No.483701

SAO~黒を冠する戦士たち~ 第七十一技 娘との別れ…

本郷 刃さん

第七十一話です。
タイトル通りの別れです・・・。

どうぞ・・・。

2012-09-14 09:18:47 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:12054   閲覧ユーザー数:11347

 

 

 

 

 

 

 

 

第七十一技 娘との別れ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

ユイは自身の全てを語り始めた。

 

「わたしは本来、このゲームが始まった際にプレイヤーの精神的ケアを行う役目を担っていました。

 ですが、突如システムからプレイヤーに接触する事を禁止されたんです」

 

システムからの行動禁止指示。つまりGMである茅場の仕業か…。

 

「けれどわたしは、禁止されながらもプレイヤーの負の感情をモニタリングし続けました。

 でもそのせいで、わたしのプログラムは崩壊寸前まで陥りました」

 

彼女が言うにはゲーム開始直後の負の感情は異様なものだったらしい、当たり前だ。

 

いきなりデスゲームを宣告されて、リアルに戻る事もできなくなったのだ。

 

その時湧き上がる人の感情は負。

 

怒り、悲しみ、憎悪、絶望、恐怖などが渦巻いたのだ。

 

俺はどちらかと言えば、生への執着のほうが大きかったかもしれないけど。

 

「でも、それらに触れている内に別の感情にも触れたんです。

 わたしは知らない間にそれを追うようになりました。そして、その先に居たのが……」

 

ユイは一度目を瞑ってから目を開いて、俺とアスナを交互に見やった。

 

「キリトさん、アスナさん、貴方達でした。二人が放つ感情は穏やかで心が癒されるものでした。

 わたしは……お二人に会うためにあの森にきたんです」

 

ユイは嬉しそうな表情で語った。俺も嬉しくなった。

 

アスナを見てみるとどうやら彼女もそう思ったようだ。

 

だがユイは表情を暗くしてしまった。

 

「でも、わたしはやっぱりAIですから……」

 

ユイは自嘲気味にそういった。そうか、彼女は……。

 

俺とアスナは顔を見合わせてからお互いに苦笑する。

 

この子はいきなり賢くなったのにどうやら分かっていないようだ。

 

俺はユイの頭をクシャクシャと撫で上げる。

 

「キリトさん…?」

 

「確かにユイはAIかもしれない……でもな、そんな事は俺達には関係ない」

 

「ユイちゃんはユイちゃんだもの…」

 

「アスナさん…」

 

俺とアスナの言葉を聞いたユイから、先程までにあった硬い表情が柔らかくなった。

 

そして俺は、伝えたい言葉を告げた。

 

「なんであれ、ユイは俺とアスナの……大切な娘だ」

 

「そうだよ、ユイちゃん」

 

「あ、あ……、う、パパ…。ママ…。グス、うわあぁぁぁぁぁ!」

 

俺とアスナの言葉にユイは大きく泣き出した。俺とアスナが彼女を優しく抱き締めてあげた。

 

 

 

しばらくしてからユイは泣き止んだ。泣く前に比べて表情がはればれとしている。

 

「大丈夫? ユイちゃん」

 

「はいです」

 

「なら、帰ろうか。みんなにユイの事を紹介しないとな」

 

訊ねたアスナに答えたユイ、俺はみんなにもユイのことを紹介したいと提案した。

 

「ありがとうございます……でも、ここでさようならです。パパ、ママ…」

 

「「えっ?」」

 

ユイのその言葉に俺達は固まってしまった。彼女の足元からポリゴン化が始まっている。

 

「そんな……」

 

「ユイ…。どうして……」

 

俺達はわけがわからずに消えかけていく彼女に問いかける。

 

「先程の戦闘で、わたしはGM権限を行使してボスを消滅させました。

 けれど、それを感知したシステム『カーディナル』によって消去が始まったんです」

 

「っ!?」

 

「どう…にも、ならないの…?」

 

ユイが放った言葉に、俺は驚愕し、アスナは涙を流し始めた。

 

彼女は静かに頷いた。なんでだ…、彼女はなにも、なにも! なんでこんな!

 

「パパ、ママ…。笑ってください」

 

消えゆくユイの顔は笑っている。そうだ。なら、俺達も笑って見送ってやらないと。

 

「ユイ、ありがとう…」

 

「(グス)ど…ぅ…かな? 笑えてる?」

 

アスナは必死に涙を堪えながら、それでも笑顔を浮かべた。

 

もっと一緒に居たかった。もっと遊んであげたかった。

 

もっと出かけさせてあげたかった。もっと色々な事をさせてあげたかった。

 

なのに、それも叶わないのか。でも、それでも…。

 

「ユイ! お前はずっと、俺とアスナの大切な娘だ! いつまでも!」

 

俺は必死になってそう叫んだ。アスナも隣で強く頷いていた。

 

「パパ、ママ。本当にありがとう、さようなら……」

 

―――パアァァァァァ!

 

その言葉を最後に……、ユイは消滅した。

 

「あ……あ…あ、うあぁぁぁぁぁん!!!」

 

アスナは涙を堪えられなくなりその場に崩れ落ちた。俺はアスナを抱き締める。

 

俺は唇を強く噛み締めた。ほんの少しのダメージ減少が起きるがそんな事はどうでもいい。

 

ユイが消えたその場所にあるオブジェクト型のコンソールに目を向けた。

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

ユイちゃん消滅・・・・・・こうしないとユイちゃんをALO編に登場させる方法が無いんですよね~。

 

どのみちSAOはクリアされると消滅する仕組みになっていますからね。

 

次回で「朝露の少女編」は終了です。

 

それではまた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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