No.470830 IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第20話Lさん 2012-08-16 03:02:35 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:9707 閲覧ユーザー数:9399 |
「う、ぁ……」
夕日の光に当たったラウラは目を覚ました。
ラウラは消毒薬の匂いがしたので保健室だと感じた。
「気が付いたか」
声がする方に視線を向けるとそこには千冬が立っていた。
「私……は…………?」
「全身に無理な負荷が掛かったことで筋肉疲労と打撲がある、しばらくは動けないだろうから無理するな」
その言葉にラウラは千冬がはぐらかしていると感じた。
「何が……起きたのですか……?」
ラウラは上半身を起こそうとしたが全身に痛みが走った。
「一応、重要案件である上に機密事項なのだがな」
今から話す内容は他言無用である事を理解した。
「VTシステムは知っているな?」
「はい……正式名称はヴァルキリー・トレース・システム……過去のIS世界大会『モンド・グロッソ』の
「そう、IS条約で現在どの国家・組織・企業に於いても研究・開発・使用全てが禁止されている、それがお前のISに積まれていた」
「………」
「巧妙に隠されていたがな、操縦者の精神状態、機体のダメージ、そして何より操縦者の意志……いや、願望か、それらが揃うと発動するようになっていたらしい、現在学園はドイツ軍に問い合わせている、近く、委員会からの強制捜査が入るだろう」
「私が……望んだからですね」
ラウラはこの時、気付いた、自分がなろうとしていたのは千冬の様な強い人間ではなく、『織斑千冬』そのものだった事を。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」
「は、はい!」
突然名前を呼ばれ、ラウラは驚きながらも千冬に顔を向ける。
「お前は誰だ?」
「わ、私は……私……は……」
ラウラは『ラウラ・ボーデヴィッヒ』であると、言うことは出来なかった、ラウラがなろうとしてのは『織斑千冬』だったのだから。
「誰でもないのなら、丁度いい、お前はこれから、『ラウラ・ボーデヴィッヒ』になるがいい、何、時間は山の様にあるぞ。何せ三年間はこの学園に在籍しなければいけないからな、その後も死ぬまでは時間はある、たっぷり悩めよ、小娘」
「あ……」
「ああ、それとお前は私にはなれないぞ、アイツの姉は、こう見えても心労が絶えないのさ」
千冬は部屋を出ていき、保健室にはラウラだけになった。
一夏とシャルルは長い時間、事情聴取がされていた。
終わった頃には食堂が閉まる30分前だったので一夏とシャルルは急いで食堂に向かうとキラ、シン、ルナマリアが夕食を摂る所だったので一緒に食べる事にした。
『トーナメントは事故により中止となりました。ただし、今後の個人データ指標と関係する為、全ての一回戦は行います。場所と日時の変更は各自個人端末で確認の上』
「……優勝……チャンス……消えた……」
「交際……無効……」
「……うわあぁぁぁぁんっ!」
食堂のテレビで今後の予定が放送されると同時に、女子生徒達が酷く落胆していた。
「どうしたんだろうね?」
「さあ……?」
トーナメント自体なくなりあの件が無効なってしまい女子達は落胆していた。
キラ、ルナマリアは噂の発端となった箒を見た
ルナマリアは箒が一夏に付き合う宣言を聞いていたので噂の発端を知っている。
箒は放送を見て、箒は白くなっていた。
「箒、やっぱり落ち込んでいるね」
「そりゃ、落ち込みますよ」
キラとルナマリアは一夏達に聞こえないように小声で話していると一夏が箒に話し掛けた。
「箒」
「…………」
一夏に呼ばれたが箒は微動だにしなかった。
「先月の約束、付き合ってもいいぞ」
「……な、なに?」
「だから、付き合ってもいいって……おわっ!?」
箒が意識を取り戻すと一夏に掴み掛かった。
「一夏は箒と付き合うのか」
「………」
シンが一夏の言葉に驚いているがシャルルは無言であった。
「……ルナマリア、何だろう……嫌な予感しかしないんだけど」
「……キラさん、私もです」
キラとルナマリアは嫌な予感をしながらも一夏と箒の方に視線を向けた。
「ほ、本当、か? 本当に、本当にそうなのだな!?」
「お、おう」
「な、何故だ? り、理由を聴こうではないか……」
「そりゃ、幼なじみの頼みぐらい聞くさ……買い物ぐらい」
その言葉を聞いた箒は顔が怒りに染まっていた。
「そんな事だろうと思ったわ!!」
「ぐふぉっ!?」
一夏は箒のキレのいい正拳突きから鳩尾への鋭いミドルキックを喰らった。
「ふん!」
「ぐ、ぐ、お……」
そのまま箒は怒り心頭で食堂を去っていき一夏は床に伏している。
「一夏ってたまにわざとかじゃないかと思う時があるよね」
「ど、どういう意味だそりゃ」
「さぁね」
そんな一夏を見てキラ、シン、ルナマリアは苦笑していた。
「あ、織斑君、デュノア君、ヤマト先生、アスカ先生ここに居ましたか、さっきはお疲れ様でした」
真耶がキラ達の元歩み寄ってきた。
「山田先生こそ、ずっと手記で疲れなかったですか?」
「いえいえ、私は昔からああいった地味な作業が得意なんです、心配には及びませんよ、そうそう、それよりも朗報です!」
両手拳を握り締める真耶を見て一夏とシンが恥ずかしそうに顔を背けた。
「なんとですね! 遂に遂に今日から男子の大浴場使用が解禁です!」
「おお! そうなんですか!? てっきり来月からになるものとばかり」
「それがですねー、今日は大浴場のボイラー点検日だったので元から使えない日だったんですが、点検はもう終わりましたからそれなら男子四人に使ってもらおうって計らいなんですよー」
「有難うございます、山田先生! じゃあ早速、風呂に……あっ」
一夏が喜んでいたがシャルルが女だという事に気付いた。
「? どうかしましたか?」
「あ、いや、なんでもないです……」
「そうですか、では私は先に行って鍵を開けて待ってますから四人は着替えを……」
「それなんですが、仕事が残っているので今日は遠慮しておきます」
「俺も今日は遠慮しておきます」
アリーナの騒動に関する書類がまだ残っていたのでゆっくり風呂に入る時間は無かった。
「それでは、織斑君、デュノア君、鍵を開けて待っていますので着替えを持って来て下さい!」
小走りで食堂を去っていく真耶だった。
「僕達は仕事が残っているから二人でゆっくりしていってね」
「あ、ああ、ありがとう」
キラ達も仕事を片付ける為、食堂を後にした。
「ど、どうしよう……」
「と、とりあえず行こう、行かなかった山田先生に悪いし」
「そ、そうだね……」
大浴場に着いた一夏とシャルルは一人ずつ入ると言う事になり先に一夏が風呂に浸かっていた。
だが、扉が開く音が聞こえ、一夏が音がする方に向くとそこには身体にタオルを巻いたシャルルが居た。
「シ、シャル!? ど、どうしたんだよ、交代で入るんじゃなかったのか!?」
「ご、ごめん、一夏に聞いて欲しい話があるの」
「分かった……」
シャルルは風呂に入ると一夏と背中合わせにしながら話し始めた。
「僕、決めたんだ、僕は父の傀儡じゃなくて『僕』という個人で生きていくよ」
「そうか……」
一夏はシャルルが新たな一歩を踏み出した事に安堵した。
「それとね、もう一つ決めた事があるんだ」
「決めた事?」
「うん……」
翌日、一夏とシャルルは職員室に居る千冬達を尋ねていた。
「それは本当か!?」
「はい……」
シャルルは女である事、一夏達のデータを盗む為に送られたスパイ等を全て話した。
シャルルはシャルル・デュノアではなくシャルロット・デュノアとして皆と一緒に過ごす事を選んだ。
「女の子ぽいとは思っていたけど、まさか本当に女の子とは驚いたわ」
ルナマリアも驚きのあまり呟くのであった。
だが、シンは驚きよりもシャルロットの父親に怒りを感じていた
「許せない、実の娘をスパイとして送るなんて!」
「ああ、外道の極みだな」
千冬もまた強い怒りを感じ吐き捨てる。
二人が怒りを感じている中、キラはある事を言い出した。
「千冬さん、デュノア社について僕に任せてもらえないでしょうか?」
キラの顔は平然としているが、怒りに燃えていた。
それに気付いた千冬が答える。
「良いだろ、デュノア社はお前に任せる」
「ありがとうございます」
デュノア社はキラに任せる事にして、千冬はシャルロットの方に視線を向ける。
「聞いての通りだ、デュノア社は此方で対応する、シャルル・デュノアではなくシャルロット・デュノアとして、受け入れよ」
「は、はい、ありがとうございます!」
シャルロットは頭を下げながら笑顔が浮かんでいた。
一夏もシャルロットの笑顔を見て安心していた。
だが、千冬がある事、言い出してきた。
「ところで……お前達、大浴場で二人で入ったな?」
千冬の鋭い眼光に怯えるシャルロットと冷や汗をかく一夏。
「織斑、デュノア……反省文の提出だ、遅れた場合は……分かっているな?」
『は、はい!!』
一夏とシャルロットは揃えて返事するのであった。
この後、一夏はラウラから嫁宣言されまた騒動を起こすのであった。
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第20話です。
プロローグ
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