「え、テュディアをデバイスへと変えてほしい?」
「えぇ、部屋に戻ってふと思ったのだけど、レイジングハートがデバイスにできたのだからテュディアもデバイスに変えられるのではないかと思ってね」
ナノハは仕事で使用する口調で話し、目の前に居るエメリア・ラスティルに頼んだ。
何で今更エメリアにこのような事を頼んでいるのかというと、明日の為に使用する戦いのパターンを増やしていきたいという考えがあってのことである。別に今の状況でも良くないというわけではないが、戦術が増えるだけ相手を倒すパターンを増やせると思っていた。
エメリアどうしてナノハが今更そのような事を自分に頼んできたのかすぐに理解するが、少し考えるところだった。
「確かに出来るかもしれんが、レイジングハートのようにうまく成功するという可能性も分からない状況なんだが……」
「それは分かってる。だけどデバイスを作ることに関しては上位にランクインをしたことがあるエメリアならば可能だと思ってる」
「……よくそんな昔の事を調べたな」
「フィルノから聞いた」
「ちっ、あの野郎。余計なこと言いやがって」
エメリアは舌打ちをし、どうしてエメリアがそこまで嫌な顔をするのかはナノハは理解できなかった。
確かにエメリアは過去にあった大会で一桁台にランクインするほどデバイスの性能が良く、評価される時期があった。まだ妹が人質にされたり、エメリアが管理局認可員になる以前の話であるため、当時は自分のやりたい通りにやっていた時期でもあった。
しかし結局はデバイスに関係する仕事には就かず、管理局認可員という役職になってしまい、その後妹を人質にされた為に研究所に働き、フィルノと知り合ってからはスパイとして活動するようになっていた。
だから正直に言えば、あまり自分に頼って欲しいとは思ってなかった。デバイスを最後に作ったのもかなり前の話だし、暇つぶしに作る時間も研究所に入ってからは尚更なくなっていた為に、今のフィルノにとっては昔の思い出としか残っていなかった。
しかしナノハは嫌な顔をする事に気になったが、それを全く気にせずに聞いてきた。
「それで、やってくれるの?」
「……別に、私以外でもデバイス作成は出来ると思うのだが?」
「今日中という事を考えたら、エメリアしか出来ないだろう? 私も作ることは出来るけど、一日で完成させるのは無理だからな」
「なるほど。確かにツュッヒティゲンのメンバーの中からだったら、私ぐらいしか居ないというわけか……」
やりたくない、という気持ちがエメリアにはあったが、ナノハが前日に頼んでくるという事は何か必要な事なのかもしれないと思い始めた。
戦うために攻撃パターンを増やしたいと言うだけの理由で間違っていると思うだろうが、必要な事である事には変わりなく、エメリアが思っていた事はあながち間違っていない。必要だと思ったからこそ、ナノハがエメリアに頼んでいるのだから――
「……分かった。すこしテュディアを借りることになるが構わないか?」
「構わない。そのつもりで私もいたからな」
「今日の夜には仕上げるつもりだ。それまでは自由にしていてくれ。それではテュディアを渡してくれるか?」
ナノハは持ってきていたテュディアをポケットから取り出し、エメリアに渡した。
それからエメリアはテュディアをデバイスへと変えるために取り組み、ナノハはそれまでの間どこかに居ようと思ってエメリアが居る部屋から出て適当に歩いて行くのだった。
しかし相変わらずこれと言ってする事もなかったし、適当にディメルニアをふらついているだけだった。
「ん? ここって、確かシルフィア姉妹の――」
口調をエメリアの部屋を後にしてからは元に戻していて、エメリアが居る部屋から出て少しすると、何処からか笑い声が聞こえてきた。聞こえてくる方へ歩いて行くと、ある部屋の前にたどり着きそこで一度立ち止まった。
その部屋の場所を見て、すぐにシルフィア姉妹が居る部屋だと理解する。
部屋の中からは尚も笑い声が聞こえてきており、何故だか分からないが何をはなしているのかなのは気になっていた。
とりあえず入ってみようと思い、なのははシルフィア姉妹の部屋へと入っていった。
「あれ? ナノハ聖王女殿下。一体何の用ですか?」
突然扉を開いたのに気づいてすぐに扉の方へ見たらなのはが居たものだから、デュナはなのはにそう問いかけていた。
デュナの返事になのはは眉をひそめるが、するに表情を戻してデュナの言葉に言葉で返した。
「特に用はなかったのだけど、ちょうど通りかかったから笑い声が聞こえてきたから、少し寄ってみようと思って」
「あ、そうでしたか」
「それと、ナノハ聖王女殿下って止めてくれない? 聖王の代はオリヴィエで終わっているのだから、今更聖王女と呼ばれるのはゼーゲブレヒドの末裔としては好ましくないのだけど」
「それでも、私たちの中ではあなた様は聖王の子孫であり、あなたに一生就いて行くものであるシルヴェルン家の兵士なんです。名前だけで呼ぶなんて恐れ多いのですから」
覚醒するまではそのような言い方ではなかったのだが、覚醒して本当にゼーゲブレヒド家の子孫だと分かってからはディナとリィナの二人はなのはをそのように呼ぶようになっていた。
覚醒する以前だと、なのはが聖王家の子孫だということは正確には分かっていなかったので、完全に覚醒するまでは普通に『なのはさん』と呼んでいた。しかし子孫だと分かればデュナとリィナにとってなのは……いやナノハは聖王家の末裔というわけでもあり、同等な呼び方はシルヴェルン家の子孫として嫌だと思い、なのはを聖王家の王女として扱う事にしていた。
聖王家と覚醒した後に、ナノハはフィルノに向かっていつも通りで読んでいいと言ったが、シルフィア姉妹の二人はそのまま『ナノハ聖王女殿下』と呼んできていた。なのはは何度も今まで通りに呼ぶように頼んだのだが、それでもシルフィア姉妹は呼び方を変えなかったために、なのはの方が諦めたという感じになり、結局このまま呼ばせている事にしたのだった。
もちろん先ほどみたいにナノハ聖王女殿下で呼ぶことを止めてほしいとは言うが、そこまで強制はしていなかった。
けどもヴィヴィオがオットー辺りから殿下と呼ばれているのに少し嫌がっていたことがなんとなく理解して、それを思い出した時は苦笑いしたくらいだった。
「それで、さっきまで何を話していたの?」
「これと言って大した話ではありません。ただ、再開してからこうやってのんびりと話す機会が余りなかったもので」
「そう言えばそうだったね。今日まで殆ど動きっぱなしだったし、ここ最近はヴィヴィオやアインハルトの面倒も見てたからね。私はお邪魔だったかな?」
「いえいえ!! ナノハ聖王女殿下に対してそのような事を思っていませんから!!」
「そうですよ!! もっとのんびりしていてください!!」
なのはは自分が邪魔だったと言うと、デュナとリィナの二人は慌てて止めようとする。
そこまでして止める必要はないと思うが、それを見ていたなのはは少し微笑をしていた。
「ありがとう。でも、二人でまだ話したいこともあるだろうし、やっぱり私は失礼するよ。暇つぶしに寄ってきただけだから」
「そうですか。それでは明日、お互いに勝ちましょうか」
「えぇ、今の管理局を変えるためにも――」
そしてなのははシルフィア姉妹から背中を向け、この部屋を後にするのだった――
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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