「プロデューサー!」
夜のショッピングモール。
ジーンズショップの前に彼の姿を見かけたやよいは、大きな声で彼に呼びかけた。
「やよい、驚かすなよ。 それにそんな大きな声出して、周りに気付かれたらどうする? ……ま、元気なのは結構な事だがな」
「ごめんなさーい」
やよいは照れ笑いをしてみせる。
お互いオフタイムで私服姿でいる二人は、知らない人が見れば仲の良い兄妹のように見えるが、
今や、やよいもメジャーアイドル、誰かが目ざとくやよいを見つけないとも限らない。
もっとも、運良く誰にも見つかることもなかったが。
「やよいは買い物か?」
やよいの両手にぶら下がったスーパーの袋をみれば一目瞭然ではあるが。
「はい! プロデューサーは何をしているんですか?」
「俺はジーンズが古くなって穴が空いてしまったから、 新しいジーンズを買いに」
「でも、プロデューサーが今はいているの、穴空いてませんよ?」
「あぁ、今買った新しいのにはき替えたから」
「じゃあ古いのは……」
「この袋の中さ。長くはいていて愛着もあるから、捨てるのも心苦しくて」
「捨てるなんてもったいないです! プロデューサー、その穴が空いたジーンズ見せてもらっても良いですか?」
「ああ、いいけど」
膝の所に10円硬貨大のすり切れた穴が。
「これくらいなら何とかなります。 プロデューサー、これ、少し預かっても良いですか? 必ず返しますから!」
「あぁ、構わないけど。そうだやよい、今帰りならクルマで送って……」
彼が言い終わる前に、やよいは忽然と姿を消していた。
それから数日後……。
「プロデューサー、この前のジーンズですけど、出来たので見てもらえますか?」
事務所に出勤したやよいが、開口一番そう告げて、胸に抱えた袋からジーンズを取り出してみせる。
それは、膝の穴が空いた所だけではなく、至る所にアップリケやワッペンによる補修がなされていた。
「これ……やよいがやったのか?」
「はいっ!」
そして、さらに気付いたのは……。
やよいがはいているデニムのスカートと、それはお揃いだったこと。
一瞬「はくのがもったいない」とのど元まで出かけたが……。
「ありがとう、やよい。今度のオフ、お揃いのコレはいて遊びに行こうな」
少しほほを赤らめながら喜ぶやよいの笑顔は、プロデューサー専用のオーダーメイド。
Tweet |
|
|
5
|
0
|
追加するフォルダを選択
先にUpした千早ver.と同じネタでやよいver.を書いてみました。
やよいの私服のデニムスカートのパッチワークって、やよいが自分でやったのかな?
それとも母親の手も借りて?
……どちらにしてもお手製だよね、と想像力を膨らませてみたり。