No.466274 IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第10話Lさん 2012-08-06 23:55:57 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:10205 閲覧ユーザー数:9901 |
「久しぶりね……一夏」
「鈴……何カッコつけてるんだ? すっげー似合わないぞ!」
「なっ! なんてこと言うのよ! あんたは!!」
その時だった、鈴の後ろに立つ一人の女性が鈴の頭に拳を落とした。
「っ!? いった~……何すんの!? うっ…!?」
「もうSHRの時間だぞ」
「ち、千冬さん……!」
千冬だった。一夏の知り合いなら当然だが千冬とも知り合いという事になる。
そして様子を見る限り、鈴は千冬に苦手意識を持っているのが分かる。
「織斑先生と呼べ、さっさと戻れ邪魔だ」
「す、すいません……また後で来るからね! 逃げないでよ一夏!」
自分の教室に戻って行った鈴に教室中が唖然とする中、一夏は何処か懐かしそうな顔をしていた。
千冬と共に来ていたキラとルナマリアは新たな騒動の予感に……箒とセシリアに目を向けて、心の中で黙祷を捧げるのだった。
昼休み、一夏、箒、セシリアはキラ、シン、ルナマリアを加え、途中で二組の転校生である鈴と共に食堂に来ていた。
キラとセシリアは洋風ランチセットを頼み、シンとルナマリアと一夏と箒は和風ランチセットを、鈴は醤油ラーメンを頼んだ。
「で、いつ代表候補生になったんだよ?」
「あんたこそ、ニュースで見た時はビックリしたじゃない!」
「俺だって、まさかこんなトコに入るなんて思わなかったからな」
「入試の時にIS動かしちゃったんだって? なんでそんな事になっちゃったのよ?」
一夏は高校入試の時に入試会場である私立の多目的ホール内で道に迷い、偶々入った部屋の中に置いてあったIS、打鉄を動かしてしまったのが原因である。
「そういえば一夏以外にもいたわよね? ISを動かせる男が二人……その二人?」
「ああ、そうだ、キラ・ヤマトとシン・アスカってんだ」
「よろしくね」
「よろしくな」
「よろしく~」
直ぐに興味が無くなったのか再び一夏の方に集中し出してしまった。
だが、我慢の限界が来てしまった箒とセシリアが立ち上がり、一夏の前まで回ってくると、テーブルを叩いて一夏を睨みつけた。
「一夏、そろそろこいつの事を説明してほしいのだが!?」
「そうですわ、一夏さん」
ルナマリアはそんな箒とセシリアを見て面白そうに言ってみた。
「もしかして付き合ってるの?」
「なぁっ!?」
「本当ですの、一夏さん!?」
「っ!? べ、べべべ別に付き合ってるんじゃ……!!」
何故か鈴の方が狼狽した。
当の一夏は何言っているのだと言わんばかりに否定した。
「落ち着けって箒、セシリア、何を興奮してるのか解んねぇけど、鈴は只の幼馴染だよ」
「むぅ……」
今度は鈴の機嫌が悪くなった。
いくらなんでも一夏の言葉は彼に恋している乙女の前で言うべき台詞ではない。
「幼馴染……?」
「あ~、えっとだな……」
箒は幼稚園の頃から小四の終わりまで一緒だったが、入れ違いに小五の頭に鈴が引っ越してきた、それから中二の終わりまで一緒に居たのが鈴である。
「鈴、こいつが篠ノ之 箒、前に話しただろ? 箒はファースト幼馴染で、お前はセカンド幼馴染ってとこだ」
「ファースト……」
「ふ~ん、そうなんだ……初めまして、これからよろしくね?」
「ああ……こちらこそ」
箒と鈴は互いに笑っているが、その間にはバチバチと火花が散っていた。
(修羅場だね(ね)……一夏……)
一夏の余りの朴念仁振りとこれから起こるであろう修羅場にキラとルナマリアは心の中で黙祷した。
「ンンンッ! 私の存在を忘れてもらっては困りますわ! 中国代表候補生、鳳 鈴音さん! 私はイギリス代表候補生、セシリア・オルコットですわ!」
「一夏、あんた一組の代表になったんだって?」
「ああ……成り行きでな」
誰もセシリアの話を聞いていなかった。
「一夏、何ならアタシが見てあげようか? ISの操縦!」
「あ、いや……俺はキラとシン、ルナマリアに見てもらおうと思って……」
「って、ちょっと!! 聞いていらっしゃいますの!!?」
遂にセシリアが切れた。
「ごめん、あたし……興味ないから」
「なっ!?」
「一夏に教えるのは私とヤマト先生、シン先生、ルナマリア先生の役目だ! 部外者は引っ込んでいてもらおう!」
「あたしは一夏と話してんの! 関係ない人は引っ込んでてよ」
「関係ないだと!?」
「後から割り込んできて、何をおっしゃってますの!?」
「後からじゃないけどね……あたしの方が付き合い長いんだし」
鈴はそう言うが一夏の付き合いは三年、箒と一夏の付き合いの方が長い。
一夏自身、どちらの家でも食事を食べた事があるのでアドバンテージにはならない。
「親父さん、元気にしてるか?」
「あ……っ、うん……元気だと思う」
鈴の表情が若干だが暗くなった。
その変化に気付いたのはキラである。
キラは朝の職員会議で読んだ鈴に関する資料の内容を思い出していた。
鈴は中学2年の頃に両親は離婚、その関係で鈴は母の故郷である中国に帰国、一年間の猛勉強の末に代表候補生となった。
両親の離婚のショックが残っているんだろうと予想するキラ。
ただ、一夏も箒もセシリアもシンもルナマリアも鈴の表情の変化を気付かなかった。
丁度チャイムがなったので鈴は教室に戻って行った。
放課後、キラ、シン、ルナマリア、セシリア、一夏、箒は第三アリーナに来ていた。
だが、少し用事があると言って箒は貸し出し用IS管理室に行っているので、五人しか第三アリーナにいない。
一夏、セシリアの二人は白式、ブルーティアーズを展開した。
「待たせたな、一夏」
「あ……箒」
箒が打鉄を装着して一夏の元に歩み寄った。
「さて一夏……今日の訓練なんだけど、まずは一夏一人でセシリアと箒と戦ってもらうよ……勿論一人ずつじゃなくて、一度に二人と」
「ちょっと待て!! 俺一人でセシリアと箒を同時に相手しないといけないのかよ!!」
突然の言葉に一夏は慌てるが、キラは容赦無く言った。
「無理でもやってね、これくらいしないと一夏の反射速度とか瞬時状況判断能力とか鍛えられないから……勿論だけど、この訓練方法、暫く続けるから……早く成長してね?」
「お、鬼だ……!」
ニッコリと笑顔で恐ろしい事を言うキラに、一夏は絶句する。
少し心配だと思う箒だが、これくらいしないと一夏が強くなれないだろうと納得して、反対する事は無かった。
「じゃあ、始め!」
この後、セシリアのBT兵器一斉射、箒の斬撃の嵐が一夏に襲い掛かり訓練が終わる頃には心身ともに消耗し切った一夏がアリーナ中央で虫の息になっているのだが、キラはそれを見ても良い笑顔であった。
(……頼む相手間違えたかな?)
一夏は若干だが後悔するのだった。
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第10話です。
プロローグ
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