改訂版第9話
烏丸との最終決戦の戦後処理を一刀たちが、必死になりながら終わらせ、漸く手に入れたしばしの平和という休暇を過ごしていると・・・
「白蓮からの呼び出し?」
「すぐに玉座の間に来てほしいと」
「了解。わかった伝令おつかれさま」
恋・蹋頓・楼班と共に中庭でのんびり過ごしていた一刀の元に、白馬隊に所属している兵士が白蓮からの命を伝えにきたらしい。一刀は自分に寄りかかるように寝ている3人の肩を順番に叩いて目を覚ませ、白蓮から呼ばれているという旨を伝え立ち上がる。
玉座へ向かう途中に星、翔蓮とも合流した一刀たちが玉座へ入ると、白蓮と軍師組がすでに待機している状況。4人は先に話し合いを始めていたようで、一刀たちが入ってきたのを気が付いた白蓮が一刀に声をかけた。
「北郷に、恋、星、蹋頓たちも来てくれたみたいだな」
「公孫賛様、何かあったのですか?」
子どもモードから軍師モードに切り替わった楼班が、代表して白蓮へ質問を飛ばす。蹋頓と楼班の2人は合流した際に、戯志才を除く全員の真名を預かった。
しかし、楼班がいうには、烏丸での真名は成人する際に両親から与えられるものなのだが、お互いの両親が自分たちが成人する前に亡くなってしまい、まだ決まってないとのこと。そのために「真名がない私たちはいただくわけにはいかない」と聞かない楼班を一刀が宥めた結果。自分たちの真名が決まった際に改めて交換するということで、今、義兄となった一刀が2人の真名を考え中だったりする。
「黄巾族の勢力が徐々にだけど、広がってきているらしい。音々詳細をもう一度頼めるか?」
「了解なのです。張角を首領とする黄巾族は当初、1000程度の集団だったのですが、最近どういうわけか、その集団が確認されるたびに増殖しているという報告が上がってきたのです。現在幽州の各町周辺での目撃情報はないものの、時間の問題と音々たちは考えていますです」
その後、黄巾族に対する防衛等に関して意見を交わし、各町の城壁の修理強化、監視体制の強化等の意見が採用され、白蓮の名で幽州の各町へ伝達が走っていくという手筈になった。
「北郷どうした?今は急ぎの仕事もないよな?」
「白蓮に話しておきたいことがあってね」
軍議があったその日の夜。白蓮の元に酒と少しのつまみを持った一刀が訪ねてきた。最初は別方向を期待したりした白蓮だったが、どうも様子がおかしい。しばらく酒を飲んでいたが、気になって白蓮が訪問の理由を尋ねると一刀が1つ1つ確かめるように話し始めた。
Side Kazuto
黄巾の乱が本格的に始める兆候を音々音が手に入れたということは、月たち董卓軍が洛陽へ移動時期が来てしまったということ・・・それはつまり、白蓮との別れの時が来たということでもある。
「白蓮、前にオレに『どこまで未来が見えている?』って訪ねてきたことがあったよな」
―――前の世界と同じように、名声もなにもない俺たちを迎えてくれた
「それに関する答えとして不思議な物語を話そう」
―――決してなにか特別な力を持っていないが、この世界では珍しいオールマイティーな力をもって
「あるところに1人の少年がいました」
―――能力で劣っていることを口では愚痴言いながらも、陰では努力を惜しまない
「その少年は遠い遠い場所。2度と自宅に戻れないほど遠い場所で、3人の少女たちと出会い、語り合った少年は彼女たちの夢を手伝っていくことにしました」
―――ここから先、多くの苦難が彼女にも待ち構えていることがわかっているのにもかかわらず・・・
「彼女たちの夢をかなえるために、少年は彼女やその仲間共に、多くの戦場を駆け、そして愛し合いました。でも・・・最後の強大な敵との戦いで少年は、矢をその胸に受け、愛する女性の腕のなかで死んでしまいました」
―――でも世界の闇と闘う少女たちを助けるために自分たちは進まないといけない
「でも神様は、その少年にもう一度生きる機会を授けました。でも生き返る場所は、今まで生きていた世界ではなく、少年のことを誰も知らない別の世界という条件。それでも愛する女性たちにまた会いたいと願った少年は神様の条件を飲むことにしました・・・」
「北郷・・・お前・・・」
Side Pairen
私の中で今まで北郷がしてきたことがある1本の筋で繋がっていくのを感じた。一刀や恋がいない前提で作られていた砦や監視体制、軍の強化。私自身「一刀たちが幽州を離れるのかもしれない」というのは、薄々感じていたが、それは勘違いではなかったと私は今、理解することとなった。本当なら引き留めるべきなのだろうが・・・
「ああ、もう。いろいろ言いたいことはあるけど・・・仕事ができるお前たちが離れるのは辛いけど、今まで楽させてもらったし、翔蓮たちと元々切り盛りしてきたから、幽州は私たちに任せてくれよ」
目元に溜まった涙を袖で拭き取った私は、彼を心配させぬようにできる限りの笑みを浮かべて話しかける。
「でも困ったときはいつでも私を訪ねてくれよ?絶対に助けてやるからな!」
彼がこれからどんな危険な道を走ろうとしてるのかは分からない。でも少しでも彼の助けになれるのなら、私はどんなことでもしよう。それが私たちを助けてくれた北郷一刀という少年への恩返しという物だろう・・・。
後日、渤海南側城門にて・・・
「北郷、恋、音々音、風、戯志才。皆のおかげで幽州はここまで発展できたありがとう」
一刀たちの幽州出立に合わせて、風や戯志才も出立することになり、見送りに白蓮、星、翔蓮を始めとして、多くの兵士や民が集まっている。
「白蓮様。皆さんに通行札は渡しました?」
「あ・・・忘れるとこだった」
そういうと懐から細長い7枚の竹簡を取り出し、1人1人に手渡していく。
そこには通行許可札と書かれており、下には公孫賛の名前と印が押されている。
「それは通行札といって、どこかの街、関に入るときの手続きが簡単になるから、使ってくれ」
各自が白蓮にお礼や、今後のことを話した後、ついに別れの時間がやってきた。
一刀たちが赤龍に大きな馬車を付けたり、黒龍に荷物を積み終えて戻ると、なにか白蓮が星に背中を押されたり、耳打ちされたりして顔を真っ赤にしている。その光景になんとなく予想ができた軍師組と、まったく予想ができてない武将組(一刀含む)。
最後は星に背中を蹴られた白蓮は前によろけて一刀の傍へ・・・
「ああ、もう!北郷!すこし屈んでくれ!」
自棄になっている白蓮は近くにいるのにもかかわらず叫ぶ。その声に一刀は驚きながらも言うとおりにすると、突然視界に白蓮の顔が近くに迫り、お互いの唇が一瞬触れ合った。
「いまは戦乱の世の中だからな!言っておけばよかったとか後悔したくなかっただけだからなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
頭から蒸気がでるのかというぐらい顔を真っ赤した白蓮は猛スピードで城へ向けて駆け出していったのだった。
その光景を見ていた音々音が一言。
「やっぱりこの世界でもタラシなのです・・・」
白蓮の告白(?)という劇的な幕切れで幽州を出立した一刀たち御一行。
一刀が操る赤龍につながれた馬車の中には軍師組と烏丸組。黒龍には恋が乗り、一路陳留を目指す。魏の覇王となる曹操の始まりの街であり本拠地でもある陳留は本来、風や戯志才が目指していた場所でもあったために護衛も兼ねて一刀たちも同行することになった。
袁紹(麗羽)が治める河北を越えて、曹操領と袁紹領との国境にたどり着いたのは幽州出立から約2週間が経過した日の朝方。商人たちや軍が使用する通行道を進む一刀たちの前に曹操領への入り口になる関が見えてきた。早朝というのにもかかわらず関の門には多くの商人が列を作っている。その列の最後尾に一刀は馬車を停止させると、一刀たちに気が付いた1人の若い兵士が駆け寄ってきた。
「名前と人数、目的地は?」
「私の名は北郷一刀。人数は7名。目的地は陳留だ」
一刀の言葉を竹簡に記載していくその兵士は、一刀の名前を書いた後固まった。それもそのはず「北郷一刀」という名は、すでに各地に広がり「天の御使い」とか「飛将軍」「白銀将軍」などなど異名が轟いている。しかし、その者だったとしても職務を放棄するわけにはいかないと、その兵士は行程を進めていく。
「通行札は持っているか?」
「ああ、7名分、発行元は幽州の公孫賛様だ。確認を頼む」
兵士は一刀から手渡された札を恐る恐る見ると、その札には公孫賛の名と印も押されており、慌てて上司の元に札を見せに走る。
「隊長!飛将軍が!御使いが!ど、ど、どうしましょう!!?」
「落ち着けバカもの!お前が持っているのが通行札なのだろう?儂にも見せてみろ!」
若い兵士が所属している部隊の隊長である初老の兵士は、慌てまくっている若い兵士から通行札を受け取ると、本物かどうか確認するために半板を当てて印が本物であることを確認する。本物であると判断した初老の兵士は、立てかけていた剣を腰に掛けて、札を持ち一刀たちの元へ向かう。
「北郷殿。確認取れました。通行を許可します。別の兵士に誘導させますので、その指示に従ってくだされ」
通行札を受け取りながら一刀は初老の兵士へ笑みを浮かべながら礼をいう。
「了解です。お勤めご苦労様です」
初老の兵士が前もって呼んでおいた別の者が一刀たちの馬車を誘導し、大きな関の門を一刀たちは通過していくのだった。
From 陳留城
紫色を基調とした服に、両頬のあたりで金色の髪をカール状にまとめている美少女。彼女が後の魏を立てる曹孟徳。真名を華琳。この日は彼女にとってめずらしい非番の日で何をして過ごそうかと考えていたときに、彼女の部下の1人である荀彧(真名は桂花)が部屋を訪ねてきた。
「華琳様今、すこしお時間はよろしいでしょうか?」
「構わないわ、入りなさい」
華琳の言葉を聞いた桂花。彼女の最大の特徴である猫耳フードは今かぶっておらず下されている。その手には先ほどの朝議ではなかった別の書簡が握られていた。
「なにか黄巾族に動きがあったのかしら?」
「いえ、そうではありません。袁紹側の国境警備の者から興味深い報告がありましたのでお伝えに参りました」
「へぇ~桂花がそういうのは珍しいわね。その報告とは?」
「はい、報告によると『飛将軍』北郷一刀とその一行が陳留を目指し入領したと」
一刀の名前が出た時、一瞬華琳の表情が変わったことに桂花は気が付かなかった。
「北郷・・・一刀・・・」
「幽州の公孫賛の通行札を持っていたという報告もあり、本人である可能性は非常に高いかと」
「わかったわ。こちらに向かってきてくれている以上私たちから行動する必要はないわ。桂花悪いけど、陳留の警備の方にこの情報を流してくれるかしら?陳留に来た場合は城へ案内するようにと」
華琳の言葉をうけて桂花は一礼の後、華琳の部屋を離れた。華琳は桂花が離れたことを確認すると鍵を閉めて寝台に顔を埋める。
「一刀・・・」
その頬には一筋の涙の線ができていた。
あとがき・・・
余裕があったのですごく早い更新。
4500文字ぐらい書いたけどいつもより、苦労なく書ける気がする。全然物語が進んでない感じがするけど、改定前が速すぎたしいいよね!ってことで許してくだしゃい。
さて今回は幽州編終了と黄巾党編開始の回になりましたので、別れと出会いといった感じになっています。
まず幽州編から、当初の予定では一刀への好意を白蓮は告げずに一刀たちが幽州から離れた夜に星に涙ながらに語るといったパターンも考えましたが、顔真っ赤して叫びながらのほうが白蓮らしいかなとおもってこのような形にしました。
改訂前とは違い星は一刀たちのことを知った状態で、劉備軍に所属することになります。予定では反董卓連合で一刀と出会います。
次に黄巾党編序章ということで、漸く我らが覇王華琳様の登場です。改訂前では、華琳は反袁紹連合の後に一刀たちと戦い、敗北し仲間になりましたが、改訂版は違う形を取る予定で、この段階で一刀とのかかわりを持たせました。
華琳、そして風はこれから物語にかなり関わってきますので、お楽しみに。
|ω・`)・・・楼班と蹋頓の真名考えないと・・・
|゚Д゚)チラッ
|ミ
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悲しい別れと新しい出会い。一刀たちは新たな戦いの場へ身を移そうとしていた・・・
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第1話の変更はありません。
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