No.472312

Masked Rider in Nanoha 二十九話 波乱の初戦闘

MRZさん

機動六課最初の出動。それが新たな闇との戦いの幕開けとなる。
一方でジェイル達も六課と接触し事態が大きく動き出す。

2012-08-19 09:17:12 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3016   閲覧ユーザー数:2878

「緊張するね」

 

「……まあね」

 

 六課所属のヘリに揺られながらスバルとティアナはそう言い合った。その互いの手にはつい先程手渡された待機状態の新型デバイスが握られている。レリックと呼ばれるロストロギア。それが六課が追いかける邪眼に関わるだろう鍵。その裏には聖王教会が関わっているらしいとアルトが噂程度に二人へ言っていたが、そんな事は今のスバルとティアナにとってはどうでもよかった。

 何故なら、この日四人は本来ならばそれぞれのデバイスの試運転を兼ねた訓練をする事になっていた。だが、それをしようとした矢先に六課中へアラートが鳴り響いたのだ。レリックを輸送中の列車が謎の機械に襲撃されているという情報が入ったのはその直後。

 

 よって、即座にフォワードメンバー四人となのはに出動命令が下され、こうしてヘリで現場に向かっていたという訳だった。後でフェイトも合流予定だが、もしかするとそれが遅れる可能性もあるために四人には大小の緊張があった。

 スバルとティアナは陸戦魔導師としての経験があるが、それでも災害担当だった事もあり今回のような荒事は慣れていない。エリオとキャロも同じく荒事の経験値は多くはない。それを知っているなのはは柔らかく四人へ声を掛けた。少しでも緊張を解すために。

 

「大丈夫だよ。訓練通りやればみんななら出来るからね」

 

「そ、そうですね」

 

「キャロ、心配ないよ。なのはさんもいるし、フリードや僕もいる。スバルさんもティアさんだって」

 

 それでも表情にやや緊張が見えるキャロに気付き、エリオがその手に自分の手を重ねてそう断言しながら周囲を見渡す。スバルもティアナもそれに頷いて返す事でエリオの思いに応えた。

 最後にフリードが一声鳴いてキャロを励ました。そんな周囲の暖かさにキャロも嬉しく思い、同時に心強くなった。そんな四人を見てなのはは苦笑。やはり上司の自分よりも同僚でパートナーであるエリオの方がキャロの励まし方を知っていると感じたのだ。

 

「とにかく頑張ろう! これが六課での初任務なんだからさ!」

 

「そうね!」

 

「はいっ!」

 

「……はい!」

 

 スバルの掛け声にティアナが、エリオが、キャロが応えて行く。それを聞きながらなのはは笑みを見せた。フェイトの合流は四人が思っているよりも早くなると知っているのだ。だが、そんな彼女も知らない事がある。

 実は、なのは達には内緒でもう一人今回の出動に参加している者がいるのだ。その存在はなのは達が安心して任務を遂行出来るようにと後ろに控えている。ちなみに、その者がヘリを追跡している手段を誰も知らない。

 

「よし、じゃ」

 

「なのはさん、どうやら飛行型もいるみたいっす!」

 

 気分が盛り上がった四人を鼓舞しようとした瞬間、ヴァイスがやや上ずった声でそれを遮った。それになのはも少し表情を険しくし、頷いた。この中で空戦が出来るのは彼女とスバル。だが、現状ではスバルを空戦に当てる訳にはいかない。

 何故ならば、車両の安全を確保するために四人で事に当たって欲しいからだ。それに相手の戦力が未知数な状況で空戦に不慣れであろう新人を投入する程、なのはは愚かでも無慈悲でもなかった。

 

「ヴァイス君、ハッチ開けて」

 

「うす。頼みます、なのはさん」

 

「私が空は抑える。四人は、無理をしない程度でレリックの確保を目指して。必ず私かフェイト隊長も援護に行くから」

 

「「「「はい!」」」」

 

 なのはの言葉に四人は凛々しい顔で答えてみせる。それになのはは微笑むと、大きく頷き開いたハッチ向かって走り出す。そこから彼女が飛び出すと同時にその胸元から紅い宝玉が姿を見せた。

 それは、なのはの大切な相棒にしてかけがえのない友人でもあるインテリジェントデバイス、レイジングハートだ。それを手にし、なのはは高らかに叫ぶ。

 

「レイジングハート、セェェェット、アップッ!」

 

”スタンバイレディ。セットアップ”

 

 眩い光に包まれ、なのははその身を白いバリアジャケットに包む。そして、即座に飛行魔法を展開しその足に魔力で出来た翼を出現させた。そこには、管理局にその名を轟かすエースの姿があった。

 

「スターズ1! 高町なのは、行きます!」

 

 前方に見える飛行型のトイを見つめ、なのはは何やら妙な感覚を覚えた。そう、どこかで似たような物を相手にした事があるような気がしたのだ。だが、それを考えたのも一瞬。すぐさま様子見のアクセルシューターを放つ。

 その誘導性を完全発揮するには、なのはといえどもその動きを止めねばならない。だが、その精度を度外視すれば動きながらでも放つ事は出来る。しかし、それでも十分誘導性は高い。本来ならばそれをもって相手をあっと言う間に撃破出来る程に。

 

「シュート!」

 

 だが、そんななのはのシューターをトイは避けてみせた。それも際どくではない。余裕さえ見えるぐらいにだ。それになのはは内心驚愕する。絶対の自信があった一撃ではない。それでも、そんな風にかわされるとは思えないものだった。

 故になのはは相手の戦力を冷静に分析する。今のままでは撃破は難しい。かといって動きを止めればやられかねない。と、そこまで考えた時だった。一体のトイが突然破壊されたのは。

 

 何が起きたか分からないなのはだったが、レイジングハートがその理由を教えた。そう、かなりの遠距離から正確な射撃を行なった者がいたのだ。

 

”マスター、あれを”

 

「あれって……クウガとゴウラム!?」

 

 そこには、ゴウラムに乗ったクウガの姿があった。ゴウラムはなのはが月村家を訪れた際に五代から彼女へ紹介されている。そのため、なのはにはゴウラムの存在に対する驚きは少ない。今の驚きはゴウラムが魔法を使わず次元世界の壁を超えて来た事に驚いていたのだ。

 一方クウガは緑の体、ペガサスフォームになってなのはを援護した。なのはがクウガに気付いた事を受け、彼もまた彼女へ気付いていると合図するようにサムズアップを送る。それと同時に姿が緑から赤に変わった。

 

 すると、その手にしていたペガサスボウガンがストレージデバイスへ戻る。そう、なのは達を追っていたのはクウガ。万が一に備え、はやての要望に応えてゴウラムを呼び、その背に乗ってヘリを追尾していたのだ。

 クウガはそのままゴウラムでトイを蹴散らすようになのはへ接近する。それに呼応し、なのはもその近くへと移動した。並び合う二人は眼前のトイ達を見つめながら声を掛けあった。

 

「なのはちゃん、大丈夫?」

 

「はいっ!」

 

「実はさっきフェイトちゃんは遅くなるって光太郎さんから聞いたんだ。だから、ここはしばらく俺とゴウラム。それになのはちゃんとレイジングハートで頑張ろう!」

 

 そういうと、クウガは再びその姿を変えるべく構えた。

 

「超変身!」

 

 その体を今度は青に変え、クウガはデバイスを振り回す。その瞬間、それがドラゴンロッドへ変化した。それを見てなのはも意識を切り替える。クウガは空戦に対応しただけで得意でない事に変わりはないのだと。

 だから自分が攻撃の起点となってクウガを援護しようと思い、なのはは再びシューターを放つ。だが、それは先程と違い相手を翻弄するような軌道は描かない。そう、それは相手を倒すための攻撃ではなかった。

 

「おりゃ!」

 

 それは、クウガの攻撃を当てるための攻撃。なのはの攻撃をかわす事を利用し、クウガがその回避した瞬間を叩く。それで撃破出来るのはたった一機にすぎない。だが、一機は撃破出来る。だとすれば、この戦いに勝利するのは勿論決まっている。

 

「次、行きますよ!」

 

「分かった!」

 

 そう、彼ら二人だ。空を自由に翔けるなのはが相手の動きを読み、誘導したところをクウガが叩く。その内、トイ達はなのはが自分達を誘導していると理解したのか、その攻撃をある程度かわさなくなった。

 それにシューターに当たったトイが大したダメージを受けなかったのもある。AMFのためだ。よって、クウガの一撃の方が警戒すべきと思ったのだろう。しかし、それさえなのはにとっては予想内。

 

 それがどういう事かをトイ達が理解するのはすぐだった。一機のトイがなのはのシューターを避けもせず強引に突破しようとしたのだ。そしてその機体がシューターに当たった瞬間、そのボディが見事に砕け散った。

 

「残念でした。それは、多層コーティング弾だよ」

 

”撒餌に食いつきましたね”

 

 AMFさえ貫ける魔力弾。それをなのはは数ある中にいくつか配置したのだ。AMFを装備していた事に驚いたなのはだったが、それで何も出来なくなる程彼女は弱くはなかった。

 故に彼女は、クウガへ警戒された時のための手段としてAMFに対する魔法を講じたのだから。これに相手は混乱を見せる。クウガを警戒すればなのはに。なのはを警戒すればクウガに倒される事になったために。

 

 こうなればもう彼らに勝ち目はなかった。次第に数を減らすトイ達。だが、まだその数は多い事を見たクウガはそれを一気に片付けるべく再び姿を変えた。それは緑。そして手にしたロッドがボウガンへ変化し、更に体に電流が走る。

 

「これで……なのはちゃんっ!」

 

「分かりました!」

 

 ライジングペガサスとなったクウガはそのライジングペガサスボウガンの威力を持って一気に仕留めようと考え、なのはへ声を掛ける。なのはもそんなクウガの狙いを悟り、敢えて相手の中心へ跳び込んで囮を買って出る。

 そんな中でなのはとクウガは互いの心の中でタイミングを図っていた。互いに好機を待ちながらついにその瞬間が来た。中心へ跳び込んだなのはを全方位から取り囲むようにトイ達が一斉に襲い掛かったのだ。それを見て二人が同時に叫んだ。

 

「「今っ!」」

 

 放たれるライジングブラストペガサス。三発の電流を纏った空気弾がそれぞれ中央にいた相手を打ち抜いていく。それと同時になのはは高速移動魔法であるフラッシュムーブを使いその場を離脱した。

 トイ達はまるでそれを待っていたかのように爆発を起こしそれに巻き込まれて誘爆していく。しかし、何体かはそれを逃れてクウガへ殺到する。しかしクウガはそれを見ても何も動こうとはしなかった。何故なら、トイ達の頭上には彼女がいたからだ。

 

”ディバイン……”

 

「バスタァァァ!」

 

 なのはの砲撃魔法がAMFごとトイ達を貫いていく。こうして残っていたトイ達も綺麗に片付けられ、二人は互いにサムズアップ。だがその安らぎも束の間、なのはへ通信が入る。それはロングアーチからの第二波接近中の知らせ。それを聞き、なのはに少しだけ焦りの色が出た。

 出来る事ならスバル達の方へ向かいたい。しかし、クウガ一人では相手の大群を相手にすると辛いとも分かっている。自分の局員としての気持ちはこのままここでクウガと制空権を抑えるべしと告げている。しかし個人としてはスバル達の援護に向かいたい。そんな風に考えた時、なのはにある言葉が思い出される。

 

―――なのはちゃんが思っている程、人って弱くないよ。

 

(そうだ……スバル達は弱くない。私が思っているよりも、ずっと強い。なら……っ!)

 

「五代さん、もう少し助けてもらっていいですか?」

 

 自分がすべきはスバル達を信じ、ここで空の敵を完全に食い止める事。フェイトさえ合流すればクウガにスバル達の援護に向かってもらえる。そう考え、なのははレイジングハートを構えた。

 そのなのはの考えを理解し、クウガも快く返事を返しながら体の色を青へと変える。なのはから焦りが消えた事に安堵して。

 

「いいよ。フェイトちゃんが来るまで、だね」

 

”そういう事です”

 

 共に軽く拳を合わせ、迫り来る相手に備える。クウガは手にしたロッドを振り回しながら遠く見えてきたトイ達相手に身構えた。隣のなのはも同様に。ここから先へは行かせない。そんな思いを体中から漲らせて。

 

 

 

 なのはとクウガが合流した頃、スバル達を乗せたヘリは問題の列車の上空へと到達していた。それを開いたハッチから見下ろす彼女達の顔にもう不安はない。何故なら、なのはの元にクウガがいると通信で聞いたからだ。今も自分達のために空の敵を食い止めている。それを聞いた四人は気持ちを引き締めたのだ。

 戦う事が嫌いな五代。それが自分達のためにその戦いをしてくれている。それを聞いてどうして気持ちが昂らずにいられようか。仮面ライダーが戦ってくれている。それも、自分達のために。なら、それに応えようと思ったのだ。

 

「スターズ3、スバル・ナカジマ!」

 

「スターズ4、ティアナ・ランスター!」

 

「ライトニング3、エリオ・モンディアル!」

 

「ライトニング4、キャロ・ル・ルシエとフリードリヒ!」

 

「キュクル〜!」

 

「「「「行きますっ!」」」」

 

 ヘリから飛び降りる四人。スターズコンビとライトニングコンビはそれぞれ別の場所向かって降りていく。そして全員が互いへ笑みを見せ合い、それをキッカケにその手にしたデバイスへ叫ぶ。

 

「マッハキャリバー!」

 

「クロスミラージュ!」

 

「ストラーダ!」

 

「ケリュケイオン!」

 

「「「「セットアップっ!」」」」

 

 その声をキッカケに起動する四つのデバイス。それぞれの魔力光の色がその体を包みこみ、その身へバリアジャケットを纏わせる。スターズのそれはなのはの物を意識したデザインのバリアジャケット。対するライトニングはフェイトの物を意識したデザインとなっていて、それぞれに合わせた特別製だ。

 準備完了した四人は二手に分かれて無事に車両の上に降り立つ。スバルは、ローラーブーツの代わりとなったマッハキャリバーの感触を確かめるように軽くその場で足を動かし、ティアナは、アンカーガンの代わりになったクロスミラージュを眺めた。

 

 だが、二人がその新しい相棒へ何か思う前に一機のトイが襲い掛かる。なのはからの報告でAMFを使っている事は二人も知っていた。だが、スバルにはそんな事は関係ない。持ち前の力を乗せたリボルバーナックルでそれを叩き伏せるのみだ。

 力強いその一撃に沈黙するトイ。その光景に安堵するティアナ。しかし、スバルはその感触にどこか言い様のない違和感を感じていた。

 

(何でだろ……あれだけ力入れたのにこれだけしか壊れないなんて……)

 

 彼女の予想ではかなりひしゃげると思っていたのだ。だが、それに反してトイは沈黙はしたものの派手に壊れはしなかった。その事に意識を向けていたスバルだったが、そこへ再びトイが襲い掛かる。

 それをオレンジの魔力弾が迎え撃った。それはスバルの眼前を横切りながらトイへと向かう。その魔力弾は正確にトイを捉えるものの当然AMFによって無力化される。しかし、それでもティアナに少しの焦りも不安もない。

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

 何故ならその目的はトイを倒すためでもなければ止めるためでもなかったからだ。そう、スバルへ気付かせるためのもの。先程眼前を横切らせたのはそういう事だ。見事ティアナの狙い通りスバルはトイの襲撃に気付き、マッハキャリバーを加速させてトイの攻撃をかわして切り返すと同時に加速を乗せた拳を打ち込んだのだ。

 それに耐え切れずトイは爆発四散した。それにやっと満足の行く結果が得られたスバルは内心ガッツポーズするも、そのマッハキャリバーの凄まじい加速力に若干戸惑いも感じていた。何とかそれを制御し彼女が視線を動かすと、ティアナは既に意識を次の車両へ向けていた。

 

「……どうやら沢山いるみたいね。行くわよ、スバル。相手は魔法が効き難い分、アンタの力を頼りにさせてもらうから」

 

「うんっ! 代わりにティアはサポートよろしくね!」

 

 スバルの言葉に笑みを返して頷くティアナ。こうして二人はレリックのある貨物室目指して進んで行く。その頃、反対側の車両でもトイとの戦闘が始まっていた。

 

「これで……!」

 

「ラストっ!」

 

 トイの目のような部分へストラーダが突き刺さる。それが見事にトイの機能を停止させたのを確認し、エリオとキャロは息を吐く。二人はAMFに苦戦を強いられたが、キャロのブースト魔法の加護を受けてエリオがストラーダの加速力を使った突進攻撃でトイを確実に一機ずつ仕留めていた。

 光太郎に言われた安易に魔法に頼るなとの教え。それがあればこそエリオはAMF相手でも何の恐怖もなく立ち向かったのだ。彼は魔法での攻撃が通用しにくいのなら通常攻撃の威力を上げればいい。そう考え、その場で発動する魔法ではなく効果範囲外からの高速移動魔法による加速力を加えた攻撃を選んだのだから。

 

「……エリオ君、凄いね」

 

「キャロが色々と底上げしてくれたからだよ。でも……」

 

 そう言ってエリオは沈黙したトイ達を見つめた。その強度に最初エリオも驚いたのだ。何せストラーダで傷一つ付けられなかったのだから。故に自身の強みであるスピードを乗せる事で破壊力を増した。それだけではない。万が一を考え、キャロに切れ味や増した速度を更に強化してもらったのだ。

 それに加えて狙った部分は攻撃にも使っていた目のような部分。エリオはそこが一番脆いと踏んだからだ。それが通用した事に内心安堵しつつ、エリオはキャロへ視線を向けてこう言った。

 

―――フリード、本来の姿にする事を考えた方がいいかもね。

 

 それが意味する事を察し、キャロはどこか不安そうな表情を浮かべる。だが、それを見たエリオがその手を握って優しく告げる。キャロなら出来ると。きっと制御して、みんなを守るためにフリードを使役出来るはず。そう想いを込めて。

 それを感じ取り、キャロも小さくだが確かに頷いてみせた。いざとなったらフリードを制御し本来の姿にするとの答えがそこに込められていた。それにエリオは嬉しそうに頷いた。キャロの目に力強さを見たのだ。

 

「でも、AMFの効果範囲外へ行く必要があるから機会を見計らおう」

 

「そうだね。車両の中は狭いし、やるとしても外でかな」

 

 キャロの言葉に同意し、エリオは視線を別車両に向ける。そこにいるであろう多くのトイを想像したのか表情を凛々しくして。こうしてエリオとキャロも車両内へと足を踏み入れていく。中で待つ多くのトイを警戒しながら。

 

 

 なのは達が出動する一時間前、フェイトは光太郎を伴ってゼスト隊の隊舎を訪れていた。少し前にクイントから頼みたい事があると言われ、やっと何とか時間を作って会いに来る事が出来たためだ。

 

 光太郎は運転手として連れて来たのだが、実はギンガへ会わせるためでもあった。そう、今日クイントへ会いに行くと教えると、彼女からギンガが来るので光太郎を連れて来て欲しいと言われたのだ。

 原因は、スバルがギンガへ光太郎がRXだと教えたため。あの話の最後になのは達は関係者以外には言ってはいけないと言ったのだ。だが、スバルからすればギンガは立派な関係者。共にあの空港火災でライダーに出会った者。故に彼女は話したと言う訳だった。

 

(……でも、六課関係者じゃないんだけどなぁ……)

 

 そう思い、フェイトは苦笑。そこまで詳しく言わないでも分かってくれるだろうと思っていたのだ。これは帰ったら軽く注意をしなければと思いながら彼女はこうも考えていた。スバルの過大解釈の相手がギンガで良かったと。

 事実、ゲンヤやクイントもいつかギンガに光太郎の事を教えたいとフェイトへ打ち明けていたのだ。そう、二人が光太郎がRXだと知っているとフェイトが聞いたのは初対面の時。光太郎経由で知り合ったため、フェイトがRXを知っていると聞いた途端二人から言われたのだ。光太郎は元気にしているかと。

 

 そこで軽くだが光太郎と二人の話し合いを教えてもらい、フェイトは思わず言葉を失ったのだ。光太郎が自分から正体を明かした事に。

 

「……何か、こう考えると光太郎さんも翔一さんと同じような気がするなぁ」

 

「何か言ったかい?」

 

 フェイトの呟きを聞き、光太郎がそう尋ねる。それにフェイトは何でもないと返して隊舎の中へ入って行った。その背中を見つめて光太郎は小首を傾げた。彼は当然フェイトの呟きを聞いていた。だからこそそう聞いたのだ。翔一と自分の何が同じなのかまでは分からなかったからために。

 そして隊舎内に入った二人をギンガが出迎えた。彼女は本来ゼスト隊ではなく陸士隊の108所属。しかし、今日はここへとある捜査の手伝いとして呼ばれていたのだ。そう、それはあの違法施設の件だ。

 

 だがそれは建前で、本当は光太郎に会わせるためにクイントが夫へ無理を言って実現させただけなのは言うまでもない。そのための理由としてあの事件を使っただけなのだから。それを知らないギンガは、案内するべく廊下を歩きながら後ろのフェイトへ小さく不満を述べた。

 

「もう、どうして教えてくれなかったんです?」

 

「ゴメン。でも、何となく理由は分かるでしょ?」

 

 やや曇り気味の表情でフェイトはそう返してちらりと後ろへ視線を動かす。その声と表情に込められたものに気付き、ギンガは一瞬「あっ」と声を漏らした。しかしすぐに気を取り直し、フェイトへ申し訳なさそうに告げる。

 

「すみません。軽率でした」

 

「ううん、気持ちは分かるから気にしなくてもいいよ。光太郎さん自身も自分からナカジマ三佐達へ教えてたしね」

 

 フェイトとギンガのやり取りを聞きながら、光太郎はその間何も言わずにいた。フェイトから最初は自分が話すので何も口出ししないで欲しいと言われていたのだ。そんな彼は、フェイトのその言葉でやっと先程の呟きの意味が理解出来ていた。

 翔一が五代の正体を既に明かしていた事。それを指して自分も似ていると評したのだろうと。だからか、光太郎は若干苦笑する。たしかにフェイトの言う通りかもしれないと思って。

 

 そんな光太郎に気付かず、二人はそのままRXの事について話す。ギンガはあの時見たRXの姿が忘れられず、バリアジャケットの色を黒にしようとも思った事があると語ってフェイトが苦笑した。何せ彼女は彼と出会う前から黒いバリアジャケットなのだ。

 光太郎はその話を聞いてどこか照れくさそうに頬を掻いた。まさか自分がそこまで思われていたとは思っていなかったのだ。そして、そんな話をしている間に三人はゼストの待つ部屋と到着した。ギンガは、ここまで案内したら戻ってくるようにと事前に言われていたためそこで二人と別れて来た道を戻って行った。

 

 それを見送り、二人はドアの前で少し佇んだ。部屋の中の気配を感じたために。

 

「……大人数、だね」

 

「ですね……」

 

 中から感じる気配の数がゼストだけではない事を察知し、フェイトは光太郎の言葉に返事をした。だが、光太郎はそれだけではなく呼吸音等からも正確な人数を割り出していた。その数、十六人。しかも、どうやらほとんどが女性である事まで光太郎は把握していた。

 このまま外で話していても仕方ないと思い、二人は部屋の中へ入った。そこには予想通り大勢の人間がいた。だが、その中の一人を見て二人は言葉を失う。

 

「ジェイル……スカリエッティ」

 

「……初めまして、フェイト・テスタロッサ。おっと、今はハラオウンがいるね。しかし……ふむ、母親にどことなく似ているな」

 

 表情を険しくするフェイトに対し、ジェイルはどこか懐かしむように告げた。それを見た光太郎は違和感を感じた。広域次元犯罪者として名高いジェイル。そんな極悪人の浮かべる表情にしては、それは穏やか過ぎる気がしたのだ。

 それだけではない。その身にまとう雰囲気もどこか優しいように感じられて、光太郎はジェイルを窺うように見つめた。するとジェイルが視線をフェイトから彼へ移した。その目を見て光太郎は確信した。何があったか知らないが、ここにいるジェイルは決して悪人ではないと。

 

「……フェイトちゃん、まずは話を聞こう」

 

「ええ。ゼスト部隊長、これは一体どういう事ですか?」

 

 フェイトは光太郎の言葉に頷き、視線をジェイルからその隣にいるゼストへと向けた。その視線を受けたゼストはジェイルから聞いた話を語り出す。その内容にフェイトと光太郎の表情が一変したのは言うまでもない。

 邪眼の居場所などの情報がまさかこんなにも早く入るとは思っていなかったのだ。しかも、ジェイル達は邪眼と既に一戦交え、今後は管理局と共に対峙すると決めているともなれば驚きは尽きない。動揺する二人に対し、ゼストはその協力の便宜を図って欲しいと告げた。

 

「スカリエッティが管理局に協力……邪眼と戦うために」

 

「そうだ。何とかならないだろうか、ハラオウン執務官」

 

 ゼストの言葉にフェイトは思わず視線をジェイルへと向けた。それに彼は何か言うでもなく視線を返すのみ。その反応にやや意外な印象を受けるも、フェイトは表情を険しくしてソファの空いている場所へ腰を下ろした。

 そうしてフェイトがゼストの提案を考える間、光太郎は気になった事を尋ねようと考えていた。自分が出会った時、苦戦を強いられた邪眼。それを倒した者を知りたかったのだ。

 

「その、邪眼を倒したのは誰かな?」

 

「お、俺ですけど……?」

 

 そしておずおずと真司が手を挙げると、光太郎はその姿を見て何か不思議な印象を受けた。五代や翔一とも違う穏やかな空気感。優しさと芯の強さを雰囲気からそこはかとなく感じ取ったのだ。だが、それだけではない何かが真司にはある。そんなような気が光太郎にはした。

 

「……どうやって倒したのか教えてもらってもいいかな。俺も以前奴と遭遇した事があってね。その時は手も足も出なかったんだ」

 

「えっと……それは……」

 

 ライダーの事を話して良い物かと迷う真司。そんな彼の様子から光太郎は何かを悟り、待ったを掛けた。無理に話さなくてもいい。言いにくい事や教えられない事情もあるだろうと。その光太郎の心遣いに真司は嬉しく思うも、話す事は避けるべきかと判断し結局謝罪と共に頭を下げるだけだった。

 その横ではフェイトがゼストと今後の事を話し合い出していた。ジェイルは犯罪者。それを見過ごす事は出来ない。だが、真司達は何の罪もない者達。故にそちらについては手を打ってみせる。それがフェイトの出した答えだった。

 

 それを聞いたウーノ達はやや不満そうな表情を浮かべる。しかし、フェイトの言う事が一般論と理解しているためかそれを口には出さなかった。しかし、そんな事はお構いなしとばかりに待ったと掛けた者がいた。そう、真司だ。

 

「ちょっと待って。ジェイルさんは確かに悪い事をしてたかもしれない。でも!」

 

 その真司の声にフェイトもゼストも光太郎さえ黙って続きを待った。

 

「……でも、今は違う。もう二度と悪い事はしないと誓ってくれた。平和に暮らしていこうとしてた。そして、あの化物を倒すためにゼストさん達と力を合わせようとしてるんです。それに……ジェイルさんは俺にとっては凄い大恩人なんだ。この世界に来て、ずっと面倒を見てくれた人なんだよ。だから……」

 

「面倒を……それは本当の事ですか?」

 

「ああ! もし今ジェイルさんを裁くって言うのなら、俺にも一緒に罪を償わせてくれ! 俺がもっと早くジェイルさんを止める事が出来なかったのも悪いんだしさ」

 

 フェイトの訝しむような視線に対して、真司は目を逸らさず言い切った。その視線の真っ直ぐさと力強さにフェイトは息を呑む。それは、何か脅されて言わされているものではない。本当に心からそう思っている者の目だった。

 自分が知っていたジェイル・スカリエッティとは違う顔を真司は知っている。それだけではなくジェイルが犯罪を犯していた事も知っている。にも関らず、彼は自分にもその責任の一端があるとして一緒に罰して欲しいとまで言ったのだ。これにはフェイトも言葉が無かった。

 

(精神操作の類でもなければ、暗示の類でもない。この人は、本心からこう考えている)

 

 今までひたすら追い駆けていた存在。それが、ここにきて擁護する存在が現れた。しかもゼストがそれを肯定したのだ。ジェイルはもう犯罪をしないと以前から決めていたらしく、現在ゼスト達に協力しているのも罪滅ぼしも兼ねた彼なりの償いだと。

 真司とゼストの言葉をジェイルは嬉しく思いながらフェイトへこう告げた。全てが終わった後、法の裁きを受けると。その代わり、真司達には何の罪もないのでその未来だけは守って欲しい。そうフェイトへはっきりと言ったのだから。

 

 その発言にフェイトは完全に言葉を失う。それが裏を感じさせるものであれば、きっと彼女は内心でやはりと思い軽蔑しただろう。それが計算からのものであれば、彼女は怒りにその身を焦がしただろう。

 だが、ジェイルは本当にそう考えていた。確かに戦闘機人はあってはならない存在なのかもしれないが、生まれてきた命に罪はない。罪を負うのは、それを作り出した自分と望んだ世界だ。その言葉に光太郎もフェイトも返す言葉が無かった。それは、自分達にも言われているような内容だったから。

 

(この男……本当に犯罪者だったのか……? いや、きっと変わったんだ。おそらく彼が、真司君がいたから、か)

 

(まさかこの男にそんな事を言われるなんて……。でも、どうして? どうしてこんなにも心が暖かいのだろう……)

 

 そんな事を考えながら二人はならばとジェイル達の今後を踏まえた話し合いを開始した。機動六課の設立背景を告げ、ジェイル達の反応を見たのだ。邪眼に対し、有効な手段を模索していたジェイル達にとって六課の目的と状況はかなり魅力的だろうために。

 フェイトとしてはナンバーズの力は正直欲しいものがあった。光太郎は真司の隠している力に対しある程度予測を付けたのか、せめて真司だけでも六課に手を貸して欲しいと頼んでいた。

 

 そうして両者の話し合いが進んできた時だ。フェイト達の目の前にモニターが出現した。映っていたのはロングアーチのシャーリー。

 

『フェイトさん、大変です!』

 

「どうしたの?」

 

『レリックを輸送中の列車を、謎の機械が襲撃したんです。今、フォワードチームとなのはさんが向かってるんですが、どうも嫌な予感がするって部隊長が仰ってて……。それで、五代さんが念のために後を追ってくれたんですが……』

 

「謎の機械……まさか……」

 

 シャーリーの告げた言葉に小さくジェイルが呟いた。そして、それを聞いて光太郎とフェイトは互いを見やり、同時に頷いた。

 

「その映像出せる?」

 

『はい』

 

 そのモニターに表示された映像を見て、ジェイル達がやはりと頷いた。そこに映っていたのはトイだったのだ。しかも、従来のものだけではなく空戦にも対応したタイプまでいる。

 それにジェイルがフェイト達へ言った。あれはAMFを装備していると。それにフェイトの表情が一変した。即座にすぐに現場へ急行すると告げ、部屋を後にしたのだ。それと同時に光太郎は五代へ通信を試みた。

 

<聞こえるか、クウガ>

 

<光太郎さん?>

 

<今、フェイトちゃんがそっちに向かった。だが、時間がかかるだろうからそれまで頼む!>

 

<分かりました!>

 

 頼もしい返事を聞き、光太郎も立ち上がる。すると、その背に向かってゼストが告げた。彼は光太郎の正体は知らない。だが、どことなく察したのだろう。彼が戦士である事を。

 

「気をつけてな。ナカジマの娘を頼む」

 

「分かりました。それと、ありがとうございます」

 

 そう笑みと共に返し、光太郎も部屋を後にした。その姿が見えなくなった瞬間チンクが呟く。それは光太郎を見たからこそのもの。そしてナンバーズ全員が抱いた疑問。

 

―――どういう事だ。あの男の体も普通じゃないだと……?

 

 そう、彼女達は全員見えてしまっていた。光太郎の体の構造が普通ではない事に気付いてしまったのだ。

 だが、何故かそれを大っぴらに言うのは気が引けた。思い出していたのだ。光太郎が真司へ言った言葉を。自分も以前邪眼と遭遇した事があり、手も足も出なかった。にも関らず、光太郎が生きている事。それが意味する事を考え、彼女達は一抹の不安を抱く。

 

 それは、光太郎が邪眼の関係者ではないかという事。しかし、そんな不安を払うように真司が言った。それは、ナンバーズの不安を察してではない。勿論、彼女達が光太郎の異常性を気付いたと知ったためでもない。

 ただ、正直に感じた事を言っただけ。しかし、それが不思議な程不安を減らす内容だった。それは、こんな一言。

 

―――あの人も、邪眼……だっけ。あいつを倒したいって思ってるんだな。

 

 それは、光太郎と面と向かって話した真司だからこそ分かるもの。光太郎の瞳に宿る邪眼への怒りや想い。その一端を微かにだが感じ取れたからこその呟きだったのだ。こうして真司の感想がナンバーズの不安を僅かにだが軽減させる事となる。

 と、そこでギンガが顔を出した。全員分のお茶を運んできたのだ。その両手で二つのお盆を持っているのだが、それがやや危なげに見えて真司がその一つを受け取りに行く。

 

「おっと……」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 ギンガは真司達の事を詳しくは聞いていない。だが、ジェイルの事は知っている。広域次元犯罪者。そんな極悪人だと。しかし、ギンガからすればジェイルはとてもではないがそうは見えなかった。

 現に、今もゼストとどこか親しげに話しているのだ。それに母であるクイントさえ、ジェイルについては一概に悪人とは言えないと言っているのだから。

 

「あれ? フェイトさん達は?」

 

 そこで彼女はいると思っていたはずの相手がいない事に気付いて不思議そうに首を傾げた。それでもすぐに気を取り直し手にしたお盆から湯飲みをテーブルへ置いていく。そんな彼女へ湯飲みを手にしながらチンクが答えた。

 

「何か大変な事になっているようだ。二人して急いで出て行ったぞ」

 

「ギンガ、残念だったね」

 

 セインがそう言って苦笑するとギンガがため息混じりにやや落胆した。既にギンガはナンバーズとの自己紹介を終えていて、一部とはもう親しくなり始めていたのだ。自身と同じ体の十二人。それを聞いたギンガはジェイルへ怒りを抱きかけたのだが、それをその当の彼女達自身が払拭した。

 ジェイルがいたから今の自分達がいると、そう告げたのだ。その時の彼女達の表情は全員心からそう思っているというものだった事もあり、ギンガはジェイルへ怒りを抱く事が出来なかった。

 

 それからギンガは人懐っこいセインやウェンディを始め、チンクやディエチなどの大人しい者達とも楽しく会話が出来るぐらいになったのだ。ただ、ウーノやドゥーエといった上の姉達とはまだどこか隔たりがあるように彼女は感じていたが。

 

 ギンガの様子をキッカケに彼女と話し出すナンバーズ。その楽しくも騒々しい光景を見つめ、ゼストとジェイルが笑みを浮かべた。

 

「……良い娘達だな」

 

「だろう? 私の自慢の娘達さ」

 

「レジアスにも……見せてやる必要があるな」

 

「……戦うための機械ではなく、生きている人間だと知ってもらうために、だね」

 

 ジェイルの言葉にゼストは無言で頷いた。自分の親友。それが望んだ存在がこういうものだと教えたい。そうゼストは考えていた。治安維持のためにと、それだけのために命に手を加える。それは決して許される事ではないと、そう思うから。

 何よりもこの光景を見てしまったゼストには、戦闘機人という呼び方はもう出来なかった。いや、したくなかった。そこにいるのは歳相応の少女達なのだから。

 

 穏やかに笑みを見せるゼスト。だが、その隣でジェイルは先程見たトイの事を考え、真剣な眼差しをしていた。そう、あれは彼がかつて考えた改良案の一つだったのだ。

 そして、それが意味する事を考えてジェイルは確信した。邪眼が何をしようとしているのかを。とうに彼が破棄した計画。それを実行に移すつもりなのだと。そこまで考えてジェイルは恐怖した。ラボにあったデータ。それを使って邪眼が行動しているのなら、まだ姿を見せていないものがいくつもあるために。

 

(……これは、早急に手を打つ必要があるね)

 

 そう思いながらジェイルは視線を静かに天井へと向ける。本来自分がいるべき場所にいるであろう邪眼。それに対し、密かに告げた。

 

―――私の考えた物を使って動くというのなら、受けて立とう。あの時は遅れを取ったが、今後はそうはいかないよ。

 

 

 機動六課内食堂。そこで翔一は一人厨房で仕込みをしていた。五代はなのは達の援軍として出て行ったので当然いない。リインはそんな五代の代わりにカレーなどの仕込みをし、今はテーブルなどのセッティングをしている。

 

(今日はなのはちゃん達が初仕事らしいから、気合入れて料理作ろう。帰ってきた時、とびっきり美味しいご飯を食べさせないと……)

 

 そんな事を考えながら翔一が仕込みをしていた時だ。ふと、誰かに見られているような気がして彼は顔を上げた。すると、そこには信じられない人物が立っていたのだ。

 

「お前は……あの時の……」

 

「アギト……いや、人よ。貴方から黒い太陽に伝えて欲しい事があります」

 

 そう言うと黒服の男は翔一へ無表情で告げる。その内容の意味は翔一には分からぬものだったが、確実に良くない事だとは分かるもの。

 

―――影の月が……踏み躙られる、と。

 

 

 ついに繋がった縁。だが、まだ重なり合うまでには至らない。本来よりも手強くなったトイを相手に奮戦する六課の面々。

 そして、フェイトとジェイルの確執に変化が起き、これからの流れを変えていく.。

 そんな中、突如として現れた黒服の青年。彼が言う影の月とは何か? 踏み躙られるとは一体? 物語は、また次の局面を見せ始める。

 

 旧き結晶を使い、悪しき世を創ろうとする眼。そが操るは死者の列と物言わぬモノ。闇の覚醒がもたらすその力の前に、焼け墜ちる法の船。

 

 その予言を変える力は、仮面の戦士達と彼らと心通わせた者達。

 

 

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原作でいう所のファーストアラートです。しかし、AMFを使う存在が敵だとなのは達は予想していないため、やや戸惑いながらも撃破します。

 

レリックを追い駆けるのは表向きはその危険性を指摘されているため。それと、予言の一説にある旧き結晶。これがレリックではと予想しているからです。その辺りは、次回以降で……


 
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