No.499356

SAO~黒を冠する戦士たち~ 第百十技 圏内事件

本郷 刃さん

第百十話になります。
ついに事件が発生です。

どうぞ・・・。

2012-10-23 08:36:37 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:11616   閲覧ユーザー数:10902

 

 

 

 

 

 

 

第百十技 圏内事件

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

聞こえてきた女性の悲鳴に店内に居たプレイヤー達が騒然とする。

 

俺はすぐさま店から飛び出し、すぐにアスナも続いてきた。そこに、

 

「いやあああああ!!!」

 

再び響き渡る女性の悲鳴。俺とアスナは悲鳴が聞こえた方に全力で駆け出した。

 

どうやら広場の方から聞こえたようで、悲鳴を聞きつけた他のプレイヤー達も向かっている。

 

俺達が広場に辿り着くとそこには……、

 

「なっ!?」

 

「っ!?」

 

一つの建物の二階からロープで首を吊られた一人の男性がいた。どう見てもNPCではなくプレイヤーだ。

 

俺もアスナも思わず息を呑んだ。

 

全身を包み込むフルプレートのアーマーとヘルメットを装備している。

 

この世界では窒息死というものはない。だが、この世界での死を表すものが男性の胸にあった。

 

それは……深々と突き刺さったいくつもの逆棘がある赤黒い槍だった。

 

そしてその槍が突き刺さった部位からは未だに赤い光が噴出している。

 

それはダメージを受け続けている証だ。

 

《貫通継続ダメージ》という一部の貫通(ピアース)系武器に付加されている特性なのだ。

 

つまり継続して受けているダメージはそういうことだ。圏内でダメージを受けるなんて!

 

「早く抜くんだ!」

 

驚愕から目を覚ました俺はすぐさまそう叫ぶ。

 

俺の声を聞き、男性もすぐに槍を抜こうとするが逆棘と恐怖のせいで力が入らないせいなのか思うように抜けないらしい。

 

「チッ!」

 

「ちょ、キミ!?」

 

俺は全力で駆け出していく。アスナは何事かと声を掛けるが時間が無いので無視する。

 

力の限り足に力を込めると男性の吊られている建物の壁を………走り抜ける。

 

システム外スキル《壁走り(ウォールラン)》だ。だがこれはほんの五秒程度が限界だ。

 

俺はその短い時間で出来るだけ男性に近づいてから、自身の剣を抜いて一気に飛び上がり、

 

―――ズバンッ!

 

ロープを切った。だが、男性が落ちていく途中に何かを見てから、

 

―――パキャァァァァァン!

 

砕け散った。俺は呆然としながら地面に着地した。

 

広場に集まったプレイヤーからは悲鳴が上がったり、どよめきが起こる。

 

俺はすぐに我に返り周囲に指示を出す。

 

「アスナ、建物の中を! 他の皆は決闘(デュエル)のウィナー表示を探すんだ!」

 

「わかったわ!」

 

圏内においてプレイヤーが死亡する条件はいまのところただ一つ、

決闘において『完全決着モード』で相手を下すことだけだ。

 

そして勝者には勝利(ウィナー)表示が現れるので、そいつが犯人となる。

 

その表示が現れるのは決着後の三十秒間だけだ。

 

俺の指示の意図に気付いたプレイヤー達が周囲を見渡すが発見の声は上がらない。

 

俺も目を凝らして探してみるが見つからない。もう二十秒は経つ。その時建物に入ったアスナがテラスから現れた。

 

「中には誰もいないわ!」

 

「くっ、ウィナー表示は見えるか!?」

 

「だめ、見当たらない! システムウインドウもないわ!」

 

バカな、こんな事がありえるのか。『アンチクリミナルコード』有効範囲内において、こんなことが。

 

「三十秒……経った…」

 

一人のプレイヤーから発せられた言葉に、俺は手の平を握り締めるしかなかった。

 

 

 

俺は広場に集まった人達に留まってもらい、加えて問題の建物の入り口に誰も通れないように塞いでもらっている。

 

建物の中の部屋全てを《索敵》スキルと目視で確認するが、誰も見当たらない。

 

唯一居たのはNPCだけだった。俺は最後に問題の部屋へと入る。

 

そこにはアスナが居たのだが、顔色が悪いのが窺える。

 

「建物の中には誰も居なかった。外のみんなには残ってもらっている」

 

「そう…」

 

彼女が短く答えた。ショックを隠せないでいるのがわかる。かくいう俺も強張った表情を隠そうともしないが。

 

「部屋の状況は…?」

 

「うん、これを見て…」

 

部屋にはロープが括りつけられたテーブルがあり、確認したところ『固定アイテム』のようだ。

 

これを使って男性を宙吊りにしたのはわかる。だが理由が分からない。

 

「相手を殺すつもりならこんな事をしなくてもいいはずだ。見せしめのつもりか?

 いや、そもそも決闘であるなら必ずウィナー表示が現れる。

 それが表示されないという事は決闘ではないのか…?」

 

「そんなこと有りえないわ! 圏内でHPにダメージを与えるには決闘を行うしかない。

 ましてや0にするには『完全決着モード』にするしかないのよ!」

 

彼女の言う通りだ。俺とてそう思いたい。

 

「だが、現にこうして決闘以外の方法らしきものでPKが行われた。

 もし『圏内PK技』のようなものを見つけて行使したというのなら、対応を考えないといけない…」

 

「……貴方の言う通りね。これが広まればまた犠牲者が増える。仕組みを見つけて対処方法を考えないと…」

 

俺の言葉に賛同するアスナ。

 

「決まりだな。俺も今回のことは見過ごすつもりはない」

 

「なら、解決まで協力してもらうわよ。それと、昼寝の時間はありませんから」

 

そう言ってアスナは右手で握手を求めてきた。

 

「寝首をかかれるかもしれないんだ。さすがに遠慮するさ」

 

俺は笑みを浮かべながらその握手に応じた。

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

オリジナルシステム外スキル

 

《壁走り(ウォールラン)》

数秒程度だが壁を走ることができる。筋力と敏捷力の高さが問われる技術。

 

 

 

 

 

後書きです。

 

キリトさんが超人技を発動したw

 

けれどドラゴンとの戦いで異常な高さまで跳び上がる能力値ですから、充分ありえると思いました。

 

それではまた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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