第八十九技 理由なんかいらない
シリカSide
「僕が一緒に行ってあげるから…」
一瞬、彼が何を言っているのか分からなかった。
彼は立ち上がってウインドウを操作し始める。するとあたしの前にアイテムトレードのウインドウがでてきた。
そこには武器の『イーボン・ダガー』、防具の『シルバースレッド・アーマー』、『ムーン・ブレザー』、
『フェアリー・ブーツ』、『フロリット・ベルト』と表示された。
どれもあたしが見た事もない装備だった。
「この装備なら5、6レベルは上げる事ができると思うんだ。僕も一緒に行くから、これで大丈夫なはず…」
「……どうして、そこまでしてくれるんですか?」
あたしは少しだけ警戒をしながら訊ねてみた。
前に、アイテムなどを交換条件にあたしに結婚を申し込んできた人がいたりしたから。
だけど彼は、そんな風に考えていたあたしとはまったく違う回答をしてきた。
「誰かを助けるのに……理由がいるのかい?」
―――トクン!
綺麗な笑顔でそう言った男の子。あたしはそれに少しだけ胸が高鳴ったのを感じた。
「そ、そうですか…/// あ…あの、これだけじゃ全然足りないと思うんですけど…」
あたしはそう言ってアイテムトレードのウインドウを出して、
自分の持っている
「いや…いいよ。見返りが欲しくて助けたわけじゃないから。それにここに来た目的も少しは果たせたし…」
目的? なんだろう。だけど聞いた感じではあたしに関する事じゃないみたいだし。
そういえば助けてもらったうえにアイテムまで貰って、名前を名乗っていなかった。
「あたし、シリカっていいます」
あたしは自分の名前を名乗って握手を求めた。
「僕はヴァル。少しの間だけど、よろしくね」
彼は、ヴァルさんはそう言ってあたしの手に応えてくれた。
あたしとヴァル君は『迷いの森』から抜けて、35層の主街区である『ミーシェ』の街に戻ってきました。
戻ってくる途中であたしがさん付けで呼んだら、あまり慣れていないからと言われたので、
君付けで呼ぶ事になりました。あと敬語もいらないと言われました。
「ヴァル君はギルドに所属してるの?」
「ギルドじゃなくて、非公式ギルドになら所属してるけどね」
「そうなんだ~」
そんな他愛もない会話をしていたら何人かの人にパーティを組もうと誘われました。
しばらくヴァル君と組む事を伝えるとみんな彼をジトッと睨んで、彼は苦笑していました。
「ごめんね、迷惑をかけて…」
「君はファンが多いんだね。人気者の証かな…」
ヴァル君の言葉にあたしは立ち止まって喋りだす。
「そんなことないよ…。マスコット代わりに誘われてるだけだよ、きっと…。
それなのに【竜使いシリカ】なんて呼ばれて、いい気になって……」
そうだ。自分の気の緩みでピナを…大事な友達を失くして…。あたし…最悪だ。
「そんなことないよ。必ず…君の友達を助けてみせるから……」
「ぁ…うん」
笑顔で言ってくれたその言葉に、あたしは嬉しくなって目尻に浮かべた涙を拭った。
少ししていつもあたしが泊まっている宿屋につきました。
「そういえばヴァル君のホームは…?」
あたしはヴァル君がどうするのか気になって訊ねてみた。
「50層にあるけど、今日はここに泊まるよ」
「それじゃあ、ここのチーズケーキ食べよ。結構いけるんだよ」
あたしはお気に入りのチーズケーキをおススメしてこの後を楽しもうと思った。そこに…、
「あ~ら、シリカじゃない。森から脱出できたのね。良かったわね~」
嫌な声が聞こえてきた。そこにいたのは……あたしが最も会いたくない人だった。
シリカSide Out
To be continued……
後書きです。
最後にあの女が登場。
ヴァルさんの断罪の餌食にしてやりますよ~www
それではまた・・・。
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第八十九話になります。
アニメ沿いの展開ですから、なるべく早く終わらせるつもりです。
過去話よりも早くヴァルとシリカのメインの話しが書きたいですしw
どうぞ・・・。