No.511153

ソードアート・オンライン デュアルユニークスキル 第三十五話 燃え尽きる劫火

やぎすけさん

ちょっと短めです。

2012-11-22 21:32:44 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2163   閲覧ユーザー数:2091

デュオ視点

最初に攻撃を放ったのはキリトだ。

右手の剣を横薙ぎ振るって斬りつける。

ヒースクリフは左手の盾でそれを難なく受け止める。

俺もキリトに続くように左上から剣を振り下ろすが、今度は右手の剣で受け止めた。

剣がぶつかり合う度に火花が散り、その空間を一瞬明るく照らす。

その衝撃音を合図だったととでも言うように、一気に加速する3人の剣戟(けんげき)が周囲の空間を圧した。

次の瞬間、凄まじい速さで4つの剣と1つの盾がぶつかり合いを始める。

 

キリト「はぁぁぁぁぁぁ・・・!!」

 

デュオ「うおぉぉぉぉぉ・・・!!」

 

俺たちは、スイッチなしでお互いの動きを阻害せずに、攻撃と防御を繰り返す。

ヒースクリフに弾かれて、俺たちはいったん距離を取る。

 

キリト「くっ・・・相変わらずの鉄壁だな・・・」

 

ヒースクリフ「君こそ・・・すばらしい反応速度だ・・・と言いたいところだが、以前ほどではない。疲れかな?」

 

キリト「まだ上がるぞ!!ついて来い、ヒースクリフ!!」

 

キリトは駆け出すと、再びヒースクリフと打ち合いを始める。

俺もそれに続きながら、HPの下に表示されているスタイルの持続限界時間(・・・・・・・・・・・)

残り時間は4分39秒56と表示され、なおも減少を続けている。

 

デュオ〈時間がないな・・・〉

 

俺は一瞬、スタイルを解除して逃げるということを考えてしまった。

だが、その考えは0.2秒で消滅した。

 

デュオ「一気に終わらせる!!」

 

気を引き締め直すために、そう叫ぶと剣を強く握り締めた。

 

俺たち2人はソードスキルを一切使わず(俺は使えず)、本能が命ずるままに剣をに振り続けた。

当然システムの後押しは得られないが、それでも二年間剣士として戦ってきた俺には充分だった。

おそらくキリトも同じだろう。

だが、ヒースクリフは異常なまでの正確さで俺たちの連携の連撃を次々と叩き落とした。

その合間にも、わずかな隙をついて反撃をしてくる。

そんな打ち合いが続き、制限時間が30秒を切った。

 

デュオ〈最後の賭けだ。〉

 

俺は、大剣を片手で持つと、下から剣を振り上げ、続いてそれを両手に持ち直すと剣を振り下ろしてヒースクリフの盾に叩きつける。

 

デュオ「ぜぇぁぁぁぁぁ!!」

 

絶叫とともに叩きつけた刀身は十字の隙間に挟まるようになった。

俺は押し込むように剣に力を込めると、剣と盾の接触している面を軸に俺の体が浮かび上がった。

俺が独自開発したシステム外スキル【イヴェイドプロテクト】である。

 

デュオ「くらえ!!」

 

ヒースクリフ「何・・・!?」

 

ヒースクリフの上に跳んだ俺は、そのまま自らの体を軸に剣を回転させる。

正面からはキリトが攻撃を仕掛けていたため、

上空の防御を行えないヒースクリフに、俺の剣が深々と食い込んだ。

HPが減少していき、レッドゾーンに到達する。

あと一撃を与えれば、奴を倒せるだろう。

 

デュオ〈これで俺の役目は終わりだ・・・〉

 

[You are dead]

俺が着地すると、制限時間が0になり、HPが消滅し、システムが死の宣告を告げる。

同時に体に力が入らなくなり、視界が傾く。

 

キリト「デュオ・・・!?」

 

ヒースクリフ「どうやら時間切れのようだな。」

 

デュオ「ああ、その通りだ・・・キリト・・・」

 

その途端、体が消滅を始めた。

 

キリト「デュオ・・・!!」

 

キリトはその場から動かずに、俺を見ている。

ヒースクリフも最期の時くらいは見届けさせてくれるようだ。

キリト同様に動かずに、俺たちを見据えている。

 

ガッシュ「デュオ・・・っ!!」

 

エルフィー「デュオ君・・・っ!!」

 

クライン「デュオ・・・っ!!」

 

エギル「デュオ・・・っ!!」

 

倒れたままのガッシュたちが、必死にもがきながら叫んだ。

皆、両目に涙を浮かべて泣いている。

 

デュオ「今までサンキュー・・・楽しかったぜ・・・」

 

そこまで言った時、俺は目が熱くなり視界がぼやけるのを感じた。

気が付くと、俺の頬にも涙が伝っていた。

 

デュオ〈まだ、泣けたんだな・・・俺は・・・〉

 

最後に泣いたのはいつだっただろうか。

それすらもわからないほど、俺は涙を流したことが無かった。

だが、俺は最期に泣くことが出来た。

そう考えると、なぜか嬉しかった。

 

俺は最後に笑みを浮かべながらキリトに言った。

 

デュオ「キリト・・・勝てよ・・・」

 

体が床に触れると同時に俺は思った。

 

デュオ〈ありがとう、みんな。俺のために泣いてくれて・・・俺・・・幸せだ・・・〉

 

次の瞬間、俺の体はポリゴン片となって消滅した。

 

デュオが消滅した瞬間。

通常視点

シリカ サイド

シリカ「痛っ・・・!?」

 

シリカはこの世界には無いはずの痛みを感じて、視線を落とす。

すると、デュオとの結婚指輪に亀裂が入っていた。

亀裂はゆっくりと伸びていくと、パキっという音を立てて指輪が割れた。

 

シリカ「あぁ・・・!!」

 

指輪は、シリカの指から流れるように落下を始めると、ポリゴン片へと姿を変える。

シリカは慌てて手を伸ばすと、指輪の欠片であるポリゴンを受け止める。

けど、それも指に触れると音もなく消滅した。

 

シリカ「指輪が・・・」

 

シリカが初めてもらったものであり、デュオとの誓いの証でもあった結婚指輪は

文字通り影も形も残っていない。

 

シリカ「そんな・・・まさか・・・!?」

 

嫌な予感がして、窓から上の層のある天井を見上げる。

 

シリカ「デュオさん・・・」

 

両手を胸の前で組むと、デュオが帰るのをアインクラッド(この世界)には存在しない神に祈った。


 
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