No.502975

楽しく逝こうゼ?

piguzam]さん

第25話~地上に舞い降りた天使

2012-11-01 04:07:28 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:27982   閲覧ユーザー数:24292

大変遅くなりました(土下座)

 

アルフ、リインフォースときたらヤッパリ……ねぇ?

 

但しッ!!今回はレギュラーコーヒー仕立て。

 

あんまり甘くないから期待はしなッシブルッ!!

 

そして今回は文面をよ~く見てください。

 

 

 

 

 

ヒントは『マキシマム・ザ・ホル○ン』

 

 

それではどうぞッ!!

「……ハァ…」

 

ここはアースラ内部を走る数ある通路の一つ。

その機械が剥き出しの味気ない通路を包みこむように、柔らかなソプラノボイスが響き渡る。

只……その声音は聞く者を癒すような声音ではなく、何故か無性に悲しい気持ちになるような……そんな声音だった。

更にその声を発生させている少女……フェイト・テスタロッサの表情もその悲しそうな声音と同じで、悲しいというか、自己嫌悪に陥っている様な表情だった。

正しく彼女は自己嫌悪と後悔の極みに達しているのだが。

 

……フェイトがここまで落ち込んでいるその理由……それは彼女の想い人、橘禅のことであった。

 

フェイトからすれば橘禅はとても優しい少年であり、自分にとって掛け替えのない大切な人であることは間違いなかった。

だが困った事に、ゼンは自他共に認める極度の可愛いモノ好き……ようは可愛い女の子に目が無いという女誑し(ゼン本人は否定)な面を持っている。

自分以外にはアルフ、更には今回の事件で命を救ったリインフォースという美女と呼ぶに相応しい二人が自分と同じ想いをゼンに馳せていた。

『できれば自分だけに優しくして欲しい』という抑えきれない欲求と想いが嫉妬という形で面に現れ、その感情のままにゼンを攻撃してしまったことをフェイトは後悔していたのだ。

更に、自分の大切な家族であり、使い魔のアルフや長く辛い人生を歩んできた薄幸の美女リインフォースより自分を、自分だけを誰よりも優先して欲しいという黒い思いを自覚し、フェイトは自己嫌悪すら抱いてしまった。

元来、フェイトはとても優しい心を持つ少女で、周りのことを常に気遣える面があったために、自分の中に芽生えた嫉妬という醜い感情には耐え切れなかったようだ。

 

……ここで唐突だが、フェイト・テスタロッサという少女は正に可憐な美少女という言葉が当てはまる程に将来有望な容姿を備えている。

 

そんな少女が悲しみに顔を染め、なおかつ聞いているこちらが気落ちさせられるような声で溜息を吐いているとどうなるか……見ている側としてはしょんぼりと項垂れる尻尾と耳が幻想される。

前回のジュエルシード事件から約半年、フェイトとアルフは嘱託魔導師の試験研修のためにこのアースラを拠点として日々を過ごしていた。

プレシアだけは地球の戸籍申請の手続きやら裁判やらでミッドチルダにいる時間の方が多かったのだがプレシアとしてはフェイトを見知らぬ人間に任せたくないという親心からリンディにフェイトを頼んだのだ。

その結果として、リンディが艦長を務めるアースラが主な拠点になり、クロノが研修の担当に就いたのだが……要約すれば、アースラのスタッフ達はフェイトとアルフのことをこの半年間共に過ごしたこともあってかなり可愛がっていた。

特にフェイトの保護欲を無性に掻き立てる健気さがアースラの年輩のスタッフ達からすれば可愛い孫の様に思えたのだ。

若年のスタッフ達からは頑張り屋さんの可愛い妹分として接せられてきた。

 

そんな風にアースラのスタッフ全員から可愛がられているお姫様が悲しみに暮れた顔でアースラの廊下を歩けばどうなるか……

 

「…ハァ(…ゼンに酷いことしちゃった…どうやって謝ろう……許して…くれるかなぁ?…)」トボトボ

 

「……なぁ、フェイトちゃんどうしたんだ?スッゲー悲しそうな顔してたぞ?」

 

そんなフェイトのしょんぼりとした様子を見てしまったアースラのスタッフは隣で一緒に休憩していた同僚に小声で話しかける。

今しがた、フェイトが通り過ぎたのはアースラの休憩コーナーの前だったのだ。

 

「なんだお前、知らなかったのか?……なんでもよ、またゼンの小僧がやらかしたらしい…」

 

「…オイオイ、またかよぉ?……ちなみに今回は何をやったんだ?フェイトちゃんほったらかしてアルフにばっかり構ってたとかか?」

 

彼は同僚が詳しい話を知っていたようなので詳しく聞かせろと身を乗り出して聞き手に入った。

 

「いやいや、コレはさっきその一部始終を見てたって奴から聞いたんだけどよ。今回の事件で戦った闇の書の管制人格いただろ?あの銀髪の女」

 

「あぁ、あの凄え美人なユニゾンデバイスの?」

 

彼は昨日の夜、アースラに連れてこられた闇の書の管制人格……ユニゾンデバイス、リインフォースの事を頭の中の記憶の引き出しから引っ張り出した。

純銀のように光を浴びて輝く綺麗な銀髪、芸術品のように整った顔立ち、切れ長のルビーのような煌きを持つ瞳、母性の塊である大きな胸、くびれた腰、お尻も大きすぎず小さすぎず、理想的なプロポーションを具現した美女としか形容できない存在。

まさにリインフォースという存在自体が男を惑わす妖艶さを漂わせていた……しかも要因の一つに彼女が着用していた身体にぴっちりとフィットしているインナースーツが一着というのもあったが。

実際、昨日の夜にリインフォースを見た男性スタッフはその殆どが彼女の持つ無意識の色香に惑わされ、女性スタッフは羨望と嫉妬の眼差しで彼女を見つめていたのだ。

 

「そうそう、んでゼンの小僧はよ、事もあろうにフェイトとアルフの目の前でその管制人格の女を口説いたらしい」

 

「(ビキッ!!)……それで?」

 

そして、同僚の口から出てきた言葉に、彼は無意識で眉間に皺を刻んでいく。

 

「そんでまぁ、なんでか知らんが管制人格もまんざらでもなかったみたいでな…顔を赤くして照れてたわけだ……まぁ、それ見ていよいよ我慢できなくなったフェイトとアルフがブチ切れて…」

 

「……さっきの爆発音に繋がるってか?」

 

「そうゆう事だ」

 

同僚が教えてくれたことで、先程あった爆発音の原因に合点がいった彼は「なるほど」と一言呟いて顔を俯かせた。

そこで一度会話を切った彼は顔を上げると、やけに澄み切った笑顔で……

 

「…なぁ、殺っていいか?殺っていいよな?いやむしろ殺るべきだと俺の中の正義(ジャスティス)が轟き叫んでるんだが…」

 

正義(ジャスティス)を掲げる司法組織の局員にあるまじき暴言が吐き出されたのであった。

しかもいつの間にかセットアップされたS2Uをしっかりと握り締めているところを見るに、彼の中では冗談の類ではないようだ。

 

「その提案に関しては個人的にゃ諸手を振って大いに賛成だがよ……そんなことしたらフェイトの奴悲しむぞ?」

 

そう言ってS2Uを握り締めるスタッフを諌める同僚であったが一見にこやかに微笑んでる顔に何本も青筋が浮かび、手に持つコーヒー缶がひしゃげているとこを見ると、気持ちは同じようだ。

 

「……そうだよなぁ……あ~クソッ」

 

「それどころか俺達、最悪フェイトに嫌われるぜ?まぁ、優しい娘だから手は出してこねぇだろうけど…」

 

「あのつぶらな瞳で悲しそうに見つめられたり、無視されるぐらいなら……いっそのことボコボコに殴られるほうがマシだ」

 

「いやむしろボコってくるのはアルフだろ?」

 

「あぁ、それは言えてるな……つうかアルフにボコられたら確実に死ねる」

 

「「ハァ……」」

 

ゼンに手を出せば可愛いマスコット犬が怒れる魔狼となり、その手(拳?)と悲しむお姫様の魔眼(ウル目)によって物理的に、そして精神的に地獄に叩き堕とされるのは必然なので彼等は揃って溜息を吐いた。

 

「…まぁ……とりあえずだ、ゼンの馬鹿たれにお灸を据えるのはまた今度にして……今は…」

 

彼はそう言って自販機コーナーのある一点に視線を送る。

 

「そうだな、ゼンの小僧をシメるのは後日ってことで、今は…」

 

同じく同僚も彼と同じ場所に視線を向ける。

 

そこには……

 

「ハァハァハァハァ、フェイトタン待っててね?今ボクが慰めてあげるから。あ、あああんな小僧なんかよりボ、ボクの方がずっっっとフ、フェイトタンのことをあ、あああああ愛して、してしてるんだだだだから、ぐふ、ぐふふふふふふふふ……」

 

((目の前のチャーシューにすらなりえねぇクソ豚を葬り去るか))

 

二人が視線を向けた先には何やら危ない発言をしながら、とぼとぼと歩くフェイトに異常な視線を向けるでっぷりと肥え、脂汗を垂らしながら鼻息を荒くする本局からの派遣スタッフがいた。

この男は前回のジュエルシード事件の際はアースラに乗船していなかったので、今の自分の発言がどれだけ危険なものなのかを理解していなかったのだ。

もし、彼女を守護する使い魔に見つかればその爪でバラバラに引き裂かれることになり、彼女の想い人に見つかればその精神を具現化した存在にメッタ撃ちに叩き潰され、彼女をこの世の何よりも愛する母親に見つかれば……されるのは間違い無しだ。

 

そして……半年前からフェイト達を優しく見守ってきたアースラ直勤のスタッフに見つかれば……

 

(あのデブには…叩き込んでやる必要があるな…)

 

狩り殺されるのは必然でしかない、正しくいんくれでぃぶるである。

彼は目の前の犯罪者予備軍にバレないように同僚に念話で話しかける。

すでに目の前の犯罪者予備軍を見る彼の目はとんでもない殺意で溢れていた。

 

(あぁ…キッチリ刻み込んでやらないとな…)

 

同僚も彼と同じようにS2Uをセットアップして目の前の豚を睨み付け、その背に鬼人の如きオーラを纏う。

今、彼等の心は一つの共通認識を犯罪者予備軍に教えてやることでいっぱいだった。

たったひとつの共通認識……それは……

 

((Yes`ロリータNo`タッチという絶対の法律をッ!!))

 

彼等は紳士が掲げる唯一絶対の法を目の前の無法者くずれに叩きこむために武器を掲げ、その男にゆったりとした足取りで近づいていく。

 

 

……余談だが、この日を境にこの派遣スタッフの男をアースラで見た者は誰も居なかった。

また、完全なる余談だがこの数年後にこの派遣スタッフの肥えた男は美しく成長した金髪の姫君の想い人を姫君の前で侮辱し、それをどこからか聞きつけた橙色の魔狼と銀髪の最強(最凶?)騎士を含めた三人からこの世の地獄を魅せられたそうな、まる

 

さて、そんな一つの喜劇(奇劇?)が起きていることを知らないフェイトはいつの間にか到着していた会議室の扉の前で悩んでいた。

 

(……許して…くれるかな?……もし、ゼンに嫌われちゃったら……私…)ウルウルウル

 

フェイトが悩む理由……それは未だに消えない不安であるゼンが自分を許してくれるかどうか、ということであった。

もしゼンが自分を拒絶したらどうしようと考えるだけで、フェイトの心は不安と恐怖が入り混じった負の感情で埋め尽くされてしまった。

それは彼女の目尻に溜まっている溢れんばかりの涙が何よりの証拠になっている。

 

『sir』

 

と、ここで彼女の相棒たるバルディッシュが声をかけてきた。

 

「え?……な、なに?バルディッシュ?」

 

フェイトは困惑気味にバルディッシュに声を返した。

彼女からすればゼンと同じようにバルディッシュに対しても負い目があったのだ。

いつも自分と共に戦い、時には自分を支え、励ましてくれた掛け替えの無い大切な相棒。

普段は寡黙であるが、必要とあらば彼なりのやり方でフェイトを守り、言葉をかけてくれる。

そんな不器用で、それでいて頼れる相棒に自分は先程、かなりの無茶をさせてしまい、全身を痛めつけてしまった。

修理が済んで、フェイトは彼に謝罪はしたが彼は「お気になさらず」と一言で終わらせてしまったのでフェイトの心には不安が残っていたのである。

そして、何を言われるんだろう?とフェイトが不安げにバルディッシュからの返答を待っていたら……

 

『He forgives you(彼は、あなたを許してくれます)』

 

「……え?」

 

予想してなかった彼の返答に正しく、フェイトは困惑した声をあげてしまった。

フェイトからすればバルディッシュはまだ怒っているんじゃないのだろうかと考えていただけに、この返答は予想外だった。

 

『I watched him with you(私はあなたと共に彼を見てきました)』

 

「……」

 

バルディッシュはフェイトの様子をお構いなしに言葉を紡ぎ続ける。

フェイトはそれを静かに聞いていた。

 

『According to me, Mr ZEN may not have that he feels such you who think of you very carefully disagreeable(私から見ても彼は……ゼン殿は、あなたのことをとても大切に思っています。そんなあなたを彼が疎ましく思うことはありえません)』

 

それは不器用な彼ができる最大限の励ましの言葉であった。

 

待機状態のバッヂのような己自身をピカピカと光らせて自己主張しながら、バルディッシュは自分にできる最大限の励ましを守るべき主のために送る。

実はバルディッシュは……半年前、橘禅が何も言わずにアースラから去ってしまい、それを知ったフェイトが食堂で涙を止め処なく流していた時に、主を励ますことができなかったことを彼はずっと後悔していたのだ。

だからこそバルディッシュはこの半年間、フェイトを支えるだけではなくまたフェイトが悩み、悲しんだ時には力になれるよう、自分なりのやり方で励ませるようにと、こういった場面になったときのために何度もシュミレートしてきたのだった。

自分はAIであり人間の心まではわからない……それでも彼は、自分を創ったクリエイターがフェイトの力になれるようにと自身を製作したのを理解していた。

それは戦闘だけにあらず、日常生活での彼女の心を支えることも役割に入っていることをバルディッシュは半年前の事件で改めて認識し、メモリーに記憶していたのだ。

 

「バルディッシュ……ありがとう」

 

フェイトはそんな不器用ながらに自分の事を考えて行動してくれた唯一無二のパートナーに心を込めて惜しみない感謝を送る。

 

『Because I exist without doing it in mind to support you(お気になさらず、私はあなたを支えるために存在していますので)』

 

「うん、それでも、ありがとう」

 

そう言って笑うフェイトの顔は先程までとは打って変わってとても綺麗だった。

 

『Yes, sir』

 

バルディッシュはその笑顔を守れたことに満足して、しかしいつもと変わらない口調でフェイトに答えた。

 

「……すぅ…よしッ」

 

フェイトは相棒がくれた応援に感謝しながら、いざ勇気を振り絞ってスイッチを押し、会議室の扉を開けた。

まずは部屋に入って、ゼンが起きていたらさっきのことを謝ろうと心に決めて……

 

プシュー

「す、すいません。今戻りま……し……た……」

 

だが、いざフェイトが会議室の扉を潜ってみれば、目の前に広がる光景に唖然とするしかなかった。

 

 

 

何故なら……

 

 

 

「じゅる♡……ちゅぱっ♡……ぺろ♡………ちゅ~♡」

 

レロレロレロレロレロレロレロレロレロ

 

「ぴばばばばばばばばばばば」

 

 

なにやら物凄い水音をたてながら、ゼンの首周りとこれでもかと舐めまわしている顔をトマトの様に赤く染めた自分の大切な家族でもある使い魔のアルフがいたからだ。

ここで一度、フェイトの思考はフリーズ、機能停止を起こした。

なにせ目の前で起きている光景に至るまでの筋道がガッポリとかけおちているからだ。

情報不足、予想外にも程があるとは正にこのことを表すといっても過言ではなかった。

正に『事件は現場で起きているんじゃないッ!!会議室で起きているんだッ!!』をフェイトは身を持って体験する羽目になった。

だが、経緯がどうであれ、アルフに首を舐められながらだらしない声を出している人物が自分の想い人である以上、フェイトが即行動を起こすのは当たり前。

もはや謝罪などという言葉は軽く消し飛び、心を、体を支配するのは溢れんばかりに湧きあがる嫉妬という名の激情のみ。

その嫉妬ゆえに、待機状態になっていたバルディッシュに手が伸びていても不思議ではなかった。

バルディッシュは触れられた手から自身に流れ込んでくる魔力と希望された術式を展開しつつ、嫉妬の大きさを表すかのようにぷっくりと膨れたハムスター顔の主人を見て、あることをメモリーしていく。

 

それは……

 

『デバイスマイスター、マリエル・アテンザ殿への改造希望箇所、新規格の合金材料によるフレーム全体の強化、新規製作、及び設計の草案、バルディッシュ・アサルト』

 

自身の耐久力の全体的ステータスアップ、いわゆる底上げについての草案であった。

 

 

 

なんだかんだで、彼も限界が近かったらしい。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

拝啓、グレートなる我がパピー殿へ

 

少しばかりお顔を合わせていませんね?ちょいと複雑な事情があって帰れずにいますがワタクシ、橘禅は……今のところ元気です。

しかし余り家を開けるのもアレなので今日の昼過ぎには家に帰りたいなぁと思っています。

頭がスキッと締まる程に寒い今朝は如何お過ごしでしょうか?

冷静沈着な親父殿のことですから私が朝からいなくても変わらずにコーヒー片手に母上様とイチャイチャされてると思いますが…

やけに鮮明にその光景が思い浮かぶのは、親父殿の息子として喜んでいいものなんでしょうか?

そんなアナタの息子であるワタクシ、橘禅は朝一から一人の女……いや麗しの美女の命と心を漢らしくバシッと救って参りました。

うっかり調子ブッこきすぎて別の女の子を泣かすという愚考も朝一からヤラかしてしまいましたが……あれですよ?

かなり朝からブッ飛ばして女の子とイチャついているのは決して俺が望んだわけではないんです。

?じゃあなんでそんなことになってるかですって?

 

それはまぁ、泣いてる女の子は放っていてはいけないという俺の熱い想いと女の子には優しくという親父殿の教えを忠実に守ったら結果的にそうなってしまったわけで……

『女のいいところだけじゃなく、怒るとか妬くとか、そういった感情も全部ひっくるめて、呑み込んでやれるのがイイ男の条件だ』という偉大なる教えをしっかりと実行して女の子達の可愛い笑顔を見る事ができました。

さすがあの暴君なる母上様だけに飽き足らず現在進行形で数々の女性を堕とし続けている漢、巷じゃ「ジゴロ・信吾」なんて呼ばれてるのも頷けます。

 

 

テラリスペクトっす。

 

 

さて、前置きがだらだらと長くなってしまいましたがそんな偉大すぎる偉業を成し遂げ続けてる親父殿に是非、早急にご教授頂きたいことがございます……それは……

 

 

 

「バルディッシュッ!!」

 

『……thunderWhip』

 

バチバチバチバチッ!!

 

どうやっても受け止めきれない程の怒りや嫉妬に呑み込まれた女の子への対処方法、もしくは電撃の鞭を振り回している女の子の取り扱い説明書をなるべく簡潔にまとめて俺に教えてください。ガチで

俺が原型を留めているうちに、もしくはケシ炭に変わる前に教えて頂けることを切実に願っております……尚、携帯の方はバッテリーが切れてますので何か別の連絡方法でお願いします。

願わくば、コレが遺書となりませんようにという万感の思いを込めて、締めの言葉とさせていただきます。

 

 

あなたの親愛なる息子、橘禅より、かしこ

 

 

 

 

 

 

V・S、じゃなかったP・S

 

冷蔵庫に入ってる白菜の浅漬けは食べないで下さい。俺が作った最高傑作です。まだ俺一切れも食べてませんからノシ

 

 

 

 

 

 

さあ、書けたぞ(脳内で)ッ!!届けッ!!俺のこの熱き思いッ!!……OKOK、現実逃避もコレぐらいにしておこうか俺ぇ……

 

 

 

 

俺がなんかとんでもなく可愛くなっちまったアルフに美味しくペロペロされるという超展開の最中、突如背後でドアが開く音と共にこの会議室にいなかった女の子……フェイトのソプラノボイスが呆然といった感じで聞こえてきたんだが……

まぁ次に聞こえてきた声音は明らかに不機嫌というか、怒ってるというのが手に取るようにわかっちまいました。

迫りくるBADENDが観えた俺としては直ぐにでも声のした方に振り返ってこの状況に関する弁明をさせて頂きたいんですが……

 

「ん……ふぅ♡」れろぉ

 

俺の首筋をぬるっと、そしてザラザラとした舌でペロペロと縦横無尽に攻め立ててくるアルフがそれを許してくれねぇというか……いつの間にか片方の腕で俺の頭を抱きこむように固定されてて動けませぇん(泣)

しかもこの狼っ娘、舌の中腹辺りまでを首筋にべったりと押し付けてきたかと思ったら……

 

「…れぇるぅ~♡」つつつぅぅ

 

ゆっくりと下から舐め上げて少しづつ舌を離して、最後は舌の先っちょだけで這い上がるように首筋をなぞるという絶妙の舐めテクを披露してきやがるんですけどッ!?

一舐めされるたびに背筋がゾクゾクとする快感が押し寄せてきて……じゃなくてッなんでこんな神掛かりなまでに舌使いが上手いんだよッ!?

いくらなんでもおかしすぐるだろッ!?

ま、まさか使い魔のベース……素体が狼だからッ!?ワンちゃんだからペロペロお上手ってことですかッ!?んなアホなッ!?

と、ととともかくなんとかして止めねぇと俺が終わっちまうっすッ!!

 

「や、止めろってアルフッ!!俺、き、昨日の朝から風呂入ってねぇから汚ねえってッ!!」

 

俺は夢中で俺の首筋をしゃぶりついているアルフにストップをかける。

闇の書と防衛プログラムとのバトルという超過酷な運動してるから俺の体はこれ以上ないぐらい汗だくつゆだく汁だっくだくなんですよッ!?

だが、ちらりと見えた俺の首を這い回るアルフの顔は……これ以上ないぐらいに恍惚としてますた。

 

「ぴちゃ…ずりゅ……ひょんなこふぉ…にゃぃよぉ……ずぇんのぉ…ぴちゃ……んぅ…ぁひぇ……ふっごくぅ…ちゅ…こゆ、ふて…じゅるぅ……おい…ひぃ♡」

訳(そんなこと…無いよ…ゼンの…味……すっごく…濃ゆくて……美味しい♡)

 

HolyShit!!

 

なんかとんでもなくじっくりねっとりと味わってらっしゃるッ!?

呂律回ってないのに何言ってるかキッチリカッチリと理解できちまう自分が憎いッ!!

汗をじっくり味わうとか……オメーはどこのブチャラさんだってのッ!?

というか女の子がそんなことしちゃいけませんッ!!お父さん許しませんザマスよッ!?

 

「ひょれにぃ…ぺろ……ゼンがぁ…んっ……いっふぁんらろぉ?……ちゅる…なぁめふぇれば……あむぅ…にゃぉる……ちゅば……っふぇ」

訳(それに…ゼンが……言ったんだよ?…舐めてれば…治るって)

 

そうやって喋りつつもアルフは俺の首を舐める舌を止めることはしなかった。

まるで舐めるのを止める時間すら惜しいといわんばかりに。

いや確かにそうは言いましたけどッ!?

それは只の比喩であって、俺は一言も「舐めてくれ」なんて言ってねえぞッ!?

そう思って反論しようとしたら……

 

「…ぴちゅ…ぷはっ♡…」ぴちゃ

 

突然、アルフは俺の首筋に這わせていた舌を離して、ものすんごくとろけた顔で下から上目遣いに俺を見つめてきた。

さっきまでの見た目相応に可愛いアルフはそこにはいなくて……なんつうか、メチャクチャ色っぽいんですが?

オマケに、首周りに塗りたくられたアルフの唾液からとんでもなく甘い匂いが俺の脳みちょを溶かしてくる……頭ん中がダメになりそうだ。

つうか、俺の後でバチバチいってるフェイト様はいつ俺に襲い掛かってこられるんでしょうか?

すぐ後にいらっしゃるのに、見えないからこそ湧き上がる止め処ないスリルで俺のチッキンなハートがパルメザンチーズみてぇに(粉々に)ブロークンしそうだぜぇ…

 

「んふふ…自分じゃぁ首元なんか舐めれないだろ?…だ・か・ら♡アタシがたぁっぷり舐めてあげたんだよぉ♡」

 

アウチッ!!

 

比喩じゃなくて俺がそうして欲しいと言ってるって意味でとったわけねッ!?

いや確かに自分じゃ首元は舐めれませんけどまさか忠実に実行してくるとは考えもしなかったわッ!!

しかもそんな「ちゃんと出来たから褒めて褒めて♡」みたいな目で見てくんなや。

えぇいッ!!尻尾フリフリすんのも耳パタパタすんのも禁止禁止ッ!!

そ、そんなつぶらな瞳で見つめられたってなぁ、俺がいつでも褒めてやると思ったら大間違いだぜッ!?

 

ナデナデ

 

「わぅ♡…ぅ~♪」スリスリ

 

そう思った時には時既にお寿司。

 

条件反射でアルフをナデナデしているマイ右手……ちょっと待てぇぇぇえッ!!?

俺の右手自重しろッ!!一体何を考えて行動してんのッ!?

あぁでもアルフのコンナに可愛らしくてほっこりと嬉しそうな顔見ちまったらもうなにもかもがどうでもよくな

 

スパァアンッ!!

 

りませんよねぇええええええッ!!?

 

危ねぇッ!?か、かかかすっ掠ったぞ今ッ!?

わたすの一張羅のジャケットがちょこっと焦げとるやないかあああああああああいッ!!?

ちょろっと横に視線を向ければ……なんということでしょう~。

つい先程まで無骨な鉄が剥き出しだっただけの味気ない床が、匠の手によって黒のストライプラインが一本施された素敵な模様に生まれ変わってしまいました~(泣)

let's現実逃避♪……しても現実は変わらねえけどな(泣)ヤツ(現実)はどこまでも追ってくるッ!!

まるで匂いを覚えたハイウェイスターの如くッ!!

そしてずっと夢心地だったアルフも今の電撃音にハッとして俺の後ろに視線を向けると……なんかきまずそうな表情になった。

 

「アルフ?何してるの?」

 

「フ、フェイトォ……あの…こ、これは…」

 

フェイトの不機嫌な声にアルフはしどろもどろになりながら答えようとしてる。

だがまぁベストな言い訳が出てこねえみたいでかなり焦ってるね。

心なしか、俺の腕の中の身体も震えてるし。

俺はフェイトとは反対方向を向いてるから、まだフェイトの顔が見えないのが救い……なような見えなくて怖いような……微妙な気分だぜぇ。

う~む……これは助け舟を出してやったほうがいいかねぇ……助け舟だした瞬間やられそうだけど…大丈夫でしょう、多分、きっと、メイビー……い、逝ってみますか。

 

「な、なあフェイト?これはだ…」

 

「ゼンは黙ってて」

 

「あ、ハイすんません」

 

弱ッ!!?俺弱ッ!!?変わり身速ッ!?一瞬で終わっちまったぜちくせう。

アルフ、そんな絶望したって顔すんな、居た堪れないから。

いやでも無理だわこれは、だってフェイトの声がスッゲエ不機嫌なんだぜッ!!?

俺の視界の端にいるプレシアさんとリンディさんはなんか「なんでそこで諦めるんだよ、もっと熱くなれよッ!!?」みたいな視線で俺を見てますた。

そーりー、今の状況じゃ無茶振りすぎますわそれ。

 

「答えて、アルフ……どうしてゼンに抱きついてるの?……ど・う・し・て・ゼンの首を舐めてたの?」

 

フェイトはかなり不機嫌な声でアルフに再度聞き返してくる。

その声を受けたアルフはかなりビビってるせいか、尻尾も耳もなんかシュンと垂れ下がってた。

さすがに可哀想になってきたので俺は頭を撫でてた手を背中に回して優しく摩ってやる。

 

さすりさすり

 

そうしてると落ち着いてきたのか、アルフの身体の震えは収まって、耳もちゃんと持ち上がってきた。

 

「ぁっ……ありがとね、ゼン」

 

小さな声でそう呟いたアルフに俺は苦笑しかでなかった。

アルフは俺に礼を言うと、ゆっくり深呼吸をして俺の肩越しからフェイトの方に視線を合わせる。

 

「うぅ……さ、さっきね?……アタシ、ゼンの首にか、噛みついちゃって…」

 

ついに観念したのか、はたまた覚悟を決めたのか、アルフは主人の命令におそるおそるではあるが健気にも答えていく。

 

「え?……首に?」

 

すると、アルフの答えを聞いて返ってきたフェイトの声はさっきまでの不機嫌な声音じゃなくて純粋に疑問に思っているような声だった。

うぅおぉぉおおおおおッ!!?いいぞアルフッ!!その調子でフェイトの機嫌をなだめて皆でハッピーと洒落こも…

 

「う、うん……そ、それで、ゼンが『舐めときゃ治る』って言ったから……で、でもじ、自分じゃ首なんか舐めれないじゃん?だから、アタシに……な、舐めろって言ってるのかなって」

 

うおぃちょっとおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!??アルフさんんんんんんんんんッ!!?

なにナチュラルに俺の命を安売り大バーゲンの広告に掲載しくさってくれちゃってますかあああああああああああああああああああああッ!!?

そんな可愛い顔で爆弾にニトログリセリンぶち撒けるような真似しちゃらめええええええええッ!!

ほんのりと頬を赤らめて喋るアルフも可愛いけど今のフェイトにその顔はむしろ逆効果でしかなかった。

 

「(ピキッ)……ふぅ~ん、そうなんだ……」

 

そして俺の背中越しに向けられてくるピリピリと肌を刺すような波動……おうふ、間違いなく怒気ですねこりゃ。疑う予知もねぇ。

これは下手しなくともいろんな意味で出血大サービスになりそうだぜぇ……

 

「ゼン?私の方を向いてくれないかな?ちょっとお話がしたいんだけど……ねぇ?こっちを向いて……私にッちゃんとッ目をッあ・わ・せ・て・ね・ッ・!・!・?」

 

「yes.mam」

 

遂に彼女のスコープにターゲットINされますた俺。

カンッペキにご機嫌がよろしくないフェイト様の言葉に従って、俺はアルフから体を離して後ろへ向きなおる。

じゃないとヤラれるマヂで。

この時に、主人の言葉に従って俺から体を離したアルフの沈痛な表情は語っていた……

 

『ゴメン、アタシはフェイトの使い魔だから……頑張って』

 

素敵な応援ベェリィサンクス。

 

でもボキをこの状況に追い込んだのは他でもねえチミですからね?どぅ~ゆ~あんだすたん?

さぁ現実逃避はこれぐれぇにして前を向きましょか……

 

「む~~ッ!!」ヴーンヴーン

 

振り向いた俺の視界に入ってきたのは、何やらライトでセーバーな感じの音を立てる光の鞭になったバルディッシュ君。

そのバルディッシュを持ったハムスター顔負けなレベルにほっぺたをパンパンに膨らませたぷりちぃなフェイトちゃんだったぜ。

あぁ、そんな表情もカワユスッ!!

しかもこの鞭、俺が廊下で見た時はバチバチとスパーク音を出す上に鞭の部分がとんでもなくごんぶとだった筈……なのに目の前のソレは鞭の部分が大分細身になって安定していた。

っていつの間にか洗練された技になってやがるしッ!!?

嫌な成長しちゃったよこの雷娘ッ!?

と、そんな感じでフェイトを見てると、鞭の先端の軌跡がフェイトの顔近くを漂っていた……っておいッ!?

 

「ま、待てフェイトッ!?ちゃんと話を聞くからその鞭を解除しろッ!!な、なッ!?」

 

ハッと気づいた俺はすぐにフェイトに鞭の解除を促す。

だが、今この状況じゃフェイトには俺の言葉は全部嘘臭いみてえで……

 

「どうして?どうして解除しなくちゃいけないの?この鞭がそんなに怖い?心配しなくても『今』は当てたりしないよ?」プク~

 

その可愛らしいほっぺたを膨らましたまんま、俺の意見はまったく聞き入れてもらえませんですた。ぷぎゃー

っていうか『今』はって何さッ!!?メチャクチャ怖えんですけどッ!?

 

「そ、そうじゃねぇッ!!その鞭さっきからお前の顔辺りを飛んでるじゃねぇかッ!?お前に当たりそうで怖ぇんだよッ!!頼むから解除してくれってッ!!俺をヤル分にゃ構わねぇが、お前が傷つくのは駄目だッ!!」

 

こんな可愛いフェイトに傷を作るなんて世界遺産の喪失なんかより深刻な問題デスッ!!

 

鞭ってモンは使いこなせばまるで生きている様に、変幻自在でトリッキーな動きで対象に痛みを与えられるが、ちょっとでも失敗すればそれは使っている本人にも牙を向く正に諸刃の剣だ。

ましてや使っているのはあの綺麗な微笑みを持つ天使の様に心優しいフェイトだ。

そんな危ない代物なんぞ、使った事があるはずが無いだろうし、いくら俺が『クレイジーダイヤモンド』で傷を治せるっていっても目の前でフェイトに傷つかれるのは絶対に嫌だっつの。

 

「ッ!?(ゼンが……わ、私の事を……心配して、くれてる?……ぅ……嬉しぃ♡……はっ!?ダ、ダメダメダメッ!!ちゃ、ちゃんと怒るって決めたんだからッ!!簡単に流されちゃダメッ!!私ッ!!)」

 

……な、なんかフェイトのヤツ真っ赤な顔でブンブンと頭を左右に振ってるんだが……どした?

と、とりあえずは鞭を収めてくれねえ……

 

「う、うぅぅ~ッ!!え、え~いッ!!」

 

だが、俺の言葉を聞いたフェイトは顔を真っ赤に染めたまま可愛らしい声を上げて……

 

ヒュヒュヒュンッ

 

スパパパァアアアアアンッ!!

 

「ヒーーーーーーーーーッハァーーーーーーーーーーーッ!!?」

 

空中で見事な軌跡を描きながら俺の真横スレスレに鞭を撃ちこむというその可愛らしい掛け声に似つかわしくない神芸をご披露くだすった。

いやいやいや待て待て待て待てぃッ!!?

なんでこんなにも鞭の扱い上手いわけだよッ!!?ま、ままままさかアレ(BADEND)は正夢になっちまうのかッ!!?助けてパパンッ!!

 

「だ、大丈夫だもんッ!!」

 

「いぃいやいやいやッ!?大丈夫だもんっておま「だってッ!!」…」

 

まさかの悪夢から現実にランクアップしそうな展開に素敵にテンパッていたらフェイトはバルディッシュの持ち手を両手で握ったまま目を瞑りながら声を大きくして俺に反論してきた。

すまん、今の俺の心境からしたら色々と大丈夫じゃねえ(泣)

 

「だってッ!!……だ、だってッ!!………ッ」

 

そしてフェイトは何やら覚悟を決めたような表情で俺を真剣に見つめていた。

……だって?……だって何よ気になるじゃねぇかッ!!?

なんでそんなに溜めるんだよッ!?ファイナルアンサー観てる時より緊張するわッ!!一体何を言うつも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だってわ、私、お母さんにいっぱい、いっぱい鞭でぶたれたもんッ!!だから鞭の使い方は知ってるよッ!!『痛いぐらい』にッ!!」

 

「ゴハァァアアアアッ!!!!?」←(吐血、致死量)

 

「きゃあっ!?プ、プレシアッ!!?」

 

 

二次災害キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!?

 

 

過去からの精神ダメージでプレシアさんの口から通称BB、正式名称ブラッディブリッジ(血 の 橋)が空中に向かって開通しますた。

いやちょっおま、ほんとトンでもないとこに飛び火しちまったよおいッ!!?

こ、このまま状況を放置したらプレシアさんが天に召されちまうッ!!

今や最愛の娘と断言できるほど、ご近所から「グレートな親馬鹿」と呼ばれるほどに子煩悩になっちまったプレシアさんにとって今のダメージは尋常では無かったらしい。

もう既に吐血量が致死量を軽ーく超えてた。

 

「し、しっかりしてプレシアッ!!だ、大丈夫よッ!!過去がどうであれ今のあなたは間違い無くフェイトさんの良い母親だわッ!!過去は過去ッ!!大事なのは今という未来への時間なのッ!!気づけたなら遅くは無いわよッ!?」

 

「う、うぅぅ……フ……フェイトォ……ごめんなさいッ…ぐずっ…痛い思いさせ、てごめ、んなさぁいッ!!…わ、悪い……お母さんよね……う、うぅうッ!!!」

 

「プレシアッ!?気をしっかり持ってッ!!?……プレシア?……プ、プレシアァァァッ!!?」

 

プレシアさんの横で呑気にお茶をしばいていたリンディさんはこの事態に騒然。

机に倒れ掛かって荒い息を吐いているプレシアさんにあの元ボクサー眼帯親父ばりの気合が入った檄を入れて励ましていた。

だが、あんまりにも効果が無いご様子……ってそんな場合じゃねえッ!?

お、俺は俺で急いでフェイトを止めねえとッ!!?

 

「お、おおお茶漬けッ!!お茶漬けフェイトッ!!お前今とんでもない橋渡ってるからッ!!なんか色々とトドメ刺しかね無ぇからッ!?俺と一緒に餅突こうぜッ!!な、なッ!!?」

 

俺は両手を振ってフェイトを必死の思いで止めにかかる。

ここで止めねぇとせっかく治ったフェイトの家族がオワタになっちまうぜ。

 

「だ、大体がだッ!!そんなモン見て受けただけで使いこなせるワケが無えだろうがッ!?お前の可愛らしい顔に傷がつく前にコッチへ渡しなさいッ!!俺なら『クレイジーダイヤモンド』で治せるが、それでもお前が傷つくとこは見たくねぇッ!!」

 

た、頼むからこれで止まってくれよフェイトッ!!?俺の気持ちと現状に気づいてくれええええええッ!!

 

「ひぅッ!?(な、なんでそんなこと言うのッ!?わ、私は怒ってるのにぃッ!!こんな時ばっかりずるいよ、バカァッ!!)で、できるもんッ!!あの時だってお母さんに褒めて欲しかったから、痛くてもしっかり見てたんだよッ!!『お母さんが鞭を振る時の手首の返し方』とか凄い上手だったから『良く覚えてる』のッ!!」

 

「がふぅううううううぅぅぅううううううううううぅぅぅううううううううううぅぅぅううううううッ!!!!!!??」←(極吐血、ブラッディブリッジ(血 の 橋)増築)

 

「プレシアァァァッァァァアアアアアアアアアァァァァァァアアアアアッ!!!!!!!!???」

 

『とっておきのッ!!ダメ押しってやつだぁぁぁあッ!!!』

 

ダメ押しキターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!?

 

 

俺の熱いソウルは届かなかったかッ!?つうか手首の返し方が凄く上手とかリアルすぎるってばよッ!!

だ、駄目だッ!!俺一人じゃあかえって増築しちまうッ!!ブラッディブリッジ(血 の 橋)封鎖できませぇんッ!!?

つうか、プレシアさん大丈夫かよッ!!?

俺は急いでフェイトから視線を外して、机にもたれて倒れている筈のプレシアさんに視線を移す。

 

「……クハッ(チーン)…」←背もたれに全身を預けてビクンビクンと跳ねている。

 

 

プレッッシアさーーーーーーーーーーーーーーーーーんッ!!?逝くなぁーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!?

 

既に反転してた。

しかも陸に打ち揚げられた魚みてぇにお口パクパク身体ビックビクンと跳ねてる。

こ、こりゃヤバイッ!!?なんか色々とヤバすぐるッ!!

一刻も早くフェイトから鞭を取り上げるか落ち着かせねえと、つかこれ以上古傷抉ったら天からお迎え来る前に自分から昇天しかねんぜッ!!?

 

「ま、待て待てフェイトッ!!わかったッ!!お前さんが鞭が得意なのは良ぉく判ったッ!!だからソレを降ろしなさいッ!!どーしても俺をブチのめしたいってんならソレ以外にしてくれッ!!それ以外なら、何でも受けてやらあッ!!」

 

こうなりゃ原因の俺があの鞭以外を受けてサッサとお姫さんの機嫌を直してもらうしかねぇッ!!

え?度し難いドM?実は欲しがり?はっ倒すぞゴルァッ!!?

 

「ッ!!?……ほ、本気で言ってるの?……凄く痛いんだよ?」

 

フェイトは俺の言葉が予想外すぎたのか(当たり前)目をまん丸にして驚いてた。

そりゃ痛いのは勘弁だが、このままじゃプレシアさんが俺より先に逝っちまう。

フェイトはまだプレシアさんがヤバイってのに気づいてないわけで、ここらで止めとかないと後でフェイトが泣く事になる。

それだけはマジで阻止しなきゃな。

俺は両手を上げたままゆっくりとフェイトに歩み寄っていく。

 

「い、痛いのは嫌だけどよ……お前が怒ってるのはまぁ……俺のせいだしな…気の済むようにやってくれ……さぁ……来い」

 

俺は目を瞑って両手をちょっとだけ広げた体勢でフェイトの前に立って迫りくるであろう攻撃に身を固くする。

ちなみに目を瞑ったのは怖いからデス。

へタレ?良くわかってらっしゃる。

とりあえず色んな覚悟はできたぜ、キャモン、ベイビー。

 

「ッ……ッ!!」

 

目を閉じてるせいで状況は全く判りませんが声だけで判断すれば、何やらフェイトは唸ってるご様子。

さぁ、何が、いや何で来るッ!?サイスかッ!?ライオットかッ!?……まさかのザンバーブレイカーかッ!?

ジワジワと過ぎていく時間が考える余裕を持たせられて、スリルがありすぎて怖いっす。

 

「ぅっ……うぅ~……も、もぉッ!!」ぼふっぎゅっ

 

そして、なにやらフェイトの癇癪を起こしたような声が聞こえた後、俺の胸元に勢い良く何やら柔らかい物体が寄りかかってきた。

うぬッ!?ぎゅっだとッ!?体全体に訴えかけるような至高の柔らかさをセレクトやがったかッ!!?なんて凶悪なこ……ん?…………『ぎゅっ』?

 

…………『ぎゅっ』?……んん?

 

何ソレ?

 

いやまて何かおかしいぞ?

なんか衝撃は来たけど痛みは全く無えし……なにやら胸元に飛び込んできたナニカから極最近に嗅いだことのある甘い香りがするんだけど……あっるえ?

そーっと目を開け、胸元を見ると……

 

「……ぅ~」

 

俺の胸元には、まるで太陽のような暖かな輝きを放つふつくしい金色の髪が……いや、フェイトそんがスッポリと納まってますた。

あぁ、なるほどつまりさっきの『ぎゅっ』はハグだったわけですね?

そうですか~なるほどなるほど……なんでや?

色々となんでや?なにがどうなっとんねんホンマ?

愉快にステーキにテンパりすぎて思わず関西弁になってしもたやんけ。

 

っていうかさっきまで手に持ってたバルディッシュはどうしたよ?

気になって先程フェイトがいたと思われる場所に目を向ければ……

 

『……sir…』

 

床に投げ捨てられ、悲しげにピコピコと宝玉のようなパーツから光を発しているバル君が、そこにいますた。

 

「……」

 

『……』

 

……何も……言えねぇ……あ、目から汗が……

 

「……え~っとぉ?……フェイトさんや?」

 

とりまバル君のことは放置で。

すまんなバル君、君の事は今すぐ忘れるぜ。

薄情?あんな哀愁漂う姿見てたらこっちが先にまいっちまうっての。

そしてフェイトちゃん?なにゆえアナタは俺の胸元に鎮座ましましておらるんでせう?

 

「………か(ぼそっ)…」

 

俺の胸元にいるフェイトは何やら小さく呟いて、顔を上げてくれたんだが……フェイトの頬は相変わらずぷっくりと膨らんだままで目尻は若干八の字を描いてた。

 

「……ばか……そんな風に言われたら、怒れるわけないでしょ…」

 

そう言って俺を上目遣いで見てくる膨れっ面のフェイトは……最高に可愛いです。

……えっとぉ?これはつまり?むくれてらっしゃる?

 

「私だって……好きでゼンを叩きたいわけじゃないもん……でも……ゼンが私をほったらかして、他の女の子にばっかり目移りしちゃうから……怒りたくもなるよ……ばか」プイッ

 

恨みがましく俺を見つめながら小ぶりな口を可愛らしくすぼめて文句を言うと、段々と俺から視線を外していき、フェイトはハムスター顔のまんまそっぽを向いてしまった。

 

ごふうぅうッ!?

 

そ、そんな風にむくれながら拗ねる仕草もメチャクチャ可愛いっすッ!!

お、思わず鼻からラヴが止め処なく溢れるとこだったぜ……フェイト……恐ろしい娘ッ!!?

 

「あ、あ~それはまぁなんというかだな……」

 

事実なだけに言い返せねえや。

こればっかりは、なんて言うか……ねぇ?……可愛いモン見ちまったら口が勝手に動いちまうというか……ごめんなさい、条件反射なんですわ。

そして、俺が何と返したものか煮え切らずにいると、フェイトは膨らんでたほっぺをしぼませ目尻を悲しそうに垂れさせていき……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ゼンは……可愛い女の子なら……誰にでも……優しくしちゃうの?……わ、私……じゃ……なくても……ぃぃ……の?」ウルウルウル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………☆プ☆チ☆ン☆

 

 

 

 

 

 

ぶるあぁぁあああぁああぁぁぁぁああああッ!!!!!!?????←(臨界点突破)

 

 

 

 

 

 

か、感じるッ!!?感じるうぅぅぅううううッ!!!感じるぞぉおぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!

 

五臓六腑に染み渡るこの萌え成分んんんんんんんんんんんんんんんッ!!!

 

気恥ずかしさで淡く赤に染まりきっている突きたての餅なんぞ比べ物にならない程に柔らかそうなほっぺたッ!!

まるで甘えん坊の子犬が主人に構って欲しくて切ない声で鳴くようなその愛らしい声音ッ!!

キリマンジャロ産のナチュラルな雪解け水、しかも500年物の如く清らかに澄んだミネラルウォーターを彷彿させるその潤んだ眼ッ!!

純度100%のルビーなんざ霞んで見え、足元にも及ばない程の輝きを持った穢れ無きその真紅の揺れる瞳ッ!!!

チラチラと恥ずかしそうに見ては視線を外すその怖がりな小動物の如き瞳の動きッ!!

極めつけにどれだけ新鮮で芳醇な果実でも霞んでしまうぐらい瑞々しく、この世にオンリーワンしかないぷるんと弾ける桃色に濡れた愛らしい唇ッ!!

 

ま、間違いなく今日という日の中で一番萌えたぜ……あの恥らうリインフォースを超えやがったッ!!?

可愛いすぎるよこの萌えっ娘……だが、今のお姫さんの台詞にゃち~っとばかしスルーできねえもんがあったぜオイ。

そこんとこの認識だきゃあ改めて頂きましょうかねぇ。

 

「あ、あのなぁ……フェイト?そのまんまでいいからちっとばかし聞いてくれ……」

 

「……」チラッ……プイッ

 

フェイトはちらっと俺の顔を覗き見たかと思ったらまた視線を外してそっぽを向いちまった。

だが、俺はそれには構わずに伝えたい事を続ける。

 

「確かに俺は可愛いものが好きだぜ?いや大好きと言っても間違いじゃねえ……」

 

「ッ……」

 

俺が言葉を続けるとフェイトは悲しそうな顔になっていく。

捨てられた子犬みてえに弱弱しい表情ってのがしっくりくるな……まぁったく、早とちりしてんじゃねぇって。

 

「……だがよ…」グイッ

 

「…っぁ……」

 

手持ち無沙汰だった左手でフェイトの腰に手を回してホールドし、更にフェイトの下あごに右手の親指と人差し指を添えて顔を俺に向き直させる。

抵抗らしい抵抗もせずに向きなおったフェイトの朱に染まった顔は不安と期待が入り混じっている。

……可愛いすぎるぜちくせう。

 

「そんな俺でもよ……只、可愛い女の子ってだけじゃあ……」

 

そこで一度言葉を区切って、俺はフェイトの真紅に煌く瞳を覗き込む。

それはもう本気と書いてマジと読むぐらい真剣な顔で。実際は顔赤くならないようかなり必死なんだがな。

 

「それだけじゃあ……俺は『女の子にキス』したりなんてしねえぜ?」

 

「ッッッッッ!!???」ボフンッ!!!!!

 

俺の言葉の続きを聞いたフェイトはもう有り得ないんじゃないかってぐらい顔が真っ赤に弾けた。

ご丁寧にトンでもない音上げて爆発してるし……俺も爆発しそうだけど。

俺がキスした相手はフェイトだけだってのはフェイト自身良く覚えてるだろう……なんせまぁ……その……か、かなり、情熱的なヤツをしたしな。

 

「(か、可愛いだけじゃしないって……それ、じゃぁ……キ、キキキキキキスして、もらった私…は……それ……以上って……こ、と?…)ぁ……あうぅ」ぷしゅ~

 

俺に下あごを持ち上げられて顔が固定されてるフェイトは恥ずかしいのに視線を彷徨わせることしかできずどんどんと顔から煙を放出していく。

いつもならその熟れたリンゴみてぇな顔見たら満足だったがなぁ……でも、今回は……まだこれで終わりじゃねぇぞ?

 

「あと、さっきアルフにも言ったんだが……一つ、親父が教えてくれたことがあんのよ」

 

「……ふぇ?お、お義父さんが?」

 

フェイトは恥ずかしさで顔が真っ赤だが、俺の言った言葉にちゃんと反応してくれた……なーんか前々から親父の呼び方が引っかかるんだが……まぁいいか。

 

「あぁ、親父曰くな?『女のいいところだけじゃなく、怒るとか妬くとか、そういった感情も全部ひっくるめて、呑み込んでやれるのがイイ男の条件だ』ってことらしい……まぁ俺も男の端くれだからな……イイ男になりてえんだわ…」

 

なでなで

 

「…ぁっ…んぅ♡……ふみゅう♡……」

 

腰に回していた左手をフェイトの綺麗な髪を梳くように撫でると気持ちよさそうに目を細めてくれた。

つうか、「ふみゅう」ってオイ……鼻だけじゃなく、口からもラヴが溢れそうだぜ。

ここでフェイトの事を甘えん坊の子犬っぽいと思ってしまったことは俺だけの内緒だ。

 

「だからよ……フェイト…」

 

俺の呼びかけに、フェイトは細めていた目を開けて再び俺と視線を絡めあう。

だが、今のフェイトの表情は不安が無くなって、嬉しそうな感じ一色だ。

彼女の紅い瞳は何かを期待するようにとろんとしてて口元は小さく開いたままになってる。

次に言う台詞がフェイトの期待通りの言葉かはわかんねえが……とりあえず言っておかなきゃな。

 

「もし、俺に対して何かしら思うことがあれば……そんときゃ遠慮せずに思いっ切りぶつけてこい……お前の悲しいも嬉しいってのも……俺が、フェイトの『全部』を……呑み込んでやっからよ」

 

「ッッッッッッッッッ!!??」キュン♡

 

俺が伝えたかったことを伝えると、フェイトは目を見開いて顔全体を真っ赤にしちまった。

うん、こんなフェイトもGOOD!!なんつうか癒される。

 

「あ、あぁ……はうぅ……ぃ…ぃいの?……私……本気に(心的な意味で)しちゃうよ?」

 

フェイトは俺の目を覗き込みながら恐る恐るといった感じで俺に聞き返してきた。

俺の制服を握ってる手が震えてるってことはまだ不安なんだろうな。

……本音としちゃあ、できれば本気(プラズマザンバーブレイカー)にならないで頂ければいいけどよ。

さすがにアレ食らったら塵も残らんよ俺。

 

「……んまぁ、アレよ…可愛い『お姫様』を泣かすわけにゃいかねえからな…」

 

つうかさっきからとんでもないセリフばっか吐いてるな俺ぇ……アルフに歯のブッ飛びそうなセリフ散々吐いた時で羞恥心にトドメさしたからだろうなぁ。

 

「……ふぇ?……え、えぇえッ!!?お、おおおお姫さまッ!!?」

 

あらら。真っ赤を超えて真紅になっちまって……そうゆう恥かしがる所がいぢめたくなる所だし、泣いてりゃ優しく慰めてやりたくなるんだぜ?

ここまで保護欲と嗜虐心を同時に掻き立てるキャラは普通そういないっすよ。

ちなみに、今、俺の心に萌えあがる気持ちは凄~く、フェイトをいぢめたいってことです(笑)

 

「おうよ、人を思いやれる優しい心を持ってて、天然入ってて少しばかりおっちょこちょい、おまけに甘えんぼうの寂しがり屋な女の子……うん、充分可愛いお姫様じゃねぇか」

 

やべえ、口から直ぐ出てくる分だけでも萌え成分の塊じゃねぇか。

 

「そ、そんなことないよッ!!私、おっちょこちょいじゃないもんッ!!」

 

だが俺の上げたフェイトの可愛いと思うところ、通称萌えポイントは何やらお気に召さなかったようで慌てて否定してきた。

いやいや、そこだけ否定するって他は当たってますって言ってるようなモンですよ?

後、アナタは誰がどう見てもおっちょこちょいだと思います(笑)

 

「ほぉ~?半年前、二度目に会った時にゃ時間がもったいないって朝、昼、晩の食事をキャロリーメイトだけで済まそうとしてたのにか?」

 

あれはかなり衝撃的だったよホント。

女の子は料理できるなんて幻想をものの見事にSGB(その幻想をブチ殺すッ!!)されたぜ。

ある意味、なのはのSLB(スターライトブレイカー)より心に響いたわ。

 

「はぅッ!?だ、だってあの時は、その、えと…」

 

俺がニヤニヤしながら半年前に会った時のことを口にするとフェイトは二の句が告げず、視線を右往左往し始めた。

だがしかし、こんなもん序の口、まだまだあるぜ?

 

「海鳴市に引っ越してきてからもよぉ……俺がケーキの作り方を教えた時に……砂糖と塩……間違えたよなぁ?」

 

「そ、それはッ!?……うぅう」

 

あん時は『なんというテンプレ』と塩ッ辛いケーキ食いながら思ったもんだぜ。

オマケに後から砂糖入れて無理やり中和しようとするもんだから最終的にゃバイオウェポンに変貌を遂げたし。

俺と一緒に試食したクロノとユーノが1時間トイレから出れなかったのはいい思ひ出。

え?俺?波紋使い舐めんなよ?波紋で胃の中を超☆強化しますた(笑)

只、俺だけ無事だったんで残りのバイオウェポンも全部俺が引き受けることになったけどね。

塩ッ辛いクリームと甘酸っぱいイチゴ、そしてふわっとした甘さのスポンジというトリオが奏でる鎮魂歌(レクイエム)……嫌な……事件だったよホント。

さすがにフェイトが切なげに目をウルルとさせながら「一生懸命作りました」って訴えてきてるモンを『クレイジーダイヤモンド』使って治すのは鬼畜の所業だしな。

というか、そん時にフェイトの後ろに居たプレシアさんの鬼のような目が語ってたのよ。

「フェイトが作ったケーキを残したら………してやるわよ?」ってな……読み取れなかった部分が凄く……怖かったぜ。

ちなみに間違えた理由は俺の神速クリームシェイクを横で見ていて俺に早く追いつきたいからと焦ったそうな。

そして後日、焦らず落ち着いて再チャレンジしたらちゃんと出来てた。

 

「うぅ~~ッ!!ひ、酷いよぉッ!!もぉッ!!ゼンのばかッ!!ばかばかばかぁッ!!」ぽかぽかぽか

 

と、俺があのソルトケーキ事件を思い出していたら、失敗談をバラされて恥ずかしかったのか、フェイトは顔を赤くしたまま両腕を使って俺の胸板をポカポカ叩き始めた。

うむ、これぐらい可愛げのある攻撃なら甘んじて受けようではないか(笑)

 

「へっへっへっ悪い悪い、あん時の涙目なフェイトがえらく可愛かったからつい、な?そんなに怒らないでくれよ?」なでなで

 

暴れるフェイトの両腕を受けつつ、外側から回した手で再びフェイトの頭をあやす様に優しく撫でる。

俺の手櫛には一切引っかからず、フェイトの金髪はまるで上質の絹の様にふわふわと手を擽った。

あぁ、やっぱ何度撫でても飽きねえよ、この触り心地は。

 

「あ、謝ってもダメだよッ!!可愛いなんて言っても許してあげないもんッ!!ばかばかばかッ!!ゼンなんかもう知らないッ!!」ぽかぽかぽか、ぷいっ

 

ありゃりゃ、完全にヘソ曲げちまったかな?

ほっぺた膨らましてそっぽ向いてるのはスッゲー可愛いけどよ。

なぜに知らないと言っておいて俺から離れようとしないのかな?フェイトちゃんや?

俺の胸に握り拳を当てたまま、フェイトは動こうとせず、そっぽを向いてほっぺたをぷっくり膨らませてらっしゃる。

多分、俺がちゃんと誠心誠意、謝ってくるのを待ってるんだろう。

ふむ……それじゃあもうちょいからかってみますか(笑)最近O☆HA☆NA☆SHI☆されてばっかだしよ。

 

「そうかぁ……悪かったな……フェイトがそんなに怒ってるなんて思わなくてよ……」スッ

 

「え?、あっ……ゼ、ゼン?」

 

俺は顔を悲しげな表情に変えてフェイトの頭を撫でていた手をどける。

今まで見せたことが無い表情で頭から手をどけられたフェイトはかなり困惑していた。

 

「フェイトが許してくれねえなら……仕方ねえよな……わかった。俺はもう二度とフェイトの事を可愛いなんて言わねえよ」

 

「ッッ!!?」

 

「当然、もうフェイトの頭を気安く撫でたりも絶対にしねえ」

 

「そ、そん……な……」

 

俺の言葉を聞いたフェイトの顔色は赤から一気に真っ青な色合いになり、表情もこの世の終わりに直面したような絶望に染まった。

いや、そんなつもりは毛頭無えけどな?

最近やられっぱなしだし、偶にはこっちから攻めさせてもらうぜ?

 

「まぁ、そーゆうわけで……フェイトが撫でさせてくれねえなら……これからアルフをたぁっぷりと可愛がるとし…」

 

「ッ!!?ッ!!!」ギュウゥゥゥウウッ!!

 

「ぬおッ!?」

 

と、ここで俺が後ろに居るであろうアルフの方に向きなおろうとすると、フェイトは普段からは考えられないほどの力で俺を叩いていた両手で俺にしがみついてきた。

俺の制服の背中側をシワになるぐらいギュっと握ってて、もうなんか絶対に逃がしませんって感じだ。

 

「……ゃ…」

 

しかも俺の胸に顔を埋めたままに何かを小さく呟いてる。

いや、え、ちょっ、あれ?もしかしてやりすぎた?

 

「フ、フェイ……ト?」

 

「……ゃ」

 

俺の呼びかけに反応してくれたのか、今度は埋めていた顔をゆっくりと起こして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっちゃ……ぃや……いてくれなきゃ……ヤダぁ……」ポロポロポロ

 

大粒の涙をポロポロと零しながら、顔を上気させ、切なげな瞳で俺を上目遣いに見つめてきた。

 

 

キュン

 

……ヤベエ……本気でときめいた。

くそ、やられたぜ。

この泣きッ面まで萌えさせてくる萌えっ娘めぇ……もう少しイジメてやる(笑)

 

「……許してくれんのか?」

 

俺は俺にしっかりと抱きついてる可愛いお姫様にそう問い返す。

 

「……ぐすっ」コクン

 

その問いにフェイトは無言で涙を拭いもせず、頭を縦に振って返してきた。

そのまま俺を抱き締めていた手をほどいて、俺の胸板に添えるように手の平をのせた。

フェイトの顔色は既に青色からほんのりと頬に朱の差した可愛らしいお顔に変わっている。

 

「私……私に……も、もっと……もっと……いっぱぃ……可愛いって……言って、欲しいよぉ♡」

 

その体勢のまま、フェイトはぷるんとした可愛らしい唇を小さく動かしてキュンとくる我儘(オーダー)をしなすった。

 

ぐううぅぅぅぅうううッ!!!?

ち、ちくしょうッ!!?可愛いすぎるぅッ!!い、今すぐにでも気の済むまで撫でまわしてやりてぇぇぇぇええええぇぇえぇッ!!!

だ、だがまだだッ!!まだ我慢だ橘禅ッ!!もう少し我慢しなくてはッ!!『急がば周れ』と言うだろうッ!!?

朱の差した可愛らしいお顔で見つめてくるフェイトを俺はバレないように喉を鳴らしながら両手で軽く抱き寄せる。

 

「……」じ~

 

フェイトは俺の行動には何も言わず、ただひたすらに見つめてくるだけだ。

でも、俺の腕に感じるフェイトの身体は少しばかり震えてる。

ちゃんと言わないと不安ってことか……もうフェイトの全部が可愛いくて仕方ないんですけど?

そのままフェイトの耳に顔を近づけて……

 

「……どうやら、俺は今、世界一ラッキーな奴みてえだな」

 

「……え?」

 

突拍子もないことを言われて、フェイトは疑問の声を上げるが、俺はそれに構わず更に続ける。

 

「今のフェイトは……他の次元世界にいるどんな存在よりも……グンバツに可愛い」

 

「は、はぅッ!?(ど、どどどんな存在よりもってッ!?た、確かにか、可愛ぃって言って欲しいってい、言ったけどッ!!……ほ、他のどんな存在よりも、ってぇ……もぉ……ばか♡)」キュウウウン♡

 

俺の放った第一の爆弾、『キラークイーン(女の子を褒め殺す(笑))』にフェイトは素っ頓狂な声を上げて慌てだす。

その声を聞いてから、俺は耳に近づけていた口を離してまたフェイトと視線を絡めあう。

もうこれでもかと蕩けきったフェイトの顔を視線に収めてから、俺は真面目な表情を崩してニッコリと笑う。

 

「こんな……世界で一番可愛いフェイトを……こんな近くで見て、感じていられんだぜ?間違いなく俺は世界一ラッキーな男だろ?……そう思わねえか?ベイビー?」

 

「そ、そんなこと……聞かないでよぉ……わからないもん……ばか♡」

 

口ではそんな事言ってても、嬉しいのは丸判りだぜ?

なんせ俺を見る目はさっきも言ったようにとろけっぱなしだし、口元は小さく弧を描いてる。

極めつけは俺で無くとも、今のフェイトを見れば誰でも幻想してしまうその犬耳と尻尾ッ!!!

これまた嬉しそうに左右に揺れてやがるぜ。

だが、俺の腕の中にいるフェイトはさっきからチラチラと俺を見たり胸元を見たりと視線が忙しくなり始めた。

その真紅の瞳は何かを期待している様にしか見えない。

……こりゃそろそろ来るか?とりあえず、俺から仕掛けますか。

 

「ん~?どぉした?さっきからチラチラとよ?」

 

「えッ!?え、えぇと……」もじもじ

 

俺の問いかけにフェイトは体をモジモジさせながら俯いたり見上げたりを繰り返している。

暫くその様子を眺めていると胸に添えていた両手を離し、人差し指同士をつんつんと突っつき合わせ始めた。

あれぇ~?一体どうしたんだろぉなぁ~?(笑)

 

「そ、その……して……くれないの?」

 

「あん?何をだ?」

 

「だ、だから……その……ね?」

 

フェイトはずっと俺を期待するような目で見つめてくる。

残念ながら俺には何を期待してるのかがわからん(笑)

 

「ん~……俺はバカ(・・)らしいからなぁ……ちゃんと口で言ってくれねえと何をして欲しいのかわかんねえや」ニヤニヤ

 

俺はニヤつきながらフェイトに答える。

さっきからフェイトに沢山言われた言葉を混ぜて。

 

「ッ!?……うぅ……わかってるくせにぃ……」

 

俺の返事を聞いたフェイトは一度驚いた表情になった後、俺の言葉の真意に気づいた様で、口をアヒルみたいにしながら文句を言ってきた。

仕方ねえじゃん?それはフェイトが苛めたくなるぐらい、いや苛めても可愛いのが悪いッ!!

 

「さあて、なんのことやら?(笑)じゃあ、フェイト?バカな俺に教えてくれよ……フェイトは……『俺に何をして欲しい』んだ?……ちゃんと口で言ってくれ……な?」ニヤニヤ

 

「……ぃぢわる…」

 

俺が態度を変えないことを悟ったフェイトは可愛らしく文句を呟いて俺をしっかりと見つめなおしてきた。

そして二、三度軽く深呼吸をし、赤く染まった顔で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……な……撫で撫で……して?……いっぱい……ぃっぱい……いい子、いい子って……して♡」

 

 

 

凶悪なまでに可愛いすぎる、その上にキュンとくるようなフェイトが欲しい『ご褒美』を俺にお願いしてきた。

……これはもう……この可愛いさは……言葉にできねえ。

俺の陳腐なド頭じゃ……どうあってもフェイトの……この地上に舞い降りた『天使』の可愛いさを表現することなんざできねえよ。

こんな可愛いとこ魅せられたんだ……じゃあ……俺も出しますか……『キラークイーン、第二の爆弾』。

 

「……可愛い『お姫様』のお願いとあっちゃあ……断ることはできねえな」

 

『Sheer Heart Attack (マジで心にクる褒め言葉(笑))』をな?

 

「ッ!!??(ま、また……お姫様って……はうぅ)」きゅん♡

 

「ほれほれ」なでなで

 

「ふぁあっ♡……にゅぅ♡……ぇへへ♡♪」パアァッ

 

遂にお目当てのご褒美を手に入れたフェイトの笑顔は……そりゃもう見事に華が咲いた。

この向日葵みてえな輝く笑顔だけで俺はあらゆる害悪を粉微塵に粉砕してやれるぜッ!!

俺はこの笑顔を間近で見ることができる奇跡を神に感謝しつつ、その恩恵を思いっ切り堪能することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

ちなみに外野では……

 

「うぅ~(い~いなぁ、フェイト……『お姫様♡』なんて言ってもらえて……ま、まぁアタシも……ゼンにい、いっぱい可愛がってもらったし……フェイトとの精神リンクから伝わってくる気持ちもすっごい幸せになってるから……まぁ、いっか♪……し、しっかしさっきまでの事……お、思い出しちゃうと……えへへ♡)」くねくね

 

何やらさっきまで可愛がってもらってた時のことを思い出して、そして大事なご主人様の嬉しい気持ちが特別な繋がり……精神リンクから流れてくるのを感じて、一人妄想の世界へダイブするアルフと……

 

「フフッフフフフッ♪(『女のいいところだけじゃなく、怒るとか妬くとか、そういった感情も全部ひっくるめて、呑み込んでやれるのがイイ男の条件だ』…か……さすがゼンのお父上、良いことをおっしゃる……では、私の怒りと嫉妬も……余すとこ無く受け止めてもらうとしよう♪……受け止めてくれるな?ゼン♪)」ニッコニコ

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……

 

何やら色々と台無しな美人がいた。

 

((ヒィイイィィィイイイイイイイイィィイッ!!!!!??))

 

夜天の魔導書の管制人格……言うなれば、夜天の魔導書のドンはカチ切れていた。

それはもうとんでもないレヴェルで、ぶっちゃけ洒落にならないほどに……先程までゼンという愛しい男に見られたくないと思っていた嫉妬も怒りもおっぴろげどころか全開放状態だ。

夜天の魔導書のドン……管制人格、愛する主から受け賜った「祝福の風」リインフォースはその名からはかけ離れている程に恐ろしい従者を従えて只、嗤っていた。

ぶっちゃけ、闇の書の方がしっくりとくる程に、今のリインフォースは色々とアウトだった。

その余りにも凶悪なオーラに当てられたはやてとヴィータは涙を流しながら互いに抱き合った体勢のまま動けなかった。

シグナムやシャマルも同様で、動きたくとも動けないでいる。

ザフィーラに至っては、伏せの状態でまだ目と耳を外界から閉ざしていた。

唯一、全員が理解していることは只、一つ。

 

(((((動いたら殺られるッ!!!)))))

 

只、それだけであった。

そして、遂にリインフォースは動いた。

 

「フフフ♪」ニッコニコ

 

先程から一切変わらない笑顔を浮かべ、その笑顔のまま背後に巨大なしゃれこうべを従えたリインフォースはゆっくりと、足音すら上げずにゼンの背後に忍び寄っていく。

はやて達はその様子を眺めていることしかできなかった。

 

(ああぁ……もう……もう……終わりやな、禅君……短い付き合いやったけど……楽しかったで)

 

はやてはもうすぐ散り逝くであろう友達に心の中で別れを告げた。

薄情とも思われるかも知れないが、今のリインフォースのオーラを浴び続けるぐらいなら、汚名を被るほうがマシと胸を張って言えるはやてであった。

誰だって自分の一つしかない命は惜しいものである。

 

(ゼンっつったよな?アイツ……リインフォースを助けてくれたことと、はやてを泣かさないようにしてくれたのは感謝してるぜ……安らかに逝きな……助けれなくて悪いな)

 

鉄槌の騎士ヴィータも、はやてと同じようにゼンの冥福を祈った。

元々、ヴィータという少女は口は悪いが周りのことに気を遣える優しい性格の少女であった。

ゼンとの関わりは殆どと言っていいほどないが、自分のお姉さん分であり、大切な主を悲しませないように頑張ってくれたゼンのことはイイ奴といったプラス方面の認識を持っていた。

だが、戦闘においては生粋の猛者であるヴィータですら恐れる程のリインフォースからゼンを、それこそ命を賭けて庇うには関わりが薄すぎたのだ。

それはリインフォースとはやてを除いた、八神家全員に言えることだが。

 

 

そして、地獄からの断罪者が直ぐ傍まで近寄っているにも関わらず、哀れな子羊は未だに気づいていなかった……

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

「まったくよぉ……ほんとに可愛い過ぎるぞ?フェイト……俺の心をグチャグチャにしやがって……ほんとーに悪い娘だなぁオイ?」なでなで

 

いつもと同じ、いや、いつもより絶好調で女の子を、天使なフェイトを可愛がる俺が其処にいる。

台詞もいつもよりカッ飛んでる気がするが気にしない、ああ気にしない。

むしろだぜ?

こんなうにゅうにゅと可愛い声で鳴きながら甘えてくる満面の笑顔なフェイトちゃんを前にしてカッ飛ばずにいられるか?断言しようッ!!カッ飛ばずにいられないッ!!

 

「はぅっ……そ、そんなこと言われても……私のせいじゃないもん」

 

「いーや、断言できる。全部フェイトのせいだぜ?俺がお前を苛めたくなっちまうのはお前が可愛い過ぎるのが悪い」なでなで

 

まったく、そんなふにゃっと垂れたお顔でこれでもかとMEN心をくすぐってきやがるのに、私のせいじゃないって?

バカ言っちゃあいけませんよフェイトさん。

全てはフェイトが可愛い過ぎるのが悪いッ!!異論は認める、反論する奴ぁ長芋みてぇにドロドロになるまで叩き潰してやんよ。

 

「うぅっ……ふんだ……どうせ他の女の子にだって、そうやって声を掛けて口説いちゃうんだよ……ゼンは、すけこましだ」ぷぅ

 

「ぶはッ!?」

 

ちょっ!!?ど、どこでそんな人聞きの悪い言葉をッ!!?

可愛らしくむくれるフェイトのアヒルみたいになった口から紡がれた一言は全く予想してなかった上に全然可愛げのねえ言葉だった。

 

「フ、フェイトさんや?ど、どこでそんな言葉を覚えちまったんだ?い、い言いがかりにも程が……」

 

「だって、ユーノが言ってたよ?『綺麗な女の人とか可愛い女の子を見るとたらし込む、口説くことばかりする人をすけこまし』だって……どう考えてもゼンのことだよ、それ」

 

……敵は既に身内にいたとか……オ・ノーレェッ!!!

 

「……ユーノは後でブチシバく……そ、それはそれとして、だ。フェイト?すけこましってのは『女の人を誑かして売り払う』とか、そーゆう悪い意味もあっからよ……で、できれば余り言わんで欲しいんだが……」

 

いやホント、その汚名は余りにもヒデエから勘弁だぜ。

 

「じ~……」

 

「うッ……(汗)」

 

だが、なんでか知らねえが俺の弁解の言葉を聞いたフェイトはなにやらジト目で俺の事を見てくるではないか。

そんな目で見られ続けると俺の体からいやーな汗がダラダラと出てきちまいます。

な、なんでだ?なんでフェイトはそんな目で俺を見るんですか?俺何か悪いこと言ったかッ!!?

 

「……すけこましってこと自体は、否定しないんだね」

 

「うぐッ!?……そ、それはまぁ、何と言うか……ねぇ?」

 

一応、い・ち・お・うッ!!うす~っぺらくではありますが……自覚はございますので。

 

「……もぉ……本当に、私の事……か、可愛いって……思ってくれて……る?」

 

ここで俺が煮え切らない態度をとったのがアウトだったようでフェイトはジト目のまま俺に問いかけてきた。

まぁ、自分で言うのは恥ずかしかったようで頬にはバッチリと朱が差したまんまだったが。

 

「も、もちろんですともッ!!」

 

当然、俺は今のフェイトを心の底から可愛いと思っているので、力強く返事を返しますともッ!!

むしろこれ以上可愛い存在がいるってんなら連れてこいやぁッ!!たっぷり骨抜きになるまでシャブシャブしてやるぜぇいッ!!

 

「…じゃぁ……」

 

 

俺はこの時、余りのテンションのおかしさのせいで、フェイトのこの後に続く言葉がよく聞こえなかったんだ。

 

そのせいで……

 

後半へ続くッ!!


 
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