突然目の前に現れた人物、シグナムの事をオリヴィエは知っていた。
ミハエル・ミストルが居たとき、
シグナムに関しては剣の相手をしてもらったこともあった。だが今のシグナムはそのような思い出を無かったように感じられ、唯オリヴィエに向けて敵意が感じられるだけであった。
――どうやら、様子を見る限り今まで居た
少し悲しい事であったが、オリヴィエは目の前のシグナムを見て認めるしかなかった。プログラムを書き換え、主の命令に唯従うだけの守護騎士へとなってしまったのだとオリヴィエは思ってしまった。たとえ守護騎士だろうと、オリヴィエは一人の人間として扱っていただけに悔しかった。
だけど戦わないわけにはいかない。本来ならば仲間の所に戻って状況を確認するべきなのだが、そう簡単に目の前の彼女がしてくれるとは思わない。自分の部下のためにもオリヴィエはシグナムと戦うと決意する。
「……できればこのような事であなたとは戦いたくなかったが、背に腹は代えられないな」
「……? 何を言ってるんだ貴様は?」
「独り言だ。今のあなたが知る必要もない。それでは行くぞ」
刹那、オリヴィエは光の粒子を収束させ、魔剣ティルヴィングを右手に持つのだった。
シグナムも先ほどからずっと持っていた剣、レヴァンティンを構え、オリヴィエの攻撃に備えるのであった。
「神なる剣同士の戦いは考えてみたら初めてだったな。私もシグナムも今まで神なる剣を使った戦い方はしてなかったしな」
「だから、貴様は先ほどから何を――」
シグナムから見て意味深げに聞こえていたオリヴィエの言葉に問おうとしたが、その前にオリヴィエが一気にシグナムの間合いまで詰め寄り、ティルヴィングを振りかざした。
それを見たシグナムはオリヴィエに問いている場合ではないとすぐさま察し、レヴァンティンで防ごうとすぐさま腕を動かす。
ティルヴィングとレヴァンティン同士がぶつかり、神なる剣が衝突したとほぼ同時に、オリヴィエは違和感を覚えた。
――っ!? レヴァンティンがここまで強くないものなのか!?
そう、神話に出てくる剣としてはとてつもなく弱く感じられ、あり得ない事に思えたのである。
一体レヴァンティンに何があったのかとオリヴィエは思うが、すぐにシグナム達の状況を見てなんとなく理解し、一度シグナムから距離を取る事にした。
「……なるほど。プログラムを変えた影響なのか、もしくはレヴァンティン自体がプログラムを変えられた事によって力を発揮できなくなったのかということか」
後者であればオリヴィエが持つティルヴィングであれば特に問題なかっただろう。ティルヴィングは魔剣であるし、レヴァンティンみたいな魔法の剣とは違い、たとえ何があろうと力はそのままであっただろう。
とりあえずレヴァンティン本来の力が発揮できないとなんとなく理解したオリヴィエはティルヴィングを粒子化させて使わないことにした。あのまま戦えばあっという間に自分が勝ってしまうだろうし、別に使わなくても勝算は自分の方にあるとオリヴィエは思ってた。
「どうして剣を使わない」
「……神なる剣を今のような状況で使うのは、穢れると思ったからだ。あのまま戦えば一瞬のうちに勝負はついてしまうし、何より
「大した余裕だな。そう簡単に私が倒されると?」
「あなたの力は前から強いということは知ってる。それを分かっていながらも私が勝てるという勝算があるのでなっ!!」
一瞬にしてシグナムの背後に回り、オリヴィエに攻撃を仕掛ける!!
だがシグナムもすぐに気づき、後ろに振り返りながら一歩後ろに下がりながら防ごうとする。
シグナムは最初素手での攻撃だと思ったが、レヴァンティンになにか金属をぶつかる音が響いたときに動揺が走った。
だがその動揺は一瞬で、直後に顔を思いっきり吹っ飛ばされるぐらいに殴られた。
何度も地面にぶつかれば跳ね、また地面にぶつかれば跳ねを何度か繰り返し、ようやく止まった。
「長剣を使うのは本来の戦い方ではないとは言ったが、誰も短剣を使わないとは言ってない。前のあなたならばそれを知っていたはずだが、その記憶も無いようだな。まぁ、今のはレヴァンティンを短剣で受け止め、そのまま受け止めていた短剣を引いて、あなたが剣を振りかざすよりも早い速さで顔を殴ったと言うべきだが」
オリヴィエの両手には二つの短剣がそれぞれ握られており、先ほどは一度右手に持っている短剣でシグナムを攻撃しようとし、それをシグナムがレヴァンティンで防いだところで、剣をレヴァンティンから離し、右手をシグナムから見てレヴァンティンの左側を通って殴ったということだ。
そのとき短剣を防いでいたレヴァンティンは短剣が離れた事によってそのままオリヴィエの方へ振りかざすようになるのだが、オリヴィエにレヴァンティンあたる前にシグナムを吹っ飛ばした為に、オリヴィエに当たることはなかった。
シグナムは立ち上がり、レヴァンティンを構えながらもオリヴィエに向けて話しかけた。
「……なるほど。それが貴様の本来の戦闘スタイルか」
「そういう事だ。さて、そろそろ部下の方が心配だし、終わらせるとしよう」
「それについてだが、彼らについては被害を与えていない。足止めとして私の仲間が止めているかもしれんが、殺すつもりはない。今回の狙いは貴様のみだと言われているのでな」
「それはどういう――」
刹那、オリヴィエの胸から腕が現れ、リンカーコアを抜き出されていた。
オリヴィエはすぐに事態を察し、完全に仲間がいるという考えが抜けていたことに今更ながら気づいた。
「くっ、戦いに夢中になっていたことが失態だったかっ!?」
「大丈夫だ。いつもならば貴様を殺すように言われているのだが、主の命令で生かしておけと言われておる。だが徴集はさせてもらうけどな。本当ならば正々堂々戦いたかったというのは私にもあったが、主の命令だから仕方ない」
「ぐっ、ぐあぁ」
そしてオリヴィエはリンカーコアを闇の書に徴集されていき、徴集されると意識を無くしてその場に倒れるのだった――
Tweet |
|
|
1
|
0
|
追加するフォルダを選択
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
続きを表示