「・・・ロキ。」
「・・・やってくれたね。零冶君。」
俺とロキは少し離れた所で対峙していた。
「ロキ・・・もう止めろ。こんなことをしても意味が無い。」
「意味が無い?そんなことないよ。・・・僕は復讐するんだ。僕を裏切った神々を!」
・・・これじゃ、まともに聞いてくれないかもな。
「ロキ・・・違うんだ。お前は裏切られたんじゃ無い。」
だが、それでも俺は説得を試みた。
「違うね!神々は・・・ディン兄さんは僕を裏切ったんだ!僕の力が強かった為に・・・自分の保身の為に僕を殺したんだ!!!」
ロキが叫ぶ。その声は衝撃波となって俺を襲った。だが、俺はそんなことは気にしない。
「そこ自体が間違いなんだ。お前を殺したのは下級神の策謀だったんだよ。お前を邪神化して世界を滅ぼすために・・・。オーディンは一度もお前を殺そうなんて思っていない。」
「っ!!何でそんなことが分かるのさ!!」
「・・・以前、オーディンに会った事があるからだ。そして、頼まれた。お前を止めてくれ・・・と。ロキの誤解を解いて欲しい・・・と。」
俺はオーディンの事を告げた。
「っ!?・・・・嘘だ・・・・・嘘だっ!!!僕はそんなことは信じないぞ!!全部・・・全部デタラメだ!!僕はディン兄さんに殺されたんだ!!裏切られたんだ!!」
だが、ロキは信じてくれなかった。
・・・ムカッ!
「いい加減にしろ!!いつまで現実から目を背けているんだ!!なんでオーディンの話を聞いてやらないんだ!!」
「う・・・さい・・・うるさい・・・うるさいうるさいうるさーい!!!!」
ロキは魔方陣を展開して、俺の斬魔刀と同じぐらいの大きさの大剣を取り出した。
「なっ!?」
そして、ロキの目から涙が溢れ、静かに言った。
「もう・・・分からないんだ。頭の中がグチャグチャで・・・何が何だか分からなくなっちゃったんだ。・・・自分では止められないんだ。どうしても・・・壊したくなっちゃって・・・殺したくなっちゃうんだ・・・・。もう・・・・これ以上耐えられないよ。だから・・・・お願いだよ・・・零冶君。僕を・・・・・・止めてよ・・・。」
「っ!?」
俺は理解した。ロキは初めから解っていたんだ。オーディンは自分を裏切っていないって。ただ、邪神化した時の心の闇がロキを突き動かしていたんだ。
「・・・分かった。」
俺は斬魔刀を構える。そして、ロキも構えて・・・
「いくよ・・・零冶。僕を・・・止めてみせてよ!!」
ロキが剣を真上から振り下ろす。
「はああああああ!!」
ガキャンッ!!ガキン!!ガキン!!
俺は正面から大剣を打ち合う。俺とロキの剣劇は鈍色の竜巻のように繰り広げられる。それは常人の目には見えない程の速さで繰り出され、周囲にある岩などは巻き込まれて粉砕される。
「はあああああ!!」
俺は跳躍して斬魔刀を叩き込む。ロキはそれを回避して俺が着地し瞬間に剣を振り下ろす。
「ぐっ!!」
俺はギリギリで斬魔刀を盾にして防いだ。が、その時
「「「「「零冶!!(兄ぃ!!)(君!!)」」」」」
なのは、フェイト、はやて、アリサ、すずかが俺たちの目の前に現れた。
Side フェイト
「・・・行っちゃった。」
私達が止めようとしたが、零冶は一人で行ってしまった。
「・・・零冶兄ぃ。」
はやても何も出来ない自分に落ち込んでいた。他のみんなもそうだった。だけど、そこに・・・
『貴方達はそこで一体何をなさっているのですか?』
「「「「「・・・え?」」」」」
私達に声を掛けたのは鋼の龍、クシャナさんだった。
『そこで何をなさっているのですか、と聞いているのです。』
『お主達は何もせぬのかえ?
蒼い龍のナナさんも私達に問うた。
「だけど・・・私達が行っても零冶の足手まといに・・・。」
『だから、ここでのんびりと待つのかえ?』
『貴方達はそれで本当によろしいのですか?』
「でも、私達が行っても何も・・・。」
私も行きたい・・・けど、一体何ができるんだろう?
『妾達はそんな建前を聞いているのでは無いぞえ?』
『貴方達がどう“したい”のかを聞いているのです。』
「ウチらが・・・」
「どうしたいのか・・・・。」
私は言えなかった。本当は行きたいのに。でも、行っても何も出来ない。そんな風に私がうだうだ悩んでいるとアリサが口を開いた。
「そんなの決まってるわよ!私は零冶の所に行く!!」
「・・・うん。私も・・・零冶君の所に行きたい。」
すずかも行きたいって言った。
「・・・せやな。ウチも行きたい。それに、何もできへん事無い!ウチらは零冶兄ぃを見守ることができるんや!!」
「うん・・・私も行きたい。せめて、零冶君を応援するぐらいの事はしてあげたい。」
はやてとなのはも言った。そして解った。私が出来ることが・・・。はやてが教えてくれた。
「行きたい。私も・・・零冶の所に、行きたい!!」
私達はクシャナさんとナナさんに言った。すると二人が微笑んだかのように見えた。
『なら、今すぐ
『
「ありがとうございます!!クシャナさん、ナナさん!!」
私はお礼を言い、皆はすぐに二人の背中に乗った。
『しっかり掴まっていなさい!』
『ちと揺れるからのぅ!』
私となのはとはやてはクシャナさんに、アリサとすずかはナナさんに乗った。そして二人が飛び上がり、高速で零冶の所に向かった。
Side out
Side アリサ
私とすずかは蒼いドラゴン、ナナという奴に乗って飛んでいる。他のみんなは鉄のドラゴンに乗っていった。
『アリサとすずかじゃったかのぅ?しっかりと掴まっていないと落ちるぞえ?』
「つ、掴まっているわよ!!」
私達はしっかりとフサフサした鬣に掴まっていた。結構気持ちよかったりした。
「た、高いよぉ!?」
あ・・・そういえば、すずかは高いとこは苦手だったわね。
「我慢しなさいよ!すずか!零冶の所に行くんでしょ!?」
「わ、分かってるよぉ!でも・・・怖い物は怖いよぉ!!」
『・・・?・・・・・・まったく、うるさい羽虫が来たのぅ。』
突然ナナが言った。
「え?」
前を見ると、その先には私達より一回り大きい鳥みたいなモンスターが団体で押し寄せてきていた。
『ナナ、蹴散らしますわよ?』
『うむ、焼き尽くしてやるわ!』
バシュンッ!!ゴオオオオオオ!!
クシャナは見えない何かを撃ち出して、ナナは灼熱の炎を吐き出した。すると一瞬でモンスター達は吹き飛び、焼き尽くされたわ。
『小蠅が妾達に挑むなぞ、1000年早いぞえ?』
そして零冶の近くに着いた。そこで零冶はあのロキとかいう男子と巨大な剣で戦っていたわ。
「零冶(君)・・・。」
『近くで降ろしてやるからのぅ。妾達は敵を近づけぬようにするぞえ?』
『ええ。貴方達は早く零冶の所へ行きなさい。』
ナナとクシャナは私達を零冶から少しだけ離れた所へ降ろしてくれた。そして私達は零冶の所へ急いだ。
Side out
「なっ!?お前ら!!」
何故ここにアイツ等が!?・・・・・・ナナとクシャナか。
「せあっ!!」
ドカッ!!
「ぐはっ!?」
俺は一瞬意識を外に向けてしまい、隙を作ってしまった。そしてその隙を突いてきたロキに蹴り飛ばされた。
ズザザザーーーッ!!
俺はなんとか空中で姿勢を整え、地面を削りながら着地する。
「「「「「零冶!?(兄ぃ!?)(君!?)」」」」」
「お前ら!!何でここに来た!?危ないだろっ!!」
俺は5人を一喝したが、
「うるさい!!そんなこと解ってるわよ!!」
いきなりアリサが怒鳴った。俺は逆に怒鳴れた事に驚いて黙ってしまった。そして、すずかが俺の前に立って
パチンッ!!
叩いた。
「・・・すず・・・か?」
俺は何で叩かれたかも解らず、ただ頬を押さえてすずかを見た。
「零冶君・・・何で一人で全部やろうとするの?・・・何で・・・・何で私達を置いていこうとするの!?」
すずかが涙を流しながら言った。
「そうだよ零冶。・・・零冶はいつも一人で頑張っているけど・・・。」
「どうして私達に見守らせてくれないの?」
フェイトとなのはは静かに言ってるが、とても悲しそうに言った。
「危ないことは皆解ってるんや。でも、それでも皆は零冶兄ぃの力になりたかったんや。例え見守ることしかできないとしてもな?」
はやても同じように言う。
「だから・・・少しぐらい見守らせなさいよ!私達にはそれぐらいしかできないんだから!!」
アリサも涙を流しながら言った。
ああ・・・そうだったな。俺はこいつらを一方的に守ろうとしてたんだな。そういえば、一度も頼ったことが無かったっけな?
「・・・はぁ。・・・分かった。そこで俺の戦いを見守ってくれ。」
俺は溜息をついて言った。
「「「「「っ!・・・うん!!」」」」」
なのは達は少し離れて俺たちを見守る。
「お話はもういいかな?」
ロキは最後まで待ってくれた。
「ああ。待たせたな・・・・・はあっ!!」
「せあっ!!」
ロキと俺は突っ込み、再び剣劇が繰り広げられる。
「これが零冶の・・・本気の戦い。」
「す、すごい・・・。」
「動きが・・・見えへん・・・。」
「うぇ!?み、見えないよ!?」
「あいつ・・・本当に人間なの?」
最後だけ気になったが、みんな驚いているようだ。そして幾ばくかの時間が流れ、
ガキンッガキンッガキャッドカッ!!
「「ぐあっ!?」」
鍔迫り合いになった時に俺とロキはお互いに蹴りを出して、それぞれの方向に飛ばされる。
「「はぁはぁはぁ・・・!」」
俺とロキは息が上がっていた。実際五分ぐらいしか経っていないが、当事者にしてみれば何時間も打ち合ったかのように感じた。
「「はぁ・・・はぁ・・っ・・・・・・・。」」
そして、お互いに次で決着を着けると目で語り合い、構える。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
一体どれくらいの時間が流れただろうか?1分にも1時間にも感じた。そして・・・
ジャリッ ザッ!
「「はあああああああああああ!!!!」」
同時に動いた。俺たちの刃は正面から大剣を振り上げながら・・・
ザンッ!!!
お互いに交差して背中を向けていた。一瞬の静寂。そして・・・
ブシュゥーーーーーー!!
「「「「「零冶(君)(兄ぃ)!?」」」」」
俺は肩から袈裟懸けに斬られて血が噴き出し
ドサッ!
ロキは胴体を斬り飛ばされて地に落ちた。
そして俺は斬魔刀を杖代わりにし、体を引きずってロキの所に歩いて行った。
「がっ・・・ゴボッゴホッ!!・・・れい・・・じ・・・。」
ロキはかろうじて生きていた。
「あり・・・がと・・・う。よう・・・や・・・く・・・・終わ・・・ったよ。」
「・・・そうか。・・・ロキ、どうして障壁を張らなかった?」
俺は障壁のおかげで胴体が真っ二つにならずに済んだ。だが、ロキは障壁を張らなかった。
「そんな・・余裕が・・・あると思ってた・・・のかい?暴走を抑えるので・・・精一杯だった・・・んだよ。魔法を・・使ったのも・・・結構・・・無理してたんだよ?」
「・・・・・・。」
俺はなんて言って良いのか分からなかった。
「あ・・はは・・・そんな顔しない・・・でよ。僕は・・・死なないよ。魂が・・・一つになるだけ。零冶の中に・・・戻るだけ・・だよ。」
ロキは笑って言った。
「だけど・・・気をつけて。・・・僕の中の闇が・・・暴れだそうとしてる。僕が消えたら・・・すぐに闇を・・・消滅させて・・・。零冶の・・・眼なら・・・大丈夫。あれは・・・もう僕じゃ・・・ないから・・・ね。・・・殺していいよ。ゴホッゴホッ!!」
ロキは再び吐血した。
「・・・はぁはぁ。・・・それじゃ・・・ね。あり・・・が・・・・・と・・・う・・・・・れ・・い・・・・・・・・じ。」
そしてロキの体が光に包まれ・・・光が俺の中に入っていった。残ったロキの闇が蠢き形を成そうとしていた。
「・・・直死の魔眼。」
俺は顔に手を当てて直死の魔眼を発動した。瞳が朱から碧になって輝いている。
「・・・・・・。」ドスッ!
そして俺が死の点を突くと闇が霧散していった。
「・・・うっ!!」
俺はロキの闇が消滅したのを見届けると、その場に膝を突いた。
「「「「「零冶(兄ぃ)(君)!!」」」」」
なのはが心配そうにして俺の下に駆け寄る。
「だ、大丈夫だ。このぐらいどうってことはない。」
俺は大丈夫だと言うが、
「バカッ!!そんなに血を流しているのに何とも無い訳ないでしょ!!!」
「そうだよ零冶君!!早く治療しないと!!」
アリサとすずかは信じてくれなかった。なのは達も同様だった。
「本当に心配掛けさせるんやから!!零冶兄ぃは!!」
はやても怒りながら俺を治療しようとしていた。だが、
「あはは・・・ゴメンな。でも本当に大丈夫「ドスッ!!」がっ!!?」
「「「「「零冶(君)(兄ぃ)!?」」」」」
そして俺の体を何かが貫いた。
「「「「「零冶(君)(兄ぃ)!?」」」」」
後ろを見ると・・・・闇の書から黒い触手が伸びていて、俺を貫いていた。
後書き
どうもクライシスです。いや~、つい後書きを書くのを忘れてしまたので、今回は次回予告っぽいのを書いてみようと思いました。
さて、とうとうロキとの決着が着いた零冶。
しかし、直死の魔眼で殺したのはロキの闇だけであった!
闇の書に貫かれた零冶。
零冶は一体どうなるのか!?
次回 魔法少女と竜と漆黒の狂戦士と 最終話 「狂化」
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第十九話 決着