No.489287

真・恋姫†夢想 とある家族の出会い 起の幕

狭乃 狼さん

ウチの嫁と娘’s、その内の幾人かと、自分自身との出会い。

それを今回、本邦初公開させていただきます。

ではどうぞ。

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2012-09-27 23:09:55 投稿 / 全18ページ    総閲覧数:4785   閲覧ユーザー数:4048

 はじめに。

 

 これは、ある一人の管理者と、そして、その家族となったとある恋姫達、その幾人かとの出会いとなった、その時のお話です。

 

 本来なら交わる筈の無かった、正史の人間と外史の人間。

 

 その二人の邂逅と、そして、その後に続く長い長い人生の、その始まりの一歩となった外史。

 

 歴史に記されない、表にはけして出ることの無かった、この、ある一つの外史での物語。

 

 それを今回、本人達の許諾を得て、過去、その当人が綴った自叙伝的なものを、こうして皆様にご披露することと相成りました。

 

 では、暫しの間のお目汚し、どうかお付き合いくださいませ……。

 

 

 

 起の幕『それは悠久の旅路への出会いなの(笑』

 

 

 ……………………………………………

 

 

 

 「……出る所間違えたか」

 

 自分の周りを360度、広大に広がる荒野を見回しながら、俺は一人そう呟く。

 

 「どっちが洛陽の方だっけなあ?……まいったな、コンパス位用意して来ればよかったか」

 

 この外史では己の位置を掴むための手段は、自ずと限られたモノしかない。太陽の方角であったり、山々の位置であったり、だ。しかし。

 

 「……実際に自分の足で大地に立ってみるのと、“画面”から見るのとじゃあやっぱり全然違うってのが実感できたな、うん。……さて、どうしたもんだか」

 

 このままだと、反董卓連合の戦いには間に合いそうに無いな……せっかく、こうやって外史の世界に直接降りれたってのに、龐徳令明っていうキャラクターまでしっかり創ったってのになあ……。

 お、そういや自己紹介がまだだっけな。まあ、この報告書(ss)を読んでる皆さんには、今更感200%位かもだがw

 そう。俺の名は『龐徳(ホウトク)』、字を『令明(レイメイ)』。そして、この外史世界、いわゆる恋姫世界ではおなじみ、下手に呼んだらあっという間に首を刎ねられる危なっかしい初見殺し設定である真名(まな)は、『(ロウ)』、という。

 そしてそして、コレも多分言うまでも無いと思うが、正史世界、つまり現実における俺の名は『挟乃狼(ハザマノロウ)』という。ま、気軽に狼か、もしくは狼兄とでも呼んでくれ。……オッサンとかいった奴はしっかりかっちりOHANSHIをさせてもらうんで、そこんところ宜しくw

 あ?何?それだってリアルネームじゃないだろうって?……細かい事は気にすんな(笑

 

 「……と、モノローグに耽ってばかりいてもしょうがないし、さて、普通に考えりゃあ太陽の位置を中てにして動くべきなんだろうけど、その肝心のお日様がなあ……」

 

 どんより真っ黒、絶賛、雨雲さんに隠されてしまっておりますです、はい。

 

 「……しゃあねえ。あんまりやりたくは無いが、“戦気”を辿るしかないかね?」

 

 戦気ってのは、まあ要するに、戦場とかなんかで立ち昇る武人や兵士の気迫、そういったものがある程度のレベルまで上がった状態の、ソレのことだ。そしてその戦気を、ある程度の距離までなら、少々離れていても感じ取る事が出来る、そういった能力を、この仮想の身体(アバター)を設定付けるときに付与しておいたわけだ。……ただ、ソレを感じ取ると、だ。なんというか、その戦気にあてられちまってか、ちょいとばかり戦闘狂の気が出てしまうのが、この身体の問題点の一つなんだよなあ。

 ……どっかでプログラム間違ったかな?

 まあでも、それ以外は特に今の所支障は出てないし、その内きっちり調整すればいいわな。

 

 「さあーて。それじゃあまあ、いっちょ探ってみるとしますか。大体の方角としては、こっから東北方面ってところかね。……っ……ン……お?これ……かな?」

 

 うん。あったあった。相当な数の人数がぶつかり合ってできる、戦場独特の戦気が。……しかし……これ……結構……あ、駄目だ。

 

 「ふ。ふふふ。フフフフフフフフフフ!」 

 

 こら静まれ俺の右t…じゃない、闘争本能(リビドー)!暴走するなこら!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闘争本能(リビドー)《だが断る》

 

 

 「クハハハハハハハハハハッッッッ!!来たぞ来たぞ来たぞおおおおおっっ!戦い!死合い!血闘!荒ぶる血肉!我が渇きを潤す芳醇なる戦場よ!待っていろ!コレより破壊の狼がそなたの下に舞い降りる!さあ、我が贄となるは何処のだれぞ!ガアオオオオオオオオンンンンッッッ!」

 

 しっかり暴走しちゃいました。テヘペロ♪

 

 

 

 …………………………………………

 

 

 

 そして気がつけば、俺の前に立ちはだかるのは、薄い紫色をした髪の、一人の武人。

 

 「な、何者だ貴様!突然戦場に高笑いと供に連合軍を蹴散らしながら現れて、人の一騎打ち相手を吹っ飛ばすとは!」

 

 あちゃ~。彼女、すっげえ怒ってるわ。うん、まあ、それも仕方ないか。何しろ。

 

 「……せっかくこうしてみなの制止を振り切ってまで氾水関から打って出て、あの子憎たらしい孫策とかいう奴をこの金剛爆斧のサビにしてやる、その絶好の好機だったものを!」

 

 まあようするに、だ。

 ここまで暴走状態のまま突っ走ってきた俺は、五キロほども全速力で走ったところで、汜水関に群がる連合軍を発見。でもってそのままなんにも考えずに先鋒らしい部隊に単身突撃をかましちゃったんだ、これが。で、その時周囲の大勢のモブ兵士と一緒に、途中でなんか赤い服を着たのと、この女性とが戦っているの発見。

 ……勢いに任せてそのまま、赤い服の方、今思い返せばあれは間違いなく江東の小覇王こと孫策その人だった、を、愛刀である某斬○刀そっくりな大剣、その名も狼牙王でもってどっかにフッ飛ばしちゃいました。えへw

 え?なに?武器の名前が厨二クサイだ?大きなお世話だ。俺は永遠の二十歳なんだから良いの!

 

 「もう一度聞くぞ!貴様一体何処の軍の者だ!?この董卓軍一の猛将、華雄の邪魔をする以上、ただで済むとは思って居まいな?!」

 「あー。なんていうかそのー。……味方だ、っていったら、信じる?」

 「何?」

 

 別に嘘は言っちゃあいませんよ?だって元々、董卓軍に味方するために、この外史にわざわざ降りてきたんですもの。まあ、合流の仕方をちょっとばかし?間違えちゃったんだけどさ。

 

 「なるほど。ならば多少なりとも合点はいくか。連合の軍勢を吹き飛ばし、あの孫策を問答無用でぶっとばしたんだしな」

 「でしょ?」

 

 まあ、その辺はぶっちゃけ結果論なんですが。けど、へえー……。

 

 「?なんだ?私の顔に何か付いているのか?」

 「あ、いや、別に。……聞いていたより、実際に見る実物の方が、断然に可愛らしい顔立ちだなと」

 「なっ?!//////」

 

 あ。真っ赤になった。うむ。初心な反応もまたよし!

 

 「ば、馬鹿か貴様!?戦場で、ほ、北郷の奴みたいな事を、よりによって私相手にそんな……っ!」

 「へ?北郷?」

 「……なんだ、お前……北郷の奴を知ってるのか?」

 「いやあの、知ってると言うかなんていうか。……えと、もしかして、天の御遣いとか、そう噂されてる、北郷一刀さんのこと……でせうか?」

 「ああ。あんなけったいな姓名と格好の奴、私はアイツ以外には知らんぞ?」

 

 ありゃ。これまた予想外な。そっか、この外史じゃ一刀のやつ、董卓軍に拾われて居たんだ。……ま、それもまた一つの形、か。専属の管理者が誰であれ、一部の例外を除けば、北郷一刀という、恋姫外史においての起点の役者が居るのは、すべて予定調和のうちだもんな。

 

 「……これもまた、大いなる意思(ウィル)の思し召し、ってところかね?」

 「何をぶつぶつと。もう一度だけ聞いてやる!貴様の姓名は?!一体何処の誰で、此処に何をしに来た!」

 「じゃ、おふざけはこれぐらいにしておいて、と。俺は姓を龐、名を徳。字を令明。華雄将軍、貴女の主である董卓公、その御方に仕官にやって来た。さっきのはまあ、ちょいと勢い任せと言うか偶然の産物なんだが、連合の一角を崩したこの武、それを手土産として主公にお目通りしたい。……宜しいか?」

 「……いいだろう。なら先ずは」

 

 ふと。俺の口上を聞き終えた華雄が、その視線を不意に周囲へ、殺気を滾らせて配った。そこには、龍の文様の描かれた偃月刀を持つ漆黒の髪の少女、俺にとってはおなじみ、けど、実際に顔を会わせるの始めての彼女、愛紗こと関羽率いる劉備軍の姿が。

 ふむ。喋ってる間にすっかり囲まれちまった、か。こりゃまた失策、だな。

 

 「この囲み、突破できる自信の程は……って、聞くまでも無いかな?華雄さん?」

 「当たり前だ!この程度の有象無象共、私の武にかかれば鎧袖一触に薙ぎ払えるわ!」

 「そうは簡単には行かんぞ、華雄とやら。そして、そこの男。この私の目の黒い内はこの囲み、突破など出来ぬと思え!そう、この関雲長の青龍偃月刀、これに輝きある内はな!」

 

 そう言って、俺達に偃月刀を向ける愛紗。……いや、関羽、と。いかんな、この外史に居る間は、暫くみんなの真名のことは忘れないと。……でないと後で色々面倒だし。

 

 

 

 ……………………………………………

 

 

 

 でまあ、その後結果的にどうなったのかと言うと。

 

 「……おい」

 「はいはい、なんでしょうか、華雄さん」

 「貴様、何故、あの場で、私を、いきなり、担いで、逃げ出した!?」

 「そりゃあもう。一々相手するのが面倒だったから」

 

 まあ、半分本音で半分嘘かね?

 

 「面倒だと?!そんなしょうも無い理由で、お前は武人の誇りも何も無しに逃げたと言うのか!?」 

 

 つまり、愛紗こと関羽たちによって囲まれ、逃げ場を失ったように見えた俺たちだったわけだが、たったの一方向、氾水関側の方の囲みが少しだけ薄かったのを目ざとく見つけた俺は、周囲の隙を突いて華雄を両腕で胸の前に、つまりはお姫様抱っこの形で担ぎ、全身に“気”を纏った状態でその部分に突撃を敢行。見事、囲みを抜け出したというわけだ。

 まあ、生粋の武人と称し、誇りを第一義に考える華雄からすれば、敵前逃亡なんて死んでも死に切れないほどの屈辱だったんだろう。関に入り、中に残っていたもう一人のここの守将、神速の張文遠こと霞(もちろん、真名を呼ぶような愚挙はしてません)に、俺が自己紹介を済ませた途端、さっきの通りのセリフと供に掴みかかった来た、と言うのが今の現状です。

 

 「華雄、ちっと落ち着き。龐徳の判断の方が、あそこでは正しかったと、ウチも思うで?武人の誇りも大事やけど、ウチらがせなあかんのんは連合の阿呆どもを蹴散らす事や無い。あいつらを此処で足止めして、月っちが都で一刀と一緒に、内憂を取り除くのを待つことや。それはあんたも分かってて、ここの守りを引き受けたんとちゃんか?」

 「ぐ、し、しかしだな、張遼!」

 「しかしもかかしもあらへん!龐徳、もっかいだけ、礼を言わせてもらうで。この馬鹿が暴走した時は正直どうしよ思たけど、あんさんが現れてくれたお陰で、この馬鹿も死なずに済んで、関も落とされずに済んだ。ほんま、おおきにな」

 「ですので礼には及びませんよ。俺が華雄さんを助けたのはホントに、結果的にそうなっただけであって、タイミ、いや、機がたまたま重なったお陰で功を奏した。それだけですよ」

 

 謙遜ではなくホントにそうなんだから、ね。うん。りびどーが暴走した故の、あの結果、ですから。

 

 「それでもや。あ、そや。なら一つだけ、頼まれてくれへんか?この馬鹿連れて、洛陽の月っちに会って欲しい。というか、このばかゆうに守りの戦が出来へんことはこれでよう分かったさかいな。都で一刀と月っち、賈駆っちの手助け、して欲しい。どや?」

 「オイ張遼!ばかゆうとはなんだ、ばかゆうとは!?私を愚弄する気か?!」

 「ばかゆうやからばかゆう言うてんのやろが!それとも何か?さっきウチが言うたこと、一つでも反論できるんかい?!」

 「うぐ」

 

 グウの音も出ないって奴ですね、分かりますw

 

 「俺の方はそれで構わないですよ。じゃあ文遠将軍、この場の守りはお任せします。あ、なんなら虎牢関に詰めてる奉先将軍に、こちらへ出張ってもらいますか?」

 「ああ、そやな。ねね、陳宮と一緒にこっちに来るよう、恋に、呂布ちんに伝えてくれるか?」

 「了解。……華雄将軍も、それでいいですね?」

 「……勝手にしろ」

 

 そして、俺は華雄と一緒に虎牢関へと向かい、飛将軍こと、呂布奉先こと、恋。それと陳宮公台こと音々音に、氾水関で霞(まだ真名は預かってないけど、モノローグなのでこう呼ぶ)と一緒に、連合の更なる足止めを頼んで置いた。これで、連合の足は氾水に当分釘付けになるだろ。

 

 

 

 ……………………………………

 

 

 

 そしてやって来ました、嬉し恥ずかし花の都はぱr、じゃなくて、漢の都である洛陽。

 

 「ほお~。これまた賑やかなものだ」

 「当たり前だ。月さまが治め、我らが守っている街だぞ?」

 「ですよねー。……何処をどうしたら、この街が悪政に包まれている、なんて妄想が出てくるのやら。駄名家の思考は理解に苦しむ」

 「だめいか?……袁紹のことか?」

 「そ」

 

 ま、それと知って付き合ってる一部の諸侯も、似たり寄ったりだと俺は思うんだけどね。もちろん、あやふやなままで参加してる桃の子とかハム、失k、もとい、錦の姫君さんも、だけどさ。あ、もう一つの駄名家はもちろん論外でw

 

 「ふむ。だめいかとはうまいこと言う。……しかし結局、そんな袁紹に付き合っていると言うことは、どいつもこいつも口では綺麗ごとを言ってはいるが、皆、己のことしか考えて居ない輩ばかりということか……」

 「哀しい事だけど、結局それが現実さ。言ってる当人が根っこで何考えてようと、自分に都合のいいことだけに耳を貸し、そして傾けるのが、世の大多数の人々の常なのさ」

 「むう……」

 「そして世の少数の人間、人の上に立つ、“色んな意味で”選ばれた人間は、声を揃えてこういうのさ。世のため人のため大いに結構。そして裏に隠れた臭いものには蓋をして、みなさん綺麗な景色だけ見てましょう、ってな」

 「だが月様は違う!あの方はけしてそのような事は考えても居られないし、言われるはずも無い!慈母、その名がこれほどに合うお方を私は他に知らん!街の者も、兵たちも、みな、口を揃えてそう言ってくれている!」

 

 ……うん。愚直だ。けど、彼女の場合、それが一番の魅力なんだよな。……まあ、欠点になってしまうことの方が、多いっちゃあ多いんだけど。

 

 「……ああ、俺もその辺は分かってるつもりだよ。だからこそ、董卓公を主君にと決めてはるばるやって来たのさ。……って、あれ?」

 「ん?どうした龐徳?」

 

 ふと。俺の目に止まったのは、数人の男が細い路地へと入って行く所だった。その男たちは、なにか周囲を気にするようにしつつ、ぐったりとして身動き一つしない小柄な影を、抱えていたように見えた。

 

 「……華雄将軍。ちょっと野暮用、済ませて来てもいいですか?」

 「え、あ、おい!」

 

 華雄の答えを聞くのもそこそこに、俺はすぐさまさっきの男たちが消えた路地へと駆け出した。嫌な予感。此処でそれを見逃したら、一生悔いても悔やみきれない後悔を、そこで背負う事になる様な気がしたからだ。

 

 「……はっきり見えたわけじゃないけど、あいつらが抱えていたの、女の子だった様な気が……お、居た居た」

 

 大通りから少し入ったわき道。そこに並ぶ空き家の中に、さっきの連中が居た。数は五人。そしてその中央、埃の積もった床に力なく倒れていたのは、艶やかな黒髪をツインテールにした一人の少女。……年齢的には十五~六歳ってところかね?

 その、気絶しているであろう少女を取り囲む男たちの顔は、下卑た笑いと興奮、それ一色に染められていた。……これから何をするつもりかは、まさに一目瞭然、っていうやつだな……んっの下種どもが。

 まあ、なんだ。俺自身、別に自分のことを善人という気は無いけど、流石に見聞きして胸くそ悪くなる事ってのはある。

 というわけで。

 

 「おらよっこいしょおっっっっ!!」

 「うぎゃあああああっ?!」

 『な、なんだあっ?!』

 「ふえっ?!え、あ、な、何?何?」

 

 俺様の怒りの蹴りをまともに不意打ちで食らった男の一人が、土壁を突き破って吹き飛んだ。その、あまりに突然起きた事態に、他の連中は目をまん丸にして、突如として現れた俺の方に、全員がその視線を一斉に集める。そして、その時の少々派手な音で、気絶していた少女もその目を覚まし、その綺麗なコバルトブルーの瞳をぱちくりとさせ、何が起こったか分からないままその二つの輝きを、男たち同様俺へと向けた。

 そんなそれぞれの視線の中、俺は自分の拳をぎゅっと握り締めて、ゆっくりと立ち上がり、そして誰に言うとでもなく、こう、言ったわけだ。

 

 「……婦女子を寄ってたかって慰み者にしようなんざ、男としちゃあ一番!やっちゃあいけねえことなんだよ!このどぐされどもがああああああっっっ!!」

 

 

 

 …………………………………………

 

 

 

 「……なるほど。まあ、事情については良く分かった」

 「……」

 「この少女が、こいつらに路地裏の空き家に連れ込まれ、乱暴されそうになっているのを、見過ごせなかった。そこは良くやったと、そう言っておこう」

 「……」

 「だが!“これ”はいくらなんでもやりすぎだ!馬鹿どもを懲らしめるそのためだけに、このあたり一帯の家屋を数十軒纏めて吹っ飛ばすことは無いだろ、このアホ!!」

 「……てへ♪」

 

 ええ、まあ。ただいま華雄さんの仰ったとおりでして。彼女の指差す、周囲一帯には、さっき、俺がごろつきどもをぶっ飛ばしたその余波で、見るも無残に全開した、かつて家屋だったモノの残骸が散乱しております。

 まあ、この辺はまだ再開発途中だったそうで、そのため人が全然住んでない地区だったお陰で、人的被害は一切出なかったのが、不幸中の幸いだったかも知れない。うん。良かった良かった。

 

 「全然良くないわ、この、あ龐徳!」

 「あれ?声に出してた?」

 「……思いっきり」

 「ったく。……まあいい。このことについては、後で月様直々に詮議してもらう。……あ、ところで娘、お前は怪我をしていないか?このあ龐徳が暴れまわった時、巻き込まれたりとかは」

 「……んな一々、人の名前の前に、あ、って付けなくても「何か言ったか?」……いえ、ナンデモゴザイマセン。アホウトクめは黙っておりますです、ハイ」

 

 あーこわ。一瞬、完全に目がマジでしたよ、華雄さん。

 

 「あー、あ、あははは……えと、すいません、私の方は大丈夫です。……てか、さっきの連中の方がよっぽど心配になるぐらいな状態になってましたけど、この人ちゃんと、私を庇いながら戦ってというか、彼らを痛めつけてましたし」

 「……ほう」

 「……へえ」

 

 ふむ。それに気付けていたのか。結構いい観察眼してるな、この子。

 

 「あ。そういえばまだ、姓名すら名乗っていませんでした。危ない所を助けていただいたと言うのに、礼を欠いて申し訳ありません。私は」

 

 この、彼女の自己紹介。それを聞いたとき、俺は我が耳を本気で疑ったね。だって、“原作”だと彼女、名前が出たぐらいで立ち絵どころか本編に一切出てきてなかった人物、だったんだから。

 

 

 

 「私は、一介の旅の武芸者にて、姓を徐、名を庶、字を元直、と申します。未熟者ゆえ不覚を取り、危うく、武人としてのみならず、女としてもその一線を失う所を救っていただき、感謝いたします」

 

 

 

 ……………………………………

 

 

 

 一方その頃。

 

 「では相国。後の事は」

 「はい、陛下。詠ちゃんと一刀さんにも、そう伝えておきます」

 

 相国、と。そう呼ばれた、薄いヴェールを被ったその少女が、室内にて此処まで二人きりで対していた人物にそう返し、そのこじんまりとした部屋から静かに退出して行く。

 

 此処で一つ注意書きを。

 

 この項については、あとでその場に居た当人から聞いた事を、この記録の筆者が纏めたものであるため、モノローグではなく語り口調になっていること、了承いただきたい。

 

 閑話休題。

 

 「……彦雲、おるか?」

 「はあ~い。ここにおりますわよお~ん」

 

 ハスキーボイス、といっていいだろうその声の主の呼びかけに応じ、何処からともなくその姿を現したのは、ボディビルダーよろしくポーズを決めた、マッチョなピンクビキニパンツ一丁の、スキンヘッドにおさげ髪の人物(?)だった。

 

 「……“また”、その姿でおるのか、お主は。その変化の術、朕の前ではする必要も無かろうに」

 「ああ~ら、私としたことがつい、うっかり。(ぼむっ)……これで宜しいでしょうか、陛下」

 「ん。……最近本当に良く思うのじゃが、お主の本来の姿、アレと今のとどっちだったか、朕でも本気で分からなくなっておるぞ、彦雲?いや、我が友“貂蝉”」

 

 先ほどのマッチョな姿から気合一発、煙と供に、その姿を黒い忍者装束のようなものを身に纏った、見目麗しい黒髪の美女へと変えたその人物に、溜息混じりにそうぼやくもう一人のその人物。

 

 「申し訳ありません、陛下。何分、市井にて情報を集めるには、あちらの姿のほうが色々と適しておりまして。正直、この王淩自身も、どちらが本当の姿だったか、時折忘れがちになっておりまして」

 「まあ朕は幼い頃からお主のあの姿を見慣れておるでな。今更とやかく言う気は無いが、少しぐらいは自重せいよ?……初見の者には少々キツイからの」

 「は。……それより陛下。計画、今の所は順調に進んでおりますが、用心だけはお忘れになりませぬよう。何しろ」

 「……お主の叔父御、か」

 「はい。……此処の所、叔父上が妙な連中と繋ぎを持って居ります。正体は未だ判りませんが、ただならぬ存在である事には違いありません。相国や御遣い殿が如何に有能であろうとも、その点ばかりはけして油断は」

 「分かっておる」

 

 す、と。王淩の語りに耳を傾けていたその人物が、ふいにそれまで座っていた椅子から立ち上がり、部屋に一つしかない窓へとその足を進める。そしておもむろにその窓を大きく開け放ち、その眼下にて活気に満ち溢れる街並みをじっと見つめる。

 

 「……この都を、そこに住まう民たちを、平穏に過ごさせることが朕に課せられた何よりの使命であり、皇帝という立場に生きる者の絶対の責務じゃ。それを己が欲望と自己満足のために乱そうとする者には、朕はけして負けはせぬ。漢室の、劉家の嫡子として生まれた以上、その天命、必ずや全うしてくれよう。そう、例え何があろうとも、な」

 「……はい」

 

 そう決意新たに宣言をした主の背を見つめつつ、王淩は密かにその胸中にて思う。

 

 (……でも。ここが“外史”である以上、定められた運命(ストーリー)には誰も逆らえないわ……。たとえ私が管理者であろうとも、相応の権限をもっていようとも、出来る事はただ、その流れのままに動く事だけ……。上級の、それも“甲級”の管理者が介入してこない限りは、ね……)

 

 哀しげに。しかし、その顔の表にはけして出す事無く、王淩彦雲こと、この外史の担当管理者である、乙級管理者五の席、貂蝉は物思いに耽る。

 そして、彼女が乙級という、上級管理者の中でもまだ、数々の制限に縛られる存在であるからこそ、今は全く知る術を持たなかった。

 

 そう。

 

 彼女の言う、上級管理者、その甲級にその席を置く、一人の管理者の介入が、すでにこの外史にて行なわれていることを。

 

 そして、今、彼女の目の前に居るその人物、この当該外史において、漢の十三代皇帝という立場に居る、十二分に美少女と言っていい容姿をしながらも、とある理由によって男装せざるを余儀なくされているこの少女、劉弁に待つ、この外史における哀しい末路を。

 

 そしてそれにより、彼女に数奇な出会いと未来が待って居よう事を。

 

 今は、それを知る者は、誰一人として存在しないのであった……。

 

 

 (一応)続ける(予定)

 

 

 

 【後書きと言う名の蛇足】

 

 ええ、皆様の仰りたい事はわかります。

 

 だからみなまで言わないでください。

 

 書きたかったんです。

 

 おいらと華雄と娘’s、その出会い。

 

 それをこうして、一度みなさまにご紹介、一度しておきたかったんです!

 

 もっとぶっちゃけると。

 

 

 

 リビドーさんが抑えられなかったんです!!(おwww

 

 

 とまあそれはさておき。

 

 華雄がおいらの嫁になったその経緯と、輝里、そして命の二人が、私めの娘となった、その経緯。

 

 それらを一度はっきりとした形で書きたったんですw

 

 では、本編解説はここまで。

 

 次回は、洛陽における輝里との邂逅の後の事。そして、命との接触、そのあたりを描いていきたいと思っております。

 

 それではみなさま、またの機会まで。

 

 再見!

 

 


 
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