「闇の書?」
「ああ……」
夏休みも終盤に差し掛かった今日、俺は刃と密談を行っている。なんでも昨日コイツは、八神の家に誘われ強引に一泊させられたらしい。その後、八神の自室から魔力反応を感じ入ってみたらなんか四人組の騎士と名乗る者が現れ、その三人と一匹の話だとはやてが今代の闇の書の主ということらしく、そしてその時の八神が言った言葉が「私が闇の書の主として皆の衣食住はきっちり面倒見なあかんということや。幸い住むところはあるし、料理は得意や。明日皆のお洋服を買うてくるから、サイズ測らせてな」とのことらしい。お互いの価値観が違いすぎて守護騎士たちも唖然としたことは言うまでもない。
それを聞いて俺は思わずため息が出た。
「………嫌な予想が当たったな…」
「え?」
「闇の書というのは間違いで本来の名は夜天の書と呼ばれていた本だ。最も原形はもうとどめてないがな・・・・よく聞いておけよ?八神の足が動かないのは闇の書のせいだ。」
「どうゆう意味だ?それは」
「いいか?はっきり言わせてもらうが闇の書が本格的に起動し始めたということは八神の命はもって今年までだ」
「は!?何言ってるんだよお前……」
「夜天の書は本来魔法を記録する本だったのだが、今までの主が己の欲望のまま馬鹿みたいに大幅にいじくってしまったせいで闇の書と呼ばれるようになった。そのせいで守護騎士プログラムも改竄されて記憶をほとんど失っているがな……そして闇の書は一定期間蒐集しないと、主の魔力や資質を侵食する。八神の足が動かないのはそうゆう理由だ。」
「それなら、闇の書を完成させれば問題ないのでは?」
「それは無理だ。闇の書は蒐集を終えたとき、主を取り込んで暴走する防衛プログラムがある。そして主を殺し、転生機能で別の主のもとに行く」
「破壊とか改造は?」
「それも無理だ、破壊しても再生機能がある。その上、ふざけたことに、闇の書は外部から手を加えようとすると、主を吸収して転生する機能がある。」
「助かる方法は……」
「少なくとも、今までの主は不可能だった」
「そんな……」
「慌てるな……今言っただろ『今までは』と……」
「え?」
「ミネル」
俺がそう呼ぶとあの星天の書がやってきた。刃はあの時のことを思い出したのかしかめ面をしている。
「何故……俺が闇の書について此処まで詳しく知っていると思う?」
「知らねえよ……さっさと教えろよ!」
「闇の書が起動したのはおそらく深夜だろ?」
「ああ……それが…」
「昨日……闇の書起動の同時刻、この『星天の書』が起動して俺が主となった。その時に名前も付けた。そして……」
此処で俺は一呼吸おいて、言い放つ。
「この魔導書の機能として一つが夜天の書の抑止力として創られたことも知った。そして、あの大量の名前は歴代の闇の書の主や闇の書にかかわった人物の名まで書かれていた。その一番最後の項目に……八神はやての名もあった……最初は同名の別の人物だと思ったのだがな……」
「!?それってマジかよ……じゃあはやては……」
「助かる見込みはある。………が」
「?」
「正直言って俺はあまりやる気が出ない。」
「なんでだよ?まさか………」
「勘違いするな、別に彼女を助けたくないとかそんなくだらない理由じゃない。もっと根本的な理由だ。なぜなら……」
「………マジかよ」
「ああ、だからお前が、あの子を助けるんだ。最も、代償は少し高くつくがな……こればかりは仕方ないだろう。どのみち俺かお前のどちらが動いてもこの結果はおそらく変わらない。」
「だが……」
「星天の書は夜天の書と違い、改変は一切できず、真主ともう一つ仮主の二つがある。これはおそらく、夜天の書のような二の舞を起こさないためだろう。少なからず悪事または悪意を持って使おうとすれば仮主へと転移し、そしてそいつも同じことをすればまた何処へなりと転移してしまうんだよ。………まあ、他にもあるがな。」
「じゃあ……」
「今、お前を仮主登録した。だが、闇の書は改変に改変を重ねた結果、休眠状態……つまり今の状態だとコイツの力をもってしても干渉できない。できるのは完全起動したときだけだ。そして目覚めたばかりの闇の書は暴走するまでのタイムラグがある、その間に暴走の元凶である防衛プログラムを切り離すしかない。この星天の書は夜天の書の主以外にも唯一改変が行えるようにできているからな。最も仮主の場合はある程度制限されるが……」
「だが助かるんだな?」
「ああ、少なくとも起動したら俺とお前と八神でなんとかするしかないな。……とりあえずお前はこのことを八神と守護騎士どもに伝えろ。俺が行くよりお前の方が多少は信用があるだろう。」
「わかった。」
「あと、一応、募集する際は変装しておけ」
「何!?」
「……管理局に見つかるといろいろ面倒だからな。あの丸薬やるから」
「わかった!」
さて……もっともこれが成功する確率は……65くらいかな……最悪の場合は…覚悟しなくちゃな……
Side:刃
とりあえずはやてを助ける算段は付いた。だが募集するとなると……人間や管理世界はアウトだな……となれば無人世界か……まあとりあえず、明日はあいつら出かけるしいろいろと準備もあるだろうから一週間後くらいが頃合いだな
「お前達にある重要な説明をする。」
「なんだよ?刃、重要な話って」
オレンジ髪のヴィータが言ってきた
「なんだ?」
「お前たちの主、八神はやてについてだ。」
「!!」
少年説明中~
「ははは・・・・なんや…どっちにしても私は死ぬんか・・・・」
はやての覇気がない声が周りに響く。本当は本人の前で言いたくはなかったがどのみちこれは避けては通れない。
「残念ながらな……」
「なんだよ…それ……そんな訳ねぇだろ!大体、誰がそんなもの作るんだよ!」
「最初からそうだった訳ではなく、後から改変された結果だ。恨むなら歴代の改変者を恨め……もういないがな」
「クソ!!」
「だが助かる方法もある。お前たちを創った創造主はちゃんと対策のための物も創ってくれていた。偶然だがそれを手に入れた」
「!?じゃあはやては……はやては助かるんだな!?」
「まあ、少なくとも今までよりかは可能性があるね。そのかわりさっきも言ったが闇の書は今あらゆるアクセスを受け付けない。それはこの星天の書も例外ではない。」
「だから蒐集が必要というわけか……」
「そうゆうことだ。ザフィーラ……最も、命に係わることだから危ない橋の一つや二つは渡るのは当然だけどね。」
「だが主は………」
「シグナム、馬鹿正直に主の命令を聞くもいいがこのままいけば確実に死ぬよ。」
「………」
「時には忠義を捨ててでも成さねばならないものがあるんじゃないか?」
「そうです!今は、はやてちゃんの命が懸っているんです!」
「アタシもだ!はやてがこのまま死んでいくところを見ていられるか!」
「どうする?シグナム……」
「………主よ……我らが不義理をお許しください」
「しゃーないな……どうせ止めてもやるんやろ?」
「決まりだな……」
「それで?どうするんだよ?」
「管理局に見つかると面倒臭いから、無人世界で募集を行う。」
「無難だな。」
「決行は明日……学校が始まると、俺は何度も出られなくなるから……すまないね」
「いや、いい……それより伝えてくれたこと感謝する」
「構わないさ。」
「それにしてもまさか刃が魔導師だとは思わなかったよ」
「隠していたからな……基本面倒事は嫌いだし」
「いつか闘ってみたいものだ。」
「その内ね……あ、それから………」
「?………わかった……」
さて、守護騎士たちの協力関係は無事に結べた。後は………ストーカーを何とかするか…監視されていたことは前から分かっていた。だから周囲に気を配りながら周りを歩いていた。予想通り視線が付きまとう。だいたい距離からして前方及び後方それぞれ約400メートル。最もそのためにはやての家を出る前に丸薬を飲み(その時はやての顔が何故か赤かった)、シャマルに頼んで認識阻害及び音声遮断の結界まで張ってもらったのだ。おそらくストーカー共には俺の姿は大人に見えるだろうし……
暗くてよくは見えないが後……150メートルか……
「!?」
すると前方の気配が一気に加速し、こちらに近づいて来て、後ろからも何らかの魔法を発動させる気配がした
「おっと」
「ッ!?」
まさか初弾の蹴りによる不意打ちを躱されるとは思わなかったのだろう。まあ、身体能力は某英雄殺しや某十三機関の殺しの切り札と言われた神父と同じだからな。そのまま後ろに回り込み首を絞め昏倒させ盾にする。
「さて、誰かなお前たち?こっちは不意打ちをされる理由が思い浮かばないんだけど?まあ、教えてくれそうにないけど、一応聞いておくよ。なんで俺を襲ったの?」
「星天の書を渡せ……」
「へぇ……アレを知っているってことは管理局の人間かな?ずいぶん手荒な真似をするね……それからお前は今、俺に命令できる権限はないよ。――――――コイツがどうなってもいいというなら話は別だがね。」
「…………」
「理解したか?己の立場が……さっさとコイツを持って行って失せろ……消すぞ」
「!?」
そう言って気絶させたコイツをもう一人に突き飛ばしそれに気を取られている間に姿を消した。
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第十四話:対策は早く練ることに越したことはない。