第二章 『三爸爸†無双』 其の十二
本城 医務室 (時報:桂花 一人目妊娠六ヶ月)
【蒲公英turn】
「馬超、馬岱、おめでとう!懐妊だ。」
「いやったあーーーーーー!ありがとう、華佗!」
今月は紫苑や桃香様達に協力してもらったんだもん、ダメでしたなんて言えないよ。
それにお姉さまも一緒に!
「よかったね、お姉さま♪」
・・・・・・あれ?
「お姉さま?・・・・・・お~~~~い。」
あ~・・・・・目を開けたまま気絶してる。
目の前で手をひらひらやっても全然反応ナシ!
「馬岱、急患用の寝台なら空いてるが・・・・・・使うか?」
華佗が困った顔して提案してくれたけど・・・。
「え~?華佗、お姉さま起こしてよー!これからご主人様に報告しに行くんだから!」
「いや、起こすことは出来るが、馬超の精神面を考えたら起こさない方がいいな。」
「じゃあ、しょうがないからこのまま連れて行くよ。」
診察は立って受けたから背負いやすいしね。
「華佗、今日は無理言って蒲公英達の診察してくれてありがとうね。」
「いや、それは別に構わないが・・・・・」
いつもは星姉さまや朱里たちと一緒に受けるけど、今回はちょっと事情が違うからねぇ。
お姉さまが恥ずかしがって駄々をこねないうちに連れ出して正解だったな♪
「さあ、お姉さま。ご主人様たちのところに行くよ・・・・・あ、お姉さま、意識は無くても足は動くんだ。『ご主人様』ってのが効いたのかな?ま、たんぽぽ楽だから何でもいいや。」
「馬岱・・・やっぱり休ませた方が・・・・・」
「大丈夫、大丈夫♪なんてったって『錦馬超』なんだから!」
「・・・・・いや・・・それはあまり関係ないと思うんだが・・・・・」
華佗がなんか言ったけど、気にせずご主人様の所にしゅっぱーつ!!
本城 皇帝執務室
【緑一刀turn】
俺たち三人は机に向かって仕事をしていた。
だが・・・・・今日はいつもと違い仕事に身が入らず、三人揃って入口の扉を気にしていた。
今朝、いつもの様に後宮にいるみんなに挨拶をする為に向かっている途中で、たんぽぽが待ち構えていて。
『今日、お姉さまと診察受けに行ってくるから期待して待っててね♪』
と、言われたからだ。
致す事は致しているので、当然その可能性はある。
今までなら『えへへ、ダメでした。テへ♪』とか言って、たんぽぽはおどけて見せて深刻にならない様に気を使ってくれていたが・・・・・今回は事情が違う。
恥ずかしいのでその状況は詳しくは言えない・・・・・たんぽぽと翠・・・そしていつまでも昂ぶりの治まらなくなってしまった俺たち三人・・・・・これで状況は察してほしい。
「ご主人様、どうしたんですか?さっきから扉を気にされて。」
「「「うわあっ!しゅ、朱里!!別になんでもないぞっ!!」」」
朱里にはあの戦況が伝わっていないらしい。
紫苑と祭さんと雪蓮の三人が共犯なのは判っている。俺たちに朝駆けで房中術を施したからだ。
そして華琳達もたぶん共犯だろう。後宮で朝食を摂った後、身体が熱くなってきて・・・・・薬膳だと言われて食べた中華粥・・・華琳が作っただけあって滅茶苦茶美味かったが、遅効性なのか仕事の最中にその効果が現れ始めた。
その日の仕事は馬についての報告や西涼の事を話し合う為、翠とたんぽぽの仕事部屋まで出向いたのだ。そこでたんぽぽのイタズラの様な誘惑が始まり・・・・・房中術、薬膳、そして誘惑・・・・・俺たちは耐えた!限界まで耐えたのだっ!!
しかしそれがまずかった。苦しそうにしていた俺たちを心配して翠が自主的に『あたしたちがなんとかするっ!』と言い出してしまった。明らかにたんぽぽの誘導だったが・・・。
その後、翠は顔を見せるまでに三日。出会っても『★■※@▼●∀っ!?』と言葉にならない声を上げ、顔を真っ赤にして逃げ出す。これが七日続き、とりあえず挨拶や二言三言を交わす事が出来る様になり、まともな会話になったのがつい最近だ。
「ご主人様―!約束通り報告に来たよ~♪」
ノックの音とたんぽぽの声が聞こえ俺たちは椅子から飛び上がった。
「はわわ?たんぽぽちゃん?」
朱里も驚いて扉の方に振り向くと、開いた扉からたんぽぽが姿を現す。
満面の笑顔な処を見ると無事懐妊なのだろう・・・・・だけど。
「「「たんぽぽ、翠は・・・?」」」
「ここにいるぞー♪」
お馴染みの台詞とポーズで更に扉を開けると翠が立っていた。
しかし・・・・・・(・0・)という顔をして・・・・・・。
「あの・・・・・翠さん?」
この部屋まで来たのだから、朱里も懐妊の報告だと理解はしているのだろう。
だけどたんぽぽの様に嬉しそうな・・・いや、翠なら恥ずかしがるか、照れ隠しに大声で言い訳をするといったところか・・・とにかくまるでアクションが無い。
朱里は困った顔でたんぽぽに問いかける。
「懐妊の報告・・・・・なんだよね?」
「うん♪あ、朱里!今回は抜け駆けみたいになってゴメンネ・・・・・」
たんぽぽの申し訳ないという表情は本心からだというのがしっかり伝わってくる。
「それは後で詳しく教えて貰うけど・・・翠さんどうしちゃったの?」
・・・・・・しっかり聞き出す気なんだ。
「嬉しさが限界越えちゃったんじゃないかな?ご主人様たちに会えば正気に戻ると思って、とりあえず連れてきちゃった。」
そんな乱暴な・・・・・。
俺たち三人は翠の傍まで寄って声を掛ける。
「「「翠・・・・・」」」
【翠turn】
「「「翠・・・・・」」」
あれ?ここどこだ?
なんで目の前にご主人様たちが・・・・・・・・・・・!!!
「★■※@▼●∀っ!?」
なんで!?どうして!!?あたし華佗のところにいたはずじゃんかっ!!
「「「翠っ!落ち着け!どうどうどう・・・」」」
「あたしは馬かっ!!」
「まあ、姓が馬だしねぇ。」
「たんぽぽ!お前だって同じだ!!」
「ご主人様たちも『種馬』なんだから相性良さそうでいいじゃない♪」
「くだらないこと言うな!!それに・・・・・」
あ・・・あああ・・・・・また思い出しちゃったじゃないか!
「「「翠?」」」
「うわあああぁ!ち、近づくなぁ!このエロエロ魔神が!妊娠しちゃうだろうがっ!!」
「翠さん・・・もう妊娠してるんですよね?」
へ!?この声は・・・・・。
「しゅ、しゅしゅ、朱里っ!!なんで朱里が!?」
「「「だから翠、落ち着けって。」」」
あ・・・ご主人様の手が肩に・・・・・・・。
「★□△○×っ!!」
「おお、さすがご主人様。肩に触っただけでお姉さまの腰が抜けちゃった。」
「「「「変な言い方するなっ!!」」」」
「と、取り敢えず皆さん!一度椅子に座りましょう?今からお茶を淹れますから。」
ふう~・・・・・ようやく少し落ち着いたよ・・・。
朱里の淹れてくれた熱いお茶が頭をしっかりさせてくれる。
「それでは改めまして~!たんぽぽと翠お姉さまは懐妊いたしましたー♪」
まったく・・・・・元はといえばたんぽぽがあんな事企むから・・・・・うぅ、あの時のことは思い出したくないよ・・・・・。
「翠さん、たんぽぽちゃん、おめでとうございます!」
「あ・・・う、うん・・・朱里、ありがとう・・・・・」
「えへへ、ありがとう、朱里♪」
「・・・・・ええと・・・」
ご主人様・・・・・。
「「「とにかく先ずは・・・・・ありがとう!翠!たんぽぽ!」」」
ご主人様たちもなんかいつもと違う・・・・・。
「「「翠。事の経緯はともかく、本当に感謝してる。体に気を付けて元気な子を産んでくれ。」」」
そんな真面目な顔で言われたら・・・・・うん!ご主人様たちだって巻き込まれたみたいなモンじゃないか!もう気にするな、あたし!!
「うん・・・・・がんばるよ、ご主人様。」
なんとか笑顔は作れたみたいだな・・・・・ご主人様たちも少し安心してくれたみたいだ。
「そしてたんぽぽ・・・・・懐妊してくれた事は感謝してる。だけどああいう事はもうしないでくれ・・・・・」
「・・・あはは・・・ごめんね、ご主人様たち。たんぽぽ、もうしないって約束するから・・・・・許してくれる?」
たんぽぽの奴、あんな言い方したらご主人様が許さないわけないじゃんか!
「「「わかった、約束だぞ。」」」
ほらな。
「あの、ご主人様。今日はもうお仕事は止めにして、翠さんとたんぽぽちゃんに付き添って後宮まで向かわれてもよろしいですよ。」
「いいのか?朱里。」
「はい♪このまま仕事を続けてもご主人様たちほとんど上の空ですし。」
「「「・・・・・まあ、否定はしないが・・・」」」
「(それに私の時もそうして欲しいし・・・)」
はは、最後の呟きがあたしには聞こえたぞ。
あ、そうだ。それじゃあ・・・。
「なあ、ご主人様。後宮に行く前に寄りたい所が有るんだけどいいかな?」
「へ?お姉さま、どこに・・・・・ああ、厠・・・」
「いい加減にそこから離れろ!」
「えっと・・・別に構わないよな、朱里?」
「はい。それでは私は先に後宮に行ってますね。三王方と冥琳さんにお聞きしたい事が有りますので。先に報告もしておきます。」
朱里にそこまでさせちゃって悪い気がするなあ。
「行くところは城内だからそんなに遅くならないと思う。ごめんな、朱里。」
「いえ!ごゆっくりしてきて大丈夫ですよ!ホント、ごゆっくりしてきて下さいね!それでは私は先に向かいますー!!」
「え?お、おい、朱里・・・・・」
本当に走って部屋から出て行っちゃたよ。そんなに慌てなくてもいいのに。
「(いいの?ご主人様?)」
「(いいよもう・・・・・どうせバレるの時間の問題だし・・・・・それに俺たちも裏に誰が居たのか気になるしな。)」
ん?たんぽぽとご主人様は何話してるんだ?
まあ、いいや。
「それじゃあご主人様、行こうぜ。ほら、たんぽぽも!」
本城 厩
【緑一刀turn】
俺たちが翠に連れられてやって来たのは厩だった。
ここに来た理由は、わざわざ翠に問いかけなくても解る。
翠の家族である馬の麒麟、黃鵬、紫燕に報告にきたのだ。
「おう!大将たち、珍しいじゃねぇか!こんな馬臭いところに顔出すなんてよぉ!」
別に脅されているワケではない。声を掛けてきたのは通称『厩のヌシ』と呼ばれると呼ばれる爺さんだ。赤ら顔でヒゲもじゃの爺さんだが、馬の管理に関しては翠や霞を怒鳴るくらいの凄腕だ。
「「「よう、爺さん。元気そうだな。」」」
「おう!ワシは馬と馬乳酒さえあればいつでも元気よ!がっはっはっはっはっ!」
ホント、元気な爺さんだよ。
「よっ!爺さん。」
「やっほー!爺ちゃん!」
翠とたんぽぽも気軽に挨拶をした。
「おう!馬超に馬岱も一緒か!昨日も来たばっかりじゃねえか!今お前らの馬は牧場の方を走らせてっから呼ぶんなら少し待つぞ!」
「構わないよ、呼んでくれ。」
翠がそう言うと爺さんは若い連中に指示を出しにいった。
俺は改めて厩舎にいる馬達を見回す。
この厩は三国志マニアなら垂涎の馬がズラリと揃っている。
例えるならカーグラTVのスーパーカー特集と言った処か。
華琳の馬の『
桃香の『
星の『
霞の『
しかしこの外史だからなのか、みんな牝馬になっている。
まあ、それを言ったら・・・。
「わんわん!」
「なんだセキト。今日も遊びに来たのか?」
翠にじゃれつく三角耳のキュートなこいつは、馬ですらないんだからなあ・・・・・。
「おう!また来やがったな!がっはっはっはっはっ!」
戻ってくるなり大声で高笑いする『厩のヌシ』
そして俺たち三人を睨んできた。
「大将たちが忙しいのはわかるけどよ!ちったぁ自分の馬に会いに来いよ!犬のセキトの方がよっぽどここに足を運ぶぞ!」
俺たちが戦乱を駆け抜けていた時、愛馬と呼べる馬がいた。
俺の馬は『
ちなみに星の『白龍』も白蓮から貰ったと言っていた。
紫の馬は『富士』。青鹿毛でタテガミが白い馬だ。
赤の馬は『
「そうだな。一緒に戦場を駆けた戦友だもんな。ちゃんと会いに来るよ。」
他の名馬に比べれば足は早くないかも知れないが、俺たちにとっては愛馬なんだから。
「あいつらどうだ?元気にしてるか?」
「おう!元気元気!馬っ気が強すぎて困るぐらいだぜ!がっはっはっ!!」
・・・・・馬っ気って確か・・・。
「さすがご主人様たちの馬だけあって、そっちは強いねぇ♪」
たんぽぽ・・・・・言うと思ったよ・・・・・。
「実際モテモテだからな!馬格で言ったら貂蝉と卑弥呼の馬の方が上なんだけどよ!いやあ、あの『黒王』と『風雲再起』はいつ見ても惚れ惚れするぜ!」
・・・・・・ツッコまないぞ・・・・・ここは・・・。
「ただあの二頭、これだけ美人揃いなのにまるで目もくれねぇ!いっつも大将たちの馬ばかり見てんだよ!」
逃げてーーーーー!『大雪』『富士』『桜島』逃げてーーーーーーーっ!!。
「おっと、来たな!それじゃあ用が終わったら声かけてくれ!」
そう言って爺さんは他の馬の様子を見に行った。
厩舎の陰から姿を見せた馬達は翠とたんぽぽを見つけたらしく早足で近寄って来る。
「麒麟!黃鵬!紫燕!」
翠は嬉しそうに愛馬を見つめていた。
「
たんぽぽも翠と同じ顔・・・・・なんだけど、その名前・・・・・。
ディープインパクトが居ないだけ、まだマシなのか?
「なあ、たんぽぽ。その馬の名前懲りすぎなんじゃないか?」
「そうかな?でも焔耶の『
「まあ・・・確かに・・・」
それよりもっと可哀想な名前の馬も居るけど・・・。
それは美羽の馬なのだが、放浪している時手に入れた馬で、宝探しの時に預けたままになっていたのを連れて来てもらうほどお気に入りらしい。名前は・・・・・『
名付けたのは猪々子・・・・・あいつにとっては非常食だった様だ・・・。
俺とたんぽぽのやり取りを気にせず、翠は麒麟達の顔を撫でながら話しかけていた。
「麒麟、黃鵬、紫燕・・・・・あたしも遂に母親になるんだってさ・・・」
三頭は翠に頭を擦り付ける。それは甘えている様にも、励ましている様にも見えた。
「母様と龐徳がいたら何て言ったかな?きっと笑って冷やかすだろうな・・・・・けど・・・喜んでくれるよな。」
麒麟達三頭が頷くように首を縦に振る。いや、本当に頷いたんだ。
『馬の耳に念仏』なんてことわざが有るけど、この三頭は絶対に翠の言葉を理解してる。
たんぽぽも自分の馬たちに話しかけているけど、声が小さくて聞き取れない。
でも、その顔はいつものイタズラっ子ではなく、また武将の時とも違う『優しさ』が感じられた。
翠が紫燕の顔を撫でている時、紫がゆっくりと歩み寄る。
「紫燕、臨渭でお前が翠を乗せてきてくれなきゃ、俺と富士はあそこで死んでた・・・・・お前は命の恩人なんだぜ。」
紫が紫燕の首を撫でると、まるで「気にするな」とでも言うように頭を摺り寄せた。
「そういやそんな事もあったな。」
翠が笑って紫を見た。
「おいおい、実際に助けてくれた本人が言うなよ。俺はあの時感激したんだぞ。」
「それで紫燕に飛び移るのはやりすぎだろう・・・・・・・なぁ、丁度良い機会だから打ち明けるとさ、あたしは反董卓連合の最初の軍議の時からご主人様が気になってたんだ。あの時は緑のご主人様だけで、三人いるなんて思いもしなかったけど・・・・・恋が愛紗達との打ち合いを放り出して緑のご主人様に飛びついたのも見てた・・・」
「え?どこから・・・・・」
「へへ、平原軍の兵に紛れ込んでさ・・・バレそうになったからすぐに自陣に戻ったけど。その後は洛陽に入ってからだな・・・桃香様達がすでに洛陽を出発した後だったけど・・・・・なのに華琳と一緒にいたり、雪蓮と一緒にいだりで、驚く以上にワケわかんなかったよ。西涼に戻る頃に『三人の天の御遣い』の噂が入って来てようやく納得がいったけどさ。」
ここまで微笑み混じりで話してくれていた翠の顔に影が差し、辛そうに奥歯を噛み締める。
あの後が翠にとって一番苦しい時だったのだ。俺たちは何も言わず黙って翠の肩に手を置いた。
「・・・この房陵だったよな・・・・・あの時あたしは生き残った兵たちに弱音を吐くところだけは見せちゃダメだって張り詰めてた・・・・・本音を言えば誰かにすがりたかったよ・・・その時頭に浮かんだのがご主人様なんだ・・・・・はは、言葉を交わしたわけでも無いのに変だよな。でもあの時の援軍にあたし達は救われたんだ。あたしもたんぽぽも、紫苑に桔梗に、あの焔耶だって心の底から感謝してる。」
「「「翠・・・」」」
「なんか長々と語っちまったな・・・・・・普段なら恥ずかしくって言えないのに・・・今日は口が軽いや。」
俺たち三人は翠とたんぽぽの肩を抱いて、しばらくの間、麒麟、黃鵬、紫燕を撫でていた。
後宮 個室
【蒲公英turn】
毎月の恒例となってきた懐妊祝いの宴が催され、みんなが後宮の談話室で騒いでいる頃。
あたしは与えられた個室に緑のご主人様と卓を挟んで二人っきりだった。
「たんぽぽ・・・・・お疲れ様。」
ご主人様が優しい笑顔でそう言った。
「え?やだなぁ、ご主人様。目下の人間に対しては『ご苦労様』だよ。それにたんぽぽ、別にそんな苦労してないし♪」
「思い出してみたら、たんぽぽはいつも翠に先を譲ってたな。どうやっても翠が行動しない時に初めて『二人で』って提案するだろ。俺たちが贈ったあの服の時も。」
・・・・・・ご主人様、よく見てるなぁ・・・・・。
「でもそれはたんぽぽも着たかったからで・・・・・」
「でも翠が着るまで袖を通してなかったよな、あの服。」
こりゃダメだ。完全に見透かされてる。
「はぁ・・・・・お姉さまには言わないでよ、ご主人様。」
「ああ、たんぽぽが翠のことを気遣ってるのは充分理解してるさ。」
「気遣ってるかぁ・・・・・せっかくだから、たんぽぽも打ち明けちゃうね。」
少し息を整えてから昔のことを思い出す。
「翠お姉さまの強さは子供の頃からたんぽぽの憧れなんだよね。でも、お姉さまって感情の起伏が激しいでしょ、意識が戦いに向いてる時はホントに強いのに、落ち込んでたりするとダメダメだったんだ。たんぽぽはそんなお姉さまを見たくなくて励ましてたの。お姉さまって極端な恥ずかしがり屋だから普通に励ましても照れるばっかりでさ、上手く気分を乗せられるようにする方法を考えるようになって、気が付いたら今みたいな関係になってたんだ。」
たんぽぽが話してる間、ご主人様は微笑んで聞いてくれた。
「たんぽぽは本当に翠が好きなんだな。」
「えへへ、ああ!でも、お姉さまが恥ずかしがってる姿も可愛いと思ってるよ!だからついついからかっちゃうんだよねぇ♪」
「その気持ち解るなぁ。」
「あ、それから誤解の無いように言っておくけど、たんぽぽがご主人様を好きになったのは自分の意思だからね!元々たんぽぽと翠お姉さまの好みって似てたから・・・・・反董卓連合から帰ってきたお姉さまが『天の御遣い』の事を気にしてたから、どんな素敵な人なのか期待してたよ♪」
「そ、それは・・・・・期待はずれだったんじゃ・・・・・?」
あはは♪ご主人様も赤くなっちゃって。
「そんな事ないよ、ご主人様。むしろ期待以上だったし、今なんかあの頃よりもっと好きだよ♪」
「えぇと・・・・・あ、ありがとう・・・・・・・と、ところでこの間の事なんだけど・・・」
あー!話題変えてきた!
「たんぽぽが企んだ訳じゃ無いって分かってもらえた?」
「ああ、紫苑が持ちかけたらしいな。桃香も手伝ったって聞いたけど、桃香にこんな緻密な計画が練れるはずがない。朱里はあの日何が有ったか知らなかった。だったら雛里も無関係だろう。つまり・・・」
「ちょっと待って!ご主人様!たんぽぽは誰が計画を練ったかは聞いてないよ。紫苑に教えてもらった指示を実行しただけだもん。知らない方が身を守るって事が有るからね、世の中。」
「処世術を心得ているな・・・・・・わかった、あの日の話はもうしないよ。さて、宴会の方に戻るか。」
ご主人様が立ち上がったのでたんぽぽも一緒に椅子から立った。
そしてご主人様の腕をとって体を寄り添わせる。
今日ならみんなも笑って許してくれるよね♪
おまけ壱
蒲公英の長女 馬援
翠の長女 馬秋
四歳
房都 牧場地 (時報:桂花 五人目妊娠八ヶ月)
【緑一刀turn】
「こっちがきりんでぇ、こっちがしえん。で、こーほー♪」
「とうかいてーおーと、はいせいこーとぉ、なりたぶらいあん♪」
それぞれの母親に抱っこされたひまわりと疾は、六頭の馬に囲まれてニコニコしている。
「ひまわりも疾も全然馬を怖がらないなぁ。」
「あたしとたんぽぽの子が馬を怖がってちゃ、西涼に行ったときに笑われちゃうだろ。」
「生まれてからは時間を作って、出来るだけ馬と一緒にいるようにしてたもんね。」
翠もたんぽぽも娘たちの様子に満足げだ。
「ひーちゃん、あっちは?」
疾が少し離れた所に居る馬を指差し、ひまわりに訊いた。
「こくしょー!じゃあねぇ・・・しっちゃん、あれは?」
なるほど、問題を出し合っているのか。よく見分けがつくな・・・・・って、ひまわりが指差したの白馬だぞ!
「えっとね~・・・・・はくほー♪」
白鳳は白蓮の馬だ。白蓮は白馬陣をするために結構な数の白馬を集めたから難しいぞ。
「翠・・・・・」
「合ってるよ。あれは白蓮の白鳳だ。」
マジかよ・・・・・俺なんかこの距離だと自分の馬の大雪と見分けが着かないのに・・・。
「それじゃあ、ひーちゃん、あっちは?」
「ふじとぜつえー♪」
紫と華琳の馬か・・・・・って、おい!
「★□△○×っ!!疾!ひまわり!あれは見ちゃダメ!!」
翠も気付いて子供達の視線を遮る。
「?・・・どうしたの媽媽?あの二とうはなにしてたの?」
「ひまわりしってるよ!ふじとぜつえーはなかよしなんだよ!」
仲良し?誰か知らないが良いフォローだ!
「ひまわりの媽媽と爸爸もまえになかよししてた!」
「ぶうううううううっ!!」
言葉変えただけかよ!
「こ、こら!ひまわり!」
たんぽぽ!上手く誤魔化してくれ!
「媽媽の手管はもっと・・・」
「「子供に何言ってんだお前はっ!!」」
「むこうでたいせつとてきろもなかよししてるー!」
「さくらじまとなんかいはやてもー。」
「★■※@▼●∀っ!?」
俺と翠はたんぽぽ、ひまわり、疾を連れてこの場から逃げ出した。
大雪!富士!桜島!お前ら本当に馬っ気強すぎっ!!
おまけ弐
眞琳 生後二ヶ月 (時報:桂花 一人目妊娠三ヶ月)
後宮 談話室
【エクストラturn】
後宮から眞琳、香斗、蓮紅、烈夏の元気な泣き声が聞こえて来た。
真夏の午後、ウトウトと午睡をしていた母親達は慌てて目を覚ます。
「四人一度に泣き出すなんて、仲がいいわねぇ。」
泣き声に誘われ、庭から戻った雪蓮が呆れた口調で言うが、その顔は赤ん坊達が可愛くて仕方がないと言っているのは誰が見ても明らかだった。
華琳が眞琳を抱き上げてオシメの確認をする。
「こっちは大丈夫だから、お腹がすいたのね。」
「香斗ちゃんもでした~」
桃香は笑って華琳に言う。
「蓮紅と烈夏もだわ。」
蓮華と思春は新しいオシメを用意しようとしていた大喬と小喬に身振りも交え伝えた。
それから四人の母親達は素早く服をはだけ、赤ん坊にオッパイをあげ始める。
「あんたたち、すっかり母親ねぇ。何の抵抗もなくおっぱい晒すようになっちゃって。」
「
雪蓮の冷やかしに対して、華琳は余裕の表情でオッパイを与えていた。
むしろ華琳の後ろで隠すための肩掛けを持って立っている桂花の方がオロオロと狼狽えている。
真夏にそんな物を羽織らされたら、華琳ではなくても怒り出すだろう。
それからしばらくは、静かに赤ん坊がオッパイを飲むのを眺めていた雪蓮だが・・・。
「小さくてもお乳の量って変わらないのかしら?」
言ってしまってから、雪蓮は薮蛇を突っついた事に気が付いた。
素直に感じた疑問だけに、無意識で口から出たのだ。
その言葉に一番反応したのは・・・・・当然桂花だった。
しかしその態度は怒りではなく勝ち誇ったモノだ。
「ふふふふふ、この度ついに貧乳の素晴らしさが証明されたのよ!」
「はあ?」
「お乳は胸に貯まる物!しかし赤ん坊が飲みきれなかった分もそのまま貯まり、古いものを飲ませる事になったり、自分でしぼる事になるのよ!だけど貧乳は新しいお乳を赤ん坊が飲むたび作り続けられ、常に新しいお乳を与えることができる!正に貧乳こそが正義!!」
「ふ~ん、そうなんだ・・・・・」
「なによ?なにか反論でもあるっていうの?」
「え?いや・・・・・そうじゃないんだけど・・・・・桂花、あんたはその貧乳の素晴らしさを証明するために、子供を産み続けるってこと?」
「あ・・・・・・・・・・・・」
桂花の動きが止まり、顔から血の気が引いていく。
「「「みんなー!今日は仕事が早く片付いたから・・・わあっ!ゴメンッ!!」」」
勢い良く談話室にやって来た一刀たち三人は、華琳達が赤ん坊にオッパイを飲ませている姿に気付いて直ぐ様後ろを向いた。
そこへ、
「きやああああああああああああああっ!!!」
悲鳴を上げた桂花が手近にあった卓を投げつけた。
「「「げぎょっ!」」」
モロ背中に直撃を受けた一刀たちは、普通の人間にはできない角度に体を曲げて、壁と卓に挟まれ崩れ落ちる。
一方桂花は庭への出入口から外へ逃げ出していた。
「一刀たちって、どうしてこう間が悪いのかしら?」
溜息を吐いて蓮華がこめかみをおさえる。
「まぁ・・・・・宿命なのでしょう、蓮華様。」
思春はさほど気にせず烈夏にオッパイを飲ませ続けていた。
「あんたたち、一刀に見られたのは気にしないワケ?」
「そんなの今更ですよ、雪蓮さん。初めてお乳をあげた時から見られてるんですから。」
桃香が笑って答えると、華琳もクスクス笑い出した。
「一刀たちって、時々我に返って顔を赤くするじゃない。それが楽しくってつい『恥ずかしいからあんまり見ないで』とか言ってしまうのよね♪」
「あ!それあるよねぇ♪」
母親達の談笑する部屋の片隅には当の一刀たちが転がっているのだが、後数分もすれば何事もなかったかのように起き上がってくるのが判っているので誰も気にしていなかった。
あとがき
翠といえばお漏らし・・・・・もとい、馬の話ですよね。
厩と厠。字が似てるので間違えると大変な事にw
麒麟、黃鵬、紫燕をきちんと登場させたのは今回が初めてのはず・・・。
そして絶影、爪黄飛電、的廬は三国志では有名所
白龍、黒捷、黒毛は入手した資料が一種類だけなので
はたして『どの三国志から』なのか分かりませんが登場して貰いました。
蒲公英の馬はお遊びでw
漢字を充てやすかった競走馬を使いました。
若い人は知らないかなぁ・・・・・。
黒王と風雲再起は・・・・・知らない方はお手数ですがコメント下さい
そして、あんな扱いにしてスイマセンorz
だって卑弥呼の馬って風雲再起以外思いつかなくって・・・・・。
上記以外の馬の名前はオリジナルです。
ちなみに項羽の馬の名前は『騅(すい)』と言いますが
翠の真名の元ネタなんですかね?
蒲公英の娘の名前を『馬援』としましたが
資料に馬岱の子供の表記がないのでご先祖様の方から頂きました。
おまけ弐は
今まで敢えて書かなかった授乳のお話
大きくても母乳の出が悪い人もいるので気遣って
と言っても桂花は聞く耳持たないだろうなぁ・・・・。
《次回のお話&現在の得票数》
☆麗羽 13票
という事で次回は麗羽に決定しました。
以下、現在の得票数です。
桂花 13票
桔梗 10票
蓮華 8票
凪 8票
朱里+雛里6票
猪々子 6票
七乃 6票
白蓮 5票
流琉 5票
穏 4票
亞莎 4票
詠 4票
ニャン蛮族4票
数え役満☆シスターズ4票
月 4票
小蓮 3票
焔耶 2票
明命 2票
秋蘭 2票
※「朱里と雛里」「美以と三猫」「数え役満☆シスターズ」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。
リクエスト参戦順番→ 蓮華 凪 朱里+雛里 麗羽 猪々子 桂花 穏 桔梗 白蓮 亞莎 流琉 七乃 ニャン蛮族 小蓮 詠 焔耶 明命 数え役満☆シスターズ 秋蘭 月
引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。
リクエストに制限は決めてありません。
何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)
よろしくお願い申し上げます。
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得票数13の蒲公英+翠のお話です。
懐妊確認後+おまけ二本です。
引き続き、どの恋姫メインの話が読みたいのかリクエストを募集しております。
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