◆ 第30話 やがみけ! ◆
……なんか重要な事を忘れてる気がする。
どうも、はやて嬢のお家からおはようございます。みぃです。
昨日の一件で考えるのがめんどくさくなったんで、あのままお泊まりでした。
魔力も枯渇寸前だったから、しょうがない! ……よね?
何に言い訳してるのかわからないけど、一応しておくよ!
果たして、この言い訳には意味があるんだろうか?
言いようのない不安がぬこの胸の中で渦巻いているんですけど……。
ま、まぁ、とりあえず置いておこう。
今ははやて嬢の問題の事を考えなくては!
そう思ったところで気がついたが、はやて嬢がいないんですよね、コレが。
そんな現在12時少し前……寝坊ってレベルじゃねぇですよ!?
ハッ! もしやあの騎士団(笑)にさらわれたんじゃ!? 急いで探さなk「ただいまー」
……そんな事はなかったぜ。
いつまでも orz やってるわけにもいかないので、とりあえずはやて嬢たちを出迎える事に。
(おかえりなさいです)
「ただいま! ちょっと待っとってな、すぐにご飯にするから」
コレが噂の幼妻……冗談です。さーせん。
なにやらたいそうな荷物を抱えて帰ってきたようである。
どうやら服やらなんやら生活必需品を買ってきたみたいですね。
ということは、だ。
はやて嬢はこの人たちと一緒に暮らすことにしたっぽいです。
うーむ、実際ぬこが口出しできる問題じゃないんですけども、大丈夫なんですかねぇ?
「で、お前はいったい何なんだよ」
「うむ、主の使い魔と言うわけでもなさそうだが」
ぬこがうんうんと唸っているとロリっ娘と犬耳の男性が話しかけてきた。
どうでもいいけど、その犬耳のまま外に出たわけじゃないよね?
ともあれ、自己紹介をしておきましょう。
(フハハハ、何だかんだと言われたら、答えてあげるが世の情け! 世界の破壊を防ぐため(中略)ラブリーチャーミーな敵役!)
「いつから敵役になったん?」
ぱこっ
(痛い!?)
はやて嬢におぼんで叩かれました。すいません真面目にやります……
というわけで、軽くお互い自己紹介。
ピンクの人がシグナムさん、金髪の人がシャマルさん、ロリっ娘がヴィータ、犬耳がザフィーラさんと言うらしい。
闇の書というのは魔力を蒐集する事で大いなる力?とやらを手にする事ができるらしい。
闇とか大いなる力とか、厨二臭が迸っているような気がします。
まあ、それさておき、シグナムさん達はその蒐集とやらをサポートするための騎士であるらしい。
ちょっとニュアンスが違う気がしないでもないけど……
んで、その大いなる力を手に入れる事ができれば、はやて嬢の足も治せるってことみたいです。
どうやらシグナムさん達はすぐにでも蒐集しようとしたらしいけど、はやて嬢に止められたらしい。
自分の足が治るかもしれないのに、「人様に迷惑がかかるからダメ」なんて大の大人でもこんな事を言える奴はそういないんじゃないかと思うね。
まったく、ぬこの周りの女の子は何でこんなに強いんだろうね……ご主人然り、フェイト嬢然り。
事実だから、何回でも言ってしまいますね、このフレーズは。
それで、その魔力の蒐集の代わりにはやて嬢の家族として暮らすことがはやて嬢の願いなんだそうな。
そしてシグナムさん達もそれを戸惑いながらも受け入れようと思うとの事。
(そうですか……なら、はやて嬢の気持ちを裏切っちゃダメですよ? 明るく振舞っているけど、本当に寂しい想いをしてきた娘なんですから)
「無論だ。主はやては我らが守る」
シグナムさんがそう言うと他の3人もしっかりと頷いてくれた。
……なんだか仰々しいと言うか、若干他人行儀くさい気がしないでもないけども、
打ち解けて本当の家族みたいになるのも時間の問題だとぬこは思うね。
だって、はやて嬢があんなに嬉しそうにしてるんだから。
◆
いろいろ一段楽したところで、昼食までご馳走になったぬこですが、いつまでもここにいるわけにもいかないので一旦帰ることに。
「えぇー、もう帰ってしまうん? せっかくシグナムたちの歓迎パーティをしようと思っとたのに……」
(気持ちはありがたいんですけどねー。何やら朝起きてから嫌な予感がしまくってるんですよ……)
……いや、実際ね、うすうす感づいてはいるんですよ?
でも、幸せな時間は長い方がいい、そうは思いませんか!
現実逃避? そうですね、逃げてるだけです。
でも! ぬこに優しくない現実なんて嫌いですっ!!
「……大丈夫ですか? なんかすごくビクビクしてるみたいなんですけど」
(アハハ、いい嫌だなぁシャマルさん。ぬ、ぬこがそんなビクビクなんて……)
「いや、お前は一度鏡を見た方がいい」
そんな情け容赦一切ないシグナムさんの言葉に頷く皆さん。
(分かってる、分かってますよ。ぬこがビビってることぐらい。でも、ここで引くわけにはいかないんです!)
「言ってる事はかっこいいのに、すごく情けなく見えるのは何でだろーな」
「情けないからだろう」
「コラ、ヴィータもザフィーラもホントのこと言っちゃあかんよ」
(好き放題言ってくれますねー……。そろそろぬこ泣いてもいいよね?)
ふふ、ぬこに味方はいないらしいね。
まぁ、味方がいたとしてもぬこが星の光によって塵になってしまう未来は変わらないんですよねー。
(じゃあ、本当に帰りますね)
「そっか。んじゃまた翠屋でなー」
(はい、またです)
そう言って八神家から出て行くぬこであった。
「そしてその後、みぃ君を見たものはおらへんかったんや……」
(ちょっ、はやて嬢ッ!?)
それはちょっと洒落になりませんよ!?
「ようやく帰るみたいね、あの子……」私、リーゼアリアは小さなため息と共にそう呟く。
しばらくここに顔を出さなかったと思ったら、あの子はいつの間にか魔法が使えるようになっていた。
闇の書が起動する日の夜。
闇の書の主を常時結界を展開しながら公園に行き、そこで魔法を披露し始めたときには驚いたものだ。
ロッテも私と一緒に目を白黒させていた。
やはり、先のジュエルシードの事件に関わってしまっていたんだろう。
こんな風に影響が出るとは思わなかったわ……
まさか闇の書の起動時に主がいないなんて……前代未聞じゃないの?
まぁ、支障はなかったみたいだけど。
でも、ヴォルケンリッターがあんなに取り乱すところが見れるとは思わなかった。
「どうする? このままあの子を闇の書に関わらせるの?」
「うん、やっぱり忠告はしておいた方が……。いやでも、私達の事を知られると言うのは、拙いわよね」
「でもやっぱり危険だよ。最終的には“アレ”で封印をするにしても」
「そうね……」
ロッテの言うことも確かに一理ある。
それに、おそらく蒐集するなら真っ先に狙われることになるだろう。
闇の書の封印に多少の犠牲は仕方ない……。これは最終的な犠牲者を増やさないために必要なこと。
それでも。我がままかもしれないけれど、私はあの子に犠牲になって欲しくない。
それはきっと、ロッテも同じ事なんだと思う。
「決まりだね。じゃあ早速追いかけなきゃ」
「あっ、ロッテ! そんなに急がなくても……」
私の返事を待たずに走り出して行くロッテに苦笑しつつも、私も後を追った。
ちょうど家の前のところで追いついて、みぃと話をしようと思ったその時にいきなり結界が展開されたのであった。
慌ててロッテの方を見ても、首を振るだけ……じゃあ誰が?
みぃを見てみると、金縛りにあったかのごとくピタリと止まっている。
そして、そのみぃの視線の先には女の子とフェレットが……報告にあった民間協力者、みぃのご主人様ね。
「フフフ、お帰りなさい。みぃ君?」
(あわ、あわわわっ! ご、ご主人……)
「私、すっごく心配したんだからね? 朝起きたらみぃ君がいなくて、ユーノ君に聞いても知らないって……」
(いや、あの、そのちょっと魔法を、使いすぎて眠っちゃってて、ですね……)
「ふーん? 何で魔法を使ったの? それも倒れるぐらいまで」
(いや、ちょっとお友達の誕生日でして、魔法を見せてあげたいなー、なんて、思ってですね……)
女の子からのプレッシャーが膨れ上がった気がした。
そして、みぃは可哀相になるほど震え上がってしまっている。
「まあ、それは後からたっぷり訊くとして。こんなに心配を掛けてくれたみぃ君にはお仕置きが必要だよね?」
(アハハ、できれば遠慮したいなーとぬこは思ってる所存ですよ?)
「あはっ、遠慮することないんだよ? せっかくユーノ君が結界も張ってくれたんだし、ネ?」
(……ユーノ)
「諦めて成仏してくれ……」
(見捨てる気か!? 助けろよっ!)
「無理だよ、なのはもこんなに怒ってるんだし。それに僕だって、訳も分からず美由希さんの部屋に叩き込まれたこと怒ってるんだからね」
「ユーノ君? 私怒ってなんかないよ?(にこっ)」
「あ、あぁ、うん、そうだね?」
顔は笑ってる。それなのに目だけが一切その笑顔に釣り合っていない。
な、何をしようと言うのかしら……?
「じゃあ、そろそろいくね?レイジングハート!」
『……Shooting mode set up』
女の子が突き出したデバイスの先に恐ろしいほどの魔力が収束していく。
「スターライトッ」
(ぬこ、フェイト嬢を尊敬するよ。こんなもの喰らって生きてられるとか……)
「ブレイカーーー!!」
巨大な桃色の魔力の塊がみぃに向かって放たれた。
ギニャーーーーーーッ!!?
((いやぁーーーッ!?))
私とロッテが声にならない悲鳴をあげた。
し、死んじゃうわよッ!あんなのに当たったら!?
放った本人はすっきりしたのか、まだ腹を立ててるのか知らないけどフェレットを連れて家の中へ入っていった。
残されたのはぷすぷすと煙を上げながら倒れてるみぃと、私達だけだった。
「あ、アリアっ! ボーっとしてる場合じゃないよ、早く治療しなきゃ!」
「そ、そうね!」
急いで魔法をかける。
いくら非殺傷設定の魔法だからってあんな魔法を人に向かって撃つなんて……いや、正確には猫なんだけど。
そういう問題じゃないわよ! 非殺傷設定をこれほど不安に感じたことはない。
絶対敵には回したくない……ロッテも同じ事を考えてるのか、隣で身震いをしている。
(あはは~きれいな彼岸花ですねー。えっ、なに? この船に乗ればいいんですか? 変な鎌を持ってるお姉さん)
「乗っちゃダメぇ!?」
(んあ? ぬこ生きてます?)
あ、危なかった。もう少しでこの子をサンズリバーを渡らせるところだったわ……
とりあえず一安心ね。
(お? いつぞやの美猫姉妹さんではないか……)
「あなたアリアに感謝しなさい、危ないところだったんだから」
(……リンディさん達が地球に魔法がないとか言ってたけど、アレ嘘じゃね? なんですか、このエンカウント率)
「それより、大丈夫なの? あんな砲撃を喰らったら普通ひとたまりもないんだけど……」
(あぁ、大丈夫ですよ。ご主人も手加減してたし、こうして治療してもらったわけですし)
……アレで、手加減? 手加減の法則が乱れる!
本気で撃ったらどうなるの……? なんて、恐ろしくて訊けない。
(とりあえず、ありがとうございました。えーと……?)
「あぁ、私がリーゼアリア、こっちがリーゼロッテよ」
「よろしくね」
(ぬこはみぃって言います。どうぞよろしくです。アリアさんにロッテさん)
私達と比べたら本当に赤ん坊みたいなものだけど、しっかりしてるわね。
それに、やっぱり―――
『お父様……』
(はい……?)
「な、なんでもないわ!気にしないで!」
「そ、そうそう!」
(……?)
「も、もう行くわねっ。さっきみたいなことになっちゃダメよ!」
「じゃあ、またね!」
(はぁ、それではまたです)
誤魔化すように慌てて立ち去った。
まさか、口に出しちゃうなんて……それも二人同時に……
うぅ、変に思われてないかしら。
「ご、ごめんねアリア……」
「ううん、私も口に出しちゃったもの。恥ずかしいわ……」
「そうじゃなくて。いや、それもだけど…あの子に忠告するの忘れちゃったなって……」
「あっ……」
あまりにも衝撃的な光景を目にしたせいで、すっかり忘れてしまってた。
あんなに哂って砲撃する魔導師を見たから……
「……また、今度にしましょうか」
「そうだね……」
別に、怖がってるわけじゃない。と、思う。
◆ あとがき ◆
読了感謝です。
久しぶりのリーゼ姉妹ですが、特に何もおきませんでしたねー。
これも全部ぬこってやつが悪いんや! 多分。
では、誤字脱字などあればご報告いただけるとありがたいです。
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