No.497659 IS-インフィニット・ストラトス- きゅー組物語 172012-10-18 22:50:50 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:950 閲覧ユーザー数:918 |
Side アルセリア
私には、兄が居た。
享年13歳。
そう、もうこの世に居ない。
交通事故によって、すでにこの世には居ない………
今でもはっきりと思い出せる。
優しい声、暖かな笑顔。
私の大好きな兄さん。大好きな、大好きな兄さん。
曇り空の日だった。
子猫を守るために道路に飛び出し、兄はこの世を去った。
押しつぶされるような暗い空の下、兄の頭から流れ出る鮮やかな赤い色を今でも覚えている。
泣きながら顔を覗き込む私の頬を、兄は微笑みながら撫でてくれた。
少しずつ消えてゆく体温。
少しずつ消えてゆく力。
少しずつ、少しづつ、涙で見えなくなる兄の笑顔。
見えなくなるのが悲しくてまた涙を流し、兄が消えてゆくのが悲しくてもう一度涙を流した。
アスファルトに染みてゆくその赤い血は、道路の水溜まりと交じり合って何時しか消えていった。
兄の葬儀は、ただただ静かに進んでいった。
いつもならば聖歌隊の優しい声で満たされる教会も、その日だけは母の泣き声が響くだけだった。
いつも厳しかった父は、表情を変えずに兄の入った棺を見つめていた。
不意に、親戚が父に声をかける。
「この度は………」
「………本日は、息子のためにありがとうございます。………猫のために死ぬなど、本当に親不孝な子で」
………違う。
違う
違う違う!!
兄は、立派な人だ!!!
小さな命が失われようとする状況に、動けずには居られない優しくて立派な!!!!!
その言葉も、父が初めて私に見せた目じりに幽かに浮かんだ涙とともに消えて行った………
それから、幾許の時が流れて
リビングで気だるげにテレビを見ていたときに、私は運命の出会いをはたした。
彼の名は出雲春告。
東の果ての、良く知らない国。
日本の消防士。
猫を助けるために、兄は命を。
彼は職を失ったらしい。
司会者が彼を笑い飛ばすブラウン管越しに、私は叫んでいた。決めていた。
お前が………お前が笑うその行為がどれだけ尊いものか!!!
どれだけの胆力を持ってなされる行為なのか、教えてやる!!!!
それまで進学する気だった、首都の進学校を蹴って私はIS学園特別学級への進学を決めた・・・・・・・・・
私が、今度こそ兄を守る。
守る守るまもる、あらゆる敵から守る守る守る!!!!!!!!!!!!
入学から暫く…………
出雲春告に、不順異性交遊の疑惑が持ち上がった日。
兄の面影を夢で見た一人の少女が、心に改めて誓いを立てた日だった。
Tweet |
|
|
2
|
0
|
追加するフォルダを選択
最近、ちょっと急がしめ?