Side:Fate
結論から言えば、あの時なのはは奇跡的にも意識はあった。
雪の中に会った天使みたいな恰好をしていた彼女の言葉はそのおかげで余計にわけわからなくなっていたが、それよりもまだなのはに意識があるという事だけで私とはやてはかなり喜んでいた。
シャマルが言うには、本来あの出血量からしてなのはが生きている可能性はゼロであったが、なのはの生命力にはさすがにシャマルも驚くレベルだったらしい。今は病院で意識が回復するのを待っているだけだが、なのはの病室はどういうわけか立ち入り禁止となっており、シャマルまでもが病室内に入れないようにされて、さらにはなのはの担当医師までもはずされてた。
なので病院に来たところでなのはの様子をみる事は出来ないし、なのはが今どんな状況か私たちの回りで誰も分からなかった。
そんなある日の事、突然はやてが私家にやって来て何一つ連絡なかったので、玄関を出て誰か確認した時に驚いた。
「はやて? どうしたの急に?」
「ちょっとフェイトちゃんと話したいことがあってな。家の中入ってええか?」
「別に構わないけど……」
はやての真剣そうな顔を見る限り、なにか嫌な予感が私の中によぎった。
はやてがそのような顔をするという事は戯言でもなくて真面目な話だと分かるし、今の状況から察するになのはの事と関係する内容だとも思えた。
とりあえずはやてを中に入れ、リビングにあるソファーに座らせて飲み物を用意しようとする。
「いや、飲み物はええよ。すぐに仕事で行かないといけへんから」
「はやてがそう言うのならば……」
はやてに言われた私ははやてから少し離れたところに座り、ここに来た理由を聞こうとする。
ちなみにヴィヴィオだが、今日は普通に学校があるので家には今いない。
「それで、どうして私の家に来たの?」
「フェイトちゃんも分かっているはずだと思うけどな。どうして、なのはちゃんとの面会謝絶しているのかという事に」
「……確かに、それについては疑問に思ってた。確かになのはは重症だけど、面会謝絶する必要はどこにもないからね」
はやてが言ったことは私も思っていた。なのはを面会謝絶にする理由はどこにもない筈なのに、なのはの病室にはを主治医などの関係者以外しか入れないというのはあまりにも異常だった。
なのはが何かの感染症には掛かっているとは思わないし、意識不明の重体だけだと思っていたのでそれを考えると余計におかしく思えた。
「その通りや。どう見たってもおかしすぎる。まるで何かを隠したいかのように思えるんや……」
「…………」
絶対に何かあると私は思っていたが、はやての言葉を聞いてある事を思い出した。
あの雪の中に突然と私の前に現れた彼女。どこか悲しそうな顔をしていて、それでも何かを決意していたように思えた。
彼女が一体何者で、どうして私の事を『
ひょっとすると、彼女は今起きている何かを知っている可能性も高い。彼女がなのはを死ぬ寸前までに殺そうとしたという考えもあったし、見逃せる人物では今のところなかった。
「……フェイトちゃん? どうしたんや?」
「あ、ごめん。ちょっと別の事を考えた」
「ならええけど。それでどうする? もしかしたら今の状態を維持していたらなのはちゃんの身があぶないかもしれへんし」
「けど、何とかする方法あるの?」
「それは分からへん。とりあえず上層部にどういうことが聞いて許可をもらえるようにしてもらうとは考えているんやけど」
はやてはそう言ったが、私にはそれでなのはの面会が可能になるとは全く思えなかった。
正直に言えば、今の管理局を信じることは出来なかった。あの時彼女が言った、なのはが倒れている所で疑問に思わなかったって言う事から、私が出した答えである
あの時彼女はその事に関して肯定も否定もしなかったが、それでも私は自分があの時出した答えが本当ではないかと思ってしまっている。証拠などはないが、私が向かった時には他の管理局員がいなかったことに関しては疑問しかなかった。
「はやて、念のためそれ以外の方法は考えられない? それだけだと心配だから……」
「せやな。もし断られたらの時の事も考えておきたいし、場合によってはなのはちゃんがいる病室へ潜入するという事も考えたが……」
意外にはやてもとんでもないことを考えていたらしく、さすがにはやてもなのはの事が心配で仕方ないのだろう。面会謝絶の為にどんな状況になっているか私たちには分からないから、私と同じように尚更心配になっていたのだろうと私は思った。
っていうか今の冗談なのか本当なのか全く分からなかった。冗談にしては顔が真面目すぎるように思えたし、本当だとしたとしてもはやてがそんな事を真面目に言うとは思えなかった。
「……今の冗談だよね?」
だからついはやてにそう返していた。冗談だとは思いたいが、余りにも冗談には聞こえてこなかったので確認のために聞き返した。
「ん? まぁ半分冗談で半分本気やけど?」
「……さすがにそれは最終段階にしよう? 今は出来ることをしてからにして」
「せやな。私も半分本気とは言ったけど、さすがに全てやって他に手段が無くなってからの話や。とりあえずなのはちゃんの面会を何とかすることについては後で考えておくから、フェイトちゃんも何か考えておいてくれや」
「分かった」
「そんじゃあ、私はこれから仕事があるからもう行くな」
はやてはソファーから立ち上がり、玄関へと向かって行ったので、私は玄関の前まで送っていくことにした。
「それじゃあ、明日か明後日辺りにまたフェイトちゃんの家に来るからな」
「分かった。はやても念のため気を付けてね」
「分かってる。それじゃあ行くな」
そしてはやては玄関のドアを開けて、外へと出て行くのであった。
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新暦85年、高町なのははある任務の途中で死亡する。
任務は全て嘘であり、全てはなのはを殺害するための一部の管理局員による計画だった。
なのははその計画通りに殺されるが、その任務に向かう途中に偶然何故か落ちていた拾ったジュエルシードによって、なのははタイムリープをするのだった!!
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