No.465773

ストライクウィッチーズ 『空を翔る少女と天空を統べる双竜』

西暦2112年。人類は発達した技術を用い、地球の覇者として君臨していた。第三次世界大戦が終戦を迎える‥‥‥人口の4割以上を犠牲に至らしめ、世界国家の元未だにゲリラ活動を続ける反国家組織を撲滅するために設立された特殊機甲航空連隊『ストライク・ワイバーンズ』に所属する二人のエースパイロットである『カズマ・S・ウェンライト』とそのパートナー『オルガ・ヴァイスレッド』
ある日、紛争地帯への貨物輸送任務中に正体不明の重力場に飲み込まれてしまった‥‥‥。

※この作品は『ストライクウィッチーズ』を元に、エースコンバットや多数の作品ネタを組み合わせたオリジナル世界のキャラをストパンの世界に放り込んだ作品です。厨二病な設定やご都合主義、原作キャラとの絡みが多く含まれております。そういったものが苦手という方は閲覧を控えることを推奨いたします

2012-08-06 00:19:13 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3744   閲覧ユーザー数:3673

 

高度4000m上空。雲が地面のように広がる青空の下、爆音と共に二つの戦闘機が空を横切る。

先頭を行く全身を漆黒に染めた機体。後ろに続く機体は黒の機体よりも一回り大きく、胴体が二つに分かれていることから『ビッくバイパー』を連想させる姿をしている。

 

《あ~あ~。メンドくせぇなーしかし》

白い機体に搭乗していたパイロットが声を漏らす。

 

《文句を言うなよ『オルガ』》

黒の機体を駆るパイロットが溜め息混じりに呟き、白い機体『バースト・ディザスター』を駆るパイロット『オルガ・ヴァイスレッド』へと呼びかける。

 

《これで何度目だよ、俺達ァ宅急便じゃねぇっつの!》

 

《そう言うな。これも仕事だ、諦めろ》

 

《ちっきしょー。戦争が終わって、少しは楽できると思ったらこのザマだよ!》

愚痴を零すオルガの怒声を耳にしながら「やれやれ」と溜め息を吐く黒の機体『サイレント・イーグル』のパイロット『カズマ・S・ウェンライト』

 

時は2112年。第三次世界大戦が終幕を迎えて5年の歳月が過ぎていた。発展した技術の推移は無数の兵器へと注がれ、人類は再び大きな過ちを犯した。大戦後、その人口の4割以上もの死者を生み出した戦いは終わりを向かえ世界に多大なる傷跡を残したままでいた。

終戦後、世界各国が団結し『世界国家連盟』が設立される。表向きでは平和を取り戻した世界の裏では、未だ続く非人道的なテロ活動などの問題も多く残され、真の平和は見出されていなかった。

 

世界国家連盟はこのテロ行為に対し、情け容赦のない弾圧を加えるべく、ある組織を立ち上げた。大戦中にエースと呼ばれた戦闘機パイロットや傭兵。天才的な頭脳を持つ科学者を中心に、特殊機甲航空連隊『ストライク・ワイバーンズ』が結成された。

 

最高レベルの技術により作り上げられた二機の巨大戦闘機が開発され、それらは部隊の中でトップクラスの実力を持つカズマとオルガに託されたのだった。

 

二人は託された機体を駆り、無数のテロ組織撲滅の任に当たっていた。そして今日も、そのために紛争地帯で公選している味方への補給を目的に、それぞれの機体下部に大型コンテナを搭載している。

 

《俺達は俺達にできる事をやるだけだ。そうだろ?》

 

《だけどよォ、最近補給任務が多くなってきてねぇか? これじゃ腕が鈍っちまうよ》

 

《それだけ、テロの勢いが弱まってるって事だ。素直に喜べよ》

 

《‥‥‥そうだな、今日の任務が終われば久々の休暇だ。どうする?》

 

《いい酒場を見つけたんだ。今度他の連中も誘って――》

言葉を続けるよりも先に、警報を伝えるブザーが鳴り響きカズマの言葉を遮った。

 

《何だ!?》

 

『左舷400m先に強力な重力場の反応』

サイレント・イーグルの操縦パネルから声が響く。

 

《重力場だと? 原因は何だ『ADAM』》

カズマが呼ぶADAMとはサイレント・イーグルに搭載された最新鋭人工知能であり、あらゆる兵器や機械制御。データ解析などのあらゆる局面に対してカズマをサポートする第二のパートナー的存在である。

 

『不明です』

 

《参ったな‥‥‥抜けられそうか?》

 

『ただいま計算してみましたが、重力場の引力を機体の推進力で脱出できる確立は0.005%と結果が出ました』

 

《おいおいマジかよ‥‥‥》

 

《‥‥‥可能性がゼロじゃないなら、やれるだけやってやるさ。オルガ! 最大出力で抜けきるぞ!》

 

《わーったよ!》

二人は言葉を交わし、操縦桿を強く握り締め機体の速度を一気に押し上げる。バースト・ディザスターはマッハ2.8、サイレント・イーグルに関してはマッハ3.2にも及ぶ超音速度をたたき出す。

 

『重力場、更に膨張! このままでは‥‥‥!』

 

《っく、くそったれが!》

やがて重力の渦は二機の戦闘機を飲み込み、跡形も無く消滅してしまった。不自然に形を崩した雲と、静かな風が当たりに流れ、静寂が訪れる。

 

この日、任務にあたっていたカズマ・S・ウェンライトとオルガ・ヴァイスレッドの両名は消息を絶った。一説には何らかの原因で墜落したとも噂が立つことになるが、真実を知ることになるものはこの『世界』には存在しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビーッ‥‥‥ビーッ‥‥‥!

 

耳に騒音が鳴り響く。

 

うるさいな‥‥‥まだ起床時間じゃないだろう。俺はそう思い、寝返りをうとうとすると怒声が鳴り響く。

 

《起きろ相棒、死ぬぞ!》

 

「ハッ!?」

目を開けた瞬間、視界には青々と広がる海面が迫っていた。

急いで操縦桿を引き、機体を起き上がらせる。高度100m。海面ギリギリで体制を建て直し、安堵の溜め息を吐く。

 

「あぶねぇあぶねぇ」

するとすぐ横に、相棒であるオルガの機体が隣へと寄ってきた。

 

《危なかったな、危うく海面とのファーストキスを達成するところだったな》

 

「間違っても御免だな。‥‥‥さて」

一息つき、あたりを見渡しながら座標を確認する。重力場に飲み込まれたようだが、これといった損害はない。何かしらの転送装置なら誰がこんなものを発動させたのか。検討が着かないにしてもせめて自分が何処にいるのかぐらいは知っておこう。

 

「ADAM、俺達の現在位置は特定できるか?」

 

『座標データ‥‥‥受信失敗』

 

なに?

ADAMの答えに疑問符が浮かび上がる。

 

「どういう事だ。衛星とのリンクは?」

 

『切断されています』

 

「‥‥‥オルガ」

 

《ああ、聞こえてた。ったく、次から次へと》

 

『マスター。後方より少数の未確認反応。時速600で接近中』

 

「unknown?」

レーダーには確かに4機の反応がある。

 

《敵か?》

 

「どうだろうな。あまり刺激せず様子を見よう」

 

《了~解》

 

『あと30秒で接触します』

 

さて‥‥‥何が出るかな。

 

『10.9.8.7.6.5‥‥‥』

カウントを数えるADAMに釣られ、目視で機影を確認しようと振り返った瞬間‥‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァア!!?」

性格に似合わないほど素っ頓狂な声を漏らした。

 

「おい! どうしっイィ!?」

驚いた俺に釣られたらしく、オルガもまた現れたunknownを目の当たりにし間抜けな声を出した。

 

無理もないだろう。

 

『2,1,0。unknownと接触しました』

 

《そこの未確認機、この空域への侵入目的と、所属、階級を答えなさい!》

 

何せ俺達の横を飛ぶ『それ』は女の子だったのだから。

 

(おいおいおい、何だこりゃ、なんで人間が生身で空を!? 足に着いてるプロペラ型の脚甲はなんだ?)

 

 

いや、それ以前に‥‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《何でパンツ一著なんだよ!!》」

俺達の息のあったツッコミが木霊する。

 

《聞こえてるかしら!》

女の子の一人、長い赤髪を揺らす女の子が声を荒げる。どうやらご立腹らしい。

 

「ADAM、向こうとの通信をリンクさせられるか?」

 

『問題ありません』

数秒後、ADAMの「どうぞ」という言葉と同時に被っているバイザーの通信機の周波数を切り替える。

 

「ああ、聞こえている」

 

《っ! そう、良かった。では繰り返すけれど、この空域への侵入目的と、所属と階級を答えて頂戴》

彼女達の服装から察するにどこぞの軍関係者と思われる。

 

「俺は特殊機甲航空連隊『ストライク・ワイバーンズ』所属。カズヤ・S・ウェンライト少佐だ。まずそちらの所有空域に侵入してしまった事を謝罪する。だが、こちらもトラブルが起きてな。やむ終えなかったんだ」

 

《そうですか、私は連合軍第501統合戦闘航空団『ストライク・ウィッチーズ』部隊長のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です》

 

こいつは驚きだ。まさか年下の女の子が上官とはな。

驚いたのは俺だけでなく、マイク越しにオルガの「マジかよ」という言葉が聞こえてくる。

 

「失礼しました中佐殿」

 

《構いません。ですが、少々尋ねたい事があります。お手数ですが我々に着いて来て頂けますか?》

 

「‥‥‥了解しました。では先導をお願いします」

俺がそう答えると、コクピット越しの彼女が頷くと、他の三人を連れて俺達の前を飛ぶ。

 

「聞こえたなオルガ。お姫様たちに着いて行くぜ」

通信回線を切り替え、相方へ呼びかける。

 

《追っかけは俺の趣味じゃねーんだけど》

 

「我侭いうな」

 

《ところで相棒‥‥‥》

 

「ん? どうした」

 

《目の前に四つの桃源郷が‥‥‥》

 

「黙ってろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あそこが基地か?」

十数分後、基地と思しき施設が見え、少女たちがジェスチャーで降下することを伝えてきた。

 

《そういや、補給用のコンテナ積んだままじゃん》

不意に言われた言葉に気付き、あっと声を漏らす。

 

「まぁ、コンテナを低い位置でパージして、その後着陸でいいんじゃないか?」

基本、俺達の補給方法は味方拠点近くに低空飛行で通り過ぎる瞬間にパージするため、コンテナを付けたままの着陸は考えてられていなかった。

 

「んじゃ。降りるぞ」

 

《あいよ》

開けた看板の上で静止し、ゆっくりと降下して行き高さ数mの所でコンテナをパージ。ズスゥンという重い音が響く。心なしか外の彼女達がかなり驚いてるように思える。

 

コンテナの隣へと着陸し、息を吐く。

 

「さてっと‥‥‥」

視線を横に向けると、少女達が扱うには大きすぎる銃器をこちらに構えている。その他にも数人の女子供が身を潜めながら様子を伺っているのが分かった。

 

「やれやれ‥‥‥」

 

《大人しく機体から降りてきてください》

メガホンを掴み、赤髪の少女が叫ぶ。

 

《どうする相棒、あんま穏やかじゃあ‥‥‥ねぇみてーだが》

 

「‥‥‥ま、なるようになんだろ。今は大人しくしてよう」

俺はそういい、コクピットハッチを開き、降参の意をこめて手を上げながら立ち上がる。

オルガもまた、コクピットを開き、両手を挙げている。

 

「俺達に敵意は無い。安心してくれ」

すると赤髪の少女は周りの全員へ視線を合わせ一つ頷く。すると他の三人が銃口を下ろす。

 

「ではゆっくり降りて、顔を見せてください」

俺は視線だけをオルガへ向け、相槌を交わすとコクピットから飛び降りた。

 

「「「「!?」」」」

飛び降りたことに驚いたのか、再び銃口を突きつけてくるが、赤髪の少女が止める。

 

「驚かせて申し訳ない」

そう謝罪し、被っていたバイザーの安全装置を外し脱ぎ取る。

 

「ふぅ‥‥‥」

長い間バイザーを被っていたせいで、額にたまった湿気を拭う。

 

「改めて、カズヤ・S・ウェンライト少佐です。以後お見知りおきを」

 赤髪の少女へ歩み寄り、手を差し伸べる。

 

「え、えぇ。こちらこそ」

そういって俺の手を握り返す彼女の手は、気も細かくか細い女の子の腕と何ら変わりなかった。

 

「お~い、相棒~」

降りてきたオルガが手を振りながら近寄ってくる。すると、オルガを見ていた金髪ショートヘアーの少女が「うわ、でっか‥‥‥」と声を漏らす。

 

確かに、オルガの身長は2mを軽く超えてるからな。驚くのも無理はない。

 

「オルガ、お前も挨拶しろ」

 

「ん? おう、俺ァオルガ。オルガ・ヴァイスレッド。よろしくな嬢ちゃん達」

そう言い親指を立ててサムズアップをするオルガの腹に肘鉄を叩き込む。

 

「彼女は上官だ。もっと敬意を持て、オルガ」

 

「構いません、ウェンライト少佐。‥‥‥ところで、あなた方が所属している部隊なのですが‥‥‥」

 

「‥‥‥?」

 

「確認を取ったところ、そのよう部隊はどの国にも存在しないと報告を受けたのですが」

 

「「なに!?」」

 

「おいおい! そりゃおかしいぜ上官殿、俺達は天下のストライク・ワイバーンズだぜ? 知らない事無いだろ」

身を乗り出し、オルガが食いつく。

 

「第三次世界大戦を生き抜いた英雄! その中から選抜されたメンバーと選りすぐりの技術で作られた俺達の機体、『天空の双竜』を知らないってのかい!?」

 

「ちょっとまて」

ふと、右目に眼帯をした日系の少女が前に出る。

 

「第三次世界大戦とは何だ? 世界大戦は一次で終結したはずだろう?」

 

「はぁ? 第一次世界大戦なんて100年以上も昔に終わってただろ」

 

‥‥‥なにやら話が噛み合っていない。

俺達が戦い抜いた第三次世界大戦‥‥‥それより遥か昔、たしかに第一次世界大戦は起きていた。だが。第二次、第三次と大戦は続いている。だが彼女がいうのと俺たちの知識の食い違い‥‥‥これは一体?

 

「100年? それこそ何を言っているんだ。今は1944年、大戦だって「1944年!?」」

 

「おいおいおいおい! 意味分かんねーぞ。どういう事だ!?」

 

「なにをそこまで慌てているの?」

慌てるオルガの様子に赤髪の少女が怪訝そうに問いかけてくる。

 

「相棒、こいつは‥‥‥」

オルガは顔を強張らせ、考え込んでいた俺に語りかけてきた。

 

 

 

 

 

「‥‥‥ああ、おそらく。俺達は過去、それも俺達が存在していた世界とは『別の』世界に来ちまったみたいだな」

 

 

これが、ストライク・ワイバーンズの名を借る二人のパイロットと、空を駆ける魔女と呼ばれた少女達とのファースト・コンタクトである。

 

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択