東倣葵童詩 ~ The Ballad of East and West.
青い瞳の巫女と今どきの妖怪による些細な話。
4話
クリスマスやら年末やらで街の人間達は忙しいようだが、
この神社はいつもと変わらず無人である。
とはいえ、最近は完全に無人というわけでも無かったのだが
今は神社の巫女が帰省中でしばらく帰らないので本当に無人だ。
ちょうど一年前もこうして神社の境内でぼーっとしていた気がする。
そして今年も、一年前と同じような正月を迎えるのかと思われた。
そんな時である。
淀 「おや誰か来たようだ。」
神社の入り口に人影が見えたので、私は分身を向かわせた。
神社にやってきたのは、奇妙な格好をした人間だった。
その人間は私の分身ではなく、こちらに向かって話しかけてきた。
こういう人間には覚えがある。
うちの巫女とはまた違う種類だが、まともな奴じゃ無い事も大体わかる。
淀 「ちょっとまて、何で今さら仙人なんかが出てくるんだ。」
? 「それはこっちの台詞ですわ。 何で今さら妖怪がいるの?
それも神社に。」
仙人は特に警戒していないように見えた。
私のような妖怪でも、もう昔ほどの力は残っていない事を知っているのだろう。
仙人は無用心に歩いてくると、そのまま神社にあがりこんで来た。
淀 「お前が思っているほど落ちぶれちゃいないんだけどねぇ。」
葛城と名乗る仙人は、近所の山に昔から住んでいたという。
あまり聞いた事の無い名前だったので、ほとんど山から出た事が無いか、
新米の仙人なのだろう。
とはいえ、珍しい客なので話を聞いてみる事にした。
淀 「妖怪が活発になっている?」
葛城 「鳥達の報告が急に増えていまして。報告のあった場所を見回っていたら、
その中心にこの神社があったというわけです。」
仙人の話によると、どうやらこの神社周辺では
妖怪の動きが以前より活発になっているらしい。
神社から移動する事がほとんど無いので、周辺の事は把握していないのだが
ひとつだけ心当たりがあった。
・・・先日の信号機である。
淀 「そんなに活発なのかい。
私の前には一度も姿を見せないのに。」
葛城 「あらご存知無いので?
私はてっきり、あなたがその妖怪達の頭かと思っていたのに。」
淀 「そんな物騒な事をする気は無い。
それに私はここを守らなくてはならんのだ。」
葛城 「まあそうでしたの。 でも妖怪しかいないんじゃあねぇ・・・」
淀 「巫女は今、外の国まで帰省中なのよ。」
私が近所で妖怪と接触したのはあの信号機くらいだ。
この仙人の話によると、もっと多くの活動報告があるらしい。
私の前に現れる事が無いあたり、格の低い連中なのだろう。
だが、それは・・・
葛城 「ふーん。 ここの巫女さんは外国人なのね。」
淀 「こらこら。 人の荷物を漁るんじゃない。」
仙人が突然神社を物色し始めたので外につまみ出すと、
彼女は満足気な顔をして帰っていった。
山に篭って世間を見てないから、仙人は常識のなってない変な奴ばかりなのだ。
淀 「常識か。」
私が常識を語るのもおかしな話である。
思えば私も仙人も今では非常識な存在なのだ。
そして、そんなのが棲み付いているこの神社もまた非常識だ。
この神社には結界がある。
神社と私のような存在をこの世界に繋ぎとめる為の結界だ。
世の中には、山村の周囲一帯を包み込むほどの結界もあるようだが
そんなものでは無い。 もっと小さく弱いものだ。
どこの誰が張ったのかは知らないが、神社の主はこの結界を守ってきた。
私がこの神社にやって来た時から、ここには妖怪が棲み付いていた。
今では私だけになってしまったが、妖怪にとっては居心地の良い場所となっている。
神社の主がいなくなり、徐々に結界は弱くなっていたが
カタリナが来た事で弱いままではあるものの、安定しているようだ。
それにつられて、新しい妖怪達が安息の地を求めて集まってきたのだろうか。
しかし、奴らが集まったところで昔のような神社は戻ってこない。
我々と奴らでは根本的に性質が違うのだ。
神社やカタリナを危険に晒す事にしかならないだろう。
それだけは絶対に避けなくてはならない。
Tweet |
|
|
1
|
1
|
追加するフォルダを選択
・オリキャラしかいない東方project系二次創作のようなものです。