「あんなへましないわよ、あたしは元居た世界じゃエリートなんだから」
そう言ってエリーは胸を張る。エリートで両家のお嬢様でみんなから慕われている。というのがいつも彼女が言っている事だった。随分とマゾの多い世界だったんだな。
「夏樹、あとエリーも、なんかあったのか?」
ほとんどの人間が逃げ出す中、藍人が隣のクラスから入ってきた。エリーが学校に現れてからの忌避ぶりからも分かるように、俺以外では唯一彼女に物怖じしない人間が彼だった。
休み時間ももうすぐ終わろうとしている今、彼が駆けつけてくれることは期待していなかったが、この残虐非道、唯我独尊の女王と対峙するには心強い味方だった。
「別に? つまらないから暇つぶしを探しに来ただけ、いつもみたいにあんたたちと遊んでもいいわよ」
「はは、それはぜひ勘弁してもら痛っ」
軽口を叩くと今度はチョークが飛んできた。エリー、俺は黒板じゃないぞ。
「エリー、悪いけど他で時間つぶしてくれないか、俺たちはまだ授業が終わってないんだ。」
藍人がなるべく丁寧な口調で断りを入れると、エリーは露骨に嫌そうな顔をする。こういう顔をしたときはこちら側の言い分が通るときが一割、あちら側の言い分が通るときが二割、七割方は問答無用で連行されるのが、お約束のパターンだった。
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