No.513636

真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三爸爸†無双』 其の十一

雷起さん


得票数13の紫苑のお話です。
懐妊確認後とその三ヶ月後+おまけ三本です。

引き続き、どの恋姫メインの話が読みたいのかリクエストを募集しております。

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2012-11-30 16:26:15 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3917   閲覧ユーザー数:3050

第二章  『三爸爸†無双』 其の十一

 

 

本城 医務室             (時報:桂花 一人目妊娠五ヶ月)

【紫苑turn】

「うぅむ、紫苑にも先を越されたか・・・おっと、先ずは祝いを言わねばな。おめでとう紫苑。」

「ありがとう、桔梗。」

 桔梗の言葉はどちらも本音。

 わたくしの昔からの親友・・・・・あの戦乱の中で生き残った歳の近い友人は少ない。

「おめでとう、紫苑。これで禁酒仲間が増えたわい。」

「ありがとうございます、祭さん。」

 この人も真名で呼び合い、気軽な会話をできる友人。

 あの時・・・この房陵にご主人様が援軍に駆けつけて下さらなければ、今のこの時すら無かった。

「はっはっはっ♪お前達二人が後宮に引っ込んでいる間、酒とお館様を愛でるのはわしに任せておけ。」

「ちょっと桔梗?お酒はともかくご主人様は関係ないでしょう!」

「紫苑の言う通りじゃ。酒に肴・・・いや、一刀まで取り上げられては儂の楽しみの大半がのうなってしまうわ。」

「子を孕んで尚お館様を求めるとは、欲深な女たちだな。わしを含め未だ子を授かっておらん者に子種を譲るという謙虚さは無いのか?」

 う・・・・・そういう攻め手で来るのね・・・・・それなら!

「ではわたくしと祭さんはご主人様方に房中術を施しましょう♪」

「は?何を言っておるのだ?」

 ふふ、桔梗は知らないのね。

「成程、それは良い考えじゃ。桔梗、房中術とは本来は気をやる寸前で止め、体内の氣を活性化させる術じゃ。儂らが一刀の氣を昂らせておくから存分に子種を授かるが良い♪」

「おぬしらそこまでしてお館様の寵愛が欲しいのか!」

「あら、(あお)ったのは桔梗じゃない。ねえ祭さん♪」

「おお、その通りよ。それに結果的には子が授かりやすくなるのじゃ。良い事尽くめではないか。」

「おぬしらが搾り取らんという保証が何処に・・・」

 

「おほんっ!すまぬが三人とも。盛り上がっている上に我々も興味が尽きぬ話題ではあるのだが・・・・・診察の後がつっかえている上、紫苑に祝いの言葉もかけられんのだが?」

 

「「星?」」

「星ちゃん・・・」

 星ちゃんの後ろには診察を待つ翠ちゃん、たんぽぽちゃん、朱里ちゃん、雛里ちゃんが立っていた。

「ほれ、翠など興奮のあまり漏らしそうになっているではないか。」

「んなわけあるかっ!!」

 星ちゃんと翠ちゃんの横からたんぽぽちゃんが笑顔でやってくる。

「紫苑、懐妊おめでとう♪」

「「紫苑さん、ご懐妊おめでとうございます!」」

 更に朱里ちゃんと雛里ちゃんも顔を赤くしてお祝いの言葉を贈ってくれた。

「ありがとう♪」

「ねえねえ、今度さっきの話の続きをじっくり聞かせてね!」

「「わ、私達も是非!」」

「何言ってんだ、三人共!・・・し、紫苑!と、とにかくおめでとう!」

「ふふ、ありがとう翠ちゃん。」

 ほんと、翠ちゃんの初々しさは羨ましくなるわね。

「では改めて・・・・・紫苑、懐妊おめでとう。主たちは今街に出ておるがどうするのだ?」

「ありがとう星ちゃん。まずは璃々の所へ行って教えてあげようと思うの。その後、門の所で待っているわ。」

「そうか、では我々は先日娘を産んだ愛紗を冷やかしに行くので、後ほど後宮で会おう。」

「え?星ちゃん達は診察がまだ・・・」

「先程はああ言ったが、雪蓮と冥琳の例があるとは言え今回も我々は望み薄だろう。」

 先に授かったわたくしが言うのも何だけど・・・・・確かにその可能性は大きい。

 これは先程の房中術の話を実行した方がいいのかしら?

「今後の事もあるから後で相談しましょう、丞相さん。」

「は、はい?」

「華佗さんも、多分色々とお願いすると思いますからお願いしますね。」

「ああ、薬材は多めに仕入れる様に手配しておく・・・・・一刀たちも大変だな・・・・・」

 華佗さんは苦笑しているけど・・・・・。

「ご主人様たちにとって一番大事な仕事ですから♪」

 

 

 

 

 本城 北郷学園教室

【紫苑turn】

 わたくしと桔梗、祭さんの三人は璃々を迎えに学園の教室に来ていた。

「お母さん!おめでとう♪」

 戦乱の頃に比べ、背の伸びた璃々が抱きついてそう言ってくれた。

「ありがとう、璃々。来年の春か初夏の頃にはあなたもお姉ちゃんよ。」

「璃々がお姉ちゃんかぁ、楽しみだなぁ・・・」

 璃々は抱きついたまま目を閉じている。きっと姉となった自分を想像しているのね。

「紫苑、懐妊おめでとう。」

 璃々の先生をしてくれている白蓮ちゃんが笑顔で言ってくれた。

「ありがとう、白蓮ちゃん。今日の生徒は璃々だけ?」

「あぁ、鈴々達は隊の調練だし、美以達は山へ狩りに行っちまったみたいでさ。そういうことなら、今日の授業はここで終わりだな。」

「なんだかごめんなさいね・・・」

「別に謝るような事じゃないって。紫苑は一刀たちに報告に行くんだろ?」

「ええ、今は街に視察に出られているから門の所でお迎えしようと思って。」

 白蓮ちゃんは腕を組んで何かを考えている。

「それじゃあ私は後宮に行って自分の勉強をしてくるかな。」

「ふふ、母親になるための勉強ね。気になる事があればわたくしに聞いてね。」

「そうさせてもらうよ。」

「ねえねえ、お母さん。生まれてくるのは弟?妹?」

 まあまあ、先にあなたが質問するのね。

「そうねぇ、それは生まれるまで判らないわ。華佗さんもさすがにそこまでは判別できないと言っていたし。」

「なあ紫苑、その事なのだが。」

 桔梗が笑って話に入って来た。

「これまで生まれた五人は全員女の子だ。あのお館様の女好きを考えれば今後も全員女の子ばかりかも知れんぞ。」

「あっはっはっ、違いない。一刀たちの娘に対するデレデレぶりを見ておるとそう思わさるわい♪」

「桔梗も祭さんも・・・ご主人様は街で子供の相手をされるときは男の子も女の子も分け隔て無く接しておられるわよ。」

 璃々の相手をしてくださる時もそうだけど、子供達と接しているご主人様の顔は優しさに満ちている。わたくしが好きなご主人様の表情のひとつ。

「そのご主人様たちがそろそろ戻られる頃よ。お迎えにいきましょう。」

 

 

 

 

本城 正門

【緑一刀turn】

 俺たち三人と親衛隊の面々は街の視察を終え、本城に戻る所だ。

「街が結構賑わっていたな。」

 俺は赤と紫に声を掛ける。

「街の人達も愛羅の誕生を祝ってくれていたからな。」

「商人達は何かに(かこ)つけて商売をしようって思惑が見えてたけどね。」

 俺たちは揃って思い出し笑いをした。

「「「からくり関羽将軍!」」」

 愛紗には見せられないが、中々面白いおもちゃだった。

「真桜が見たら買いに走るんじゃないか?」

「確かにあの凝り具合は真桜が好きそうだ♪」

「待てよ・・・・・あれを作ったのってもしかして・・・・・」

 真桜なのか?だとしたらあれを愛紗が見たら真桜は鍛錬十本勝負どころじゃ済まないぞ・・・・・・・・・・・・・後で確認しておこう。

「ん?門の所に居るの、紫苑と桔梗と祭さんだな。」

「あ、璃々ちゃんも居る。」

「もしかして今回は・・・・・」

 紫苑と璃々ちゃんが前で、桔梗と祭さんが少し後ろに並んでいる。

 という事は紫苑の懐妊報告だろう。

 静かに佇んでいる紫苑に恥をかかせたくないので、走り出したい気持ちを抑え、背筋を伸ばして歩みを進める。

 

「おかえりなさいませ。ご主人様。」

 

「「「ただいま、紫苑。」」」

 儀礼の様に深々と頭を下げる紫苑に、俺たちもそれに応える為に精一杯礼に則った態度をとる。

「この度はご主人様方に急ぎお伝えしたい義がございましたので、こうしてお迎えに参りました。」

「「「うん。」」」

 

「わたくし、黃漢升がご主人様方のお子を授かった事をここに報告致します。」

 

「「「ありがとう、紫苑。元気な子を産んでくれ。」」」

「はい。ご主人様♪」

 最後はいつもの優しい笑顔を見せてくれた。

「璃々ちゃんは今日からお姉さんだね。」

「うん、ご主人さま♪」

 璃々ちゃんも喜んでくれているのが俺を更に嬉しくしてくれた。

「お館様、後宮に昼食を用意させております。後の会話はそちらで致しましょう。」

「あぁ、すぐに行こう。」

 こんなに穏やかな懐妊報告って初めてだ。

 これも紫苑の人徳だな。

 

 

 

 

本城 後宮個室

【緑一刀turn】

 昼食の時、将軍や軍師の半数近くが後宮に来て、紫苑にお祝いの言葉を贈った。

 既に出産を終えた華琳、桃香、蓮華、思春、愛紗は特に感謝の言葉を述べていた。

 どれだけみんなの初産の不安を紫苑の存在が和らげてくれたのかが良く解る。

 昼食の後も紫苑の懐妊の連絡を受けた人たちが次々やって来てお祝いを述べていった。

 そうして気が付けばもう日が暮れかけ、満月が見え始めていた。

 はしゃぎ疲れた璃々ちゃんを寝台に寝かせ、俺たちは紫苑と卓を囲んでお茶を飲んでいる。

「「「紫苑、改めてお礼を言わせてくれ。本当にありがとう。」」」

「そんなご主人様・・・・・それはわたくしもですわ。お子を授けて下さった事は勿論・・・・・緑のご主人様にはこの房都・・・当時は房陵の城でしたが、あの援軍が無ければわたくしたち、桔梗に焔耶ちゃん、翠ちゃん、たんぽぽちゃん、そして璃々もこうして生きていなかったでしょう。赤のご主人様も成都奪還に駆けつけてくださいました。紫のご主人様は五胡撃退の後、許昌に戻られる前に成都に寄られわたくしを励ましてくださいました。あれからもう・・・璃々がこんなに大きくなるまで経ってしまいましたが・・・わたくしは片時もご主人様方への感謝を忘れたことはございません・・・・・・・本当に・・・ほんとうにありがとうございます・・・・・」

 紫苑は目に涙を浮かべていた。

 そんな紫苑を俺は思わず抱きしめる。

 言葉にしなくてもそれで俺たちの気持ちは伝わるだろう。

 しかしこのままではまた流されてよからぬ方向へ行きそうなので、気を逸らそうと思った所に窓の外に植えてある花が目に入った。

 草丈は俺の身長くらい、薄紫の花を沢山つけた庭草、花の名前は『紫苑』。

「紫苑が咲いているね。」

「え?」

 紫苑は最初俺が何を言っているのか分からなかったみたいだが、窓の外を見て頷いた。

「俺たちの居た国では丁度中秋の名月の頃に咲くから『十五夜草』とも言うんだ。」

 紫苑は黙って俺の言葉を聞いてくれる。

「花言葉は『君を忘れず』そして『遠方に在る人を思う』・・・・・・・・紫苑はもう外史の話は聞いているんだよね。」

「・・・・・はい。」

「俺たちに外史の記憶が戻った時、貂蝉から紫苑に会った事を聞いて嬉しかったよ。また紫苑に会えると思ってさ。」

「そんな・・・・・ご主人様・・・」

「俺たちは五胡進撃の報を受けたとき紫苑達がどうなったのかすごく不安だった。援軍要請の手紙を受け取って、一刻も早く駆けつけるのに必死だったよ。赤と紫だって本当は一緒に紫苑を迎えに行きたかったんだ。」

「・・・・・・・ありがとうございます・・・ご主人様・・・」

 紫苑は再びその言葉を口にした。

 それがどれだけの気持ちを込めてくれたのかは解るつもりだ。

 俺たちは紫苑と寄り添い満月に照らされた『紫苑』をしばらく無言で眺めていた。

 

 

 

 

三ヶ月後

本城 皇帝執務室

【紫苑turn】

 今年も残りひと月となった頃。

 風ちゃんが女の子を出産し、香斗様達も離乳食を始めるまでに大きくなってきた。

 わたくしは今日、自分とお腹の子の診察を受けたが、新たにご主人様に報告する事が発覚した。

「ご主人様、失礼致します。」

「紫苑?出歩いて大丈夫なのか?」

 ここしばらくつわりが辛かったため、わたくしが床に入っていた事を知っているご主人様が心配してくださっている。

「はい、今日は体調が良いので・・・・・実はわたくし、先程健康診断を受けまして・・・」

「「「う、うん・・・・・」」」

 ご主人様たちの顔が曇る。

「改めて華佗さんに診ていただいたら・・・・・」

「「「お腹の子に何かあったのか!?」」」

 ご主人様たちが慌てて立ち上がった。

「い、いえ・・・決して悪い話では無いのですが・・・・・」

「「「ほ・・・・・」」」

「双子だそうです。」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」」」

「今までは読み取れる氣の大きさが小さかったため分からなかったそうですが、今日の診察で間違いなく双子だと・・・」

 やはりご主人様たちは驚いていらっしゃるわ。

「そうか双子かぁ・・・・・」

「成程、それで炙叉が戸惑ってたのか。」

「炙叉も何で気が付かないんだ?」

「あの・・・ご主人様、もしかして真名の候補が今まで出なかったのは・・・」

「ああ、炙叉が何度占っても安定しないってボヤいててさ、でもこれで解決だな。紫苑もさすがに双子は大変だと思うから、俺たちに出来ることは何でも言ってくれよ。」

「は、はい・・・ご主人様。」

「そう言えば璃々ちゃんにはその事を伝えたの?」

「いえ、今日は鈴々ちゃんと武術の稽古をしていますので、ご主人様の所へ先に参りました。」

「よし、それじゃあこれから一緒に璃々ちゃんの所に行こうか。」

 え?ご主人様はお仕事が・・・・・でも、今日くらいは我儘を言ってもいいかしら。

「ご主人様、先程出来ることは何でもと仰ってくださいましたわね。」

「ああ、何かある?」

「ではこれから璃々に伝えた後、一緒に城内の散歩に付き合ってくださいますか?」

「え?そんなことでいいの?」

「はい♪」

「お安い御用だ。但し、気分が悪くなったら我慢せず言う事。いいね。」

「かしこまりましたわ、ご主人様。では参りましょう♪」

 わたくしはご主人様たちと執務室を後にして、璃々と鈴々ちゃんのいる中庭に向かう。

 わたくしの心も足取りも不思議なことに、まるで少女の頃の様に軽かった。

 

 

 

 

おまけ壱

『姐姐†無双』二

紫苑の次女 黃仁 露柴(ろぜ)

紫苑の三女 黃信 崔莉(ちぇり)

四歳

房都 街中

【璃々turn】

「「おかあさん、お人形買って~!」」

「ダメです!この後お団子を買ってあげる約束でしょ。」

「露柴、崔莉、お団子かお人形、どっちか一つにしなさい!」

 この子達ったら目に入ったものにすぐ反応しちゃうんだから。

「「おとうさん!おかあさんと璃々お姉ちゃんがイジワルする~。」」

 もう、すぐそうやってご主人様に甘える!

「くすっ!」

「ご主人様、何笑ってるの?」

「い、いや・・・歴史は繰り返すなぁと思ってさ。」

「え?何のこと?」

「あら?璃々ったら覚えてないの?部屋に飾ってあるお人形♪」

 お母さんまで笑って・・・・・人形・・・あっ!

 あれはわたしがまだ小さい時にご主人様に買ってもらったんだっけ。

「あ、あれはその・・・・・」

「あの時もお人形とお団子だったわねぇ。」

「それじゃあ今回も俺がお人形を買ってあげるか。」

 あの時もご主人様は笑ってお人形を買ってくれたっけ。

「ご主人様、今ここで露柴と崔莉にお人形を買ってあげると、後で子供達全員に買うことになりますよ。」

 お母さんが指摘すると主人様の動きが止まった。

「そ、そうだな。露柴と崔莉も何かを得るには何かを諦める事を覚えてもいい頃だな。」

 なんかどっかで聞いた台詞だな~。

「「ええ~?おとうさんもイジワルだぁ・・・」」

 

「ぐおおおっ!!!」

 

 あ~、これはご主人様には堪えるなぁ。

「露柴、崔莉、お父さんが素敵な服をプレゼントしてくれるから、お人形は我慢しよ。」

「「ふく・・・かわいい?」」

「お父さんが考えた服だよ。かわいいに決まってるわよ。」

 この言葉にようやく二人は納得してくれた。

 だけど何であの人形を欲しがるかな?『からくり関羽将軍』。

 

 

「「このふく、かわいい~♪」」

 これから寒くなるので冬服を新調してもらった。

 二人の妹が着ているのは以前翠お姉ちゃんが着てた様な『ゴスロリ』を少し大人しくした感じ。今の二人の方がよっぽどお人形みたい♪

 そしてわたしにも新しい服を用意してくれていた。

「璃々ちゃんの希望通り、動きやすさ、可愛さ、格好良さを念頭に置いてデザインしてみた・・・・・う~ん、愛紗の服に似ちゃったかな?」

「全体的には希望通りだよ。でも、胸元が開いてるともっと楽かなぁ。」

「胸元はダメ!璃々ちゃん大きくなってきてるからマズイって!」

「大きくなってるからこそ余裕が欲しいのに。それに呼び方!妹達が呼び捨てなのにわたしが『ちゃん付け』なのは止めてって言ったよ、ご主人様。」

「え~?さっきまでは何にも言わなかったのに・・・・・」

「こら璃々、ご主人様を困らせてはダメでしょう。」

「だってお母さん!」

「大丈夫よ。閨ではちゃんと呼んでくださるから♪」

「ぶっ!」

「ああ、なぁんだ。ご主人様照れてるだけなんだ。」

 もう、ご主人様って可愛い♪

「「ねえ、璃々おねえちゃんはどうしておとうさんのこと『ごしゅじんさま』ってよぶの?」」

「露柴、崔莉、なんでお前達はこのタイミングでそれを訊くんだ!?」

「んふふ~。それはお姉ちゃんがご主人様の奥さんになれるからよ。」

「璃々!それ以上は・・・」

 ご主人様がわたしに言いかけた処で、お母さんが更に割り込んだ。

「そうそう、ご主人様。『紫苑』の事ですけど・・・」

「は?」

「天の国では『鬼の醜草(しこぐさ)』とも呼ぶそうですね♪」

「うげ!どうしてその話を・・・いや、それには由来が有ってだな・・・」

「そのお話は後でお聞きしますので今は黙ってましょうか?」

「・・・・・・・・・・はい。」

 お母さんナイス!

「「璃々お姉ちゃんだけズルい!露柴と崔莉もおとうさんのおよめさんになりたいのに!」」

「それは今答えられないわねぇ。帰ったら華琳媽媽に相談してみるわね。」

 わたしはさすがにお母さんの発言に驚いて耳打ちする。

「(いいの、お母さん?そんな事言っても。)」

「(とりあえず今はこう言っておけば大丈夫よ。)」

 いいのかなぁ?

「そう言えば昔ご主人様は『親子丼』をご所望だったような・・・」

「ちょ、それは否定しただろっ!」

「「璃々お姉ちゃん、おやこどんぶりってなに?」」

「ご主人様しか食べられない大人の食べ物だよ。」

「「へ~、そうなんだぁ。」」

 あ・・・・・・ご主人様泣き出しちゃった。

 ちょっとやりすぎたかな?

 

 

 

 

おまけ弐

だるまさんがころんだ

眞琳 五歳

本城中庭

【エクストラturn】

 子供達が集まって『だるまさんがころんだ』をしていた。

「それじゃあ香斗がオニやるね。」

 香斗がみんなに背を向ける。

「だ~~~~る~~~~ま~~~~さ~~~~ん~~~~~」

 ここまで言った処で香斗は肩に何か触れるのを感じた。

「ふぇ?」

 振り返るとそこには烈夏が立っていた。

 眞琳、蓮紅、愛羅、冰蓮、宴、恋々がスタート地点から三分の一程。

 金桂、冥龍、露柴、崔莉が四分の一。

 嵐はほぼスタート地点。

「ふぇぇええ~~~!?」

 何が何だかわからず香斗は涙目になっていた。

「烈夏ちゃん・・・そんなに本気ださなくても・・・・」

「香斗ちゃんにオニをやらせるのがムリだったような・・・」

 蓮紅と眞琳は二人して溜息を吐いた。

 

 

おまけ参

はじめてのおつかい

眞琳 五歳

【エクストラturn】

「それじゃあ眞琳ちゃん、香斗ちゃん、蓮紅ちゃん、烈夏ちゃん、これを爸爸たちの所に届けてくれるかな?」

「「「はーい!」」」

「はい。」

 桃香から四人の子供達に手渡されたのは一つの風呂敷包み。

 中には一刀たちへの手紙と華琳の作ったクッキーが入っており、お使いが終わったあと一刀たちからそのクッキーは手渡される事になっていた。

 出発地点のここは北郷学園保育部。本城北西部の曹魏区画にある。

 終点は本城中央部。執政区画の最深、後宮とほぼ隣接する皇帝執務室。

 直線距離ならそう遠くはないが、賊の侵入を警戒するため入り組んだ廊下を歩かなければならない。

 四人が意気揚々と歩きだそうとした時、思春が烈夏に耳打ちする。

「(いいか、烈夏。お前の役目はお三方をお守りする事だ。油断するな・・・・・特に香斗様に。)」

「(こくこく)」

 烈夏は無言で頷き、思春にピースサインで答えた。

 

「あれ?どっちだっけ?」

 香斗の呟きが虚しく廊下に響く。

 執政区画に入って最初の分かれ道で既に迷子である。

 しかもここに来るまでに香斗は何度も転びかけ、柱や壁にぶつかりかけた。

 その度に烈夏が支えたり、服を引っ張ったりして事なきを得ていたのだった。

 普段は建物を外周する廊下を使い、執政区画に立ち入らない子供達。

 地図ももらっているがそもそも自分たちの現在位置が分からない。

「ねぇ~、眞琳ちゃん。どっちに行ったらいいの?」

「え?ええと・・・」

「蓮紅ちゃんはわかる?」

「こっち・・・・・かなぁ?」

「烈夏ちゃんは?」

「わかんない。」

 実に潔い返事だった。

「ふぇぇえ~~~」

「おちついて、香斗ちゃん。こいうときは・・・・・」

 泣き出しそうな香斗の肩を抱いて眞琳が辺りを見回す。

「人にきくのよ!」

 華琳の娘だけあり頭の回転が早い。

 大好きな父親の仕事姿を見れると浮かれて、地図の出発点の確認を忘れるというミスはしたが、充分帳消しにできる機転だろう。

「ごめんなさい、爸爸のお仕事してるおへやはどういったらいいの?」

 眞琳は目に入った最初の兵士に声をかけた。

「おや?これは眞琳様!この様な所にお越しとは・・・香斗様、蓮紅様、烈夏様まで!」

「あら?あなたはたしか・・・爸爸のしんえいたいの人ね。おなまえは・・・」

「はい。私のことは『いんてり』とお呼び下さい。北郷様・・・いえ、皇帝陛下から頂いた名です。」

 眞琳が声をかけたのはあのインテリだった。

「いんてりさんですね。」

「ええと、皇帝陛下の執務室に御用ということですが?」

「母さまたちのおつかいでこれを父さまにとどけるの。」

 蓮紅が手にした風呂敷包みを掲げて見せる。

「ほほう、成程。判りました。眞琳様、地図をお持ちですか?」

「え、ええ。これよ。」

 インテリは地図を四人が見やすい様にしながら説明を始める。

「現在位置がここになります。そして向きはこう。目的の場所がここです。」

「道はこうかしら?」

「はい。さすが眞琳様。ご聡明でいらっしゃる。」

「ごそうめい?」

「頭が良いという意味ですよ。」

 優しく微笑むインテリに眞琳も笑顔で返す。

「ありがとう、いんてりさん。」

「はい。ではお気を付けて行ってらっしゃいませ。」

 インテリは深々と頭を下げて四人を見送った。

 だが・・・。

「眞琳ちゃん、眞琳ちゃん。」

 烈夏が眞琳の服の裾を引っ張る。

「さっきのひと、ついてくる。」

「気にしないで、烈夏ちゃん。いんてりさんはわたしたちを守ってくれてるのよ。」

「?」

 その後、四人は無事執務室にたどり着き、ご褒美としてクッキーを一刀たち三人から貰えたのだった。

 

 

「今日の眞琳達のお使い、うまくいったな。」

「う~ん、七十点といったところね。」

 夜になり紫一刀は華琳と酒を呑みながら昼間の話をしていた。

「厳しいな、何か失敗したのか?」

「出発地点を地図で確認しなくて、いきなり迷ったらしいわ。」

 華琳は苦笑混じりに杯を傾ける。

「そうなのか?俺たちの所には結構早く着いたと思うんだけど。」

「あなたの親衛隊の一人に地図の確認をしてもらったと言っていたわ。名前は『いんてり』ですって。」

 ガタリと音を立てて紫一刀は椅子から立ち上がった。

 

「あいつが変なことしてないか確認してくる。」

 

「ちょっと待ちなさい!一刀、あなた過保護になってるわよ。それに部下をもっと信用してあげなさい。眞琳達の話を聞いても不審なところは無いわ。」

「・・・・・そうか?う~ん、俺たちが変に勘ぐり過ぎるのかなぁ・・・・・」

 

 ちょうどその頃インテリは既に寝台の中にいた。

「今日は思いがけず眞琳様、香斗様、蓮紅様、烈夏様にあんなに近くで会えましたねぇ。たくさんお話もできましたし・・・・・今夜はいい夢が見れそうです・・・♪」

 

 やはりインテリは変わっていなかった。

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

紫苑は物腰が柔らかいですが『大人の女性』だけあって

色々な顔を見せてくれます。

一刀に対しても従順なだけでは無く、押さえるところはしっかり押さえていますねw

Ichiro588様 アイディアを頂きありがとうございましたm(_ _)m

双子がうまれましたw

 

からくり関羽将軍

背中のボタンを押すと、角が飛び出し『嫉妬将軍』に変身しますw

 

おまけ壱は殴って退場様から

『紫苑と姐姐無双の璃々との話を希望』と頂いたリクエストをがんばってみました。

元ネタは紫苑・桔梗√の『璃々ちゃんの服選び』です。

 

双子の真名ですが

璃々→Lily→百合 として

薔薇→Rose→露柴

桜→Cherry→崔莉

という感じで決めました。

 

『紫苑』の別名『鬼の醜草』

ここで使われる『醜』は『災いを払う儀礼』の事だそうです。

決して悪い意味ではありませんw

文醜の『醜』も、こちらだそうで

雷起は最近まで「何で名前に醜いなんて字を使うんだろう?」と思っていました。

世の中には知らないことが満ち溢れていますね。

 

おまけ弐の『だるまさんがころんだ』は

紫苑・桔梗√の『お父さんて呼んじゃダメ?』で

璃々ちゃんと麗羽が『だるまさんがころんだ勝負』をしていたので

子供達にもやらせてみましたw

 

おまけ参は

@taka様のリクエスト

・・・・・なのですが、今回はまだ雷起の練習だと思ってください。スミマセンorz

次は母娘四組合同の出産後間もない頃の育児日記みたいな話にしたいと思います。

 

 

 

《次回のお話&現在の得票数》

 

☆蒲公英+翠13票

という事で次回は蒲公英+翠に決定しました。

以下、現在の得票数です。

 

麗羽   12票

桂花   10票

桔梗   7票

蓮華   6票

凪    6票

朱里+雛里6票

猪々子  5票

七乃   5票

穏    3票

白蓮   3票

亞莎   3票

流琉   3票

詠    3票

ニャン蛮族3票

小蓮   2票

焔耶   1票

明命   1票

数え役満☆シスターズ1票

秋蘭   1票

月    1票

 

※「朱里と雛里」「蒲公英と翠」「美以と三猫」「数え役満☆シスターズ」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。

 

リクエスト参戦順番→ 蓮華 凪 朱里+雛里 麗羽 猪々子 桂花 穏 桔梗 白蓮 亞莎 流琉 七乃 ニャン蛮族 小蓮 詠 焔耶 明命 数え役満☆シスターズ 秋蘭 月

 

 

引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。

リクエストに制限は決めてありません。

何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)

よろしくお願い申し上げます。

 

 

 


 
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