改訂版第10話始める前に・・・
蹋頓と楼班の真名が決まりましたので、それに関する短編になります。本篇はこの拠点の後になります。では、ゆっくりしていってね!
陳留への旅の途中、それなりに大きな街に宿泊することができた一刀御一行。それぞれが買い物等で出歩いている中、宿屋では一刀と恋の2人が1枚の紙を見ながら険しい表情をしている。
「真名は、一生使う名前だし・・・中途半端にするわけにもいかないよな・・・」
「・・・一刀がんばる。恋も一緒に考えるから」
2人が話し合っているのは、蹋頓と楼班の幼馴染コンビの真名。結局ドタバタしてしまい幽州に居る間に決めてあげられなかったことを悔いている一刀は、「この旅路中に必ず決める!」と決意しているのはいいのだが、1人ではいい名前が浮かばない。そこで天性の直観力を持つ恋に手伝いをお願いした。ちなみに、恋が蹋頓たちの真名を一刀と一緒に考えていいかどうかを聞きにいった際の2人の反応は・・・
「呂布ねぇちゃんも考えてくれるの?」
「・・・一刀の弟ってことは私の弟でもあるから、ダメ?」
「ううん!呂布ねぇちゃんとアニキが考えてくれるのか・・・へへっ!やった!おーい、楼班~!呂布ねぇちゃんもボクたちの真名考えてくれるってさ~!」
といった感じ。
2人の許可を取ったことで後は決めるだけ。しかし、いろいろな候補は上がってくるものの、いいのが決まらず、真名決定は難航していた。すると、「ぐぅー」という恋の腹の音が昼の時間を知らせてくれた。
「飯にいくか。恋」
「・・・それがいい。お腹減って考え事ダメ」
一刀は恋を連れて宿を出て、近くの定食屋に入り、適当に注文(適当といっても店員が驚く量ではある)して席に座った一刀たち。街のなかでもかなりの人気店のようで、店の中は繁盛しており、親子で来ている者や休憩の兵士など、多くの人でにぎわっている。その様子を見ていた一刀が何気も無くつぶやいた。
「家族か~、ああいうのは平和って感じでいいな。な?恋」
その瞬間、戦闘時以外はのんびりな恋が突然立ち上がり、一刀の手を握った。突然の恋の行動についていけない一刀は、その迫力に圧倒されるばかり。
「・・・一刀!それ!蹋頓と楼班は家族!一刀の『刀』という文字を使えばいい!」
「「アニキボクそれがいい!(ボクもそれが・・・)」」
「おわぁ!!」
恋の勢いに圧倒されていた上に、突然現れた烏丸コンビに腰が抜けかける一刀。そこに飛将軍と恐れられている男は存在せず、まるで妻と子に攻め寄られているようである。なんとか深呼吸をして、落ち着こうとしている一刀をおいて、覚醒している恋がどんどん話を進めていく。
「・・・蹋頓は『直刀(なおと)』、楼班は『刀真(とうま)』・・・ダメ?」
「ボクが直刀で・・・」
「ボクの真名が刀真・・・ありがとうございます!呂布姉さま!」
「・・・ん。刀真。真名が決まったのだから恋のことは恋とよぶ」
「あ・・・はい!恋姉さま!」
「恋ねぇちゃん!ありがと!」
念願であった真名を得た2人は、うれしさから恋に抱き着き満面の笑みを浮かべ、恋もそれに応えるように2人の頭を撫でてやる。大声で騒いでいたこともあり周囲(店内)の人々にも聞こえていたらしく、「3人」を囲むように祝福の拍手を送るのだった・・・。
気が付けば「3人」は店の真ん中でほかの客を巻き込んだ祝賀会ムードに入る中、隅っこでそれを見つめる一刀。
「あれ・・・おれは・・・?」
その日の晩、出番や役目など、恋にすべて持って行かれた一刀は音々音に慰めてもらうのでした。
「音々~・・・」
「ああ、もう、分かったのです。一緒にいてあげるですから、泣くのをやめるのです」
改訂版第10話
長い道程を越えて陳留に到着した一刀たち。入城の手続きのために馬車を恋にまかせ、一刀は先行して城門横の入城管理所に向かう。
「陳留に入城したい。7名と馬2頭」
「7名と馬2頭っと・・通行証あったら見せてもらえますか?」
「これを」
「・・・・!飛将軍の北郷一刀!?」
「ええ、まぁ、そのように呼ばれてはいますが・・・」
さすがに一刀も2回目である。こうなることは読めていたので落ち着いて対応する。
だが、さすがの一刀も、陳留の城主である曹操に自分のことが伝わっており会いたがっている・・・なんて状況になっていることは知るわけもなく・・・
「曹操様から北郷様が陳留に来られた際、城へ案内するように命じられております。」
「え!?え~あ~申請時も出したが、仲間が7人いるんだが・・・」
「同行者の方々も一緒でもかまいません」
「あ、はい」
Side Kazuto
そんなこんなでオレたち7名は陳留城の玉座へ向けて案内されています。元々曹操の元に士官する予定であった風と戯志才にとって、願ってもない機会になったと喜べる部分と、漢王朝によって敵対国である烏丸に所属していた直刀、刀真の存在を知られるのは大変まずい。一応案内の兵士にはオレが助けた双子の兄弟と説明してあるが・・・
「こちらになります」
城内を歩いていて一番大きな扉の前で案内役の兵士は足を止めた。おそらくこの門の向こうが玉座の間。なにか目に見えない重圧が体にかかるのを感じる。案内役の兵士はすこしオレたちを見回した後、両開きの扉を開き、中へ招き入れる。
「曹操様。『飛将軍』北郷一刀様をお連れしました」
「案内役ごくろうだったわね」
「ははっ!それでは私は親衛隊の仕事のほうへもどります故、失礼いたします」
一度オレたちに礼をした兵士は玉座の間を離れていった。オレと恋を先頭に玉座に座る曹操の元へ進み、膝を立てて頭を下げる。
「『飛将軍』北郷一刀、呂奉先。あなたたち2人の武勇はこの陳留まで届いているわ。ああ、そうそう、この場は王朝の位など気にせず楽にしてくれてかまわないわよ?私の客人として招いているのだから」
前の世界では戦いの場や、交渉の場でのみ顔を合わせた曹操その人。あのときのような覇王のプレッシャーというのは感じられない。緊張していたのだろう軍師勢(音々音を除く)が軽く息を吐き出すのが聞こえてきた。だが緊張を切るには1つ聞かなければいけないことがある。それは・・・
「1つ質問をよろしいか?」
「なにかしら?」
「筆頭武将であるはずの夏候惇殿、筆頭軍師の荀彧殿が不在どころか、曹操殿を守るはずの親衛隊の気配すらありません。これはどういうことでしょう?」
そう、玉座の間には曹操その人しかいないように感じられた。罠だと考えてしまうほど1国の王がいる間とは思えないほどの無防備さなのだ。
「私のこともよく調べているのね。まぁ、その点はいいわ。北郷あなたは、無防備な私を斬ってこの国を乗っ取るつもりかしら?」
口で言っている言葉とは裏腹に、曹操の目には一転の曇りもなく、自分たちが襲いかかってこないということを信じきっているようにさえ見える。しばらく見つめ合った後曹操が視線をずらし、彼女は笑みを浮かべた。
「ふふ、冗談よ。この状況は私が桂花・・・荀彧に頼んだからよ。あなたたちと、ゆっくり話をしたかったから」
「話を・・・?」
「ええ、特に北郷一刀。あなたと・・・」
「え・・・?」
「曹操様曹操様曹操様ハァハァハァ・・・ブハッ!」
「あら~稟ちゃん我慢できませんでしたか~」
曹操の意味深な言葉に反応しようとした瞬間、妄想を我慢できなくなった(らしい)戯志才が盛大に鼻血を吹きだし、存在感を強力にアピールした。さすがの曹操もこれには驚いている。オレも最初見た時は驚きのあまり口が閉じなかったなぁ・・・。気絶した戯志才を客間に運ぶことになり、風、直刀、刀真が付添として玉座を離れることとなった。
「さて北郷。ちょっと話しがあるわ。付いてきてくれるかしら?」
「え、ああ、承知しました」
曹操はオレと2人きりで話がしたいらしい。危険だという音々音を宥めて恋に音々音の暴走を抑えるように頼んだ後、曹操の後ろを付いていく。
「呂布たちにとても慕われているのね」
「ええ、まぁ、長い付き合いですから」
「そう・・・」
曹操と他愛ない話をしていると、ある部屋の前で曹操の歩みが止まった。曹操は、この部屋のカギを取り出すとこちらを振り返る。
「ここから先で見たこと、話したことは他言禁止よ。いいわね?」
「分かりました」
おそらく何か軍事機密の1つなのだろうと決めかかっていたオレだったが、実際に通されたその部屋は至って普通の部屋。部屋を見回っていたオレは曹操が部屋のカギを閉めようとしているのに気が付かなかった。
「ここは・・・」
「私が愛した人が使っていた部屋を、記憶を頼りにできる限り再現した部屋」
カギを閉めた曹操はゆっくりと部屋を歩きながら、1つ1つ部屋に置かれた家具や兵書を、指でさわっていく。その横顔は、かつて覇王としてオレたちの前に現れた彼女ではなく、1人の恋する少女に見える。
「さて・・・北郷。あなたは『導く者』という名の女性に心当たりはあるかしら?」
寝台に腰かけた曹操の口から出た女性の名前。その名はオレを除くと恋と音々しか知りえないはずの情報。そして導く者に出会っているということは・・・つまり・・・
「まさか・・・曹操あんたは前世の記憶が・・・」
「あなたの推測通り、私には1度戦乱を駆け抜けた記憶があるわ」
「・・・ならばどうして敵であったはずのオレをここに招き入れた」
記憶があるということはつまり、オレが劉蜀軍に所属し、自分と敵対していたことは分かっているはず・・・と思い発した言葉だったのだが、その言葉に驚いた顔をした曹操から帰ってきた言葉は想像を軽く超えた物だった。
「やっぱりあなたは私の知っている一刀ではないのね・・・」
「どういうことだ?」
「先ほどの言い方からして、あなたは蜀か呉に仕えていたのではなくて?」
「あ、ああ劉蜀だ」
「劉備・・・桃香の所にいたのね」
曹操がいうのをまとめると、パラレルワールドという言葉が一番しっくりくるだろう。おそらく曹操がいう「私が知っている一刀」とは魏に北郷一刀がいたということ。だからこその「蜀か呉」という言葉になる。考えられることは、『導く者』は他のパラレルワールドにも現れ、この世界に誰かを連れてきている可能性があるということ。
曹操がいた世界での『北郷一刀』は魏に降り立ち、曹操たちを陰ながら支え続けたらしい。未来の知識を知る魏のオレは、本来歴史上では死んでいるはずの夏侯淵を蜀の罠から救い、蜀呉の軍師たちが苦心して考え出した赤壁の策への対応策を曹操に進言し勝利へ導いたが、その代償として戦乱終結の宴の途中に世界から消えてしまったそうだ。それも曹操の目の前で・・・
「・・・消えていく一刀に私は必死に呼びかけたわ。『あなたが死ぬほど悔しいと思う素晴らしい国を作る』『ここに残ればいい』『恨んでやるから』『いかないで』って!」
「曹操・・・」
曹操の声量はすこしずつ大きくなっている。この世界に来てから・・・いや彼女が愛した『北郷一刀』が消えた時からずっと心のなかに溜めこんでいたのだろう。家臣どころか親族にさえも話すことが出来ない悲しみや悔しさ。
彼女にしてやれることは少しでも今その気持ちを吐き出させて受け止めてやること。
だからこそ、肩を震わせているその小さな身体を優しく抱きしめる。曹操は驚いたようだったが、抵抗することなく振り返り涙をためた顔をオレの胸に押し付けてきた。
「一緒にいる・・・ってずっとそばにいるって・・・言ったじゃない・・・ばかぁ・・」
それからしばらく曹操はオレの胸の中で泣き続けるのだった・・・。
あとがきもとい言い訳タイムはっじま~るよ~(´・ω・`)ノ
前話から3週間ほど経過してしまいました。もうちょっとはやく更新できそうではあったのですが、華琳と一刀のところが中々しっくりこなくて書いては消して書いてを繰り返した結果これだけの時間が必要になりました。(いまでもなんか書き直したいという気分はあるけどそれすると∞ループになりそうだったので諦め)
さて今回は番外編と本編という形になりました。
まず番外編(蹋頓と楼班の真名決定イベント)について
2人の真名のネタは第9話のロンリー浪人様のコメントから選ばせて頂きました。ロンリー浪人様ありがとうございます。
当初は一刀が本当に決めていいのかっていう葛藤に襲われているとこに2人登場。2人が一刀に決めてほしいという気持ちを再度伝えて、覚悟を決めた一刀が真名を授ける・・・というパターンの予定でしたが、
「・・・恋と音々音登場しねぇじゃん。ダメボツ」
という変なルール(どんなことでも1話中に2人は必ず登場させると心に決めてます)を適応して、今回の一刀不憫パターンになりました。
次に本編第10話に関して。
改訂版第3のヒロイン華琳と主人公である一刀との出会いとなりました。
第9話のコメントにて予想されていた方もいらっしゃいましたが、今作の華琳は原作魏√の記憶を所持しています。華琳様の能力向上点は記憶持ちの1点だけです。(元々公式チートみたいな存在ですし・・・)
デレ華琳を見たい!という熱烈なコメがありましたので、作者もその声に応えたいと考えていますが、期待せずにお待ちください。
ではでは第11話でお会いしましょう。
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蹋頓と楼班に遂に真名が・・・!そして覇王との出会い。
作者)いつも通りのデフォルトで駄文、稚拙な文章です。生暖かい目でみてくだしゃい。
第1話の変更はありません。
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