「麗音さん!」
聖歌隊の練習から寮に帰る途中、シスターに呼び止められました。
「このロザリオ、あなたのでしょう。
校舎内に落ちていたのを見つけた生徒が、
『シスターなら持ち主に心当たりがあるのでは……?』と、私に届けて下さったのよ」
ブレザーのポケットを探ってみましたが、やはりあるはずのロザリオは、そこにありませんでした。
「あ、ありがとうございます……。でも、どうしてこれが私のだと……?」
「神のお導きですわね。それではごきげんよう」
柔らかく微笑んで、シスターは静かに去って行かれました。
このロザリオは、私にとって特別なモノです。
そう、お友達には「お守りみたいなもの」って言っていますが、
本当は……私と兄さんとを繋ぐ、大切なモノです。
兄さんと離れて、私が全寮制のこの学校に入ることが決まって……。
本当に私なんかが特待生の選抜試験に合格したことが信じられなくて、
そして、兄さんと離れ、独りで生活したり勉強しなければならないのが不安で、
入学を辞退するかどうか悩んでいた頃、
「僕が麗音の許にありますように」って、このロザリオと勇気を、私に与えて下さったんです……。
それ以来、肌身離さず持っているのです。
この学校はカトリックとは言っても、みんながカトリック信者というわけでもなく、
聖歌隊に入ったりロザリオを持ち歩いている私に、
「もしかして将来はシスターになるの?」と聞くお友達もいます。
実は幼い頃、シスターに憧れたこともありました。
どうしてかはよく覚えていないのですが、
「シスターになるというのは、神様と結婚すること、そして、みんなを平等に愛さなければならない……。
もちろん、お兄ちゃんだけを好きってわけにはいかないし、 お兄ちゃんともお別れしなければならないのよ?」
……って、母さんに諭されて、諦めた事だけは覚えています。
よく考えれば、その頃には、大人になっても兄さんとは結婚できないって知っていたのに、
自分の事なのにおかしいですね……ふふふ。
今宵はとてもよく星が見えます。
兄さんが好きなおおいぬ座のシリウスも、澄んだ夜空により明るく輝いています。
今日無事に戻ってきたロザリオを手に、私はそれを感謝し祈りました……。
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オリジナル妹キャラ・麗音(れのん)の、シスプリ風SSです。
麗音と兄を繋いでいるものとは……?