シルフィア姉妹の部屋から出てさらに歩いて行くと、ある扉の前にてなのはは突然足を止める。
その部屋に居るのはなのはがフェイトから誘拐してきたヴィヴィオとアインハルトが居る部屋だった。
最初は通り過ぎようと思っていたのだが、どうしてなのか足を止めてしまい、扉を開いて部屋の中に開けようかと悩んでいた。どのような顔でヴィヴィオ達と会えばいいのか分からないでいたからだ。二人を誘拐したのはなのは自身であり、誘拐した本人がいつも通りの顔で会えるわけがなかった。
だからどのように二人の前に出て行けばいいのか、なのはには分からなかったでいたのであった。
ちなみに、ヴィヴィオとアインハルトの二人はアリシアとシルフィア姉妹が交代しながら監視しており、特に何かしてこないだろうということで拘束していたりという事はしていなかったりする。基本的三人の内誰かが見張っているために、何か企もうとすることは出来ず、そもそもヴィヴィオとアインハルトが部屋から出ると施設内に音が鳴り響くように設定されていたため、そう簡単に何かしてくることはないだろうと考えてた。
「それじゃあ、一度私は部屋から出る――」
するとその扉が突然開きだし、なのはは突然開いたことにどうしようもなくそのまま立ち尽くしていた。
そこから出てきたのはアリシアで、アリシアも部屋を出ようとしが、目の前になのはが立っていたのを見て、誰かと話していた会話が途中で止まった。
「え、えっとその……」
なのははどうすればいいのかさらにテンパってしまい、あまりにも動揺してしまう。突然の出来事で尚更どうすればいいのか分からないでいて、アリシアもまさかなのはが目の前に立っているとは思っていも居なかったので、タイミングが悪すぎたとおもってしまった。
けどこのような事態になってしまっては多分ヴィヴィオとアインハルトもなのはの存在に気づいてしまいますし、案の定それはその通りとなってしまう。
「アリシアさん? 一体どうした――」
ヴィヴィオが突然言葉が止まってしまったアリシアを見て、様子を聞こうと近づこうとするが、近づいたら目の前になのはが居ることに気づいてヴィヴィオも言葉が黙ってしまった。
アインハルトもヴィヴィオに続くように近づくが、なのはの姿を見て状況をすぐに察していた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
四人とも何を話せばいいのか分からなくなっており、この状況を一番何とかできそうなアリシアですらどのように話せばいいのか分からずにいた。まるで時が止まったかのようになのは達四人は体一つ動かず、唯時間が流れてた。
そして数分後、ようやくなのはが口を動かすことが出来るようになり、とりあえずこの場から逃げようと考えて、行動に移そうとした。
「そ、それじゃあ、私は行くから」
「ま、待って!!」
なのはが逃げるようにその場から離れようとすると、ヴィヴィオが突然声を上げ、その声になのはは足を止めてしまう。ヴィヴィオが話しかけて来るとは思わず、とっさの行動で歩くのを止めてしまっていた。
すぐに足を止めなければ良かったとなのはは思うが、止めてしまった以上はどうしようもない。なのははどうすればいいのか分からず、とりあえず何か返さなければと思って話し返す。
「……何? 私は急いでいるんだけど?」
しかし、自分が思っていない言葉を言ってしまい、なのははさらに悩み始める。ヴィヴィオを拒絶させるような言い方しかでず、この時だけは自分を呪いたくて仕方がなかった。
ヴィヴィオもそのなのはの言葉に一度押し負けそうになるが、それでも挫けずになのはに話しかけることにした。
「なのはママが何をしようとしているのかは分からない。けどそれは、なのはママじゃないといけないのでしょ?」
「…………」
「私はもう中等部だし、なのはママがどんなことをしているのかはなんとなく理解できる。だから、何もかも終わったら無事に帰ってきて、フェイトママとまた一緒に暮らそう」
「……分かった」
それだけしか答えられなかった。単なる口約束ではあるが、出来る限りヴィヴィオの願いは叶えたいとなのはは思っていた。
そのあとなのははヴィヴィオ達から離れていき、結局一度もヴィヴィオの方へ顔を振り向きもせずにに歩いて行くのだった。
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「で、状況は把握したけど、なんで俺の所へ来たんだ?」
「特に意味はないけど、なんとなくね……」
ヴィヴィオ達から離れた後、なのはは一人で居るのが嫌だったのかフィルノが居る部屋へとすぐに向かい、事情を聞いたフィルノは少し呆れていた。
シルフィア姉妹の部屋へ戻るという考えもあったが、歩いて行った方向からして逆戻りは出来ず、遠回りしないといけなかった為、それよりも近いフィルノの部屋へと向かう事にしたのだ。
「まぁ、約束したのだから、大丈夫だとは言いたいが……」
「その場でした咄嗟の約束だったし、正直言えば本当に家で前みたいに暮らせるかなんて分からないのだけどね」
「実際、どのようになるかは神のみぞ知るだからな」
「なるべく昔みたいに暮らしたいとは思うけど、今まで私がやってきた事を考えると、どうしてもね」
この先どのように世界が流れていくなんて、誰もが分かる事ではなかった。分からないがためにヴィヴィオと約束した事が守れるのかと思ってしまい、さらに言えば、もしこの革命が成功したとしても暮らせるかという可能性も難しかった。
革命が成功したとしても、なのはを恐れる人は増えるかもしれないし、革命した後の管理局から身を引くことも考えてた。フィルノが言った通り、この先どうなるかは神のみぞ知るでどうなるかなんて誰にも分からないのだから――
「……まぁ、今はその話は後にしよう。その時になったら考えればいい」
「そうだね。今から考えてもそうでなくなる可能性だってあるからね」
「そういう事だ。しかし、こんな子供の話をしているとお互いに大人になったものだな」
「確かにそうかも。昔なんか私はフィルノ君のお嫁さんになるとか言ってたもんね」
その時からもう二十年近く経っているし、なのはも子供の時のようにフィルノに恋愛対象として好意を持っていない。今では二十年近くも会っていなかった幼馴染みたいな感じであり、それはフィルノも同じ様に思っていた。
結局、二人の恋心は年が経っていくうちに無くなっていたという事だった。その間になのはは魔導師として動くことになったし、フィルノは両親が殺されるなどとという身の回りの変化が大きすぎたために、お互いに唯の幼馴染としか思えなくなっていた。特になのはに限ってはつい最近までフィルノの事を忘れていたし、フィルノよりも薄れていたのだからより幼馴染だと思っていた。
「本当に、何もかも変わってしまったな」
「仕方ないんじゃない? 誰かに対する感情って年を取る間に変わってくるもんだから」
「……そうだな。昔のように無邪気にいられる事も出来ない。特に今は歴史を変えようとするくらいの事をしようとしているのだからな」
「その通りね。私たちは断罪を下すツュッヒティゲンであるのだからな」
突然口調を変えたナノハであったが、フィルノは特に表情を変えず、さらには笑みを浮かべていた。
それはフィルノだけではなくナノハも突然笑みを浮かべ、その笑みは周りから見れば不気味に見えていた――
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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