第89無人世界は森林と荒野が大半を占めている。
だが現在、その世界では大規模な戦闘が行われていた。
その中で特に激しいの地点では負傷者や死傷者も多数出ている。
――――ポイントα
三佐 「ゲイツ隊は敵の側面に弾幕を集中させろ! ネブレ隊はそのまま戦線を維持!」
一尉 「報告! 敵の右翼に展開していたヴォルフ隊との交信が途絶!! また、ヴォルフ隊の後方にいたマジュル隊に甚大な
被害が出ています!」
三佐 「なに!? ヴォルフ隊が!? 彼等は一流の武装隊で2個小隊もいるんだぞ!?」
一尉 「敵は違法魔導師に加えて質量兵器で武装しています! バリアジャケットでは重火器の質量兵器から身を守ることは困難です!」
三佐 「くそっ! マジュル隊を下がらせて予備部隊を2個小隊当てろ!」
一尉 「し、しかし、それでは予備部隊全てを使い切ってしまいますが!?」
三佐 「構わん! 戦線が崩壊して奴等の戦意を高める方が問題だ! それとHQに増援要請をするんだ!」
一尉 「りょ、了解!」
――――HQ
今作戦の司令部である次元航行艦『ミストルティン』は衛星軌道上を周回中であった。
そして、その司令官であるアヴァン少将が葉巻を咥えて苛ついていた。
アヴァン「ええい! まだ制圧できないのか!?」
参謀 「敵は相当数の質量兵器で武装しており、早期制圧が困難です。それどころか、こちらの被害が増える一方です」
アヴァンの補佐役でもあり、参謀でもあるヴァロン二尉が説明する。
アヴァン「そんなことは分かっておるわ! だが我々は世界を支配する管理局だぞ!? それをこのような野蛮な犯罪者共に後れを
取るなどあってはならん!!」
ヴァロン「はっ! 失礼しました」
アヴァンは無茶苦茶な思想で熱弁する。しかし、そんな彼をヴァロンは冷たい目で見ていた。
所詮は目先の欲に駆られたゴミか……と思い、自分がここに配属されたことを不幸に思った。
通信士 「ポイントαのハインツ三佐より増援要請。負傷者が多数でており、戦線維持が困難との事です」
ヴァロン「……如何なさいますか?」
本来ならすぐに増援を送る必要がある。しかし、生半可な戦力では返って被害が増えるだけだ。
アヴァン「ふんっ! 使えん奴め! 自分たちで何とかしろとでも言ってやれ!」
あまりにも非常な対応にヴァロンは見過ごせず、諫める。
ヴァロン「司令、それでは戦線が維持できません。ここはやはり、あの部隊に手を借りるしか無いのでは?」
アヴァン「例の部隊か……? しかし、それでは私の手柄が無くなってしまうではないか!?」
ヴァロン「……司令、戦線が崩壊しては手柄も何もありません。この場の選択肢は一つだけです」
救いようのない司令にヴァロンは本気で帰りたくなってきた。
アヴァン「ぐうぅ……仕方あるまい。まあ、あれだけちやほやされている部隊だ。拠点の一つや二つ、制圧してもらおうではないか!」
このクソ司令、最低なことに一部隊を敵拠点に捨て駒同然で扱い、手柄を横取りしようとしているのだ。
ヴァロン「(クズが……!)はっ! では彼等に出動命令を出します」
アヴァン「ふんっ! お手並み拝見といこうか」
キャシー「HQから出撃命令が出ましたぁ。内容は『ポイントαの敵拠点を制圧せよ』・・・ですぅ」
キャシーの報告で零冶は呆れた。
零冶 「早速泣きついてきた挙げ句に無茶を言ってくれるな」
エリス 「ですが、それは私達でなければの話ですわ」
バライカ「そうね……一人頭20人でどうかしら?」
ヘンリー「いや、40人だな」
ヘンリーは自信満々に口元を吊り上げて言う。
キール 「へっ! 俺がまとめて潰してやんよ!」
その発言を聞いた零冶は笑みを浮かべて意地悪をした。
零冶 「ほぅ? ならお前一人で援護なしで逝ってこい」
キール 「げっ!?」
エリス 「あら? 一人でやって下さいますの? それは大変助かりますわ♪」
バライカ「逝ってらっしゃい」
ヘンリー「……頑張れ」
キャシー「さすがキールさん、頼もしいですぅ!」
ミュー 「それじゃ、敵地の真上で落としてあげるから!」
それに全員が参加し、弄り倒す。
キール 「え!? い、いや……その…………調子に乗ってすんませんっした!」
零冶 「……冗談だ。そんな事させるわけないだろ?」
零冶が笑うと全員が笑った。その中でキールは、
キール 「(う、嘘だっ! 絶対に嘘だ! へんな間があったし、あの目……絶対に敵地のド真ん中に放り込む気だった!?)」
キールは素直に謝って良かったと安堵した。
零冶 「さて、お喋りはこのくらいにしよう。……各自、戦闘準備!!」
エリス 「ローズ!」
ローズ [はい!]
バライカ「カノン!」
カノン [イエス、マム!]
キール「相棒!」
ゲイボルグ[OK!]
ヘンリー「ヴォルケーノ!」
ヴォルケーノ[おうっ!]
DOG隊「「「「セットアップ!」」」」
零冶 「ルナ、封印解除」
ルナ [了解]
零冶の号令で全員が一斉にセットアップを完了させた。また、零冶も狂戦士の甲冑を着込む。
そしてミューが後部のハッチを開放する。
例え上空でも、血と硝煙の臭いが漂ってくる。
とても懐かしい臭いだ……
零冶 「コールサイン確認!」
エリス 「ドラゴン2、準備いいですわ!」
バライカ「ドラゴン3、準備良し!」
キール 「ドラゴン4、準備OKだ!」
ヘンリー「ドラゴン5、準備完了!」
キャシー「ドラゴン・マム、準備良いですぅ!」
全員の確認が終了すると、零冶はハッチに向かって歩き、
零冶 「……生き延びろよ」
DOG隊「「「「了解!!」」」」
降下を開始した。それに連れてエリス達も開始する。
零冶達に気づいた敵が標的をこっちに変えた。
各自は防御魔法を展開して銃弾や魔力弾を防ぐ。
そして着地を完了させた。
現在地は敵拠点から南東に1.0km離れた森林地帯である。味方部隊はここから西に1km弱にある荒野で、降下時に確認した限りでは敵は高台にトーチカや拠点を作っていた。
零冶 「行くぞ、ルナ!」
ルナ [ライフルモード!]
零冶はバレットを装備し、全員が前進する。
ポイントαでヴォルフ隊やマジュリ隊の後継をしているとある部隊では苦戦を強いられていた。
隊長 「くそっ!奴等、守りが堅すぎだ!」
その部隊での隊長が悪態を吐いた。
隊員1 「隊長! このままでは……」
隊長 「馬鹿野郎っ!! 俺達がここを死守しないでどうする!」
隊長は弱音を吐いた隊員を叱咤する。
そして、通信が入る。
HQ 『HQからノーブル隊。現在、援軍をそちらに出撃させた』
隊長 「こちらノーブル隊! 待ちくたびれたぞ! で、規模は?」
HQ 『一個小隊だ』
隊長 「はあ!?」
援軍の規模の小ささに隊長は激怒する。
隊長 「たかが一個小隊でどうしろって言うんだ!? 状況を理解しているのか!?」
HQ 『理解している故の処置だ。その増援は特別だ。一個小隊で十分対処できる』
隊長 「は? 何を言って…………っ!?」
その時、爆発音が響く。
音は敵の方角から聞こえ、尚も爆発が続いている
隊長 「い、一体……何が……?」
零冶 『ノーブル隊、聞こえるか? こちらはDOG隊隊長、黒澤零冶二等陸佐だ』
隊長 「DOG隊……って、もしかして、あのDOG隊か!?」
零冶 『ノーブル隊は直ちに後方へ退避しろ。後は我々が片付ける』
通信はそこで切れ、すぐにまた爆発音が聞こえてきた。
隊員 「た、隊長! 一体何が!?」
隊員が慌てて駆けつけて来た。そして、隊長は歓喜する。
隊長 「……勝てる、勝てるぞ! 増援はDOG隊だ! DOG隊が来てくれたぞ!」
隊員1 「……は!? あのDOG隊ですか!?」
隊員2 「やった……俺達、助かるぞ!」
隊員3 「みんなー! DOG隊が来てくれたぞーー!!」
零冶達が来てくれたことに部隊全員の士気が上がっていった。
そして、DOG隊の作戦参加の報せは瞬く間に全部隊に広がり、攻勢に出た。
零冶とヘンリーが砲撃を行い、今し方最後の一発を撃ち終えたところだ。
ヘンリー「……こんなものでしょうか?」
零冶 「ああ、良いだろう。それじゃ、後は各自に任せる。全員、突っ込むぞ!!」
DOG隊「「「「了解!」」」」
零冶を先頭にDOG隊が進撃する。
違法魔導師「敵だ! 迎え撃てー!」
零冶 「無駄なことを……」
零冶は一瞬で敵に肉迫し、黒翼で斬り裂く。
他の魔導師達も零冶を狙うが、エリス達がそれを許すはずも無く、敵を切り捨て、殴り倒し、撃ち抜き、突き刺していく。
その時、まだ退避が完了していない味方が居て、口々に呟いていた。
隊員1 「す、すげぇ……」
隊員2 「人が……まるでおもちゃみたいに飛んでいるぞ!?」
隊員3 「か、勝てる……俺達、まだチャンスはあるぞ!!」
隊員4 「おい、お前等!DOG隊に続けーー!!この戦い、勝てるぞ!!」
隊員達 「「「「おおーーーー!!!!」」」」
零冶達がどんどん突き進む中、他の部隊達が一気に攻勢に出た
零冶 「まったく、退がれと言ったのに……物好きな奴等だ」
エリス 「仕方ありませんわ。それほど頼りにされているという事です」
零冶 「それを裏切る形になるのは心苦しいがな……」
エリス 「……はい」
零冶はどんな理由であれ彼等を裏切ることが胸を痛める。
バライカ「隊長、ポイントαを制圧しました」
そこへバライカから制圧の報告を受ける。
零冶 「ああ、ご苦労さん。次は二手に別れて行くぞ。エリス、キール、ヘンリーはポイントβ、俺とバライカはポイントθへ攻め込む」
ポイントβはαから北西に2kmの地点、θは北へ2.5kmの地点にある。
DOG隊「「「「了解!」」」」
零冶 「それじゃ、散開!」
バライカ意外がポイントβに向かって行く。
零冶 「さあ、始めようか」
バライカ「はい!」
零冶 「我が意に集いし友たちよ、我が呼びかけに答えし者共よ
汝等の血肉は我が血肉なり
汝等の痛みは我が痛み!
汝等の怒りは我が怒り!
我今此処に『焔の契約』において汝等を召喚せしめん!
飛べ! 飛竜よ!
駆けろ! 牙獣よ!
殺せ! 甲殻種よ!
吼えろ! 獣竜よ!
喰らえ! 海竜よ!
今再び我の前に姿を現し、我に仇なす敵を蹂躙せよ!!」
零冶の長い呪文により数多の魔法陣が現れる。
飛竜種、牙獣種、甲殻種、獣竜種、海竜種。様々な種族が零冶の目の前にその巨体を現す。
ナル 『ご主人様ぁー!!』
そこへナルガグルガのナルが零冶に飛びつこうとするが零冶はヒラリと躱す。
ナル 『あいたっ!? うぅ……避けるなんて酷いですっ!』
零冶 「アホ! お前に飛びかかられると潰れるわ!」
あくまでも零冶は人間。大きさなんて比べるまでも無くナルが大きい。
ノノ 『兄様ぁ~、お久しぶりですー!』
久しぶりにカムが姿を見せる。
だが、その後ろに酷く怯えていたカムがいた。
カム 『ノノ怖いノノ怖いノノ怖いノノ怖いノノ怖いノノ怖いノノ怖いノノ怖いノノ怖い』
何やらブツブツと呟いている。
零冶 「何があった……?」
ノノ 『え? お兄ちゃんにちょこ~っとお仕置きしただけだよ? 自分一人で兄様に会うなんて…………許せない』
ノノは最後だけ雰囲気が豹変した。所謂ブラックノノだ。
カム 『ノノ怖いノノ怖いノノ怖い…………い、嫌だ! 鬣を毟るのは止めてぇええええ!?!?!?』
そしてカムが発狂する。
零冶 「おい誰かアイツを止めろ」
メノウ 『仕方あるまい。ほれ! シャキッとせんか!!』
カム 『あばばばばばばば!? …………プシュ~』
カムはメノウの電撃により丸焦げになった。
それに対して誰もカムを哀れむ事は無かった。勿論、ノノも。
シラユキ『若様、そろそろ参りましょう』
クロガネ『早く暴れたくてうずうずしてんだよ!』
ディオ 『行っていい? 行っていいよね!?』
ジェビア『主……行ク。敵……喰ウ』
ヴァシム『主ノ為ニ、敵ヲ殺ス』
血の気が多い者達が出撃を今か今かと心待ちにしている。
零冶 「分かったよ。それじゃ……好きに暴れてこい!!」
モンスターズ「「「「「「■■■■■■■■ーーーーーッ!!!」」」」」」
仲間達は雄叫びを上げながら突進していく。
手加減をしろとは言ってない。好きに暴れることを許可して貰い、闘争本能を剥き出しにして敵に突っ込んでいく。
違法魔導師「な、なんだアレは!? 銃が効かない!?」
次元犯罪者「こっちに来るぞ!?」
違法魔導師「に、逃げrぎゃあああああああ!!」
次元犯罪者「うわぁああああああ!!」
違法魔導師「い、今すぐ逃げろ! コイツら……人を喰うぞ!?」
次元犯罪者「だ、だずげっ!?」
違法魔導師や犯罪者は荒れ狂うモンスターに恐怖し、戦線が一気に崩壊する。
ここに居るモンスター全ては肉食であり、人を喰うことに躊躇いが全く無い。
しかし、喰っているのは一部のモンスターであるが。
敵は逃げ惑うが、轢かれ、潰され、刺され、燃やされ、斬られ、殴られ、喰われていく。
最早これは戦いに非ず。
一方的な虐殺である。
そして瞬く間に敵拠点が制圧されていく。
??? 「あれは…………」
しかし、それを見ていた者達がいた。
??? 「ほう、人間でありながら竜を従えるか……より一層楽しみになってきましたな、ゾッド殿」
ゾッド……使徒最強である古強者は竜を従えている人間を見て驚いていた。
グルンベルド「ゾッド殿?」
ゾッド 「……おかしい。狂戦士の甲冑はいくつか存在するが、あれほど禍々しい甲冑は一つしか存在しない筈だ」
ゾッドは零冶が着込んでいる甲冑をよく知っている。嘗て己の
ゾッド 「こちら側か、それともただの偶然か。……いずれにせよ……面白い!」
ゾッドが獰猛ね笑みを浮かべる。
グルンベルド「では?」
ゾッド 「全軍を出す必要は無い。この俺が相手をする。手は出すな」
グルンベルド「ですが……いえ、失言でした」
ゾッド 「分かればいい」
グルンベルドは自らも出たいと主張しようとするが、ゾッドが一睨みすることで引っ込んだ。
そしてゾッドは地面が抉れるように駆けていく。
零冶がいる場所へ……
零冶 「ん?」
零冶はそろそろ終わるだろうと見切りを付けて仲間達を帰していた。今残っているのはカムとノノだけである。
カム 『アニキ……嫌な予感がするぜ』
ノノ 『……怖いよ』
カムが冷や汗を流し、ノノが怯えている。
バライカ「カムさん達が……怯えている?」
零冶 「なに……?」
モンスターの中でも剛種と呼ばれる彼等が怯える程の何かが近づいているのだ。
零冶は今までに無い悪寒がした。
そして、それは目の前に突然現れた。
カム 『来たっ!』
ノノ 『っ!?』
その者はかろうじて人の外見をしていた。
ただし、瞳は人間と違い縦長で、猿人のような容姿、手には大きな剣を持っていた。
零冶 「お、お前は!?」
ゾッド 「会いたかったぞ、異界の黒い剣士よ!」
そう、零冶が最も恐れていた相手……
ゾッド 「ぬんっ!」
カム 『がはっ!?』
ノノ 『お、お兄ちゃん!?』
ゾッドが剣を一振りし、零冶の前に立ちふさがっていたカムを斬った。
バライカ「う、うそ……たった一振りで零冶さんの仲間を……斬り捨てた?」
生半可な刃では傷一つ付けることが出来ないカムの剛毛を意図も容易く斬り裂いたのだ。
零冶 「カム!!」
カムの傷はかなり深い。このまま放っておけば確実に死ぬ。
零冶はカムに回復魔法を行使し、カムとノノを帰した。
零冶 「……何故いきなり斬った?」
零冶は静かに、しかし怒気を込めて問うた。
ゾッド 「俺の邪魔をしたからだ」
零冶 「そうか……まだ聞きたい事がある。何故お前は此処にいる?」
零冶は怒りを抑え、彼と話そうとする。
だが……
ゾッド 「言葉は無粋。押し通れぃ!!」
彼の前に言葉は不要だった。
零冶 「そうだったな。お前はそういう奴だったな……」
零冶はポツリと呟いた。
バライカ「た、隊長! 私も戦いm―――「お前はヒュバインに戻っていろ」っ! 何故ですか!?」
零冶 「言った筈だ。こいつの相手は俺がする。お前では足を引っ張るだけだ。それと、他の奴も撤退させろ。今すぐにだ!」
バライカ「っ! ………………わかり……ました……」
バライカは足手まといと言う言葉にショックを受けたが、零冶の言っている事も正しいので悔しいが退くことにした。
バライカ「どうか……お気を付けて……」
零冶 「ああ……」
バライカはその場を去った。
そして、零冶はゾッドと向き合った。
零冶 「何故見逃す?」
ゾッド 「弱者には興味が無い。我が求めるのは強者のみ!」
零冶 「そうか……。それじゃあ、始めよう」
零冶は斬魔刀を取り出し、構える。
零冶 「お前を……殺す!!」
そして両者が激突し、激しい衝撃波が辺りを吹き飛ばす。
後書き
更新が遅れて大変ご迷惑をお掛けしました!!
何とかゾッドを出すまでは出来たのですが……文章と展開が無茶苦茶ww
そして短い……
取りあえずもう少しで話が終わるので頑張って最後まで書きたいと思います!!
PS:もしかしたらこの作品を大々的に修正してリメイクを出す……かもしれませんww気が向いたらww
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虐殺と使徒