皆さんこんにちは、蒼です。
何ていうか……うん。運は私に向いていたようです。……洒落じゃないですよ。
いやー、よかった。『十字紋』があった時は本当にどうしようかと悩んだものだが、見た感じ、現代の高校生、それに制服を見る限り、私立かな。それに着慣れてるってことは二年、三年って所か?
一応、情報っていうアドバンテージは消えた形だが、それでも最悪の事態は避けられた。大方、島津の家系に連なるから使っているっていう感じかな。
っとヤバいな。落ち着け。今の状況なら俺がナニかしらの理由で安心していると勘のいい奴にばれる可能性がある。そんなことはこっちにメリットはない。
だから騙す。他人ではなく自分を騙す。自分は天の御使いなど気にしていない。あの旗印など知らない。自分が知らない自分に話す感覚。自分はあの旗など知らない。あんな服を着た人物など見当もつかない。それを言い聞かせ、いつも通りの俺(蒼)に戻る。
それにしても、天の御使いってかなり噂になってたんだな。それに『北郷 一刀』という名前も……この頃忙しかったから、情報収集も疎かになっていたな。一応、まだ時間的に余裕のあった森羅たちに情報の整理を頼んでいたんだが、俺がこういう天の御使いのような超常的なものが好んでなかったから自分たちの所で切っていたんだろうな。有り難いんだが、整理だけしてもらって、今後は全部上げてもらうか。
ていうかなんだ?この空気は?俺としてはタイミングはばっちりだと思ったんだが……
「いきなり出てきて挨拶もなしに口を挿む部下を持った覚えはないわ。そんな奴は自称で十分よ」
「……じゃあ、お前はどうなんだ?」
「……何のことかしら?」
甘いな。もう情報(証拠)は上がってる。
「義勇軍の許可を待たずに、強引に会いに行ったそうだな。今の反応からすると、お前もそちらさんの話に無理に口を挿んだ形じゃないのか?」
「く……」
「部下は主君に似るってな。そこまで気にすることはないだろう。
ま、華琳の言う通りなのも確か、さすがに自己紹介もせずにずっと喋るのは失礼だ。
久しぶりの方は久しぶり、初めての方は初めまして。私は姓は李、名は高、字は雲犬という者でございます」
「……貴方が噂の『紅蓮団の紅狼』、ですか?」
「尚、自分の二つ名は先ほど、華琳の言っていたように『最速』しか名乗らないのでそこんとこヨロシク」
そうチビ(見たところ頭を使いそうな雰囲気を持っているから軍師のポジションか?)のセリフに被せるように訂正しながら、頭をわざとらしく下げる。
華琳を言い負かしたから、ちょっとテンションは上がってるのは秘密だ。
「あ、こちらこそ」
そういいながら、向こうも劉備と高校生が頭を下げてきた。相変わらずのってとこか。
「いや、一応俺の方が立場は下だから頭下げんでもいいだろうに」
「はは、いや、なんていうか……」
そう言いながら頭を下げた高校生が頭を掻きながら答える。途中から尻すぼみになっていたが。
頭下げられたから、か?恐らくこの天の御使いも劉備と同様、か。
で、張飛も相変わらず……いや、腕は上がってるかな?雰囲気がそう感じる。そして関羽も面白いことになっている。
それに、あの後ろにいるチビも中々ヤる。あれは義勇軍の時に入ったんだろう。で、練度を見る限り、この義勇軍は出来たて……と。本当に何にも苦労せずに人材が集まるな。俺なんか地道に旅して集めて二年でようやく150人だぞ。
分かっているとはいえ、なんか理不尽だよな。
「っと、ワリぃな。話の途中だったんっだろ?すまない進めてくれ」
無理やり話を元に戻そうとする。……後ろにいる華琳の方から「ここまでかき乱しておいて良く言うわ」なんてのは聞こえない。
「あ、あの、李高さん」
「ん、どうしたんだ。劉備、何か俺に言いたいことがあるのか?だったらこれの後にするべきだ」
「いえ、今言います。あの時の答えを今言いたいんです。良いですか?」
「……それは、俺じゃなく華琳やお前の仲間に言った方がいいんじゃないか?」
「いえ、私の話はその『答え』を聞いてからでいいわ。こっちはまだ時間があるし、ね」
「こっちもいいよ。桃香が言いたい事は分からないけどね」
そう両陣営の二人の許可をもらって、安心したように此方に向き直る。
これで、こいつの答えが聞ける。さあ、聞かせてくれ。この現実を見直し、元になった理想からどう変えた?そしてどれほど高く、堅固になって、華琳をより高い場所に誘う踏み台となる。
「と、まあ許可が出たが、早い方がいいだろう。前置きはいいからとっとと言いな」
「はい。私は……あの時の理想を捨てません。あの時、貴方は歪んでると言いました。けれど、それと共に正しいとも言いました。それに、ご主人様の住んでいた世界と国の話を聞いて、より強く思いました。私が目指す国は、『皆が笑って暮らせる世の中で争いもなく話し合いでわかりあえる世の中』だと」
……
「へえ、そうか。そいつがお前の『答え』か嬢ちゃん。あの時から出した『答え』がソレならそうしな」
「はい!!」
……俺はよくやった。この『答え』を聞いて表情を変えなかった俺を誰か褒めてくれ。いや、ホント。
何ていうか……良く分かってない。この一言に尽きるな。俺から言わせてもらえればあの国(日本)は数多の血で築かれたモノだ。それにあの国は綺麗じゃない。臭いモノに蓋をしていたように思えてならない。いや、それは何処の国でもそうか。ただ、上澄みと沈殿物の差が激しく、それを解決せずたらい回しにしていただけだったな。
まあ、そんなことはどうでもいい。とにかく、少しは現実を見るようになったが、根本的な所は何も変わっていない、かな。
「……俺がその『答え』が正しいとも間違っているとも言えない。いや、これには正解はないのかもな。まあそう決意したのなら、ソレを目指して頑張りな。
っと、これで話は終わったよ。時間を取らしてすまなかった」
そう言う俺の顔を華琳がじっと見ている。
「ん?なんだ?華琳」
「……いいの?」
「何が?」
「……いいえ、何もなければいいのよ」
そう俺にしか聞こえない程の声で会話しつつ、俺の前に立ち、再び、会話を再開する為に口を開き始めた。
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本作品の一刀君の立ち位置といたしまして、蜀ルートの一刀君になりますが、そこまで甘ちゃんにはせずに、言葉で表すのは少し難しいのですが、劉備の精神的な支えといいますか、魏や呉の劣化バージョンっぽくしていきたいと思っております。