第百十二技 和解
キリトSide
攻略組の面々が解散して、この場には俺とアスナだけが残った。
「(ポカーン)」
アスナが俺をみて呆然としている。
「ん、どうかしたか?」
「え、あ、その…意外だなぁって思って。今の…」
なるほど、滅多に指揮を行わない俺の様子を見て驚いたわけか。
「ソロといっても黒衣衆の指揮を執ったりするからな。少しは慣れてる」
「そうなんだ…」
まぁそれはどうでもいい。そんなことよりもだ。
「まずは武器の鑑定だな。俺は《鑑定》スキルは上げてないけど、あんたは?」
「上げてない……ていうか、そのあんたとかお前っていうのやめてくれない?」
アスナはそういって訝しげに俺を睨んだ。そんなこといわれてもなぁ。
「じゃあなんて呼べばいい?」
「アスナでいいわよ」
「分かった。それと、俺もキリトでいい」
「ぅ、うん…」
ちょっと戸惑ったようだが、了承してくれたようだ。
「それで《鑑定》スキルだけど……フレンドとかにアテはあるか?」
俺の質問にアスナは少し考えた様子をしたが、すぐに難しそうな表情をした。
「武器屋をやってる子が友達でいるけど、今は一番忙しい時間だから…、いますぐっていうのは無理だと思うよ」
確かに。この時間帯は冒険を終えたプレイヤー達が、
それぞれ装備のメンテナンスなどを行うために武器屋などに押し掛ける頃だ。
「エギルは……駄目だな。この時間は商人達も忙しいし…」
それにエギルの場合は熟練度がイマイチ不安だしなぁ…。
かといってルナリオも今の時間は忙しいし。
仕方が無いか。俺はメッセージウインドウを開いて、文字を入力していく。
「誰に送ってるの?」
「頼りになるサポート専門のお姉さん」
「?」
訊ねてくるアスナの一言に対して、返した俺の言葉にアスナは疑問の表情を浮かべていた。
メッセージを送ってしばらくしてからその人はやってきた。
「こんばんは、キリト君」
「よ、キリト」
「こんばんは、二人とも……ていうかシャイン。俺はお前を呼んでないぞ」
俺は『黒衣衆』及び『嘆きの狩人』の情報収集などのサポートを担当しているティアさんを呼んだのだ。
彼女は《鑑定》スキルをかなり高めており、もうすぐ
その彼女に鑑定を頼んだのだが、シャインまでついてきてしまった。
「厄介事なんだろ? すぐに俺達にも分かる事だからな」
「まぁ、そうなんだが……」
俺としてはシャインとアスナが会うのは気が引ける。この前の一件があるからな。
そんな俺の表情を察したのかシャインは苦笑して俺に言った。
「心配すんな。俺はあの時の事も含めてここに来たんだよ」
「そうか…。なら俺は何も言わないさ…」
この様子なら大丈夫そうだ。シャインは俺の横を通ってアスナの前に行った。
俺とティアさんは動かずに様子を見る。
「………」
「ぁ、あの……」
沈黙するシャインにアスナは居心地が悪かったのだろう、言葉を発したけれど…。
「この間はわるかった!」
「えっ?」
シャインがいきなり謝罪の言葉を言い、頭を下げてきたのでアスナは驚いたようだ。
「あの時は感情的になり過ぎてた。いきなり出ていって場の空気を乱したのはやり過ぎたと思ってる」
「い、いえ、私こそ、あんな作戦を立てたせいで不快な気分にさせて…。すみませんでした!」
アスナもまた今回の事がきっかけで思うところがあったのだろう。彼女も謝罪している。
これでこの二人は大丈夫そうだな。
「よかったですね、キリト君」
「はい。ありがとうございます、ティアさん。貴女がシャインに話したんですよね? アスナがいるということを…」
ティアさんが驚いた表情をしている。しかしそれもすぐに笑みに変えた。
「気付いていたんですね…」
「シャインがあの一件を気にしていたのを、貴女が一番心配していましたからね」
「そうですね…。でも、これで大丈夫ですから」
そう言ったティアさんの視線を俺も追う。アスナとシャインが笑みを浮かべながらこちらに歩み寄ってきた。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
アスナとシャインを和解させました。
あのボス攻略会議のままの空気だとあれでしたので(苦笑)。
本作では圏内事件にエギルが出てきません。
エギル「俺の出番がぁーーー!」
はいはい、あんたは黙っててね~。
オリキャラ達を活躍させたいのはみなさんにも分かっていただけると思います。
それでは次回で・・・。
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第百十二話になります。
今回はキリトとアスナがお互いの名前を呼び始める話と・・・・・・。
では、どうぞ・・・。