No.515289

恋姫無双 槍兵の力を持ちし者が行く 30話

ACEDOさん

なんだか、サクサク週間更新を続けられてる。あとが怖いんですけど……
なんだか原作キャラの性格が合ってるのかがこの頃の悩みです。はい。
一応、一刀君の視点で書いてみました。色々指摘をください。

2012-12-05 16:10:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4415   閲覧ユーザー数:3950

 SIDE 華琳

 

 蒼の嘘を見抜くのは、コツさえ掴めば簡単。一つ、一つの動作が『自然』すぎる。どこにも『不自然』な所がないのだ。まあ、今の所、それに気付いているのは私ぐらいの様だけど……

 それにしても、蒼、『自然』過ぎよ。そんな風に動き始めた時から考えて、おそらく劉備の『答え』というのが予想外だったようね?まあ、自分の思い通りには動かないにしても、ここまでとは……って感じかしら。

 

 「随分逸れてしまったけど、話を戻すわ」

 

 「ああ、そうだな」

 

 そういいつつ、話の主役は私と義勇軍の天の御使い(仮)こと北郷になった。

 

 「少し話を戻すけど、私の春蘭を過小評価をしてくれた本当の目的は何かしら?」

 

 「あら、やっぱり分かる?」

 

 「分からないと思われていたのなら、それは私に対しての侮辱以外の何物でもないわね」

 

 本当に……初対面とはいえ、少し私を舐めすぎじゃないかしら?

 

 「さすがに分からないとは思ってないけどね。……俺たちから一つ提案があるんだけど……」

 

 「聞きましょう」

 

 「あのね、曹操さん。この戦いが終わるまで、私たちと一緒に行動しませんか?」

 

 そこで劉備が口を挟んでくる、か。

 甘いわね。これでこの会話をするという筋道は他の者、少なくとも北郷と劉備ではないことが分かった。……まあ、この会話に誘導するための会話は北郷だけで考えたのかもしれないけど……やるなら最後までその者に任せるべきよ。相手が自分を勝手に評価してくれるのだから。

 

 「俺たちが提供出来るのは兵と、それを率いる将。

 ……関羽や張飛の力は家臣から聞いているかと思うけど……」

 

 「ええ、勇猛であり果敢。……春蘭や秋蘭に負けず劣らず、とても良い将才があると聞いたわ」

 

 「華琳様!私がこんな奴に負けるはずがありません!」

 

 「……落ち着け姉者。だから華琳様は負けず劣らずで互角だと言っているのだ」

 

 「なに?そうなのか?……ならばよし」

 

 ……全く、この娘は。

 

 「良く言うだろ?一等の獅子に率いられた百頭の羊は、一頭の羊に率いられた百頭の獅子に勝るって」

 

 「ふむ?そんな言葉は初耳ね。……だけど言いたいことがどういうことかは良く分かるわ」

 

 ええ、良く分かるわ。その言葉に隠れてもいない本音も。けど、聞く者が聞けば、私が羊だと聞こえるのだけれど、ね。

 

 「……良いでしょう。あなたたちの提案、受けてあげましょう」

 

 「それで……私があなたたちに提供するのは、兵糧ということで良いのね?」

 

 「……正解」

 

 「ふふっ、そんなことだと思ったわ」

 

 「あぅ……。お見通しだったんだ」

 

 「貴女たちの軍には何が足りないのか……それを考えれば、この答えが導き出されるのは当然でしょう」

 

 それぐらいなら、陣を一目見れば、足りないものは分かるわよ。

 

 「むぅ……そこまで見透かされてたのなら、駆け引きなんて意味ないなぁ。……じゃあ改めて。兵糧と武器と防具と、あと資材とかも頂戴」

 

 「ご、ご主人様、開き直ったねぇ」

 

 「全部バレてるんなら、遠慮したって仕方ないだろ?

 貧すれど心を錦で飾ってれば構わないさ」

 

 色々本音が出てきたわね。

 けど、こっちとしてもタダで渡すなんてことは出来ないし、そっちもそう簡単に物事が進むとは思ってないでしょう?

 

 「……良いでしょう。そのぐらいならば提供してあげましょう。ただし、貴方達の立場を変えさせてもらうわよ」

 

 「どういうことだ?」

 

 「今から、この遠征が終わるまで貴方達は私たちに雇われた傭兵として扱う。その代わり報酬は前払いで貴方達に渡してあげる」

 

 どうかしらと続けながら相手の反応を待つ。まあ、殆ど選択肢なんて無いようなものだけど。

 

 「ああ、わかった。こっちに選択肢はない」

 

 「ふっ、分かったわ。そういえばこの戦いの処理はどうするつもりだったのかしら?」

 

 「?」

 

 「……この戦いで出た死者についてです。通常は装備品は最低限のもの以外は接収し、死体の方は土葬または火葬します。正直、これをするには私たちは戦力が不足しています」

 

 北郷が分かってないような顔をしていると、小さい娘が彼に耳打ちで伝えている。まだ知らなかったようね。

 

 「すまないんだけど、こっちだけでは手が回らないからそっちに協力を申し込みたい」

 

 「ええ、いいわよ。そのかわりそこで得た物は山分けよ」

 

 「それは勿論だ」

 

 「なら、これで話は終わりね。この後処理を終わり次第貴方たちは一時的に私の傘下に入ってもらうわ。後で軍議を行う時に呼びに行かせるから、それまでは『勝手』にしなさい」

 

 そう言い残しつつ、私たちは自分の軍に戻った。

 

 

 

 

 

 「……自分で自分にふさわしい敵を育てようなんて滑稽かしら?」

 

 「……いや、別に。いいんじゃねえの?」

 

 陣に戻って春蘭達に戦の後処理を任せて二人きりになりすぐに蒼に話しかける。

 全く、これで私を馬鹿にしよう物なら反撃のための台詞を考えたのだけど、つまらないわね。

 

 「別に、そう簡単にからかわれてたまるかよ」

 

 って、なに私の思考を読んでいるのかしら?私がやるのはいいけど、アナタがやるのは気に食わないわ。……なら、この事について聞くのは止めようかしら。

 まあ、さっきまでの『自然な』顔から、不敵そうな笑みが戻ってきたようだからよしとしましょう。

 ……さて、アナタも調子が戻ってきたようだし、動きましょうか。後、『勝手』にしろといたからそのことについても言っておかなくちゃね。

 

 「蒼、私の護衛から人数を割いて、劉備の陣内を探らせなさい。今のところはこの戦が終わるまででいいわ」

 

 「別に構わんが、お前が危険になるぞ?」

 

 「そんなことは百も承知よ。

 私を誰だと思ってるの?私は曹孟徳よ。この程度の賊に遅れを取る気はないわ。

 ……それにもしもの時はアナタが守ってくれるのでしょう?」

 

 「それは当然」

 

 「なら、行きなさい。ああ、後もし今、劉備の細作が入ってきても、無視しておくように全軍に通達しておいて頂戴」

 

 「御意」

 

 恭しく頭を下げて準備に取り掛かる蒼を見ながら、未熟な果実を熟すまで待つ私を想像しながら次の戦に備えるために陣の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 北郷

 

 

 皆さん初めまして。なんか訳の分からないうちに三国志(といっても有名な武将はみんな女で、所々違う部分もあるけど)に飛ばされた北郷 一刀です。

 

 「――という訳で貴方達義勇軍は夕刻、此処で敵を引き付け、時が来れば他の部隊と呼応して城に侵攻して頂戴」

 

 「ってちょっと待った。引き付けるって俺たちだけじゃ出来っこないぞ」

 

 「それぐらいは分かっているわ。だから、この娘達を一時的にあなたの指揮下に置くわ。それで大丈夫でしょう」

 

 「……ならいいんですけど……」

 

 曹操たちが立てた作戦は正面で敵を引き付け、その間に敵の砦に潜入した兵が内部から砦にある三つの門を開け、それと同時に一気に攻勢をかけるといったものだ。

 その中で俺たちは一番厳しいであろうと思われる正面の敵の引き付けの役目だった。恐らく一番被害の出る場所だ。

 こっちの立場は曹操に雇われた立場だから断れない。まだ終わった後に物資を渡されるのならまだしも、すべて事前に渡されていてこっちが勝手に断ったら、名を売るときに響く。それぐらいは世間知らずの俺にも分かる。

 

 「……その砦に侵入した兵は大丈夫なのか?それが失敗したら俺たちは全滅だ」

 

 「それは此方を信用してもらうしかないわね。まあ、侵入した兵について詳しく知りたいのならアイツに聞きなさい」

 

 「あ?俺か?」

 

 そう曹操の視線の先にいる李高を見る。

 

 「当然でしょう。アナタの部下なのだから」

 

 「っち、まあ、そこは安心しな。侵入したのは長い付き合いの奴らだ。これくらいはこなせるさ」

 

 そう余裕な表情を見せながら、説明を聞く。……なんか根拠がないように聞こえるんだけど……

 

 「そいつらのことについて聞きたいんなら、お前の所の関羽が一番よく知ってる。後で聞いてみな。じゃあ、俺はこれで……準備がある」

 

 「あら、時間はまだあるわよ」

 

 「早めにやって余裕をもって事に当たる主義だ。じゃあな、坊主、嬢ちゃん達お互いに生き残ろうや」

 

 ……どうして愛紗がそんな事を知っているんだ?それに李高っていう将は俺の知る歴史ではいなかった。ということは少なからず変わっているということか。その時がきたら本当に自分の力だけで桃香たちを手助けしなきゃならないのか……

 

 

 

 

 「――ってことが曹操の所であったんだけど……」

 

 「多分、李高さんと一緒にいた部隊の人たちだと思うんだけど……、確かあの時愛紗ちゃんは一緒に戦ったよね?」

 

 「そういうことですか。……恐らく大丈夫でしょう。もしかしたら此方が攻勢に出る瞬間に門が開くこともあり得ます」

 

 「え、まだ攻めてないのに?」

 

 「彼らなら可能です」

 

 曹操の陣であった軍議から帰り、その内容を皆に話し、潜入した兵について愛紗に聞いてみる。

 少し呆れながら喋る愛紗は冗談を言う雰囲気を纏っていないのがまた疑わしくなってくるんだけど……

 

 「ご主人様、此方は三十名、あっちは千五百、それも官軍崩れの、です。

 そこで、彼らは損耗らしい被害も受けずに皆殺しをしました」

 

 「え、皆殺しって……」

 

 「言葉の通りです。彼らは敵に容赦をしませんから……」

 

 そりゃ、戦いだから敵を倒すのは当たり前だけど……

 

 「ご主人様、それが紅蓮団です」

 

 「え、朱里も知っているのか?」

 

 「はい、最も直接会ったことはなく、噂を聞いた程度ですが……」

 

 そういえばあの李高の名前を聞いた時にアイツのことについて聞いてたな。

 

 「彼らは傭兵の中で最も有名な傭兵部隊でした。

 少数なれど、強力で視野も広い。発足してから一人も落伍者を出さず、受けた依頼は成功させる。そして、どんな状況だろうと契約が続く限り死んでも裏切らない。

 民衆にはそこまで広まっていませんが、世をしっかりと見ている者ならば、少なくとも一度は耳にする名です」

 

 「え?けど李高は今曹操軍にいるぞ?」

 

 「はい、ただ雇われた。というより、あの時の会話からすれば正式に家臣になったのかと思いますが……

 縁があれば私たちも雇いたかったんですけど……」

 

 「え、けど俺らは傭兵を雇える余裕なんて……」

 

 「彼らは気まぐれなんです。ある領主の依頼には高額の依頼料を要求し、貧しい者の依頼ならば林檎1つで受けたこともあるという噂もあります。

 彼らが言うにはその高額の依頼料より、貧しい者のなけなしの林檎の方が高かった。とかそんなことを言う集団です。

 そんな集団だからこそ短期でもいいから交渉次第では雇えると思ったのですが……」

 

 へえ、そんな人だったんだなあの人って、ただ面倒を回避する面倒くさがりではなかったんだな。

 

 「で、朱里も大丈夫だと思うんだな?」

 

 「はい。噂通り、いえ、あの曹操さんが認めているのなら、やり遂げるでしょう。だから我々はいかにして犠牲を減らせるかを考えるべきです。それも想定している時間以上の戦闘を考慮して」

 

 「……そのためには、いかにして曹操さんからの軍とうまく連動して動くかがカギになります」

 

 「そうだないくら数が増えてもバラバラなら意味がない」

 

 「そういえば、もう曹操の所からの情報は?」

 

 「今は収集中です。

 この戦を終わってからですね。私たちが態勢を整えることが出来るのは」

 

 「なら、この戦いに勝たなくちゃね!!」

 

 「はい。頑張りましょう!!」

 

 そう皆の気持ちを一つにして俺たちは控えている戦について考えていった。

 


 
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