No.504297

落日を討て――最後の外史―― 真・恋姫†無双二次創作 16 差し替え版

ありむらさん

独自解釈独自設定ありの真・恋姫†無双二次創作です。魏国の流れを基本に、天下三分ではなく統一を目指すお話にしたいと思います。文章を書くことに全くと云っていいほど慣れていない、ずぶの素人ですが、読んで下さった方に楽しんで行けるように頑張ります。
魏国でお話は進めていきますけれど、原作から離れることが多くなるやもしれません。すでにそうなりつつあるのですが。その辺りはご了承ください。
あと私の描く一刀さんは悪鬼と相成りました。皆様が思われる一刀さんはもういません。ごめんなさい。
それでもいいじゃねえかとおっしゃる方。
ありむらは頑張って書き続けます。どうぞ、最後までお付き合いの程をよろしくお願い致します。

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2012-11-04 14:22:10 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:7234   閲覧ユーザー数:5762

【16】

 

 1

 

 空は綺麗に晴れているというのに、春蘭の心には薄い灰雲が掛かっていた。

 原因は、虚という男である。

 天の御遣いという稀有な出自を持ち、今は共に主曹孟徳に仕える青年。華琳の傘下に加わった頃には爽やかな男だったが、日を増すごとに顔色は悪くなるばかりであるあの男が何を考えているのか、春蘭には分からない。

 風はあの男の所有物らしい。

 季衣や流琉は良く懐いている。新参三羽烏の信も篤い。凪などは相当な惚れ込みようである。

 秋蘭の甘くない眼鏡にもかない、男嫌いの桂花も虚には一目置いているらしかった。

 何より、華琳が随分な気に入りようなのだ。

 嫉妬――しているのではないと思う。ただ、何故皆があれほど虚に入れ込むのか、それが分からぬだけなのだ。

 春蘭から見れば、あの男は信用のならぬ怪しい人物でしかない。軍師、政略家として抜群の力を持ち、加えて武芸の腕にも秀でているという。

 先の宛城奪還作戦にて虚を見極めようと思っていたのだが、あの男は、春蘭が気付いた時にはすでに、千騎を率いて宛を去ってしまっていた。

 春蘭は、あの男の武を見たかった。

 軍略だの、政略だの、ややこしいことは分からぬ。自分に向いていないということは分かっている。春蘭は秋蘭ほど器用な女ではない。

 だから、春蘭は虚について間接的な評価しか知らぬ。そして、そのようなものでは納得できぬ。

 主である華琳の評価を疑っているということではない。

 けれども、それはあくまで華琳の評価であって、春蘭に完全な納得を及ぼすものではないのだ。自分の目で見て、自分の心で虚という人間を見極めたかった。それが出来てこそ、華琳の臣下たる資格があるのではないか。与えられるだけの人物評を一縷の疑問もなく飲み下しているのでは、夏候元譲は、親に言い含められる子供と何も変わらぬではないか。

 そんなことを思いながら、春蘭は賑わう市場をするりと抜けて、大きな邸宅の並ぶ一角にやって来た。

 虚は城の部屋の他に、大きな邸宅を持っているらしい。

 黄巾の欄の後、あの男が華琳の許可を得て進める副業とやらがかなりの利益を生んでいるらしいのだ。大邸宅は主に、商談などで用いているらしい。

 虚は今日、その邸宅にいるとのことだった。だから、春蘭はその邸宅を目指していた。

 結局少し迷って、四半刻ほど歩いた後、春蘭は目的の邸宅を見つけた。話に聞いていた通り、黒い門に、青い飾りが施してあった。

 夜風のような意匠だな、と思った。

 何より、春蘭がすぐに虚邸を判別できたのは、門前に館の主が立っていたからだった。

「お、夏候惇か」

 虚はいつになく間の抜けた声を出した。城ではあまり聞けない声だった。陣営参加時にはこのような調子で話していたかもしれぬが、その時春蘭はこの男を避けているようなところがあったので、よく分からなかった。

「う、うむ」

 改めて向き合うと、変に緊張するものだ。少しだけ、耳が熱かった。

 虚は伸びた前髪をひとつに結って立たせていた。青白い額が露わになっている。

 間抜けである。髪が邪魔なら切り整えればいいものを、と思いながら、春蘭は次の言葉を探していた。

 やはり今の虚は、城で見る虚ではなかった。

 これがこの男の本性なのか。

 魔兵を率いる悪鬼とまで呼ばれる男が、今は間の抜けた貌で門の前を掃き清めているのである。

 そのような掃除、下女にさせればいいのだ。

 そう思って、邸宅の中に全く人の気配がしないことを、春蘭は察知した。

「貴様、ひとりで暮しているのか」

「普段は城だから。何か、俺に用か」

「今日はここにいると城で聞いたのだ」

 噛みあわぬ返答である自覚は、春蘭にもあった。だが、何と答えて良いものか。貴様を見極めに来た、と宣言したのでは、虚は本性を隠してしまうやもしれぬ。

 ――うむ、今日の私はさえているぞ。

 春蘭は内心で拳を握った。

「遊びに来てくれたのか」

「だ、誰が貴様と遊びたいものか! わ、私はだな!」

「まあ、そういきり立つなよ。茶でも入れよう。殴り込みに来た訳じゃないんだろ」

 あわよくば武を見たいと思っていた訳であるから、殴り込みでないとも言い切れぬ。だから春蘭は「ああ」だか「うむ」だか判然としない返答をして、邸宅の中に歩み入った。

 屋内はよく掃除されていた。

 やはり下女はいないようであるから、虚自ら屋敷を清めているのだろうか。

「珍しいか?」

 奥の部屋に至ったところで虚が尋ねてきた。視線をあちこちへ向けていたのを悟られていたらしい。

「なるべく、俺の国の様式に似せて立てて貰ったんだ。この屋敷」

「――天の屋敷か」

 呟くように言うと、そんな大層なものじゃないよと虚は笑った。それは城では見せぬような笑顔で、だから春蘭は、またこの男が分からなくなった。

 暫く部屋で待っていると、虚が茶と菓子を持って現れた。

「待たせたね」

 どう応えて良いか分からなかったから、春蘭は菓子をむずと鷲掴みにして口へ押し込んだ。秋蘭ならばこういう時、何か上手い台詞を返すのだろうか。だが、春蘭の頭には菓子が美味いということしか浮かんでこなかった。

 だから正直に

「うまい」

 と言った。

 すると虚は、

「そうか」

 と再び笑って、己の茶を啜った。愈々、春蘭の調子が狂う。今日の虚は、どうにもあまり虚でない。例えば、戦場で皇甫嵩と言葉を交わしていた、あの冷徹な軍師ではないのだ。

 ただ、それはそうかもしれぬとも思う。

 同じ軍師である桂花も、常に戦時の顔をしている訳ではない。桂花にはきちんと、普段の桂花の顔がある。

 だから、この男にも――虚にも普段の虚の顔があるのだ。きっと。

 それゆえに、皆、虚に少なからず惹かれているのかもしれぬ。

 鬼の顔と、もうひとつはきっと――の顔。

 昼の日差しに、虚の白い横顔がかすんでいる。そのまま光に呑まれて消えてしまいそうなほど儚い。

 羽化したばかりの蝶のように、弱弱しく、脆く見えた。

 これがあの虚か。

 華琳が気に入っているものだから。風の主であるから。秋蘭が、桂花が認めているから。季衣や流琉が懐いているから。三羽烏がしたっているから。

 強く、賢く、非の打ちどころのない男だとそう評判されているから。

 虚という男を分からなくしていたのは、きっと己自身なのだろうと、春蘭は思った。

 他人評という仮面を幾枚もこの男に押し付けて、その上から眺めていたのだ。分かろうはずもない。

 ただ、人と人との関係というものはそういうものかもしれぬとも思う。

 だからやはり、己の眼と、己の心で知らねばならぬ。

 曹孟徳の臣下、夏候元譲として胸を張ろうと思うのならば、尚更だ。

 ぐなぐなと難しい思考は向かぬ。

 考えるのは、下手糞なのだ。そういう面倒事は、風なり桂花なり、或いはそれこそ、この虚に任せておけばよい。夏候惇はいつなんどきも、真っ直ぐにぶつかるのみ。

 それが敵であっても、味方であってもだ。

 この怪しく見える男は。この賢く見える男は。この強く見える男は。この脆く見えた男は。

 どちらなのか。

「――見極めに来た」

 それだけ短く言い放った。結局言ってしまった。やはり私は馬鹿だなあ、などと思った。普段桂花などに、同じことを言われたのであれば酷く腹を立てる癖に、である。

「俺をか」

 虚は淡い笑みを絶やさない。

「先の戦では結局貴様の戦いぶりを見ることはかなわなかった。――私は貴様が分からん」

「そうか」

 吐息のような声で言い、虚は再び茶を啜った。気魄に、欠けている。

「だから、訓練用の剣を佩いて来たのか」

「考えるのは苦手だ。どのような言葉を交わせば貴様が分かるのか、どのような言葉を投げ掛ければ貴様が露わになるのか、私には皆目分からん。ならば、武に――魂に直接問うのみ」

 手合せ願いたい、と春蘭は続けた。

 すると、虚は目を丸くする。

「なんだ?」

「いや、きみが『頼んで』来るとは。てっきり問答無用で斬りかかって来るものと」

「何をぅ! 貴様、私を何だと思っている!」

 春蘭が声を荒げると、

「曹魏の大剣。夏候元譲」

 虚はそう言った。

 瞠目するのは、春蘭の番だった。

「何故、知っている」

「ん?」

「魏だ。いずれ定められる国号だ。それは私と秋蘭しか知らんはず。それも、まだ候補なのだ。それを貴様が何故――」

「知っているだけだ」

 虚は春蘭から視線を切ると、腰を上げた。

「庭に行こう。流石に屋内で暴れる訳にはいかない」

 肩を竦めてそう言うと、彼はそのままこちらに背を向けて、部屋を出て行こうとする。

「ま、待たんか」

 春蘭は慌てて茶を飲むと、そのまま虚の後を追った。

 口の中を少し、やけどした。

 

 ※

 

 風が一陣、ふたりの間を駆け抜けた。

「貴様――無手ではないのだな」

 少し遅れて姿を現した虚は、得物を携えていた。

 漆黒の棒。

 長さは虚の身の丈を超えている。

「李典に注文して作って貰った。いいだろ、これ。黒豹と言うらしい」

 戦闘用の黒い軽鎧に身を包んだ虚は、黒豹を軽々と華麗に振り回し構える。それに呼応するように、春蘭も訓練用に特注した七星飢狼を構えた。

「手は抜かん」

「分かっている」

 刹那、虚から悍ましいまでの殺気が放たれる。

 絶対零度の闘気が、こちらの体温を奪っていく。勿論それは錯覚なのだ。現実に温度が奪われているのではない。

 ただ、そう思わせるほどに、虚の気魄は冷徹の極致にあった。

 戦闘に身を置いた虚は、絶望の化身なのだ。

 しかし、それに呑まれる春蘭ではない。

 対抗するように、灼熱の闘気を発散する。

 暴虐の権化、魏の大剣が顕現する。 

 ふたりの闘気が互いに削り合い、濃密な死の空間を生成する。

 春蘭が腰を捻り、低く構える。

「……いくぞ。虚」

 虚が棒を高く引き、獰猛に唸る。

「いくぞ。夏候元譲」

 瞬間、ふたりは同時に飛び出し――そしてすべては決着した。

 

 

 初撃の際、共に、闘う術は失われていた。

 訓練用の七星飢狼は砕け散り、黒豹は真っ二つに折れてしまった。

「おいおい。訓練武器だろ、それ。まったく――滅茶苦茶なやつめ」

 こちらに振り返ると、虚は肩を竦めた。

「李典、怒るだろうなあ」

 などと言いながら、ぽりぽりと頭を掻いている。

「貴様――」

「手抜きはしていない。それはきみが一番よく分かっているはずだ」

 虚の言葉を聞きながら、春蘭は砕けた訓練用七星飢狼を投げ捨てた。処分は虚に任せることにする。

「私が言っているのはそんなことではない!」

 理由の分からぬ高ぶりが、春蘭の胸に蟠っていた。

「右肩が痛むのだな」

「――『張角』相手に、少しはしゃぎ過ぎた。慣れないことはするもんじゃないな」

「何故私の申し出を受けたのだ」

「断る理由はない。訓練用武器で良かったよ。そっちが真剣なら、俺は黒豹ごと『張角』になるところだった」

「私は全力の貴様と戦いたかったのだッ!」

「これが今の俺の全力だ。俺の全てだ」

 折れた棒を見つめながら、虚は呟くように言った。

「今の一撃。――何も伝わらなかったか?」

 違うのだ。

 だから怒っているのではない。

 だから気に入らぬのではない。

「伝わったッ! 貴様の重い一撃! 確かに魂の籠った一撃だった! 武人の一撃だった! 貴様の積み重ねてきたものが詰まっていた。私も武人だ。侮るな。それくらい十二分に悟った。華琳さまが貴様を気に入る理由が分かった。秋蘭が認めた理由が分かった。桂花が認めた理由が分かった。なるほど、このような一撃を放つ男ならば、季衣も流琉も懐こう。三羽烏も憧れよう。風も身をゆだねよう。だから――」

 すっと息を吸って、

「だから気に入らんのだッ!! 伝わったからこそ、気に入らんのだッ!!」

 春蘭はそう言い放った。

「俺を見極めに来たんじゃないのか?」

「そうだッ!」

 春蘭は激情を溢れ出させる。

「ならばいいだろう」

「良くない!」

 虚は分からぬという顔をする。

 肝心なところが分からぬやつだ。だから毎度風に説教を喰らう羽目になるのだ馬鹿者め。胸中で春蘭は悪態を吐く。

「手負いの貴様でこれほどなのだ。ならば――」

 ならば。

 

「全力の貴様は、一体どれほどのものを私に伝えてくれたというのだッ!!」

 

 そうなのだ。

 夏候元譲は、武の化身である。

 本気の刃を交えた相手の、魂を図れぬものか。

 思いを図れぬものか。

 軍略も分からぬ、政略も分からぬ。考えるのは苦手で、言葉をもって語るは下手糞だ。

 だが、春蘭には武がある。

 武で語り、武で聞き、武で知る。

 だから、分かった。

 分かってしまった。

 虚という男が、どのような魂を載せて武を振るうのか。

 忠義。信義。剛毅。情愛。怨念。悲哀。悦楽。鬼気。狂気。

 正負ありとあらゆる感情を綯い交ぜにした混沌の魂を絶対零度で凍らせて、あの男は戦っている。

 そしてそれは全て曹魏の勝利に向けられている。

 悪鬼の情こそがあの男の最も強き魂(かたち)なのだ。

 何と悍ましく、何と壮絶で、どこまでも救われない。哀れな武人はそれでも曹孟徳だけがなしえる偉業の大成を確信している。従僕としてただひたむきに主の供であろうとしている。

 鬼で、狗で、軍師で政略家で、それでも武人なあの男の。

 誰よりも器用に見えて、誰よりも不器用なあの男の――無言の咆哮が、声なき絶叫が春蘭の胸を打っている。

 だからなのだ。

 気に入らぬ。

 納得できぬ。

 全力を振るうあの男は、一体どれほどのものを持って、こちらの魂を振るわせてくれるのか。

 春蘭は武の化身である。

 知りたくて――堪らない。

 春蘭の魂が、あの男の魂を求めているのだ。

 ただの一撃が。

 ただ一度の剣戟が。

 ――ああ、なんと名残惜しいのだ。 

「先の戦いで確認できたことだ。華琳にはもう伝えてあるんだが」

 真剣な声で虚は言った。

「俺の身体は、連続の戦闘には向かない」

 ふたりの視線がぶつかる。

 やがて、柔に絡み合う。

「どういう意味だ」

「雑魚の相手なら問題はない。ただ、全力を出すとなると、すぐ身体にガタがくる。どれだけ技を磨いても、身体だけはあまり頑丈にはならなかったみたいだ」

 こういうのは生まれつきのものなのかな、と言って虚は自嘲気味に嗤った。

「『張角』相手に本気を出してみた。結果がこの右肩だ」

「まだ、掛かるのか」

「医者には診せているが、全快までひと月と言ったところだろう」 

 虚はひと息ついた。

「大陸はじきに戦乱の渦にのまれる。諸侯の群雄割拠の時代はすぐにやって来る。朝廷は限界だ」

「貴様――」

「これから華琳の前に立ちはだかるのは、黄巾などとは比にならない連中だ。自惚れた話だが、本当はもう少し戦えるつもりだった。そういう勘定で策を練ってみたりもしていた。だが、少し計算が狂っている」

「何が言いたいのだ」

「俺はきみの眼鏡にかなったんだろう」

「――そう、でもないこともない」

 意図せず視線を逸らす。虚の眼は真っ直ぐだった。

「夏候惇隊は無茶な運用が増える。その話をしておこうと思った。認められない男の策に命を掛けるのは気に入らんだろう」

「華琳さまの命であるのなら、私はどのような敵でも打ち破って見せる」

 迷いなく応えると、虚は目を細めて笑った。

 美しい笑顔だった。

「そうか。なら良い」

「な、何がいいのだ」

「心苦しかったんだ。俺が命を掛けるべき場面で、別の人間を用いるのは」

「侮るな、貴様は本陣で座っていればよい。華琳さまの敵は全て、この夏候元譲が斬る」

 それに。

「貴様ひとり傷付けば良いというものではない」

 真っ直ぐな眼差しを湛えたまま、虚はこちらの言葉を聞き終えると、屋敷の中に戻って行こうとする。

「おい!」

「茶を淹れ直そう。今日はもう少しゆっくりできるんだろう」

「む……まあ、そうだが」

「夏候惇がいてくれるなら、安心だ」

 虚は言って、完全にこちらへ背を向けた。

「春蘭で良い」

 虚の足が止まる。

 ただ、振り返ろうとはしなかった。

 それを見て、つくづく不器用な男だと思う。これでは器用者の振りをするのも一苦労と言ったところだろう。

「北郷一刀。返礼に俺の旧い名前を許しておく。呼び方は好きにしてくれて構わない」 

「ならば北郷。貴様、約束しろ」

「何をだ」

「華琳さまがこの大陸を治められた暁には、全力で私と勝負しろ」

 風が吹いて、虚の髪が揺れた。白いうなじが露わになる。

「随分と遠い話だな」

「だが必ず実現する」

 虚は暫し黙したのち、振り返って言った。また儚い表情をしている。春蘭の胸奥が少し疼いた。この男はどうして今日に限ってこのような貌ばかりするのか。戦場にいた時のように、怜悧冷徹であればよいものを。

「分かった。誓おう。華琳がこの大陸を平和に導いた暁には、きっと。きっと、きみともう一度勝負をしよう。今度は本当の意味で全力で。完全な身体で、きみと」

 戦おう、と言って虚は今度こそ屋敷に歩み入って行った。

「きっとだ! 約束だぞ!」

 庭から春蘭は叫んだ。

 ふ、と足元で砕けた模造七星飢狼に視線が移った。

 胸が詰まる。

 不意に涌いた思索を振り切るように、春蘭は頭を強く振った。

 

 

《あとがき》

 

 

 

 ありむらです。

 

 

 

 まずは、ここまで読んでくださっている読者の皆様、コメントを下さったかた、支援をくださった方、お気に入りにしてくださっている方、メッセージをくださった方、えっとそれから……兎に角応援して下さっている皆様、本当にありがとうございます。

 

 

 皆様のお声が、ありむらの活力となっております。

 

 

 春蘭の扱いが酷いなあと思ったので差し替えました。

 今回は春蘭の視線で虚を見てみました。

 これからこういう回を幾らか重ねてみようかなあと思います。

 それぞれの人物の眼に、虚はどのように映っているのか。

 誰を採用するかは、ありむらの気まぐれで。

 

 ではでは皆さま、この辺で。

 

 最期に更新遅くて済みません。

 

 ありむらは生きています。

 

 

 

 

 

 

 ありむら

 

 

 


 
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