思わずツッコミを入れながら出てきてしまった。
まぁ、俺の普段の行いが原因なんだろうけどな…。
「キ、キリト、その、さっきは…」
「ケイタ、すまなかった…」
俺はケイタが言い終わる前に自分から頭を下げた。こればかりは俺から謝らなければならないことだから。
「いや、それなら俺だって……俺が自分の気持ちに気付かなかったから、
キリトが気付くようにしてくれたのに、あんな…」
「そう言わないでくれ。俺も、他に幾らでもやりようがあったはずなのにあの行動を選んでしまった。
しかも、それでアスナまで傷つけてしまったんだ…」
「ぁ…」
そう言ったことで、アスナの様子にケイタとサチも気が付いたようだ。彼女の表情に少しばかり翳りがある。
「わ、わたしは大丈夫だよ! ホントに大丈夫」
そうは言うものの、俺の腕から離れようとしないのは説得力がないぞ?
「ほいほい、それじゃあお互い様ってことでいいだろ、な?」
「キリトはアスナまで傷つけそうになった、ケイタは鈍感だったってことで」
ロックとテツがそう言ったので、俺とケイタは互いに顔を見合わせると苦笑した。それもそうだな…。
「それじゃあ、二人は仲直りの握手ね」
「あ、それいいね♪」
俺はアスナに、ケイタはサチに背中を押されて向きあった。俺達は軽く笑みを浮かべてから握手をした。
「これで元通りだね」
「だな……あ、一つだけ違うぞ。ケイタとサチが上手くいった(笑)」
「「あ…//////」」
ヤマトが一言発してからロックが訂正するように言った。
ロックも気付いたか、この二人の間の空気が違うから余計かもな。
「おめでとう、サッちゃん♪」
「ありがと、アスナ///」
アスナとサチはお互いに手を合わせて喜んでいる。
「頑張れよ、ケイタ」
「ああ、もちろん!」
「んとに最高だぜ、お前は!」
「ちょ、やめろって、テツ」
俺はケイタに一言声を掛ける。テツから手荒い祝福を受けながらも楽しそうなケイタ。
やっぱりこいつらにはこういう雰囲気が似合うな。
「明日はもう一回宴会だな」
「い、いいってそんな…!」
「いやいや、これは毎回恒例の行事だ。逃げられねぇよ」
俺の提案にケイタは断ろうとするが、ロックの言う通りだ。仲間の為だしな。
「取り敢えず、今日は帰ろうよ。もう夕方だしね」
そう言ったヤマトの言葉で俺達は解散した。
黒猫団と別れて自宅に帰ってきた俺とアスナ。
俺が離れるのを許してくれず、何をするにも一緒だった。
料理を作る時も風呂に入る時も一緒。そして寝室に入った途端に…、
「ん、んちゅ……はん、んん…ちゅぴっ……ぁん…//////」
「ぅん…ん、ちゅっ……ふぅ…」
アスナにベッドに押し倒され、ディープなキスを行ってきた。
これにはさすがの俺も後れを取ってしまい、後手に回る。
「はぁ……今日は、このまま…//////」
「あぁ…」
俺はアスナの傷を癒し、不安を取り除く為に
キリトSide
To be continued……
後書きです。
とまぁ、まさかのヤマトが気付いていたということでした。
窓ガラスに映るという典型的なバレかたですがw
そしてアスナを癒すために本気になったキリトさん・・・ぱねぇっすw
次回で「黒猫編」は終わりです。
それでは・・・。
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第百七十七話です。
前回のキリトの行動が、まさかのフリでした・・・それに対してみんなの反応は?
どぞ・・・。