第八十八技 悲しき別れ
シリカSide
~約半年前~
「はぁ…はぁっ、はぁっ……」
「きゅ~~~」
あたしとピナは森の迷宮の中を逃げ回っていた、なんてバカな事をしてしまったんだろう。
今のレベルでの十分な安全圏内だと思って、一人で迷宮を脱出できると思い込んでしまい、
そのちょっとした油断が命取りだった。
―――グォォォォォ!!!
三匹の大型の猿モンスター、〈ドランクエイプ〉に遭遇してHPも半分に到達してしまった。
さっきからピナの《
回復アイテムもそれなりに使ってしまったはず。
もう一度回復アイテムを使おうとポーチを探ってみたけれど…、
「っ!?」
もう回復アイテムが無い。
そしてあたしがそれに気を取られている隙をついて一匹の〈ドランクエイプ〉が攻撃を仕掛けてきた。
「きゃっ!? くっ!?」
ドランクエイプのもつ棍棒に殴られてあたしは木に叩きつけられ、
今の攻撃でHPバーは
あたしは反撃しようと武器を探すけどあたしのダガーは辺りにはなく、どこかに飛ばされたんだと思う。
そして一番近くにいた一匹があたしに棍棒を振り下ろした。だけど…、
「きゅーーーーー!!!」
―――グシャンッ!
あたしに攻撃は届かず、間に入ってきたピナがそれを喰らい吹き飛ばされた。
「ピナ!」
あたしはすぐさまピナに駆け寄った。
「ピナ! ピナァ!」
ピナのHPバーは危険域に到達してから…0になった。ピナの体は光になっていく。
「いや……ピナ!」
ピナの体を抱き上げて必死に叫んだ。けれどピナの体はどんどん光になっていき、
―――パキャァァァァァン!
ポリゴン化して消滅した。そこに一枚の羽が落ちていく。
いやだよ。うそだよね…ピナ。
三匹の〈ドランクエイプ〉が近づき、一匹がさっきのようにあたしに向けて棍棒を振り下ろそうしている。
死ぬのかな、あたし? たったそれだけが頭の中をよぎった。次の瞬間!
―――パキャァァァァァン!!!
〈ドランクエイプ〉が三匹とも一瞬で消滅した。なにが起こったのか分からない。
モンスターがいたその先をみてみると、槍を持った黒装束の男の子が立っていた。
もしかしてあの子が? だけどあたしには生き残った嬉しさよりも大切な友達を失った方が大きかった。
あたしはピナが残した羽を手に持つ。
「ピ……ナ…。あたしを(グス)、一人に(クスン)、…しないでよ……」
あたしは泣き出してしまった。たった一匹のあたしの友達だったのに……なんで…。
「うっ、うぅ…(ヒック)、ぴなぁ……(グスン)」
「その羽は……。君はビーストテイマーなんだね…」
男の子はあたしに訊ねてきた。
「(コク)…あたしの…大事な(ヒッ)、友達なんです……」
「ごめんね…。君の友達を助けてあげられなくて…」
男の子は申し訳なさそうに謝ってきた。あたしは逆に申し訳なくなってしまった。
「いいえ。あたしがあんな思い上がった事をしなければ…」
「それでも…ごめんね……」
「……ありがとうございます。助けてくれて…」
それでも謝ってくる彼にわたしはお礼を言った。彼は命の恩人なのだから。
「その羽…。もしアイテム名が設定されていれば、使い魔の子を蘇生できるかもしれないよ…」
あたしはそれを聞いてすぐにアイテム名を確認した。そこには≪ピナの心≫と出てきた。
名前が設定されている、という事は…。
「うん…。これなら蘇生アイテムを入手すれば、また友達と一緒にいられるよ…」
「本当ですか!? あの…そのアイテムは……?」
あたしは藁にも
「僕は持っていないけど、47層の南に『思い出の丘』っていうフィールドダンジョンがあるんだ。
その一番奥に咲く花が使い魔蘇生用のアイテムらしいよ」
あたしはその言葉に心が軽くなるのを感じた。でも…。
「47層……。あたしのレベルじゃ…」
「……花は使い魔の主人がいないと咲かないみたいだし…」
「(グス)情報だけでもありがとうございます。頑張ってレベルを上げればいつかは…」
そう言った途端に彼の表情が変わった。どうしたんだろう?
「蘇生できるのは…死んでから三日以内なんだ……」
「っ!? そんな…」
ショックを隠せない。折角ピナとまた会えると思ったのに。そこに彼が声を掛けてきた。
「大丈夫だよ…」
「え?」
「僕が一緒に行ってあげるから…」
それはあたしにとって、天の助けなのかもしれない。
シリカSide Out
To be continued……
《
オリジナルのスキルでモンスター用のスキル。
HPを回復させる。
後書きです。
原作の「黒の剣士編」ですが、本作では「黒き閃光編」になります。
???となっていますが、みなさんご存知のヴァル君ですw
内容的にはアニメよりになっています。
それでは次回で・・・。
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第八十八話です。
今回から原作での「黒の剣士編」にはいります。
どうぞ・・・。