キリト視点
俺とアスナは今、血盟騎士団の本部前にて訓練のメンバーを待っている。
ヒースクリフからの頼みで、元副団長のアスナに訓練に参加してもらいたいらしい。
当然ながら、アスナだけを行かせることはできず、俺もついていくことにした。
俺たちは適当に話して待っていると本部から一人の男が出てきた。
?「私はゴドフリーだ、よろしくたのむぞ。」
キリト「キリトだ。こちらこそ、よろしくたのむ。」
ゴドフリー「今日の訓練内容は、私たちとパーティーを組んで、ここ五十五層の迷宮区を突破してもらう。」
キリト「質問。」
ゴドフリー「ん?何だ?」
キリト「俺たちは基本援護だけで良いのか?」
ゴドフリー「もちろんだ。これは新メンバーの訓練であって、君たちの訓練ではないからな。」
キリト「わかった。」
ゴドフリー「では、1時間後に街の西門に集合!」
ゴドフリーはがははは、と笑って出て行った。
アスナ「ごめんねキリト君。」
キリト「いや、俺が勝手についていくって言ったんだ。アスナが気にすることないよ。」
俺はアスナの頭を撫でると言った。
広場に着いた時、俺はアスナを連れてきたことを後悔した。
なぜなら、そこにいたのは、以前俺とデュエルを行った両手剣使いクラディールだった。
キリト「どういうことだ、ゴドフリー・・・?」
ゴドフリー「いやなに、私とて君達の事は聞いているさ。だが彼も謹慎が解けて、大分反省したようなのでな。これを期に和解するのもいいと思ったのだ」
ゴドフリーは、がはははと笑いながらそんなことを言っている。
するとクラディールが近づいてきた。俺は警戒を緩めずに奴に視線を向ける。
クラディール「先日はご迷惑をおかけした・・・2度と無礼はいたしませんので、どうか許してください・・・」
キリト「あ、ああ・・・」
あまりの態度の豹変振りに、戸惑うが何があったのだろう。
ゴドフリー「うむ、これで君達のことは解決だ。では今日は諸君らの危機回避能力も見ておきたいので、結晶アイテムはすべて預からせてもらう。」
キリト「転移結晶もか!?」
ゴドフリー「そうだ。」
ゴドフリーは肯定すると、手を出して結晶を出すように言う。
メンバーの2人が結晶をゴドフリーに渡すと、アスナもそれに続いて結晶を渡す。
アスナの結晶を受け取ると、今度は俺の方を見て笑う。
仕方なく、結晶をすべて取り出してゴドフリーに渡した。
ゴドフリー「じゃあ、出発!!」
俺たちは、ゴドフリーに続いて迷宮区に向かった。
今のところ、訓練は順調に進んでいる。
エンカウントするモンスターも難なく撃破している。
だが、俺はどうにも落ち着かない。
何か起こるような気がしてならないのだ。
ゴドフリー「よし。ここらで休憩にしよう。」
ゴドフリーはそう言って、アイテムポーチから全員分の食事を取り出した。
クラディールや他の団員が受け取ったので、俺もそれを受け取った。
キリト〈こんなことなら、アスナになにか作ってもらえばよかった。〉
と思ったが、いまさら仕方がない。
俺は諦めて飲み物のビンを取り、栓を抜くとそれを煽った。
ふと視線を感じてそれを辿ると、クラディールがこちらを見ていた。
手に持っているのは・・・・ビン・・・?
次の瞬間、
キリト「・・・・!?」
俺は口の中に違和感を感じ、手に持ったビンを投げ捨て、口に含んだ水を吐き出そうとした。
だが、すでに遅かった。
不快な痺れが走り、体が動かなくなる。
それと同時に、俺のパラメーターに状態異常を示す黄色いカーソルが現れた。
見渡すとゴドフリーと団員の男、そしてアスナも同じ状況だった。
その時、唯一麻痺を受けていないクラディールが狂ったように笑い出した。
クラディール「くっくっく、くっはっはっはははははは!!」
ゴドフリー「ど、どういうことだ・・・!?この水を用意したのは・・・クラディール、お前・・・!?」
キリト「早く、解毒結晶を・・・」
ゴドフリー「あ、ああ・・・」
俺の言葉にゴドフリーはアイテムポーチを探り、解毒結晶を取り出す。
だが、ゴドフリーがそれを使う前に笑うのを止めて近づいてきたクラディールがそれを蹴り飛ばした。
クラディール「ゴドフリーさんよ~。バカだバカだとは思ってたが、あんた筋金入りの脳筋だな。」
クラディールは腰の大剣に手をかけて抜き取ると、大きく上に振り被ってから
ゴドフリーに叩き付けた。
ゴドフリー「ガハッ・・・!!や、やめろ!!」
ゴドフリーが叫ぶが、クラディールは不気味な笑みを浮かべて剣を振り続ける。
クラディール「いいか、俺たちの部隊は!!荒野で犯罪プレイヤーの大軍にに襲われ!抵抗虚しく、四人は死亡!俺一人になったものの、見事犯罪者を撃退して生還しました!!」
クラディールがそこまで言うと、ゴドフリーのHPはすでにレッドゾーンに到達している。
あと一撃でも攻撃をくらえば、ゴドフリーのHPは消滅してしまうだろう。
クラディール「あばよ!!ゴドフリーさん!!」
クラディールは大剣を振り上げてからゴドフリーへとそれを振り下ろす。
だが、それがゴドフリーの体に突き刺さる寸前、クラディールの体が吹き飛ばされた。
クラディール「ぐわっ・・・!!」
凄まじい勢いで飛来し、クラディールを吹き飛ばしたのは
三角形の黄色い鍔を持つ大剣だった。
それを確認すると、目の前に人影が現れる。
その人物は、大剣を拾って肩に担ぐように持つと、回復結晶を取り出す。
?「ヒール。」
半ば呟くように発した言葉に反応して、結晶が砕けるとゴドフリーのHPが回復する。
それを確認すると、俺らに振り返った。
キリト「デュオ・・・!?」
アスナ「デュオ君・・・!?」
デュオ「悪い、遅くなった。」
デュオは短くそう言うと、クラディールの方に向き直る。
その時のデュオの目は、光が無かった。
いつものガラスのような光を帯びた目ではない。
まるで、闇そのものであるかのような暗さをしていた。
クラディール「が、はっ!?く、くそ!?」
クラディールはよろよろと立ち上がると、デュオを見て叫ぶ。
クラディール「てめえ!!何しやがる!!」
デュオ「・・・黙れ・・・」
静かだが、威圧的な響きを持ったデュオの声に、その場の空気が凍りついた。
デュオ「スローコントローラー・・・」
緑色のライトエフェクトが発生し、スタイルが切り替わる。
デュオはウインドウを操作すると、数百、数千という数の剣を呼び出す。
あれは確か、ブラッドボーン。
六十四層のモンスターが稀にドロップする剣だ。
威力も高く、軽量だが、耐久値が心許ないため、短期戦向きの武器だ。
俺の分析がそこまでいったとき、デュオはオブジェクト化させた剣をクラディールに向かって投げ始める。
目にも留まらぬ速さで投擲された剣は、クラディールを前後左右から取り囲む。
あっという間に剣の檻が完成し、クラディールはその中に閉じ込められた。
デュオ「ブレードプリズン・・・貴様を処刑する牢獄だ・・・」
デュオは静かにそう言うと、手を横に振る。
その途端、檻になっていた剣の切っ先が一斉にクラディールに向けられる。
それまで必死に剣を振り回していたクラディールは剣を止めると顔を引き攣らせる。
クラディール「おいおい冗談だろ・・・?」
だが、デュオの目を見て本気だと知ったのだろう。奴の手から大剣が離れた。
クラディール「ま、待て!!わかった、わかったよ!もうギルドは辞める。あんたらにはもう近づかない!だ、だから頼む!?」
奴は必死の命乞いをする。
それに対してデュオが放った言葉は。
デュオ「勝手なことばかり言いやがって、そうやって命乞いをした奴を一体何人殺したんだ!?」
クラディール「ひぃぃぃ!!し、死にたくねぇぇぇ!!」
デュオ「耳障りだ・・・!!」
デュオがクラディールを指差しと、空中で停止していた剣は全てクラディールに突き刺さる。
デュオ「エクスプローラー・・・」
オレンジ色の光を纏ってから、デュオは手を前に突き出す。
パチンという音を立てて指を鳴らすと、クラディールに刺さっていた剣は凄まじい音とともに爆発した。
デュオ「失せろ、醜い愚図が・・・」
そう言ったデュオの声には、殺気に似た、でもどこか違う感情がこもっていた。
デュオ「ふう・・・死んだか・・・」
デュオが呟いた瞬間、周りの空気が驚くほど軽くなった。
振り向いたデュオを見ると、その目にはいつもの光が宿っている。
デュオ「大丈夫か?」
キリト「ああ、毒で動けないけどな・・・」
デュオ「そりゃ結構。それじゃ・・・」
デュオはゴドフリーと団員のところへ向かう。
デュオ「災難だったなゴドフリー。」
ゴドフリー「ああ、だが君のお蔭で命拾いしたよ。感謝する。」
デュオは堅苦しいのは苦手とばかりに振り返ると、団員のことも気遣う。
デュオ「入団早々大変だな。」
団員「あ、いえ、あの・・・」
デュオ「まあいいや、とりあえず解毒するか。」
デュオは解毒結晶を取り出すと、それを使って俺たちの毒を回復した。
デュオ「ほれ。」
解毒が終わると、今度は大きな結晶を俺に投げていた。
回廊結晶だ。
デュオ「アスナの家の前が指定してある。それで帰りな。俺はこいつらを騎士団本部に連れて行ってから帰るから。」
そう言うと、転移結晶でグランザムへと跳んで行った。
デュオたちがいなくなると、俺とアスナだけが荒野に取り残された。
アスナ「キリトくん!」
アスナが座り込んだ俺に抱きついてきた。
キリト「アスナ・・・!?」
アスナの体は震えていた。
俺の体に縋りつくようにして。
アスナ「ごめん、ね・・・、私の・・・私のせいだね・・・」
アスナは声を震わせて言った。
そんなことはない。君の、アスナのせいではない。
アスナ「私・・・もう・・・キリト君には・・・あ・・会わない・・・」
俺はそれ以上アスナに言葉を発せられないようにアスナの唇を自分の唇で塞いだ。
キリト「ん……んむ…」
アスナ「んむ、ん…はん……ん・・・!?」
両腕でしっかりとアスナの体を抱きしめ、強引に唇を重ね続ける。
しばらくして唇が離れると、アスナは目をトロンとさせている。
アスナ「…ん、ぷはっ…、キ、キリト、く…ん
キリト「俺の命は君のものだ、アスナ・・・だから君のために使う・・・」
俺はそう言ってアスナを強く抱きしめる。
アスナ「私も、君を守るよ。これから永遠に守り続けるから・・・」
俺はアスナをまっすぐ見つめて言った
キリト「アスナ・・・今日は・・・今夜は一緒にいたい・・・」
俺がそう言うと、アスナは顔を赤くして小さく頷いた。
あとがき
原作にオリキャラ混ぜるのって難しいです・・・
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あの男を処分しないといけませんから。