No.491380

超次元ゲイムネプテューヌmk2+ BlackFateその24

23のころのルウィー、リーンボックス。
姉女神がゲイムギョウ界を悲しくなるほど引っ掻き回す。予定。

2012-10-02 20:44:59 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1078   閲覧ユーザー数:1027

~前回と同じころ リーンボックス 教会 ベール私室~

 

「そんな、馬鹿な……!」

 

リーンボックス教会の朝は、騒がしく始まった。

発端はベールの大声と、机をたたく音である。

 

「お姉様、どうかしましたか…?」

 

その音に教祖、箱崎チカも起きてきた。

ベールは今まで見たことがないような表情をしていた。怖がっているような、不安そうな。そういう表情だ。

 

「チカ……。いえ、何もありませんわ。少し、ええ、少し……。」

「……?」

 

チカがベールが見ているテレビを覗いてみると、不思議なものが映っていた。

 

『歌の女神、エクシス復活か!?神の声再び!』

 

歌の女神、エクシス。

チカはその名に少しだけ心当たりがあった。リーンボックスの女神、ヴェルデハート、エクシスだ。

 

「お姉様、エクシスというのは、まさか……」

「…想像の通りですわ。歌の女神なんて言われるのは一人だけ…。わたくしの姉、エクシスでしょう……。」

「でも…」

「確かに、姉はわたくしが女神に就任して数年後、病死しましたわ。わたくしも、何が起こっているのか理解できていませんもの…。」

「……。お姉様。今から他国に連絡を取ります。マジェコンヌとこれ、関係があるかと。」

「お願いしますわ、チカ……。」

 

 

チカが部屋から出るのを見て、ベールはふらふらと歩き、ベッドに横になる。

ベールにとって姉は、一言で言えば儚いものだった。

後に生まれたベールはエクシスよりあらゆる面で優っていた。戦闘面、執務面、交流面。女神として、エクシスはべールに何も勝てなかった。

それにエクシスは生まれた時のバグか女神候補生の頃から身体が弱かったという。女神になってもそれは変わらず、ベールが生まれてからもそうだった。

ベールは姉が心配で仕方がなかった。

身体が弱く、事あるごとに倒れかける姉を助けたくて仕方がなかった。

だが、エクシスにとってはベールの心配は嘲笑に見えたのか決してベールに甘えることはなかった。

それどころか、エクシスはベールにこう言い放った。

 

『そんなに、苦しむ僕をみて楽しいか』と。

 

伸ばした手を振り払いながら、ベールを睨みながら。

怒りに満ちた瞳が、今もベールの脳裏に焼き付いていた。

 

敬愛する姉、儚い姉、自分を憎みながら死んでいった姉。

その姉が、復活したという知らせ。これが吉と出るのか、大凶と出るのか。

今のベールには、予想するほどの気力も残っていなかった。

 

「お姉様…未だ、わたくしを憎んでおられますか……?」

 

ただ、呟くことしかできなかった。

~同時刻 ルウィー教会 謁見の間~

「ねぇ、ロムちゃん。」

「……?」

 

四国の内未だ女神が戻っていないルウィーの教会。

教祖のミナが外出中なため、謁見の間にはロムとラムの二人しかいなかった。

女神候補生の中では最も幼い二人。姉がいないという誰よりも大きな不安はいまだ続いていた。

 

「何で、お姉ちゃんだけ帰ってこないのかな。」

 

ラムが発した言葉は純粋な疑問だった。

プラネテューヌ、ラステイション、リーンボックスの女神が救出された。だが、ルウィーの女神、ブランだけはいまだ戻っていない。というのも、ユーリというブランのような何かが存在しているからだ。

ギョウカイ墓場にはブランの姿がなかったそうなので、ユーリの正体がブランなのではないか、とルウィーの上層部は考えているようだ。

 

が、幼い二人にはそんな小難しい話など理解できるはずもなく【姉だけが帰ってこない】の一つしか考えることはできなかった。

 

「……。(ふるふる)」

「そっか…」

 

黙って首を振るロムを見てラムはため息をつきながら俯く。

姉達が消息を絶って三年と少し。他の国の女神が帰還して数日。

もうすでに二人の精神は限界を超えていた。

 

その時だった。突然扉からコンコン、と音が聞こえた。明らかにノックの音だった。

 

「…?誰だろ。ロムちゃん、行ってくるね。」

「……!(こくこく)」

 

ラムがすたすたと歩き、扉を開く。

そこにいた人物にラムも、その後ろで様子をうかがっていたロムも言葉を失った。

 

 

「…あらぁ?ブランちゃんやあらへんの?」

 

そこにいたのは、白地に【滲んだ紅い水玉のような模様】が入った着物姿の女性だった。

ほわほわとした笑顔でそこに立つ女性は、ラムに「ブランちゃんどこにおるか知らへん?」と尋ねた。

 

「え?えっと…お姉ちゃんは、まだ…。」

「せやろかぁ…。ブランちゃんもう帰ってきとる思てたんのに…。」

 

 

女性の困った顔の裏から感じるモノ。ラムも、隠れているロムですら感じ取れた。

それは【殺気】だった。恐らく隠そうともしていないだろうそれは、明らかに二人ではなく、別の物。推測できるブランに向けられたものだった。

 

「あ、う…お姉ちゃんに、何の…」

「ああ、自己紹介せなあかんかったね。」

 

女性はしゃがみ、ラムに視線を合わせて微笑みながら言った。

 

「わてはキュー。ブランの姉どす「ラム様離れてください!!」

 

女性、キューの自己紹介の途中に突然響いたミナの声。

次の瞬間、横からミナが「月下螺旋蹴!」と叫びながら現れ、キューのわき腹に肘を入れた。

 

「ラム様、ロム様、お逃げください!」

「ミナちゃん!?どういう…!」

「早く!」

 

いつもとは違い声を荒げて言うミナにラムも怯えるように後ずさる。

温厚(?)なミナの叫び声。目の前のキューという女性は何者なのか、とラムは少しだけ思っていた。

 

「ん・・・。おやおや、ミナちゃんやあらへんかぁ。」

 

キューが自らのわき腹に肘を刺すミナを見て微笑む。

ミナの技は(技名はともかく)毎度ラムやロムを吹き飛ばす程には強力なもの。だがキューは眉をひそめることもせず微動だにしなかった。

 

「お久しぶりです、キュー様。相変わらず酷く頑丈ですね…!」

「そういうミナちゃんは腕鈍ったんとちゃう?ちいと稽古つけてやろか?」

 

そう言いながらミナの頬にキューの拳が入る。

ズドン、という音が聞こえそうなほど深く入った拳を振りぬき、ミナの身体が吹きとび近くの壁に顔面から激突した。

 

「ミナちゃん攻撃が軽いでぇ。徒手格闘は体重を乗せて打つもんや。胆に命じとき。」

 

壁にめり込んだミナに向けて笑顔で言い放つキュー。よく見ると、彼女の足元がひび割れている。

笑顔の裏の殺気と、吹き飛ばされたミナを見てロムとラムの二人は一切の身動きを取れなくなっていた。

 

「ぁ、ぁ………!」

「あーあーそんな怯えんといてーな。わてメンタル強ないんやからー。」

 

声も出なくなっているラムの頭を撫でるキュー。

先ほどから隠そうともせずにあふれ出ていた殺気は何処へ行ったのか、まるで聖母のような雰囲気を醸し出していた。

 

「んー…。この感じ、うぬら女神なんか?」

「あ、ぇっと、うん……」

「……!(こくこく)」

「ブランちゃんにこんなめんこい妹おるとはなぁ…。」

 

ロムとラムは戦慄していた。怯えていた、の方が近いかもしれないが。

少なくともわかるには、目の前の相手は自分達がどうこうできる相手ではないと。

逃げないと殺されるかもしれない、でも身動き一つとれない二人をキューは微笑ましそうに見ていた。

 

「ああ、心配せんでええよ。わては基本的に手を出されな手はださん。攻める戦はせぇへん主義やてな。だからほら、怯えるのはよすば「石破天響拳!!!」っと。」

 

先ほど吹き飛ばされたミナがキューに向け跳び蹴りしながら戻ってきた。

横顔に刺さったはずのミナの蹴りに対してもキューは微動だにせず、微笑み続けていた。

 

「せやから…。軽う言うとるんや!」

 

キューがミナの脚を掴み、壁に向けて投げ飛ばす。

壁に何度もたたきつけられ、ミナが衝撃で血を吐いた。中央の紅いカーペットの他にも、既に教会の床と壁はところどころ紅く染まり、惨劇と言えるような状態になりつつあった。

 

「今日の稽古はここまでにしたろ。もうちょい技の重みあげえな。」

「…っカ、ふ……」

 

息も絶えかけている状態のミナが地に落ちる。

自分の血の上に倒れ力なく伏せる様は一見すれば死体にも見えるほどだった。

 

「さて、正直わての目当てはブランちゃんやったけど…。ミナちゃんがこうなってはほっとくのはあかんな…。君ら、救急箱とかそういうのどこあるか知っとる?」

「…しってる。」「ま、まぁ基本あたしらが直しちゃうからいらないけどね!」

「ほんならミナちゃん治してくれへん?」

「え、え…」「……われにまかせよ。」

 

キューが言った言葉にラムが困惑した。先ほどあれだけ痛めつけていたキューがミナを治してほしいと二人に頼み込んだ。

意味がわからなくなっているラムを他所にロムがミナの治療を始める。

数秒の詠唱の後淡い光がミナを包んだ。

「ほう。」とキューが感嘆の声をあげる間にミナの傷がみるみる治り、顔に残った打撲痕もすっかり消えていた。

 

「ありがとなちびちゃん。これで運んでも問題なさそうや。」

 

キューがミナを担ぎ、教会の奥に運び出した。

あまりにも自然な行動に一瞬呆気にとられたが、すぐにラムが声をあげた。

 

「ま、まちなさいよ!いきなりミナちゃんを傷つけて、あんたなにものなのよ!」

 

「…ん?ああ、そういやミナちゃんに自己紹介妨げられたけぇか。」

 

ラムに止められたキューはミナを近くの椅子に寝かせ、ロムとラムに向けて正座して礼をして、言葉を発した。

 

「改めて、わての名はキューいいます。ホワイトハート…ブランの姉、あの子の先代の女神どすえ。」

 

「では、ミナちゃん休ませに行きますわ。」と言ってキューは立ち上がり再度ミナを担ぎ教会の奥に消えて行った。

謁見の間には理解が追い付かず、立ち尽くす二人が残った。

…その数十秒後、「ええええええええええええええええ!?」というラムの叫び声が響いた。

~プラネテューヌ プラネタワー最下層 教会~

「……ぁ、・・・・・!」

 

キャストリームと対峙するネプテューヌ、ネプギア、イストワールの三人。

だが、明らかにネプテューヌの様子がおかしかった。

息も荒くなり、いつものギャグを振る余裕も見るからになかった。

 

「…何故、今更貴女が出てきたのは聞きません。予想もついていますしね。…ですが、一つ聞かせてもらいましょう。何用ですか?」

「自らの生まれ故郷に帰りたいからじゃあいけない?」

 

イストワールの投げかけにキャストリームは即答した。

既に死去しているネプテューヌの姉、キャストリーム。その突然の来襲に教会内は騒然とし、一触即発の雰囲気だった。

 

「貴女が嘘を付けないタイプというのは知っていますが…それでは腑に落ちないことが多いのでしてね。」

「いーすんさん、迎撃は…?」

「迎撃に止めておくように。ネプテューヌさんが何しでかすかわかりません。慎重に。」

 

ネプギアは刀をキャストリームに向け、今にも走り出して切りかかろうとしている。

なんとかイストワールが抑えているものの殺気をむき出しにしていた。

 

「…もう一度聞きます。何故死人のあなたが今更出張ってきたのですか?」

「死人が好きな狂人がいるみたい。それも相当な力を持ったね。」

「その狂人の手先ですか、貴女方は。」

 

徐々にイストワールの声のトーンが下がり、表情も険しくなっていく。

かすかに微笑んでいるようなイストワールの瞳は確かにキャストリームを睨みつけていた。

キャストリームは変わらず無表情にイストワールとネプギアを見つめ続ける。

 

「…流石にイストワール。頭の回転はやいね。」

「ネプテューヌさんのような問題児から貴女のような別の意味の問題児まで、プラネテューヌのすべての女神の面倒を見てきた身ですので。……ユニさんとネロさんを排除しようとしたのは、事実上の乗っ取りですか?」

「さぁ…。グリスのやることなんて考えたくもないから。それに全員が全員真面目にきたわけじゃないよ。」

 

イストワールたちの周囲に浮遊する端末たちがすべてキャストリームの元に戻った。

端末のひとつをなでながら、キャストリームは二人に向けてニヤケ顔を見せる。

 

「私は嘘は必要分しか言わないから。言ったでしょ、【自らの生まれ故郷に帰りたかった】って。」

「…確かに、あなたはそういうお方でしたが……。他の方のように動かれると厄介です。常に監視をつけさせてもらいます。」

「別にいいよ。……るだけで十分だから」

「……?」

 

キャストリームの呟き。

最後の一部分しかイストワールの耳には入らなかったが、キャストリームも何かしらたくらんでいる、という考えにいたるには十分な材料だった。

が、イストワールはその思考を本の片隅に放置した。

キャストリーム単体ならばネプギア一人でも対処できると考えたからだ。

……が、イストワールはこのとき気づいていなかった。

 

 

 

身動きひとつ取れないほど怯えていたネプテューヌの姿が消えていたことに。


 
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