◆ 第39話 報告とこれからのこと ◆
海鳴よ! ぬこは帰ってきた!!
どうも、本日管理局より帰還しました、ぬこですよーっと。
勿論、ぬこだけじゃなくてちゃんとユーノも一緒に帰ってきていますよ? 何か煤けてますけど。
「フフフ……君はいいよね、猫だもの。貞操の心配なんてする必要ないもんね……」
とまぁ、こんな感じなのである。
どうして貞操云々の話になってるか分からないけども、ぬこに貞操の危機がないと思ったら大間違いだよ!
飼い主のマナーとしてペットの去勢とか普通にあるんですよ?
下手したら、オスじゃなくなってしまうのであるよ!
まあ、よく訓練されているぬこは発情なんてしないから、そんなことにはならないがな!
な、ならないったらならないんだからねッ!
「とりあえず、帰ろうか。僕、帰って寝たいよ……」
(強制労働怖いです)
「フフ、60時間働けますか……?(不眠不休)」
(働けないんじゃない、働かないのがぬこ)
なんて、くだらない事を言い合いながら、高町家へと帰還したぬこたちなのだけれども、その高町家を目の前にして、歩みを止めるぬこたちなのである。
言いようのない重圧を感じてこれ以上前に進めない。否、進みたくないのです。
(ユーノ)
「うん……その、なんか今日は冷えるネ?」
(HAHAHA、ぬこなのに鳥肌立ってるぜ)
「僕だって立ってるさ、フェレットなのに……」
(でも、さっきから汗が止まらないんですよネ。冷や汗的な意味で)
「アハハ、もうちょっと外で涼んでから帰ろうか?」
(さっき言ってた事と矛盾してるけど、どちらかと言えば大賛成。じゃあ、ちょっとはやて嬢の所まで散歩に)
くるりと二人して、踵を返したところで底冷えするような声が聞こえた。
「ねぇ、もういいかな?」
『はいぃ……』
振り返るまでもなく、高町家の前にご主人が立っています。
そして、ご主人の周囲が暗くなっています。ダークサイドに堕ちちゃったのですか!?
ふいんき(何故か変換できない、したくない)的にはこの世全ての悪が開放されちゃった。みたいな?
「ねぇ、ユーノ君……?」
「ハイ!」
「なのは式でOHANASHIってどういうことなのかな? かな?」
「あわ、あわわわ……!?」
(そんな事言っちゃったのかよ。ダメだ、全力全壊だな、お前……)
たぶんクロノ辺りに言ったんだろうね。
ご主人に密告するとか、汚いなさすが執務官汚い。
まぁ、ぬこがその立場でも密告するけどね。
「みぃ君もだよ?」
(え?)
「セラスさんから聞いたよ? 私だってまだ会えてないのに先にフェイトちゃんに会っちゃうなんて……ヒドイよね? 私、すごく楽しみにしてたのに」
(ちょ、セラスさぁぁぁん?!)
「レイジングハート?」
『Yes,Ma'am!! set up!!』
がっちりとぬことユーノにバインドを極めて逃げるなんて事はできません。
でも、ユーノはともかくぬこってそんな悪いことしてないよね。
フェイト嬢とお話しただけですよね?
「さ、覚悟はできた? 二人とも?」
『No,Ma’am!!』
「そう、でももう遅いの」
目の前で巨大な魔砲陣が展開され、辺りから魔力が集まって収束していく。
あぁ、スターライトブレイカーですね、分かります。
気のせいかな、フェイト嬢のときより収束してる気がするですががが……!
(なぁ、ユーノ……結界は?)
「大丈夫、展開終わったよ……ただ問題はアレが当たると紙みたいに貫かれそうなことなんだけど」
(そこはぬこがなんとか威力を低減させるけど……防ぎきれないから確実にブチ当たる。覚悟しておいた方がいいと思われる)
「ハハハ、僕生き残る自信なんてないんだけど……?」
(申し訳程度にバリアを展開しておいたら? 無駄だけど)
そうだね。そう言ってバリアを展開するユーノ。
結界も何重にも展開してるのにご苦労な事で。ご主人の事を誉めそやすけども、ユーノも十分優秀な魔導師だと思うの。
などと、ユーノの魔法の精度に感心しているとついにカウンドダウンが始まる。
「お祈りは済んだ? 部屋の隅っこでガタガタと震えながら命乞いする準備はオーケー? でも、命乞いとかしても許さないんだけどね」
『デスヨネー』
ユーノの這った魔法の上からゼストさんに使ったぬこバリア ver.1.01を目の前に展開。
これが、ぬこの切り札だぁ……はぁ、いざ、南無三。
「スターライトォ! ブレイカァァァァァーーーッ!!!」
ああ、ぬこの視界に桃色が満ちる……。
・
・
・
ギニャァァァァァァァーーーッ!?
ウワァァァァァァァァーーーッ!?
ふ、切り札(笑)
でも、結界が破られない程度まで低減させたよっ!!
ぬこ、頑張ったよね?
では、おやすみなさい……。
◆
さて、明けて翌日。
何とか生き長らえたぬこは、ご主人達と一緒に八神家へ来ていた。
まぁ、お察しの通りユーノの無限書庫での闇の書の調査の報告をするためである。
ちなみに、ご主人はフェイト嬢からの伝言を伝えたら機嫌を直してくれた。
伝言と言っても、思ったより早く裁判が終わりそうだって事と、早くご主人と会いたいって事だったんですが、効果は抜群でした。
いやはや、フェイト嬢の力は偉大である。
それはさておき、はやて嬢とシグナムさん達も集まったので、ユーノが報告を始めた。
「じゃあ、向こうで調べて分かった事を報告するね?」
「あぁ、頼む」
こほんと、一つ咳払い。
「まず、今から話すことは全部 無限書庫に保管されていた歴史書から知った事実であるって事を知っておいて欲しいんだ」
(ん? そりゃそこで調べたんだから当然そうでしょうに。そんな前置きいらんでしょ)
「まぁね、でも前回シグナムたちから聞いた内容とはいくつも異なる事が書かれていたことも確かなんだ」
「っ!? そ、そんな訳あるかよ! 闇の書の事は守護騎士である私等が一番よく知ってんだぞっ!?」
「ぐぇっ!? ぐ、ぐるじぃ……!」
ヴィータに首元を絞め上げられるユーノ。見た目が自分より年下の幼女に絞め上げられる男の子、シュールだ。
フェレットのまんまならそんなことにはならなかったろうに。
あ、でもそのままアイゼンの頑固な汚れにされるかもしれんな。
そんな事を考えてるぬこと、慌ててヴィータを止めるご主人。
「お、落ち着いてよ~ヴィータちゃん」
「そうだぞ。話を聞いてからでも遅くはない……」
(内容如何では許可するって事ですね、分かります)
とりあえず、そのレヴァンティンをしまいましょうか、シグナムさん。
これ見よがしにチラつかせるとユーノも話し辛いでしょうに。
「けほっ、それは勘弁して欲しいなぁ……」
「んで? どこら辺が違ったん?」
「ん、まずは名前だね。闇の書って言うのは本当の名前じゃない、本来は『夜天の魔導書』って言うらしいんだ」
「なんだと?」
「夜天の、魔導書……?」
「そう、本来は魔法研究のために使われる健全な資料本として存在していたんだ。それが歴代の所有者達によって徐々に改悪されていって―――」
(今のようなロストロギア指定にされてしまった、と。……シグナムさん達はその名前に何か聞き覚えとかあったりします?)
『夜天の魔導書』と言う名前が出てからずっと黙りこくってるので訊いてみる。
「……正直な所よく分からない」
「ええ、なんと言えばいいんでしょうか。こう、訊いた事はないはずなんです、なのに……」
「懐かしい……うまく言えんが、これが一番近い表現のように思う」
「前から感じてたんだ。私は何か大切なもんをずっと忘れてるような気がしてて……でも、それがこの事なのかは分からねぇ」
「うーん、なんだか曖昧だけど特別なものだってことには違いなさそう、なのかな? でも、なんで闇の書なんて言う名前になってたの?」
「それはよく分かってないんだ。たぶん、改悪を施した所有者がより相応しい名前に改名したんじゃないかな。それもかなり前に……」
確証には至らないけれども、シグナムさん達は『夜天の書』という言葉自体に良い意味で違和感のようなものを覚えているみたいである。
まあ、ユーの曰くかなり昔の頃の話みたいだし仕方のないことかもしれない。
「でも、そやったらなんでシグナムたちはこんな曖昧な感じになっとるん?」
「……時系列がまだはっきりしてないから明言はできないんだけど、たぶんシグナムたち守護騎士のシステムが設定されたのは、その改名の後だったんじゃないかな」
「なっ!?」
「そっか、本来は資料本だったから……」
(守護騎士なんてのは、そもそも必要なかったってことですか……)
『………』
とはいえ、魔法の蒐集にも危険は付物だから主の護衛のために生まれたってのも考えられるから、一概にそうだとは言い切れないと思う。
むぅ、シグナムさん達にはちょっときつかったですかね。
自分達は本来はいらない子だって言われたようなものですから……
「まぁ、でもその設定してくれた人には感謝せなあかんなー」
「はやて?」
「だって、その人が居らんかったら皆と会えんかったんやろ?私は皆と会えて良かったと思っとるよ?」
「にゃはは、はやてちゃんらしいの」
(ですねー)
そんな啖呵を切ったはやて嬢を見て、シグナムさん達涙目。
はやて嬢かっけーです。
「はやてちゃんっ」
「わぷっ?!」
「あっ、自分だけずりーぞ! シャマル!!」
「なはは、シャマルもヴィータも甘えんぼさんやなー」
シャマルさんが嬉しさの余りはやて嬢に抱きつき、ヴィータも後に続く。
本当に嬉しそうな顔をしてますねぇ。
そして、ぬこの横でも大変喜んでおられるお方が一名。
(……抱きつかないんですか?)
「っ、……わ、私は、いぃ……」
(マジ泣きですな。気持ちは分かるけども)
「! ……(ゴシゴシっ)」
「コラ、みぃくん。茶化さないのっ」
(はーい)
感極まって静かに涙を流すシグナムさん。指摘したら必死で涙を拭いてました。
怒られたけど、珍しいシグナムさんの姿が見れたので後悔してません!
「何か乗り遅れましたね」
「あぁ……」
後ろの方で、場の空気に乗る事のできない男達がそんな事を言っていたのには、気付かないぬこたちであった。
◆
「んんっ……話を戻してもいいかな?」
(どうぞどうぞ)
このままでは話が進まないので、ユーノが強制的に話を戻す事に。
……若干ヴィータの視線が痛い。
たぶん、はやて嬢とのスキンシップを中断されたからでしょーね。
だが、ぬこは謝りませんよ。
「じゃあ次にどういう風に改悪されたのかって事なんだけど、これはほとんどシグナム達の言ってることと一致してる」
(……ほとんどって事はまだ他にもあったってこと?)
「うん……はやての足の麻痺の事なんだ」
「えっ?」
「なっ、まさか!? シャマルッ!」
シャマルさんがはやて嬢に魔法をかける。解析系統の魔法だろう。
そして、シャマルさんの顔が一瞬で青ざめる。
「―――――ッ……そんな、こんなのって……ッ!」
「お、オイ、シャマル、どうしたんだよ……!」
「……おそらく、はやての身体は闇の書によって徐々に蝕まれているんだ。無限書庫にあった報告書にも同様の記述があった」
「だ、だったら治療魔法で!」
「ごめんなさい……私の力じゃ、どうにも……ッ」
「ならば、闇の書を完成させて……!」
シグナムさんがすぐに提案するも、はやて嬢本人に止められてしまう。
「しかしッ! このままではッ!」
「ダメや、約束したやろ、シグナム。闇の書のマスターである私はそんな事を望んでいないって……」
「でも、はやて!」
「はやての言う通りだよ。闇の書は完成させちゃいけな……ッ!?」
ガキィィッ!!
ユーノの目の前に迫ったグラーフアイゼンを、ぬこバリアを展開して止める。
(ふぅ、危ないとこだった……貸し1な?)
「どうして……何で止めんだよッ!? お前だってはやての味方だろッ!!」
(ユーノだってそうですよ。それになんで完成させちゃいけないのかも説明するんだろ?)
「うん。報告書を読み進めててわかったんだけど、闇の書は完成と同時にマスターの魔力を際限なく搾取するようになっているみたいなんだ。……最終的に闇の書は暴走する」
「なッ!? そ、それでは……」
「どうしようもないって事なの……?」
「いや、方法はあるんだ」
「! じゃ、じゃあ!」
「早い話が闇の書が改変されたのなら、その上から改変し直して正常な状態に戻してやればいい、のだけど……」
「……そうか、闇の書はそのマスターにしか扱えない。つまり、主はやてが行うしかない、そう言うことか」
「うん、他の人が下手に介入すると所有者を吸収して、転生するシステムも組み込まれてるみたいなんだ」
「ほんなら、私がその設定をいろいろ書き換えたら大丈夫なん?」
「だと、思う。でも、今までの所有者でそれを試みた人もいるんだ。今回のはやてみたいに魔力資質の高い善良な魔導師が主になったときに……」
(ということは、その人じゃできなかったって訳ですか。つまりは、何か条件があるって事……)
「そうみたい。さすがにそれ以上の事は見つけられなかった……ごめん」
いやいや、十分すぎるほど調べてくれてる。それもこの短い期間の中で。
とはいえ、その条件が分からないと手の打ち様もない。
ふむ、どうしたものか。
(条件、ねぇ……シグナムさん達は何か思いつきませんか?)
「……闇の書には管制人格というのものがある」
「管制人格? それって、私のレイジングハートみたいなAIが入ってるって事ですか?」
「いや、どちらかと言うと我々のような魔法生命体だ。それが実質闇の書の全管理を担っている存在だ」
「じゃあ、その子に私がお願いしたらいいん?」
おぉ、早くもこの話は終了ですね、とはいかないらしい。
シグナムさん達が言うには、その管制人格とやらが目覚めるには、ある程度魔力を闇の書に蒐集させないとダメとのこと。
「………むぅ」
「……? どうしたのはやてちゃん?」
「なあ、シグナム。その子ってどんな格好しとるん?」
「そうですね、長い銀髪で深紅の瞳をした私と同じぐらいの年頃の女性です」
「そうじゃなくて! どんなおっぱいしとるんか訊ぃとるんよ!!」
『は!?』
はやて嬢ェ……
まぁた、変な事をのたまいだしちゃいましたよ、この娘。
いや、いつも通りっちゃ、いつも通りなんですけど……今までのシリアスが台無しなんだが。
そして、ご主人が……!
「は・や・て・ちゃん?」
「すいませんでしたー!」
(まあまあ、ご主人話が進まないのでそれぐらいに……)
「分かったの。でも、次にふざけたら……ネ?」
ワラいながらコテンと首を傾けるご主人。
やめてください、軽くホラーですよ?!
「うぅ、分かっとるよ……でも、なんかその子とどっかで会った気が気がするんよ。よぉ覚えとらんけど……」
「ホントにッ!?」
「……確かに、管制人格は主と精神リンクをつなげる事ができますが」
「ということは、その管制人格さんはもう起きてるってことなの?」
「かもしれんな。だが、どちらにしてもきちんと起動させないことには……」
……どっちにしても魔力の蒐集は必要だってことですか。
ふむ……ならば、とぬこが口を開こうとしたところでご主人が立ち上がる。
「あのっ、なら私の魔力を蒐集すれば!」
「アカン! 私の都合でなのはちゃんに迷惑なんて……!」
「違うよ。わたしは迷惑なんて思ってないもん。友達だから助けたい。ただそう思ってるだけだよ」
「でもっ!」
むぅ、先に言われちゃいました。
でも、ひとつ確認しておきたい事がある。
(……シャマルさん、その蒐集って言うのはどれくらいの危険性が?)
「みぃ君までッ!」
「……そう、ですね。確かに何の処置もしないまま放置すれば危険です。
でも、逆にちゃんと処置をすれば、魔法こそしばらく使えませんけど、それほど危険な状態にはならないはずです」
(それはシャマルさんにもできます?)
「ええ、それはできますけど……。でもいいんですか? あなたのご主人、なのはちゃんが傷つくんですよ?」
(……それでも、ご主人がはやて嬢を助けたいって気持ちは本物ですから。ぬこに止める事はできませんよ)
「みぃ君……ありがとうっ」
(いえいえ、でもぬこも蒐集してもらいますからね? それだけは譲れません)
「あ、僕もやってもらうからね」
「ユーノ君まで……」
「主はやて。いいご友人を持ちましたね」
「みんなアホばっかりや……でも、ありがとーなぁ」
そう言って涙を流すはやて嬢を皆で慰めるのであった。
はやて嬢ばかりが苦しむなんてそんな不条理は、ぬこたちがぶち壊してやりますよ!
◆
とりあえず、報告が終わったのでこれからの事を考える事に。
まず、魔力の蒐集ははやて嬢の麻痺の進行状況を正確に把握してから、と言う事にした。
医学面では担当医の石田先生に、魔法面ではシャマルさんにと言った具合に。
状況次第ではすぐにでも蒐集をしなくてはいけないけども、事を急ぎすぎて管理局に見つかってお終いって事になるわけにはいかないのだ。
ユーノ調べでは、闇の書はいまだに封印指定、ブラックリスト入りをしてるとのことだから。
あと蒐集の件だけど、シグナムさん達の話では666ページ中の少なくとも半分は集めなきゃならないらしくて、ぬこたちの魔力だけじゃ到底足りないらしい。
ということで、主に魔法資質を持った生物からということになった。
無論ちゃんと治療処置は行う事を前提にだけど。さすがに、ヒト相手だと発覚率が倍プッシュですからな。
都合よくリンカーコア持ちの奴に当たるかは分からないけど、次元世界には魔法生物の討伐の仕事が出てるところもあるらしく、そこから蒐集する事も考えてるみたいである。
……モンハン? 知りませんな。
それと、まだ蒐集することではやて嬢の身体にどんな影響があるかも分からないから、まずは魔力資質の低い生物から試してみて、ご主人みたいな資質の高い所からは様子を見てからと言う事に。
このメンバーだとぬこが真っ先にやられるわけですね、分かります。
場所に関しては地球からある程度離れた次元世界を拠点として、そこからさらに転移していける範囲から行う事にした。
こっちの本拠地の発覚をなるべく防ぐんだとかなんとか、その辺はぬこは門外漢なんでユーノたちに丸投げである。
んで、基本的な方針を決めたご主人たちはと言うと……
「ピーチのフライパンは最強や!(マリオRPG的に)」
「へへっ、下段ガードで固めたあたしのロイに隙はなかった!」
「そんなところにボム兵をシュート♪」
「えっ? うわぁぁぁ!?」
「ふ、所詮 革装備のジョブだったの」
「さすがなのはちゃん。容赦ないなぁ……そぉい!」
「そう言うはやても僕にバット投げないでくれる!?」
「バットは投げ捨てるものやろ?」
「何を当然のことをって顔されたーー!?」
はい、ゲームの真っ最中です。
シリアス? シリアスは犠牲になったのだ……スマ○ラの犠牲に、な。
「さっきまでの雰囲気はなんだったんだろうか……」
(気にしたら負けだと思いますよ、シグナムさん)
「まぁ、変に暗くなるよりはいいじゃない、ね?」
「……そうだな。主にも笑顔が戻られた」
そう言うザフィーラさんに釣られてはやて嬢を見るぬこたち。
確かに、さっきまでは無理して笑ってたみたいですしね……まぁ、根本の解決にはなってないんですけど、ご主人達の気持ちが伝わったんでしょうね。
でも、ちゃんとちゃんと無理しないように、辛いときは辛いって言ってもらうようにしないと。
こう言うのは無理してたら取り返しのつかない事になるからなぁ……ご主人にも言える事だけど甘えるのが下手ですからねぇ、二人とも。
……それにしても―――
(スイマセンね。結局、危ない橋を渡らすような事になっちゃって……)
「何を言ってるんだ。お前達がいなければ、私たちはとんでもない間違いを犯すところだったんだぞ? それをお前達のおかげ防ぐ事ができた。……本当に感謝している」
「それに危ないのはみぃさん達も一緒よ? 魔力の蒐集だって相当辛いものなのに……」
(ま、痛いのは慣れてますからね。折檻的な意味で……!)
『………』
同情の目を向けられた!
どうしよう、ちょっと涙が出そうですよ、ぬこ。
上を向こう。涙をこらえるために。
(とにかく、慎重にゆっくりと行きましょう。進行スピードは大丈夫だったんですよね?)
「たぶん。まだゆっくりとしたペースだから……」
「だが、焦りすぎて見つかってしまっては本末転倒だ。みぃの言う通り慎重に行うべきだ」
「あぁ、そうだなザフィーラ。蒐集の際にも手伝ってくれるのだろう?」
(そうですね。ぬこはあんまり魔力のことでは貢献できなさそうですし……)
「それは助かる。我々はどちらかと言えば戦闘に特化し過ぎているからな。主に言われたように、できるだけ無傷で捕らえるのは難しいのだ……」
ベルカの騎士は脳筋と申したか! という言葉が脳裏に浮かんだが、シグナムさんに三枚に下ろされそうなので黙っておきます。
「それにね、たぶん私たちが魔法を使うことでも間接的にはやてちゃんの負担になっちゃうから……」
(む、ならば尚更ぬこたちが手伝ったほうがいいですね)
「すまないな」
(何言ってるんですか! これはぬこたちの意思でやってることなんですよ? 謝ることなんて何にもありません!)
「ふ、そうか。だが、これは受け取ってもらうぞ? ……みぃ、ありがとう」
(……どういたしまして、です。まぁ、ぬこだけじゃなくご主人達にも言ってあげてくださいね?)
「無論だ」
ご主人のところとの温度差がヒドイけど、はやて嬢のためにひっそりと行動を開始するぬこ達なのであった。
「ど、どうするのアリア!?」
「どうするって言われても……どうしましょう」
蒐集は所有者である八神はやての身体に異常があってからと思っていたけど、いつの間にか集める事になっていた。
いや、それ自体は私たちの目的にとっては喜ばしいことなんだけど、あの子達は闇の書の改変を考えているらしい。
でも、それじゃあ私たちのやってきた事は……父様の想いは……!
「………」
「……やっぱり、これは私たちの手でやらないと、意味がないよ」
「……そう、ね。でも、今は様子を見ましょう? どちらにせよ魔力の蒐集はするようだし。今はあの子達を邪魔する必要はないもの……」
「そうだね。それで、父様には……?」
父様はお優しい方だから、あの主が犠牲になることだけでも酷く苦しんでおられる。
「魔力の蒐集を始めたことだけを伝えて、後は伏せて置きましょう。これ以上父様に負担をかけてはいけないもの……」
「分かった……やっぱり、あのみぃとは敵対する事になっちゃうのかなぁ…」
「仕方ないわよ……」
そんなやるせない気持ちを抱えたまま、私たちは本局へ報告をしに戻るのだった。
◆ あとがき ◆
読了感謝です。
とりあえず現状の確認とこれからについてでした。
闇の書の設定等は捏造。独自設定。
誤字脱字などありましたらご報告いただけるとありがたいです。
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